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人生裁判  作者: 絃芽こう


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19 ファミレスにて

「う~ん、やっぱりここのご飯はどれも美味しそうで、1つに決められないよ~」


久しぶりに来たファミレスで、マシロはメニューを見ながら、何を食べるのか決められずにうんうんと(うな)っていた。


「そんなに迷うんだったら、お子さまプレートでも選べば良いじゃないか」


このままだといつまでもうるさいままなので、俺はマシロにそう提案する。


「お子さまって…、私は子どもじゃないって言ってるでしょー!」

(さわ)ぐ前にメニューを見てみろ」

「な、なにこれっ!?この写真、オムライスもハンバーグも、他にもいっぱいお料理が乗っかってる!!クロノ先生!私、今日のお昼はこれにする!!」


マシロがなかなかメニューを決められないようなので、1度にいくつもおかずを食べられるメニューを進めてみた訳だが、最初に文句を言いながらも、彼女は注文を終えると鼻唄を歌いながら料理が届くのを待っているので、その判断は正しかったのだろう。


「んっふっふ~。はーやっくこーないかなっ♪」

「ずいぶんとご機嫌だな」

「だって、あんなに色んなおかずが乗っかっているご飯、お誕生日の時ぐらいしか見たこと無いんだもん!」

「そうか。まぁ、特別なことでも無い限り、そんなに種類多くおかずを用意する機会は無いだろうからな」


そうやって話している途中で、俺はマシロが今回は飲み物を注文してないことに気付く。

なので、彼女に頼まなくて大丈夫だったのかを訪ねようとすると、マシロはこちらの顔を見て、少し悩む素振りを見せてから


「先生、どりんくばぁで飲み物を取りに行ってみたいんだけど、一緒に付いてきてくれる?」


と聞いてくる。


断る理由も無いし、マシロの方から言い出してくれたことで、俺は少し喜びを感じながら


「マシロが平気なら構わないぞ」


と返事をして席を立ち上がる。





「さて、これがドリンクバーなわけだが、使い方はそこにあるコップをここに置いて、こうして飲みたいもののボタンを押すだけだ」

「へー、簡単なんだね」


俺はそう言って、実際にお茶をコップに注ぐところを見せてやると、マシロにも自分の飲み物をとるように促す。


「そうだな。それで、何が飲みたいか決まったか?」

「うーん、シュワシュワしたやつがまた飲みたいんだけど、ここにもあるかな?」

「幾つか種類はあるが、この前と同じのが良いのならその緑の飲み物のボタンを押せば良い」


「緑のボタン…、これかな?」


マシロがボタンを押すと、緑の液体がジュワージョワジョワと、勢いよくコップの中に注がれていくが、それを見て1つ伝えなければいけない事があるのを思い出す。


「そう言えば、炭酸をいれるときは早めに手を離さないと…」

「うわ-っ!コップから泡がいっぱいあふれちゃったよ-!」

「そんな風になる…」

「もー、先生言うのが遅いよー!」


マシロは俺にそう言うと、大きな声を出しすぎたと思ったのか口元を押さえた後、静かに席へ戻っていく。


「うー、みんなこっち見てたよね?」

「そんなに気にすること無いだろう」

「だって、せっかく目立たないようにってミズキが髪の毛選んでくれたのに…」

「目立たないように?お洒落で着けてるんじゃ無いのか?」


席に着くと、マシロは落ち込んでいるようだったが、少し気になることを言うので俺は聞き返す。


「お洒落もそうなんだけど、私の見た目はやっぱりミズキも気になってたみたいで、せめて髪色だけでも変えれば多少は印象が良くなるからって…」

「ミズキも、と言うのはどういうことだ?」


「私ってほら、この前アカバって人からもヴァンパイアだって言われたでしょ?ミズキもはっきりとは言わなかったけど、そうかもしれないって感じてたみたいで、せめて髪か目の色を変えれば関わりやすくなる人が増えるかもって」

「何だか俺が思っているよりも、ヴァンパイアと言うのは広く知られた存在なんだな」


俺はマシロの話を聞いて、自分の想像以上に彼女の見た目が人々から忌避(きひ)されているものだということを感じる。

マシロはそんな俺の様子を見て、興味津々と言った風に


「ねぇ、先生の所ではそういう話とか無かったの?」


と聞いてくる。


俺は現世での噂話などは記憶に無いので


「覚えていないから分からないな」


と素直に答えるが


「ふーん、そうなんだ」


とマシロはそれを聞いて俺の答えにつまらなそうな顔をする。

俺はこの際だからと、マシロの見た目が怯えられている理由について聞いてみる。


「マシロがヴァンパイアだと言われるのは、見た目が似ているのが原因だったか?」

「そうだね。現世だけじゃなくて、ここでも言われるんだから、もしかしたらお伽噺じゃなくて、本当にヴァンパイアって居たのかな?」

「さてな。マシロは、ヴァンパイアの事はどれくらい知ってるんだ?」

「私も、人の血を吸うって事ぐらいしか知らないんだぁ。お母さんがそう言う話を避けていたのか、あまり教えてくれなかったから」





そんな風に話が一段落して、届いた料理を食べていると、マシロが髪をくるくると指先で弄りながら


「せ、先生もこの髪の方が私の事怖くない?ミズキには、大人っぽくて良いって言われてるんだけど…」


と聞いてくる。


「うーん、俺はヴァンパイアの事は良く分からないし、その髪型とかも似合っているとは思うが、正直普段の姿の方が落ち着くな」


ミズキがマシロを思って、してくれた事だというのは分かってるので、俺は言葉を選びながら本心を伝えてやる。


「ふーん、けっこうお洒落頑張ったんだけどな~」

「別にその格好が悪いって訳じゃないぞ」

「もっとちゃんと誉めてよ~」

「はいはい、その格好も大人っぽくて可愛いよ」

「えへへ、大人っぽいか~。そ~か~。………それでも先生は、いつもの私の方が良いって言ってくれるんだね…」


その返答にマシロは少し不満気な顔をしたが、彼女の言う通りに誉めてやると、どうやら満足したようで、その後マシロは、家に帰るまで終始ご機嫌な様子だった。

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