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軽量化の果て
携帯電話は小さくなり続け、テレビは薄くなり続け、音楽はポケットに納まった。
小さなメモリーに、本棚にいっぱいに詰め込まれていた百科事典が収まり、
幸も不幸も、秘密も記憶も、恋も愛も、操も命も、軽量化された。
軽量化の波が地球を覆う。
重々しい物が消え、ふわふわとした世界で、僕らは限りなくゼロに近づいた。
そして、僕らはゼロに憧れを持つようになった。
でも、ある時、僕らはゼロには永遠に到達できない事に気づいてしまった。
ゼロは神の領域だったんだ。
人は神にはなれない。
僕らは限りなくゼロに近い世界で、漂い続けた。
ふわふわと。




