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『朱里ちゃんの戯言』短編小説集   作者: 健野屋文乃
8章 あやかしの章

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橙子の涙

夜空には、月より大きな彗星が輝いていた。


「あんなダメ男に都合よく遊ばれて!

もう、橙子のせいで俺の涙は枯れたわ!

あんな男諦めて、俺のもとへ来い!

そうさ彼奴は、今頃、お前じゃない、

可愛い彼女とイチャついてる!」


深夜の路上で涙目の和史が叫んだ。


すると、橙子の身体は、橙子の意思に反して、和史の懐に飛び込んだ。


「えっ《゜Д゜》」

「俺から逃げられるとでも思った?」


和史はニヤケならが言った。


「何?」

「驚いた?俺、人の身体を自在に操れる能力を手にしたんだ」

「馬鹿なことを、いいから離して!また警察呼ぶよ!」

「警察が能力を手にした俺に、何か出来ると?

ふっ、だから、もう諦めな!

橙子が、俺のこと嫌おうと、もう関係ない。

こうやって抱きしめる以上の事を求めない!」


「離して」

「離さない、俺がお前の事をしあわせにしてやる!」

「それ・・・無理だから」

「無理じゃない、いやだとしても

もう俺を止めることが出来る奴なんて

この世にいないし、ふふふふ、解ったか!

俺はもう無敵だ」



月サイズの巨大彗星が、地球圏をかすめニアミスした。


地球滅亡は、避けられたが、巨大彗星の引力は、一部の人々の能力を、強引に引き出し覚醒をもたらした。


橙子の意思に反して、橙子の手が愛しそうに和史の頭を撫で、和史の口に自らの口を重ねようとした。


「止めて・・・止めないと」

「止めないと・・何?凡人のお前に何が出来る?」


橙子の身体の操作権を手にし勝ち誇った表情の和史は聞いた。


「ごめん・・・私も、もう凡人じゃないみたい」


橙子がそう言うと、和史の身体は、恐竜の尻尾の様な物で弾き飛ばされ、


ホームランボールの様に、空高く飛んでいってしまった。


「ごめん、覚醒したのは貴方だけじゃなかったみたい」


地球にニアミスした巨大彗星は、時間とともに、軌道を変え、地球圏から離れていった。


そして、地球で覚醒したかに見えた人々も、普通の凡人に戻っていった。


そんな地球規模の大異変に関わらず、橙子が想いを寄せる、あの人は、橙子じゃない、可愛い彼女とイチャついてるに違いない。


それを想うと橙子は、1人、泣いた。涙




おしまい

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