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人生裁判  作者: 絃芽こう


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12/37

11 休日とは言え…

「この時間は早かっただろうか…」




次の日俺は、昨日よりも早い時間にマシロの家の前に来ていた。

普段彼女が家に来る時間よりは遅いし、もう起きてるとは思うが、昨日とは違い今日は用事があって来てるので、そこまで(まよ)わずに呼び鈴を鳴らす。


ピンポーン


だが、今日も今日とてマシロが出てくる様子はない。

やはり来るのが早かったのだろうかと、出直そうかと思ったが、なんとなく扉に手を掛けると鍵が開いていることが分かる。


「鍵も閉めずに無用心な」


俺はそう呟くと、すれ違いになっている可能性も考え、声をかけながら家の中へ入る。


「おーい、マシロ。居るのか?鍵が開けっ放しだったぞ」

「弁護士先生…?」


すると、やはり起きていたのかマシロの返事が聞こえる。

しかし昨日と違い、(あわ)てて此方に来る様子はない。

ガチャっと扉を開けて、マシロが部屋から出てくるが、今日はしっかり洋服に着替えているようだ。


「あれ、先生…1人だけなの?」

「他に誰が来るんだ。鍵が開いてたが、もしかしてこれから出掛ける所だったか?」

「ううん、先生が来るのを待ってた。でも、鍵閉め忘れちゃってたんだ…」

「昨日は色々疲れたかもしれないが、戸締(とじ)まりだけはしっかりしてくれ」

「うん、分かった…」


マシロは、まるで最初会った頃のように静かだった。


「飲み物、用意するから座って待ってて」

「いや、場所を教えてもらえば俺がやるぞ」

「いいの、先生はちゃんと座ってて」


それでも、こんな風に自分の意思を伝えてくれるので、あの頃よりは変わっているのかもしれない。

言われた通りにソファで待っていると、マシロがキッチンから戻ってくる。


「はい、どうぞ」

「ありがとう、これは…ハーブティーか?」

「うん、落ち着くから…」

「そうか。って、こっちに座るのか」

「だめ?」

「別に構わないが」


マシロは飲み物を置くと、何故か正面ではなく隣に腰掛けるが、わざわざ突き放す必要も無いのでそのままにする。




それからしばらく、お互いに無言で時計のカチカチと鳴る音と、カチャン…と食器の触れ合う音だけが部屋の中に響いていた。

そうして時間だけが過ぎていったが、先にマシロの方から沈黙(ちんもく)が破られる。


「……どうして来たの?」

「昨日の話の続きがしたかったからな」

「1人で?」

「何故他の人が来ることになるのか分からんのだが…」

「だって…、私…また数値変わらなかった」


そう言えば昨日、俺の前にも担当者が居たようなことを言っていた気がするが、その時に何かあったのだろうか。


「以前測ったときに何人かで来たことがあるのか?」

「…………測った後は来なかった…」

「来なかったって…、まさかっ、結果を聞いて見放(みはな)したとでも言うのか!?」

「うん、きっとそう。…先生はどうして?今日はお休みの日じゃないの?」

「相談者の対応を休日だからって(おろそ)かにするわけが無いだろう。」

「……どうして…」


マシロからも質問されたので、答えてあげたが、最後の返事が小さい声だったので、何と言ったのか聞き返す。


「ん?なんて言ったんだ」

「どうして、弁護士先生はそんなに(やさ)しいの?」

「優しい…とは?普通の事ぐらいしか出来てないと思うが」

「私にここまで関わってくれるのは普通じゃないよ…」


俺は家に押し掛けるぐらいしかしてないので、彼女の言っている意味が良く分からない。


「どう言うことだ?」

「3日…、これが何の数字か分かる?」

「いや…、分からないな」

「先生の前の人達の中で、私の事を一番長く見てくれた人の日数だよ」

「なっ!?」


俺は、そのあまりに無慈悲(むじひ)な数字に言葉が出なくなる。


「普通の人は、私を見たり数値を知ったら担当を辞退(じたい)するよ。実際先生の前の人達はそうだったし」

「一緒に頑張ろうって言ってくれた人も次の日には来なくなるし、変な希望を持たせるくらいなら、最初から無理だって言ってくれた方が良かった!!」

「先生もそうなんでしょ…!?私に期待させるだけさせてそのうち裏切るんだ!」


マシロは(まく)()てるように一気に喋ると、すがるように胸ぐらを掴んでくる。


「お、俺は、相談者が望む限り仕事を全うする。裏切るような真似はしない」

「そうだよね。先生はお仕事熱心だもんね。この一ヶ月見ていて凄い伝わってきたよ」

「あ、あぁ。だから…」

「でも、あの人の言っていた通り、私の事を諦めるなら早い方が良いよ」


俺の言葉を(さえぎ)りそう言うと、マシロは掴んでいた手を離し、元の位置に腰掛ける。

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