第3章 序章
あれは、いつもと同じような昼下がりのことでした。私のお店は、あまり人が来ることが滅多にない。だからいつもいつも暇を持て余していました。
けど、その日だけは違いました。
いつも通り、野菜ばかりの少し早いお昼ご飯を片づけて、その日もお客さんを待っていました。でも、私のお店はごくごく平凡な服の仕立て屋さん。それも裏道にあったために誰も来てくれません。
それでも私は、せめて店の前だけでもきれいにしようと箒を手にしました。それが戦争で死んだ父と母の教えですから。
たとえ、誰も来なくたって店を、そして店の前をきれいにしていればいつか必ずいい出会いがある。私は、それをずっと守ってきました。でも、まさかそれが行きなり訪れるだなんて、誰も思いません。
突然の出会いであっても、それが自分の人生にどれだけの影響を与えるのか、私は、それを学びました。私は決して忘れない。あの人との出会いを。今も信じている。あの人達の死が、意味あるものであったということを。
それを証明するために、私がなす事がなんであるのか。私は必ず見つけてみせる。




