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序章・満天の星
二○○四年、東京都。
真冬の深夜零時、凍りついた空に星が煌めいていた。山奥の深い林道を、ひとりの青年が歩いている。首には、一眼レフカメラを吊り下げたストラップ。
青年はふいに、大木の下で足を止めた。見上げた木々の枝の向こうに、星空が見える。塗りつぶしたような真っ黒な空に、まばゆいほどの満天の星だ。雲ひとつない空に、ナイフみたいな白くて細い月が輝く。高く伸びた木々の影も、星を飾る額縁のようで、青年はうっとりとため息をついた。
「君たちが最期に見た景色は、こんなに美しかったんだね」
語りかけるようなひとり言のあと、彼は夜空にカメラを向けた。