【シン・仮面ライダー】にある種のブレークスルーを見た
「ブレークスルー」というのはつまり、マーベル映画アクションの停滞に対する解をみた気がしたのです。
最近マーベルヒーロー映画何本も観てまず感じるのが「戦闘が退屈」という点。
とくにモブ敵がワラワラ沸いてそれをヒーローがやっつける中盤あたりのバトル、あ~これ必要なんだろうけど、つまんないな~いつ終わるのかな~って。
なんで退屈なのかというとそのリアリテイーの無さよのう。
この場合の「リアリティー」とは格闘技的ディティールとかそういうことではなく、言うなれば週刊少年マンガとおなじ「どーせこいつらいくらバトってもノーダメージなんだよな~」ということ。
どんなクリティカルダメージを負っても片腹押さえて不敵に笑い「へへ、あばら何本か逝ったかも」程度で流してしまうやつです。
でもって10分後にはなにかすごい技を繰り出して殴り合いに勝ってしまうような。
死ぬまで治らない傷を負ったりゼッタイしないのよね……
そもそも全年齢向けのマーベル映画だと流血も無し。せいぜい鼻血程度。
で、しばしば敵味方共々五体満足のまま映画が終わってしまう。
ごくたま~に半身不随になったり身体欠損したり死んだりするけど、それはシナリオのアクセントに過ぎない。【キャプテンアメリカ3】のウォーマシーンみたいに。
これじゃあ死線ギリギリで戦ってる実感が伝わりませんよ。つまりリアリティーを持続できないんです。「どーせ死なないし」ってなっちゃうから。
さてそこで話題の【シン仮面ライダー】……その庵野監督を追ったNHKドキュメンタリーです。
おそらく庵野監督があの番組で再三言ってた殺陣に関する疑念は、わたしが感じた「マーベルヒーロー映画のリアリティー欠如」に近いものだと思う。
その結果出来上がったものは?
【シン仮面ライダー】のわりと肯定的な感想でも「CGがしょぼい」というおそろしく漠然とした意見が頻出してるんですが……その正体でもある。
【シン仮面ライダー】の、時にはギャグすれすれな激しすぎるアクションシーンは、マーベル映画ほかバトルアクション映画全般に対するひとつのアンチテーゼであったと思う。
だって超人的動体能力を持ったヒーローの動きですから、「ありえない」くらいのスピードのはずだしパンチやキックひとつで相手は粉砕されるはずだし、戦いの結果どちらかが必ず死んで究極的な結果が出てしまう。
スーパーマンやマーベルヒーローだってほんとうはそうなるはず、という当たり前のことをやってみせただけなのだ。
ある意味ものすごく画期的で、かつ本来そうであるべき、という映画だったのです。
うまく言えないけどわれわれは映画で肉弾戦アクションシーンを観るとき、ある種の先入観にとらわれているのじゃないか?ということ。
つまり人間がある一定以上派手に動くとマンガになってしまうだろと。
おなじ先入観が作り手側にもあって、「これ以上派手なアクションさせると荒唐無稽すぎですね」とブレーキがかかる。
要するにアニメでしか観たことないモノを実写で見せられた結果、ある種の拒否反応が起きてる……いままで観てきたアクション映画のシーンが足枷となり、その先入観が振り切れないわけです。
だから、新しすぎるヒーローバトルを見せられて視聴者側の「実写バトルかくあるべし」という先入観を超えてしまった結果が「CGがしょぼい」という感想になってしまったのでしょう。