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人生裁判  作者: 絃芽こう


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23 尽きない悩み

「それでは、俺の役目はここまでですので」


その日俺は、もう数値は大丈夫だろうと思い裁判を行い、無事に転生許可を得る事の出来た相談者を見送っていた。


「これで本当に、私は転生出来るんですねっ!?」

「えぇ、あなたの来世が良きものになる事を…」

「はい、今日までありがとうございました」

「では、このまま転生へ向かうならば、出口はあちらの方です。お気をつけて」

「心察官さんもお仕事頑張りすぎないように気を付けて下さいね」


相談者は最後にそう言うと、そのまま転生の門がある方の出口へと歩き始める。

俺は、その姿が見えなくなるまで見届けると、事後処理をする為に事務所へと向かう。


するとその途中で、『弁護士先生、お疲れ様ー』と、マシロがやって来る。


「あんまり人前でその呼び方をするな。本当に弁護士だと思われるだろう。と言うか、今日はアイト君が来るのに普通の格好なんだな」

「うん、どうしようか迷ったんだけどね」

「あまりその姿を見せたくないのだとと思っていたが…」


今日も今日とて、やって来るなり変な呼び方をするマシロを少し(とが)めていると、彼女の格好がアイト君が来る時としては珍しく、白髪を隠していない姿だと言うことに気が付く。


「うん、本当は見せたくないなぁ。でも、ずっと隠しているのも嫌だなって思って…」

「そうか、最近ずいぶんと仲良くなったと聞いたばかりだったが、良いのか?」

「仲良くなったからこそ…かな?せっかくならありのままの私を見てお友達になってほしいなって…。これで嫌われちゃうなら、もう…仕方無いよ!」


尋ねてみると、どうやらそれは意図してのものらしいが、彼女からこれ迄聞いた話や、アカバ先輩など、現世で魔法を使用する機会の多かった地域から来た人達の反応を考えると、マシロの願いが叶わない可能性もある。


どうか、アイト君がマシロの初めての友人となれることを願うが、こればかりは俺にはどうにも助けることは出来ない。

ひとまず、吹っ切るように下手くそな笑顔を見せる彼女に、俺が出来ることは少しでも転生出来る可能性を見出だしてあげることだけだ。


「それに、この事をずっと黙っていて、他の人から私の事を聞かされるよりも、私から直接言いたいの」

「まぁ…そうだな。実際に話してみてどうなるかなんてその時になってみなきゃ分からんしな」

「そうそう。なんとかならなくても先生が居るしね!」

「そんな理由で元気になられても困るんだがな」


「良いじゃん別にー。それよりも先生はこの後はまだお仕事?」

「裁判が終わったところだからな。今回の件の事後処理が残っている」

「そっかー。それなら私は休憩室に行って待っていた方が良いかな?」

「あぁ、すまないがそうしてくれ。いやまて、そうだな。前の測定から1ヶ月が経っている。そろそろ数値を計っておいた方が良いな」


マシロは、まだ俺にやることが残っていると分かると、邪魔をしないようにこの場から離れようとしたが、アイト君がいつも来る時間はまだ先だし、何もせずに待っているのは不安だろうと思い、この間に測定へ行くことを提案する。


「測定かー。あんまり行きたくないなぁ。でも、もう1ヶ月過ぎちゃったんだね」

「また今回も、個別にやってくれるようにお願いしておくから、この前と同じ所に行けるか?」

「うん、大丈夫」

「そうか、それじゃあ俺はもう行くが、何かあったら事務室まで来てくれ」

「うん、お仕事頑張ってね」


案の定マシロは(しぶ)い顔をしたが、それでも必要な事だと分かっているのだろう。特に文句を言うでもなく了承してくれる。

俺はこの後、いつもの場所にいることを伝えると、彼女が測定室へ向かうのを見送り、事務作業へと戻る。


マシロがエタリウムに来てから3ヶ月。

まだ1年の期限まで半年以上の時間があるとはいえ、彼女には数値がプラスの部分が無いため、記憶を消すならば恐らく全てを消さなければならないだろう。

その上で、ゼロから転生許可を得られるまでに数値を上げなければいけないことを考えると、決断までの時間は思っている以上に短いだろう。


それに、今でこそ担当している相談者達の状態が比較的落ち着いているため、一人一人にかける時間が少なく済んでいるが、場合によってはこの先マシロだけを見ているわけにはいかなくなる可能性もある。


今日も1人裁判を終えたばかりだと言うのに、不安の種が尽きないことを思うと、まだまだ自分が新米なのを実感させられる。

そんな風に取り留めもなく考え事をしながら作業を進めていると、あっという間に休憩の時間が訪れるのだった。

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