06 俺が…先生?
「マシロの奴来ないな…。」
俺はそう呟くが、今日は週末であり世間的に言う休日であった。
だが、この1ヶ月はマシロの事だったり、裁判を受けた人の資料を纏めてたりと、忙しい日々を過ごしていた。
だけど、今週は担当していた人が無事転生許可を取得し、マシロの状態も落ち着いてきたこと、そして新しくミズキさんを担当することにはなったが、彼女もまだ此方から何かをすると言う段階では無いため、特に何もすることがない。
なので、今日は久しぶりにゆっくりとした休日を過ごすつもりだった。
とは言え、ここ数日来るなと言っても毎日来ていたマシロが、今日は10時近くになってもやって来る気配がない。
昨日の態度も気になるし、一目だけでも様子を見に行くかと、俺は外出の準備を始める。
「家の前まで来てなんだが、今日はそもそも休日だしマシロも出掛けてるんじゃないか。」
俺はそう呟きながら、マシロの家の呼び鈴を鳴らすか5分ほど迷っていた。
しかし、普段はあいつの方から勝手に来ているんだし、もう居ないことを確認したら、さっさと帰ろうと決めて呼び鈴を押す。
ピンポーン
呼び鈴をならしても静かなので、留守なのだろうか。一応呼び鈴が聞こえてなかった可能性も考えて
「マシロー、居るのかー?」
とだけ呼び掛ける。
すると、マシロは寝ていたのかドタバタと駆け回る音が聞こえ、此方に近付いてきたと思うと、物凄い勢いでドアがバーンッと開かれる。
「べっ、弁護士さん!?」
そう言って飛び出してきたマシロは、先程まで布団に入っていたのだろう。
俺をうさ耳が付いた可愛らしいパジャマ姿で出迎える。
「まだ寝ていたようだな。起こしてしまったのなら…」
今日は休日だし、マシロもゆっくりしていたのだろうと、俺は謝罪をして家に帰ろうとしたが、彼女はそれを察したのか俺に被せるように言葉を発する。
「ま、待って!今すぐ着替えるから行かないで!!」
そして彼女はそう言うと、バタバタと足音を立てて廊下を走っていく。
そのまま扉を開けとくわけにもいかないので、一先ず家の中でマシロが着替えてくるのを待つことにする。
「お、お待たせ~。」
「別に今日は何も予定が無かったから慌てなくても良かったんだがなぁ。」
「だ、だって…先生がすぐに帰ろうとするから…。」
マシロが戻ってくると、だいぶ落ち着きを取り戻しているようだったが、それよりも気になることがある。
「何だその変な呼び方は。」
「だって弁護士さんは、私に色んな事を教えてくれるでしょ?それって何だか先生みたいだなって。だから弁護士先生!」
「はぁ、もう何だっていいか…。」
マシロのこれまでの様子から、いくら言っても無駄なのは分かっているので、俺はこの呼び方を受け入れることにする。
「そう言えば、さっきまで静かだったがいきなり来て大丈夫だったのか?」
「一応起きてはいたから全然大丈夫だよ!」
「起きていたのに呼び鈴には反応しなかったのか…。」
「あぅ…それは…。」
何となく流されるままに家に入ってしまったので、来ても良かったのか確認をしようとすると、マシロが気まずそうに言葉を濁す。
「言いにくい理由なのか?」
「寝るのが遅くて、ウトウトしてただけだよ…。」
「そうか、今日は俺が勝手に来ただけだから、まだ眠いなら…」
「だ、大丈夫!もう目は覚めてるから!!ちょっと考え事をしてて、寝れなかっただけで、何もないんだから!」
「なら良いんだが…。」
休日に来て邪魔だったかと思ったが、マシロは寧ろ歓迎している様子だった。
「それよりも、どうして先生は家に…あっ、もしかして心配させちゃったとか…?」
「心配したと言うか、毎日来ていたからな、一応様子を見に来ただけだな…。」
「えっと、それだけ…?」
「そうだなぁ、どうせ出掛けていると思っていたからな。」
「私は先生の所以外、出掛ける場所無いよ~。」
「ふーむ、そう言えばマシロは最初に会ったときから、ほとんどお店に行ったことがないとか言ってたか。」
「うーん、だったらさ、私まだ朝ごはん食べてないし、せっかくだから先生のおすすめの所教えてよ!!」
「今日は休日だから、役所の食堂行かないと開いてないと思うが…。」
「ばかっ!先生のばかっ!!」
俺はおすすめの場所を言ったつもりだったのに、何故かマシロに怒られる。
唐突だったが、この後どうするかは特に考えてなかったので、とりあえずマシロとご飯を食べに行く事になったのだった。
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