15 モヤモヤ?
「ふーん、それじゃあ貴方とマシロちゃんは健全な関係なのね?」
それから数十分後、漸くミズキの態度が軟化したので、どうにか誤解が解けたのだと思いたかった。
「あぁ、誓って彼女に手を出したりなんかしていない」
「ほぇ?頭をぎゅってしたり、色々お話を聞いてくれたよね?」
「頼むからこれ以上誤解を生むようなことを言わないでくれ。そして、最初からそう説明してくれれば余計な面倒が起きなくて済んだものを…」
「なんか先生疲れている?」
此方を気遣うようにマシロが聞いてくるが、そもそもの原因はお前だと言いたい。
だが、彼女の隣で、再び此方を警戒するような目付きで睨み付けるミズキを見たら、これ以上事を荒立てるような事は出来なかった。
「………そうですね。この1週間、ミズキさんはエタリウムで、何か不便な事はありましたか?」
「いえ、特には無かったです」
「良かった。では、生活面では大丈夫そうですね」
「はい。なんと言うか、見たことがない物もいっぱいあって驚きますね」
エタリウムでは、滞在する人達の様々な要求に対応出来るようにと、現世の文化が積極的に取り入れられている。
しかしまぁ、あちこちの文化を参考にしているせいで、エタリウム独自の文化が発展していたりもするが、今は別にその話はしなくても良いだろう。
「他になければひとまず、今日の面談はこれで終了になりますが、この後はどうされますか?」
とりあえず、確認しなければならないことは聞いたので、このまま面談を終わりにして大丈夫か尋ねる。
「今日はもうミズキとお別れなの?」
「いいえ、まだ聞きたい事があるから、もう少しお話に付き合ってもらうわ」
「ほんと?やったー!」
ミズキの返事を聞いて、マシロは嬉しそうな声を上げるが、俺はまたいつマシロが爆弾を落とすか分からないので、早くこの席を立ち去りたかった。
しかし、そうもいかないのが現実で、目の前で女性2人、楽しそうにエタリウムに来てからの会話をしている。
「えっ!?マシロちゃん、いつも自分でご飯を作ってるの?」
「うん、そーだよー。あ、でもこの前先生に、なんだか凄いお店に連れていってもらったよ?」
「クーローノーさん?」
「只のファミレスだ!現世でもお店に行ったことが無いらしいから、利用の仕方を説明したんだ。」
早速こんな風に爆弾が飛んできたり
「マシロちゃん、せっかく可愛いのにお洒落はしないの?」
「えっ、お洒落?私は別にしなくても良いかな~って…」
「そんなこと言って、大人っぽい服装をしたらクロノさんにも、綺麗って言ってもらえるかも知れないわよ?」
「ふぇっ!?な、なんで先生の名前が出るんですか!?」
マシロがミズキに何かを言われたのか、此方をみた後顔を真っ赤に染めるなんて事がありながらも2人の話は続いてく。
「コンビニは良いものよ」
「こんびに?」
「そう!24時間年中無休で開いてるから、夜中にお腹が空いてもご飯が買いに行けるのよ」
「でも私…お腹が空いたら、ご飯は自分で作るから…。最近は夜は寝ちゃってるし、あまり必要無いかも…?」
「なんてしっかりした子なの!?マシロちゃん、私の家に来ない!?」
最近になって気付いたが、マシロは肌が白いためか、恥ずかしがったり興奮したりすると、すぐに顔色が変わるので感情が非常に分かりやすい。
俺は、この事に最近まで気付けなかったのだが、つまりは俺の思っていた以上に彼女は心を閉ざしており、この前の休日でようやく、幾らかこちらを信頼してくれるようになったのかもしれない。
やがて、会話が終わったのかミズキは此方に向き直ると
「しばらくこの子はお借りしてもいいですか?」
と、声をかけてくる。
「俺は保護者ではないので、マシロが嫌じゃ無いなら好きにすれば良いと思いますが…」
言葉の通り、俺はあくまでマシロの担当者と言うだけで、保護者では無いので彼女の判断に任せることにする。
「あの…、私は…ミズキが嫌じゃ無ければ…」
「ならば私のお家でお泊まりしましょう。早速一緒にお買い物に行きたいわ」
「お泊まり!?やったー!」
「では、今日はここまでですかね。また次の面談は1週間後で良いですか?」
「はい、今日はありがとうございました」
「私、今日はミズキと一緒に帰るねー♪」
そうして俺達は席を立つと、マシロは楽しそうにミズキと手を繋いで歩いて行く。
その後ろ姿を見送っていると、マシロが他の人にも心を開けるようになったのは嬉しいのだが、俺の時にはあんなに時間がかかったのにと言う思いもあり、なんとも言えない気分になってしまうのだった。




