14 2回目の面談
「ねー、今日本当に私が着いていって良いの?」
マシロが泣いた日から数日、今日は別の相談者であるミズキとの、2回目の面談があった。
「この前は無理矢理にでも着いてきたくせに何を言ってるんだ」
「そ、その時は、新しい相談者さんがどんな人か気になってたから…」
「別にどんな人でもお前には関係無いだろうに」
あの日、またミズキとの面談に着いてくるのか聞いた所、歯切れの悪い返事をされた。
一応本人から、また是非連れてきて欲しいと言われたことを伝えると、再び泣きそうになりながらも、『絶対に行く!!』とのことだったのだが、母親以外の人から受け入れられることに慣れていないのか、何度も俺に来て良いのか確認を取ってくる。
「やっぱり、私見た目がヴァンパイアみたいだし、あんまり怖がらせるような事しない方がいいかな?今もほら、皆こっちの方見てるよね?」
「あれは…、何と言うかだな…」
マシロは、周りの目線が気になるようだが、あれは彼女自身を見ていると言うよりも、普段仕事以外で人とあまり関わらない俺が、子どもを連れて歩いていると言う方に興味を持たれて、視線を集めているように感じる。
「まぁ、悪い感情は向けられていないんだから気にするな」
だが、それをわざわざ説明する気も起きないので、そう言って誤魔化す。
「気にするなって言われてもー」
「ともかく、お前が考えているよりも、周りの人はお前の事を怖がってなんかいない」
「そーなのかなー」
俺の言葉に納得はしてなさそうだったが、少し落ち着いたのか、その後彼女は、目的地に着くまで同じ事を尋ねる事はなかった。
「お久しぶりです、ミズキさん。今日は先に来ていたんですね」
俺達が、今日の面談場所である喫茶店に到着すると、まだ約束の時間ではなかったが、既にミサキがお店の前で待機していた。
「今日もクロノ先生の助手としてやって来ましたマシロです!!よろしくお願いします!」
「お久しぶりです。お二人とも今日は宜しくお願いします。マシロちゃんも来てくれてありがとうね」
「またお前は…」
ミズキの前に来ると、さっきまで悩んでいたのは何だったのかと言いたくなるぐらいに、マシロは元気な挨拶をしてお店の中に入ろうとするが、今日はそちらに用はないので、彼女を呼び止める。
「そっちじゃなくてテラス席で面談だ。戻ってこい」
「あれ、今日もお店の外なんだ」
「話す内容がどうしてもプライベートな物になってくるからな。個室じゃ無いのならば、外の方が相談者にとっても良いだろうと思ってな」
「ふーん、そうなんだ」
マシロはトテトテと此方に戻ってくると、そう言って俺の腕にぎゅっとしがみつき、席の方まで歩いてく。
それを見ていたミズキは、クスクスと笑いながら
「なんだか親子みたいですね」
と声をかけてくる。
「そう見えますか?」
「ええ、気のせいかも知れませんけど、この前よりも仲が良さそうに見えますわ」
「はぁ…」
前から鬱陶しいぐらい纏わり付いてはいたが、言われてみれば以前よりも、自然と側に居るようになってる気もする。
なんて思っていると
「もしかしてお休みの日、クロノ先生としんみつな関係になったからかな?」
「マシロ?」
「どう言うことかしら?」
「あのね、私先生に初めての事をされた時に泣いちゃったんだけど、大丈夫だよって、ギュッって抱きしめられて…、そうすると、ここがポカポカになるってことを教えてもらったの!!」
と、マシロが胸を押さえてそんなことを言う。
「お前っ、何を言い出してる!?」
「マシロちゃんっ!?」
「ほへ?わ、私間違ったこと言った?」
「いや、間違いでは無い。だがその言い方は誤解を招く!」
俺は、面倒くさいことになる前に、マシロの言葉を訂正しようとしたが
「い、一体どういう事ですか!?クロノさん」
そうミズキが声を荒げて詰め寄って来るのを見て、既に手遅れであることを悟った。
「マシロちゃん、その人から離れなさい」
「へ?ど、どうして?」
「いいから、此方へいらっしゃい。私の隣に座るのよ」
「え?いいの?やったー、ミズキの隣~」
ミズキは俺を警戒するような目付きで見たかと思うと、そう言ってマシロを呼び寄せ、マシロは、嬉しそうに彼女の元へ駆け寄っていく。
「さあ、マシロちゃん、あの人から何をされたのか教えて頂戴」
「え?あの……、えい!えへへ、こんな風にぎゅってしてもらったの♪」
マシロはミズキに尋ねられると、それをどう解釈したのか、少し躊躇った後、彼女に抱き付く。
一見すると微笑ましい様子だが、俺は此方を見るミズキの表情から、更なる勘違いの予感に胃が痛くなりそうだった。
「マシロちゃん、大丈夫だった?痛いことはされなかった?」
「ま、待ってください!何があったのか俺から話を…」
「黙りなさいっ!!」
これ以上話が拗れる前に説明をしたかったが、ミズキの剣幕に押されて、俺は引き下がるしかなかった。
「えっと、あの…、なんか…先生が大丈夫だよって優しくしてくれて…、最初は痛くて苦しかったんだけど、最後はほわぁ~って幸せな気持ちになって…」
更に追い討ちをかけるように、マシロが辿々しくあの日の事を説明し始めたのだが、最悪なところで言葉を切り、恥ずかしそうにミズキの胸へと顔を埋めてしまう。
「まさか、あなたこんな小さな子に!?」
「違う!何を考えているか知らないが、絶対に誤解だ!!」
「どーしてそんなに先生は慌ててるの?」
誰のせいでこうなってると言いたいが、マシロは今の状況を理解していないのか、頭にはてなを浮かべた様子で此方を見ている。
「頼む!お願いだから弁明をさせてくれ」
そして俺は、自分の名誉のためにも誤解を解こうと、話を聞いてくれるよう必死に頼み込むのだった。




