有尾族の小悪魔美少女さん。
塔は、煙突の様に聳えていた。
その内部の梯子を、僕は昇っていた。
僕のすぐ上を昇っているのは、有尾族の小悪魔美少女さんだ。
見上げると、目の前には、形の良いお尻がプリンプリンと揺れていた。
小悪魔美少女さんの尻尾が、僕の頭をなでなでしていた。
尻尾は生まれたての葉っぱのように、柔らかかった。
「塔から飛び出す時には、狙撃手に気を付けてね」
小悪魔美少女さんは、梯子を昇りながら言った。
「狙撃手?」
何の事やら、意味不明だ。
うん、少々、説明しよう。僕は、弱小劇団の劇作家。
その弱小劇団の座長に
「何かのネタになるかもしれないから、劇作家さん、行って来て!」
と言われ、訳も解らないまま、この煙突の様な塔の梯子を昇っている最中だ。
そんな理不尽な命令、無視すればいいのだが、この座長、女優を兼ねるだけの事あって、
とても澄んだ目と表情をしている。
そんな目で命じられると、断りずらい。
次は、葉っぱのような柔らかな尻尾が僕の頬を撫で、有尾族の小悪魔美少女さんが、ささやく様に説明し始めた。
「夜な夜な悪さをするために、ワルサーP38を持って、塔から飛び立つ、私たち有尾族の悪魔を、どこかの正義の秘密結社が、放っておけなくなったみたいなの。」
「悪さをするために、ワルサー?どこかの正義の秘密結社?」
「そう謎の秘密結社。そこの秘密結社の狙撃手が、どこかのビルから、善良な私たち悪魔を狙ってるの。酷い話よね。悪魔は悪さをして、なんぼなのにね。」
「う・・・うん」
「そう、でも大丈夫、多分、彼ら、予算の少ない秘密結社みたいだから、そんなにいない」
「ん?・・・って、もしかして今から、塔から飛び立つ気?」
「そうよ」
有尾の小悪魔美少女は、黒い羽を軽く羽ばたかせた。
「一緒に昇っているこの状況から、シュミレートすると、僕も飛び立つのかな?」
「そのつもりで体験取材してるんでしょう」
「でも!僕には羽が無い」
小悪魔美少女は振り向いて
「あっホントだ、ある種の勇者なの?」
「違います!」
「でも、もう引き返せないよ。1年に1度の儀式だから、早くワルサーもって悪さしたいって、みんな殺気立ってるし」
そう、僕のすぐに下には、ものすごい殺気立った悪魔達が、梯子を昇ってきている。
そして、梯子は一つしかない。
もうすでに、ビルに相当すると、60階を超えてそうな高さだ。
「気休めかもしれないけど、『悪は悪でも、必要悪は、生き残る』
これ私の父の信条よ。ちなみに父は、狙撃手に撃たれて死んだわ。
必要悪になれなかった哀れな悪魔」
「完全に気休めですよ」
と僕が言ってる間にも、屋上にたどり着いてしまった。
屋上は、畳1畳ほどの広さしかない。
真夜中の空に、この世とも思えない悲鳴が聞こえた。
きっと、だいぶ前に飛び立ったであろう悪魔の悲鳴だ。
きっと正義の秘密結社の狙撃手に撃たれたんだ。
有尾族の小悪魔美少女は、深呼吸をすると
「じゃあ先に行くね」
と言って、黒い羽を広げ優雅に飛び立った。
するとすぐに、
「おい!くそ餓鬼、早く飛べよ!下、つかえてんだ」
と背後から、怒声が聞こえた。
その直後、僕は背後の悪魔に突き飛ばされてしまった。
「えっ、マジ?躊躇なく人を突き落せる。さすが悪魔」
と思う間もなく、僕の体は急降下し始めた。
「えええええええ!」
と、何も考えられない僕の体を、誰かが掴んだ。
抱きしめたと言ってもいいかも。
あの小悪魔美少女さんだ!
僕は、小悪魔美少女さんの柔らかな胸にしがみついた。
悪魔とは思えない、優しさと柔らかさ。
「一般人のあなたを盾にしたら、狙撃手も撃ちづらいでしょう」
小悪魔美少女さんは、そう言うと、狙撃手がいそうな方向に僕を向けた。
一般人を盾にするなんて、さすが悪魔・・・と思ったけど、
うん、でもいいや。
とりあえず、小悪魔美少女さんにとって僕は、必要とされてるみたいだし、確か、必要悪は、生き残れるんだったけ?
おしまい




