落星
気がつけば、自分は地面に倒れていた。
体が酷く痛む。
目を開けても視界は霞んでいた。
唯一理解出来たのは、辺りが少し暗いという事だ。
また、右腕が何かの間に挟まっているらしく、そこから自由に動くこともままならない。
なんとか抜け出そうともがいてもみたが、どうにもならない。そのうち動くのも馬鹿らしくなり、そのまま倒れ続けることにした。
倒れ続ける中で自分は何者か、何故ここにいるのかを考えたが、何も分からない。
思考に靄がかかっているようで、思い出そうとするほど、何も考えることが出来なくなる。
そうして自分に嫌になって、ひとつ、大きなため息をついた。しかし、こんな所で死にかけの状態にされて倒れているということは、きっとろくな者なのではないだろうと感じた。
それなら、きっと何も知らずにこのまま死ねたのならば、知って生きるより遥かに楽なものなのだろうと思えた。
「おい!大丈夫か!今助けるからな!」
近くで若い男の声が聞こえた。
周囲にいる誰かに呼びかけているらしかったが、応答らしいものは聞こえなかった
肘辺りに刃が突き立てられる音を聞いた。
嫌な予感がし、声を出そうとしたが呻く事すら出来なかった。
ぐち、ごりっ、と音がした後に、また、ぐち、ぐち、と音がなった。
自分の腕に、その感覚は無かった。
この若い男には助けてもらったのだろう、ということは分かっていたが、このまま何も知らずに死んだ方が個人的には嬉しかったということもあり、多少嫌悪感を抱いた。
若い男はひと仕事やり切ったかのように、ふぅ、と息を吐くと、小さい掛け声と共に自分を肩に担いで運び始めた。
人が来て緊張の糸がほつれたのか、若い男が歩み始めるとすぐに気を失った。