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仙人の桃 後編



2日目、冴子は朝から利用者の家族やマスコミへの対応に追われた。



「何が起こっているのか?」



興味本位で浴びせられる質問に冴子は応え続けた。




「先日の夕食に出された桃が・・・。」


と何度も何度も冴子は応えた。



冴子が対応に迫られている中、



ティーンに戻った利用者達は夜遅くまで夏の日を満喫していた。



冴子が家族やマスコミへの対応を終えて、



ぐったりと園長室の椅子に座っていると、玄関口で


「門限までには帰ってきてください。」


と実香の声が聞こえた。



すると重蔵らしき声が


「門限なんてあったけ?」


と応えていた。


 


「この園に門限なんてなかった・・・。



今まではそんなもの必要なかった。



一夜のうちに何もかも が変わってしまった。」



疲れ切った冴子は、



天井を見つめながらそのまま眠りに落ちた。



3日目の朝、園長室で眠ってしまっていた冴子は、



実香の声で目覚めた。



「園長、お客様です。」


「まだ、朝よ。」



どうせ、うるさい家族やマスコミに違いない。



「もう、うんざり。」と冴子は思った。



「仙人の使いの者だそうです。」


と実香は言った。




冴子は


「仙人の使い?」



冴子は「まさかいまどき仙人なんて」と思ったが、



老人が一夜にして若返りした今では、



「何でもありか」と思いその仙人の使いに会うことにした。


 


仙人の使いは、あまり着慣れていない風なスーツを来ていた。



仙人の使いは


「申し訳ありません。我々のミスです。」


と会うなり謝った。



冴子は


「どういう事です?」


と聞いた。



仙人の使いは


「あなた方が食べた桃は仙桃です。」


と応えた。



冴子が


「せんとう?」


と聞き返すと、仙人の使いは


「ええ。本来は仙人のみが食べる事を許された、特別な桃です。



何らかの手違いであなた方の夕食に・・・。



ただまだ完全に熟した状態ではなく、あの桃の効力は時期失われます。」


と言った。



「効力が失われる?」


「食してから1週間、今から4日後にあの方々は元に戻られます。」



冴子は何を言われたのか理解するまで、数秒要した。



数秒後、理解すると実香を見た。



それから、仙人の使いは再び丁寧に謝って、静かに帰って行った。


「利用者になんて言えば・・・。」


と冴子は呟いた。



その日の夜、夏を満喫してきた利用者達は、



集会所に集められ、冴子から事情を聞かされた。



集会場に異様な静けさが漂った。



最後の1週間が過ぎ、8日目の朝がやって来た。



その日の朝は、仙人の使いが言ったように、



仙桃の効力は消えティーンはお年寄りに戻っていた。


利用者達はそれぞれ現実を受け止め、



以前そうであった様に、生活を始めた。



何も変わっていないかの様に・・・



3ヵ月後、園長室に利用者の重蔵と松子が訪れた。


「どうしました?」


と冴子が聞くと松子は


「出来たみたいです。」


と言った。



冴子は


「何がです?」


と聞いた。



平均寿命を軽く超えている重蔵と松子は顔を赤らめた。


「まさか!」


冴子はぴんと来た。



「ティーンに戻って、ハメをはずしすぎた・・」と冴子は思った。



冴子は


「赤ちゃん?」


と聞くと松子は照れくさそうに頷いた。



「産みます?」


冴子は聞いた。



二人は同時に頷いた。



そういえば二人には子供がいなかったはず。 



冴子は


「年齢的に命がけになりますよ。産むのも育てるのも。」


と言った。



すると重蔵が


「わしが命をかけて守っていきます。」


と言って松子を見つめた。



松子は


「私、産みます。命をかけて。」


と言って冴子を見た。



冴子は二人に永遠の若さを見た。


 




おしまい


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