アルデンテ
オープンカフェで鉄郎は
「不思議といえば、不思議だけど、そう言うものじゃないの。時代の流れだよ。時代の流れ。」
と言った。
犬は喋りだし、猫は喫煙室でタバコを吹かす。
月では、うさぎが大増殖。
車道はいつもレース場で、警察官がチェッカーフラッグを振り回す。
空にはいつもUFOが飛び回り、死んだ人間も生き返る。
この状況を、「時代の流れだよ。」と言う言葉だけで、納得させる鉄郎を、ある意味凄いと私は思った。
「向かいに座ってる女、俺の事いやらしい目で見てる。」
と短いミニスカートをはいた鉄郎が、足を組み替えながら言った。
「そんなに短いスカートはいてるから。」
と私は言った。鉄郎は
「俺が何、はこうと自由だろ。」
と言った。
時代の流れは加速し続け、その流れに乗ったものだけが時代を謳歌した。
明日、何が起こるかわからない時代。
明日が楽しみだといえば言えないことも無い。
店員が
「待った?」
と言ってミートソーススパゲティーを持ってきた。鉄郎は
「ううん、今、来たところ。」
と答えた。
「挨拶が、むちゃくちゃだ・・・。」と思う人間は既に少数派だ。
「雰囲気で会話する事。」が、この移り変わりの激しい時代に、クールに生きる術だ。
私がミートソーススパゲティーを食べると、これだけ時代が加速していると言うのに、lこの店は変らず麺の固さはアルデンテ。
「やわらかい麺が好きなのに・・・。」
と、私は呟いた。
おしまい




