邂逅
ゴミが空から落ちてくる、ゴミ捨て場にて見つけられた女、そして、そのゴミを集めることを生業にしていた男のプロローグ。
俺はゴミ集めの仕事をしている。
金になりそうなものを拾って、生活の足しにする。
まぁほとんど親父の借金の返済に充てることになるんだが、少しづつでも返していかなきゃ、どっかに売り飛ばされるのがオチだ。
ゴミは毎日決まった時間に、空から落ちてくる。
金属、ぶよぶよしたよく分からないもの、ガラスみたいなもので出来ている球体、主に落ちてくるのはこれらで、他にもいろいろ落ちてくるが、如何せん種類が多すぎて説明しきれない。
何故こんな物が落ちてくるのか、そしてどこから落ちてきているのかなんてことは誰にも分からない。
イカれた奴らはこれを神の恵みだと言ったりするが、神の恵みなら尚更なんでこんな変なものを落としたりするの理解できない。
まぁ、これが金になるのだから、俺にとっても神の恵み、と言えるのかもしれない。
神が居るなら、の話だが。
「お、高く売れそうなもんがある。よく分からんが高く買取ってくれる緑色の板…」
俺は高く売れる物がいつもより見つかったので、少し嬉しくなり、思わずゴミ拾いに熱中してしまった。
しばらくすると俺は自分がいつもより遠くに来てしまったことに気づいた。
買取所は日が落ちてきたら閉まってしまうため、遠くに来てしまうとその日のうちに売れなくなってしまう。
そうなると困る…そう考えた俺は少し急ぎ足で帰ろうと思い、ゴミを入れる袋の口を紐で縛り、背負って行こうとする。
近くの方ですこし、咳き込んだ音が聞こえた。
俺の稼ぎを見ていた奴が俺のものを奪いに来たのかと思い、一応護身用にもっていた小型のナイフを取り出した。
心許ないが、ないよりは仕方ない。
「誰だ!来るなら来てみろよ!俺はお前を殺せるんだからな!」
勝てる確証は無く、どこか自信なさげなセリフを吐いてしまった。と俺は心の中で思った。
しばらく待っていたが、相手に動きはなかった。
俺のさっき言ったことに怖気付いたのか?と思い、辺りを見回す。
特に何も無い。
先程咳き込んだ音がした方向を見る。
行った方がいいだろうか。
もし、待ち伏せされていて、角から飛び出してきた奴に滅多刺しにされれば…
いや、この荷物を持った状態で後ろから襲われる方がよっぽどリスクが…
少し思案したが、やはり、なにも動きがない。
どうせなら俺が出迎えてやる。
そう思い、その方向へ向かった。
そこには、1人の女が倒れていた。
落ちてきたゴミにでも当たってしまったのだろうか、方腕がさまざまなゴミの間に挟まれ、あらぬ方向へと曲がり、切り傷も見られ、変色している。
「おい!大丈夫か!?今助けるからな!」
意識が朦朧としているように見えるその女は、反応せず、ただそこに居た。
助けると言っても挟まれている方の腕はもう使い物にならないだろう。
それに、この腕をゴミの間から取り出せたとして何かしらの病気に罹る可能性が十分にある。
「すまねぇ!」
俺はそう言うと、女の腕にナイフを突き立てた。
手に伝わる感触は気分のいいものではなく、また、その音も心地良いものでは無かった。
俺はやっとの思いで女の腕を体から切り離すと、一息ついた。
手は血に塗れ、もう少し大きなナイフを持ってくれば良かったと思った。
「今日の儲けはもう諦めた方がいいな…」
大きくため息をつきながら俺はそう言うと、袋の口を閉じていた紐を外し、女の腕に止血用として結びつけた。
そして持ってきていた予備の水で俺の手を洗い、女の傷跡にも掛けて血を洗い流した。
これで上手くいくかは分からないが、今のところこれしか俺にはできない。
俺は女を肩に担ぎ、帰路に着いた。