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ロックオン
私は上空1万メートルを、音速を超える速度で逃げ回っていた。
どうやら、奴が私の存在に気づいたようだ。
奴は旋回して私の背後から迫ってきた。
私は素早く、厚い雲の中に逃げ込んだ。
濃厚な白の雲は厚く、一寸先すら視界は無かった。
おかげで奴をまくことが出来たようだ。
数キロに及ぶ厚い雲を抜けると、眩しい太陽と青空が私を迎えてくれた。
心地よい空。
と感に浸った直後、私のレーダーは異変を察知した。
奴が、雲の出口で待ち構えていたのだ。
私は素早く機体を、上空めがけて上昇させた。
しかし、コックピットに『ロックオン』されたことを示す警報が鳴り響いた。
あんな奴にロックコンを許すとは!
奴は、私が恋人に求める条件を1つも満たしてはいない。
奴は容赦なく、エロスの黄金の矢を放った。
その矢は私の心を貫き、私は恋に落ちた。
そして・・・
「いいか、幸せなら・・・。」
と私は優しさに包まれながら、思った。
これが、私がこの恋に落ちた瞬間のイメージ。
おしまい




