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人生裁判  作者: 絃芽こう


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21 きっかけ

「えっ!?マシロちゃんの髪って地毛じゃ無いんですか?」


席に着くと、俺は休憩前の相談について話そうとしたのだが、トキハから


「ちょっと待ってください。お昼ですし、一旦お仕事の話は後にしませんか?せっかくマシロちゃんも居ますし」


と言われ、マシロが俺が居ないところでトキハに相談出来るのかも不安だったので、俺はその提案に乗ることにする。


そして、最初は借りてきた猫のように大人しかったマシロも、トキハが彼女の眼を見ても、怯える様子が無いことで段々といつもの調子に戻ってくる。


「髪の長さも大分違うから、普段の姿を見たらびっくりすると思いますよ」

「そうなんですか?そんなに変わるんですか?」

「先生私がこの髪型で初めて来たとき、全然気付いてくれなかったもんね」

「わたしもマシロちゃんの普段の姿見てみたいなぁ」

「そ、それはまだだめ…」


なんて言う風に、会話をしている様子を見ると、無事親睦(しんぼく)を深められているのだろうと安心する。




「ずいぶんと(した)われてるんですね」


雑談も一段落ついて、そのままご飯を食べていると、トキハからそう言葉を掛けられる。

俺の正面にトキハ、左側にマシロが座っているのだが、言われてみると確かに、マシロがいつもよりぴったりとくっついている気もする。


「もう少し離れなくて良いのか?あまり近いと食べにくくないか?」

「ん?大丈夫だよ。それよりも、先生達のお仕事のお話しを、もっと聞いてみたいんだけど…」

「わたしは心察官になったばかりだから、まだ分からない事ばかりだけど、クロノさんもいるから、何でも聞いてちょうだいね」

「俺もまだ新人みたいなものなんだがな」


一応マシロに平気か尋ねてみるが、大丈夫だと言う返事と共に、俺達の仕事について聞きたいと言う言葉が反ってくる。


「でもどうしてそんなこと聞くのかしら?もしかして、マシロちゃんは心察官に興味があるの?」

「うん!私も心察官になったら、先生のお手伝いが出来るかな?って」

「あなたもわたし達と同じなのね」

「同じ?」


トキハからの質問に、マシロは元気よく答えるが、どうやら彼女にはまだ心察官になりたいと言う気持ちがあったようだ。


「そう、わたし達もここに来たとき、心察官の人にお世話になって、自分達も同じように悩んでいる人たちを助けたいなって思って心察官になったのよ」

「へー、先生もそうだったんだ」

「あぁ、一応そう言う理由で心察官になったな」


俺は、心察官を目指し始めた時のことを、ハッキリとは覚えていないが、心察官になった人達の中には、同じような理由で目指した人が多かれ少なかれ存在する。


だが


「今のままでは、マシロが心察官になるのは難しいと思う」


と俺は、自分以外にも相談出来る人が増えたので、彼女の望みを叶えるには壁が存在することを告げる。


「どーしてさ」

案の定俺の言葉を聞いたマシロは、少し怒ったように聞き返してくる。

それに対して俺は


「マイナスが大きすぎるからな」


と正直に答える。


「うぅ。そんなこと言われたら、どうしたら良いのか分かんないよ…」


その答えに、やはりショックを隠しきれないのか、マシロは悲しそうな表情を見せる。


「マシロちゃんはまだ小さいし、1年を過ぎると、裁判を受けることは出来なくなっちゃうけど、しばらくこの街で過ごして少しずつ数値をプラスにしながら、心察官を目指してみるのも良いんじゃないかな?」

「それは…。うん、そうだね。頑張ってみるよ」


そんなマシロを気遣って、トキハが慰めの言葉を掛け、一緒に対策を考えてくれるが、アルターの事を知っていたマシロだ。恐らくマイナスが大きいものがどうなるのかも聞かされているのだろう。

トキハの言葉に何か言いたげな様子だったが、それを飲み込んで明るく頷く。


「まぁ、マイナスだからと言ってなれない訳では無いし、ゆっくりでも数値が上がっていけばどうとでもなる」

「そうですね。それに、心察官じゃなくても、クロノさんを助けたいだけなら他にも方法はありますもんね」

「ありがとう。2人とも…、私、諦めなくて良いんだね?」


あくまでも、このままの数値のだと難しいと言うだけで、心察官になるだけなら別にプラスである必要は無いのだ。

その事を伝えるように、マシロの最後の言葉に、俺達は2人で大きく頷いてやる。





「そう言えば、トキハさんが担当しているアイト君は、マシロと歳が近いんでしたっけ?」

「そうですね。見た目的にはマシロちゃんと同じくらいか少し歳上でしょうか。この後役所まで来てくれる事になってるので、良かったら会っていきますか?」


昼食を片付ける時に、俺はふとアイト君の事を思いだし、トキハに尋ねるとそのように答えが返ってくる。

この後、マシロの前で仕事をしていても暇になってしまうだろうし、せっかくならば、彼とマシロを会わせるのも良いかもしれないと、俺はトキハの提案を受け入れるのだった。

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