ベットの下の紙飛行機
その子は、ベットの下に紙飛行機をいっぱい隠し持っていた。
幼稚園の先生に教えてもらった、紙を7回折っただけで出来るとても単純な紙飛行機だ。
その子が紙飛行機を飛ばすことが許された場所は、幼稚園の広場だけだった。
園児が遊ぶには問題のない広さだたが、紙飛行機を飛ばすには、狭すぎた。
その子は
「いつか、もの凄く広い場所で、誰にも邪魔されず、好きなだけ思いっきり遠くへ、紙飛行機
を飛ばしたい。」
とずっと思い続けた。
子どもの想いとしては微笑ましい想いだったが、
その子は大人になっても、その思いを持ち続けた。
大人になった彼は、街からかなり離れた郊外に、大きな屋敷と広大な庭を手に入れた。
そして、屋敷の2階から思う存分、紙飛行機を飛ばし続けた。
その行為は、大の大人がやることとしては子どもじみていた。
彼の妻は困惑し、屋敷の近所の人々は見てみぬ振りをした。
そして、その場所に、文明が何度も、興亡を繰り返す程の時間が流れた。
一千年、二千年・・・と。
彼が育った街も、彼が紙飛行機を投げ続けた屋敷も、既に跡形もなくなっていた。
その場所には、文明の退行の結果、空を飛ぶことを忘れた人々が住んでいた。
ある日、大昔に彼が飛ばした紙飛行機が、奇跡的に地中深くから、発掘された。
人々はそれが鳥の様に、空を飛ばせる事を発見した。
その紙飛行機は、すぐに復元され広い広場で、飛ばされた。
空を悠々と飛ぶ紙飛行機に、人々は歓喜した。
そして、人々は空を飛ぶ夢を語り始めた。
19世紀末、人々が空を飛ぶ夢を語った時の様に・・・
おしまい




