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人生裁判  作者: 絃芽こう


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27 方針

「では次の質問の前に、今日はライフイベントノートは持ってきてますか?」


俺は、アサギの今後の方針を決める上で、今回はあまり必要なさそうだとは思いつつも、彼女の生前の出来事を辿(たど)るのに役立つ『ライフイベントノート』を所持しているか確認する。


「ありますけど。…これですよね?」

俺が尋ねると、彼女はそう言って一冊のノートを取り出す。


「はい、そうです。差し支えなければ、中身を拝見しても?」

「駄目って言ったら、どうするんです?」

「気になる点だけ聞いて、そこを読んでもらうとかそんな感じになるんじゃないでしょうか」

「そう…。確か…私の思い出と言うか、記録が書いてあるのよね?このノートに」


彼女のノートを、見せてもらえるかアサギに聞いてみるが、彼女は自分でそのノートをペラペラと(めく)りながらうーんうーんと(うな)っている。


まぁ、ノートが白紙だったマシロや、自分から望んで相談に来たミズキとは違って、彼女は成り行きでここに来ただけなのだ。

いきなり自分の人生を他人に見せろと言われてもなかなか難しいだろう。


だが、しばらく悩んだ末彼女は『まぁ、いちいち読み上げるのも面倒だし、その道の人に任せる方が良いわよね。』と、割り切ったように独り言を呟くと、俺にノートを渡してくれる。



「ありがとうございます。では、今から方針を決めていきましょう。ですが、せっかくお借りしたこのノート、今回はあまり出番が無いかも知れないですね」

「そうなんですか?」

「はい。アサギさんは、御自身が転生の許可を得られなかった理由は覚えていますか?」

「えっと、確か…期待値が低いって言われたような」


彼女からノートを受け取ると、方針を決める為に質問を重ねていく。


「幸福度の方は特に何も?」

「はい。そっちの方は大丈夫だと…」

「そうですね、数値的にも問題は無さそうですね。ふむ………、ではやはり、このノートの出番は少ないかもしれないですね」

「はぁ…」


そのようにやり取りをしつつ、俺は彼女に前世への未練や来世への希望が少ないと、期待値が低くなることを伝える。


「アサギさんの場合、幸福度もそうですが、期待値も未練の方はそこまでですし、まぁ、ゆっくりこの街で過ごして心の準備を整えれば大丈夫かなと思います」

「そう…経過観察みたいなものかしら。ちなみに、もっと数値が悪かったら、何かしらの処置が施されるのかしら」

「えぇ、色々とやり方はありますが、良く取られる方法としては、記憶を消す、と言うのがありますね」


アサギと話した結果、やはり彼女は他の相談者と比べて、特に大きな問題は無さそうだったので、俺はそのように方針を結論付ける。


そして、本題が終わったので、この後は彼女の疑問に答えていく。


「記憶を…消す?」

「はい。ちゃんと相手と相談した上で、ですがね。その時にこのノートがあると便利なんですよね。幸福度がマイナスになってる原因も書いてあるので」

「そんな技術があるんですね…。そう言えばマシロちゃんは、どっちも凄いマイナスの数値だって言ってたけど、やっぱりそれも記憶を消して対処したりするの?」


そのつもりだったのに、まさかマシロの事を聞かれると思っていなかったので、一瞬答えに詰まってしまう。


「…そう…ですね。多少マイナスの数値が大きいと、やはりそう言ったことをしないと、1年以内に転生許可を得るのは難しいですからね」

「1年以内…」

「ただ、マシロにはまだ、このやり方は説明してないので今のところはアサギさんと同じく様子をみてるだけになってます」

「えっと、どうしてマシロちゃんには話してないんですか?」


俺は、この質問にどう答えるべきか悩んだが、アサギにここで話したことを、マシロに伝えることはしないようにと念を押し、理由を答えていく。


「………幾つか理由があるが、1つは先程アサギさんが言ったように、マシロのマイナスの数値が大きすぎるからですね」

「自分で問題児って言ってましたものね」

「そんなこと無いとは言ってるんですがね。ただ、ちょっとやそっとの記憶を消したところで、あまり意味がないのも確かなんですよね」

「えっ?どう言うことですか?」


この時の俺は、マシロの数値が遂に改善を見せ始め、僅かながらも転生への希望が見えてきた事で、余計に記憶を消すことについて切り出しにくくなっていた。


だからこそ、今の姿ではあまり年齢に差がないアサギに、彼女ならどのように考えるのかも知りたいと思い、話を続けるのだった。

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