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なろう小説をこき下ろし動画サイトに投稿し続けた男の末路

作者: 橋下悟

※この物語は100%完全にフィクションです。

実在の人物や団体などは全く関係ありません。


あぁ〜よく寝た……。

4時か……

いつもの起きる時間だ。


空がやや赤い。

そろそろ日が暮れる頃だ。


いつものように、パソコンを開く。

寝ながらでもパソコンを開けるように配置してある。

極力布団から動かずに生活できる配置だ。

我ながら素晴らしいな。


どれどれ、今日もなろうのクソ作家を潰してやろう。


うじゃうじゃいるな。

ゴミのような文章を書きやがって。


素人の文章なんて読めたもんじゃない。

その上内容までつまらない。


小説家になりたい?

書籍化したい?


バカか!

クソみてぇな夢見やがって。

そんなふざけた夢から覚めさせてやろう。


ぉ。

これは狙い目だな。

そこそこの高ポイントだ。


まずは主人公がゴミ。

そして、それを取り巻くキャラもゴミだ。

キャラだけではない。

設定が矛盾だらけで、ご都合主義。

よくもこんなのを投稿できるもんだ。


俺はどんな小さな矛盾点も見逃さない。

それは、俺自身がなろうで投稿したことがある作家だからだ。

俺の作品は、こんなゴミと違って、設定に矛盾が無く作り込まれている。


なのに!


なのにだ!


全くポイントが入らない。


それは何故か?

ここの高ポイント作品がゴミで、読者もゴミだからだ。

こんなクソみたいな作品が世に出てはいけない。

だから、俺が浄化しなければならないのだ。


そうすれば、馬鹿なヤツらも、俺の作品が素晴らしいと気がつくだろう。


まずは、全ての矛盾点をくまなくあげていく。

次に、キャラの魅力の無さや薄っぺらさ。

最後に作家個人の頭が悪いと締めくくる。


我ながら良い動画だ。


ふぅー……

今日もいい仕事したぜ。


どれどれ、ちょっと前に動画のネタにしたクソ小説を確認してやろう。


おぉ!!

いいぞ、いくつかエタってるな。


この俺の崇高な動画を見て学習したのだろう。

今日もこの世からクソ小説を消滅させてやった。


よし、いい気分だ。

いい仕事をしたし、久しぶりに寿司でも食おう。

今日は生活保護が振り込まれているはずだ。


そう、俺は働いていない。

ただし、そこらへんの雑魚ワナビとは違う。

生活保護を受給しているのだ。


つまり、働かなくてもお金を振り込んでもらえる。

言わば、上級ワナビだ。


毎月10万くらいだが、俺は生活にほとんど金がかかってないからな。

それに、もうすぐ俺の動画のチャンネル登録者数が1000人になる。

そうすれば、動画からの広告収入が得られるわけだ。


今日は本当に気分が良い。

近くのATMへ行き、回転寿司屋にいく。


ん?


なんだか、視線を感じる。

クスクスと笑われているような……

なんだか気分が悪いな……


クソ……

さっきまでいい気分だったのに。

なんだっていうんだ?


会計に進むと、レジの若い男に声をかけられる。


「あの、動画いつも見てます。

いつも楽しみにしてるんですよ!」

「は、はぁ……ありがとう……ございます……」


動画?

俺の投稿しているなろう批判の動画か?


いや……

おかしい……


そもそも俺は、顔も声も出していない。

誰にも、動画のことは誰にも言ってないはずだ。

いったいどういうことだ?











家に帰ると、さっき投稿した動画に大量のコメントがついている。


おぉ!

今日はいつもよりもコメントが多いぞ!

どれどれ?


『出たクズワナビwww』

『こいつさっき回転寿司食ってたぞ』

『豚って生魚食うんだなwww』

『マジかよ、俺達の税金返せ』


おいおい!

なんだよこれ!

なんでバレてんだよ!


本当にヤバい……

洒落にならん……


背中と額に汗を感じる。

震える手で、コメントを下へ下へとスクロールしていく。


『今日のクズチャン久々の大物だな!』

『なにそれ?』

『これな→http://○○……』


なんだ?

別の動画へのリンクがある。


俺はクリックし、動画へ飛ぶ。


!!!

なんだこれ!!

これはヤバいだろ!


動画に映っているのは、俺の今いる部屋だ。

ちょっと待て!

カメラか?

盗撮されてんのか?


俺は動画のアングルから、部屋を映し出しているカメラの位置を考え、くまなく探す。

無い……

無いぞ……


どうなってんだ!?


とりあえず、動画の内容を確認しよう。




ーーーーーーーーーーーーーー

人間のクズチャンネル!

クズチャン!

今日も始まるぜぇ!!


はい!

と、いうことで、今回のクズはこの人!


ドン!


なかなかいい肉付きだねぇ……

さぁみんな!

この人はどんな人かな?


正解は……


クズ!


そうだね、クズだ!

みんな正解だ!

今日も安定のクズを紹介していくぅ!


ワナビって知ってるかな?

小説家の卵のことだ。

この人もワナビなんだけど、ただのワナビとはわけが違うんだ。

なんと、このクズ、自分の作品の人気が出ないからって、他の作品を貶める動画を投稿しているんだ。


それじゃ早速、動画収録しているところを見ていくぅ!


これが収録現場。

まるでゴミ屋敷だ。

てか、このチャンネルゴミ部屋率高いよね?

クズはみんなゴミの中で生活するスタイルなんだね。


おっと、小説を読み込んでいるね……

他人の小説をけなすために、その小説を読み込むってどんな気持ちなんだろう?

分かる人いる?

いたらコメント欄にコメントお願いしまぁす!


さぁ!

凄まじい粘着だ!

細かいところまで、矛盾点を探しているぞ!


あれもおかしい、これもおかしいと矛盾点を箇条書きにメモしていくぅ!

しかし、残念!

一番頭がオカシイのはこのクズだ!


さぁ、これだけでもクズポイントは高いんだけど、なんと今日のクズは生ポだ!


今月も生活保護を受給していくぅ!

ーーーーーーーーーーーーーー




…………………………


なんだこれは……

ありえない……ありえないだろう……


こんなの犯罪だろ!


そうだ!

警察だ!


とにかく警察に電話だ。










警察へ電話後、被害届を出すために直接警察署に行くことになった。

今日はまだ時間があるので、すぐに警察署へ向かおう。

警察署はそれほど離れていない。


「ぜぇ……ぜぇ……」


マズイな、普段全く動いていないから、この距離でも相当こたえる。


窓口で事情を話し、呼ばれるのを待つ。










「それでは、こちらで被害届を受理しました」

「あの、動画なんですけど、削除してもらえませんか?」


「そうですね……できるとは思いますが、時間がかかります。

それでしたら、ゴーチューブに直接問い合わせてみてはいかがでしょう?」


ゴーチューブというのは動画投稿サイトのことだ。

そうだった!

そんなことにも気づかなかったのか……

相当焦っていたな……


「そうだ、メールでの問い合わせ等は時間がかかると思いますので、こちらから連絡をしましょうか?」

「是非お願いします!」

それは助かる。

警察から直接連絡してもらえれば、少しでも早く動画を削除してもらえるかもしれない。








「ゴーチューブの日本支社のほうへ連絡できました。

ご都合が良ければ、会社の方へ直接来て欲しいとのことです。

ここからそれほど離れていませんし、すぐに動画を削除してくれると思いますよ。

良かったですね」

「ありがとうございます!」


よかった……

なんとかなりそうだな。









俺は今、ゴーチューブ日本支社の応接室に来ている。


さっきまでは焦っていたけど、よくよく考えたら、なんで俺がわざわざゴーチューブまで行かなくちゃいけないんだ?

さっさと動画を削除しろよ!

あんな個人のプライバシーを侵害しまくっているのなんて、普通問答無用で削除だろ。


全く、余計な手間をかけさせやがって……


「お待たせしました」

応接室に、社員が入ってくる。

以外にも女性社員だ。


「投稿された動画の削除についてですか?」

「はい、そうです。

おかしな動画があがっていまして……

私の部屋が盗撮されていたんです」


「承知しました。

すぐにお調べしますので、チャンネル名を教えていただけませんか?」

「人間のクズチャンネルです」


「確認してきます、少々お待ち下さい」


なにやら、女性社員は奥へと行った。


ふぅ……

とりあえず、今日のうちに来られてよかったな。

すぐに削除してもらおう。


てか、なんなら慰謝料を請求してもいい。

あんな舐め腐った動画を投稿しやがって……


少しすると、女性社員が戻ってきた。


「すみません、確認してきましたが問題ありませんでした。

削除はできかねます」

「ぇ?」


問題ないって、そんなことあり得るのか?


「…………………………」

「…………………………」


何だこいつ、内容も態度もおかしいだろ。

何黙ってんだ?


「部屋が盗撮されているんですよ? 生活できません……」

「えぇ、そうですよね。申し訳ございません」


いやいや、申し訳ございませんじゃなくて。

こいつは形式的に謝ってるだけだな。


「えっと、盗撮ですよ?」

「はい、申し訳ございません」


だから、申し訳ございませんじゃねぇよ!

絶対悪いと思ってねぇだろ!


「ちょっと待ってください。動画は確認したんですか?」

「はい、確認させていただきました」


「個人の部屋が無断で映ってるんですよ?

クズ呼ばわりされてるんですよ!!

こんな馬鹿な話がありますか?」

「そう言われましても……」


……マズイ。

冷汗が止まらない。


これ、本当か?

本気であの動画を放置する気か?


怒りがこみ上げてくる。

どう考えたっておかしい。

ふざけるな!


「なんとか言ってくださいよ!」

「…………………………」


職員は黙ったままだ。

「黙ってないで説明してくださいよ!

そうだ!

訴えてやる!

あんなの許されるわけない!

この会社も、動画投稿したやつもまとめて訴えてやるぞ!」


ふと、職員の視線がこちらへ向く。


先程とは別人のように不気味な笑顔だ。


『人間のクズチャンネル!

クズチャン!

今日も始まるぜぇ!』


!?

急に頭の中に声が響き渡る。

この声は……動画の声だ!


『今日はクズワナビが僕たちを訴えるそうだ。

タイトルは「クズワナビ裁判を起こす」

これは間違いなくバズる!

裁判を起こしていくぅ!」


な!

どこだ!?

どこからか盗撮されているのか!?


俺はまわりをキョロキョロと見回す。


『おっと、カメラを探しているぞ。

なんとも可愛らしい動きだ。

ちょwwwおもしろwwww』


「おい!

ふざけんな!

いい加減にしろぉおおおおおお!!」


怒鳴り散らすと、目の前の女社員と目が合う。


……!!


思わずゾッとしてしまった。


恐ろしく冷たい表情だ。


「……あなたが、これまでやってきたことでしょう?」


「…………え?」







がばっ!

布団から飛び起きる。


……夢……か……?

ここは……

いつもの自分の部屋だ。


手の届くところにパソコンが置いてある。

やはり、夢だったのか?


今は……夕方の4時。

いつもの起きる時間だ。


凄い汗でひんやりする。

心臓の鼓動がまだ激しい。


いや、落ち着け。

普通に夢だ。

そりゃ、夢だろう。


しかし、何故か妙にリアルな夢だったな。


ふぅ……

とりあえず、パソコンを開く。


…………


「……あなたが、これまでやってきたことでしょう?」


さっきの夢が思い浮かぶ。


いやいや、夢は夢だろ、バカバカしい。


それでも何故か、いつものように動画投稿する気分にはなれない。


いや……まさかな………


なんだか不安になってくる。


そうだ。

コメントだ。

コメント欄の書き込みを確認する。


コメント数はいつもどおりだ。


そうだ、チャンネル……

俺は『人間のクズチャンネル』を検索してみる。


…………………………


もちろん、そんなチャンネルは存在しない……


いやいや、そりゃそうだ。

そりゃそうだろう、夢なんだから。


少し落ち着いた俺は、近くのコンビニまで行く。

今日は生活保護の受給日だ。

とりあえず、なにか飲んで落ち着こう。


弁当3つと、お酒、お菓子を買っていく。








家に帰ると、落ち着きを取り戻すことができた。


あんなこと、現実で起きるわけがない。

当たり前、当たり前だ。


缶チューハイを開ける。

グビグビと勢いよく飲むと、いつもの調子が出てくる。


よしよし、今日もゴミ作家どもの筆を折らせてやろう。


はい出た、クソ小説。









さぁ、今日も良い動画ができたぞ!


投稿だ!


!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!


何だ!!

この悪寒は!!


投稿ボタンを押した瞬間に、背中に凄まじい寒気を感じる。

あれだ!

夢で見た、ゴーチューブでの視線。

あれと全く同じ感じがする。


ビリビリと視線を感じる。

大勢に見られているようだ。


そして、頭の中に声が聞こえてくる……






『人間のクズチャンネル!




クズチャン!




今日も始まるぜぇ!』

※この物語は100%完全にフィクションです。

実在の人物や団体などは全く関係ありません。


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― 新着の感想 ―
[一言] でもなろうはゴミじゃん
[一言] 面白かったです ^0^/ だけど生活保護の受給があまり良いイメージで書かれていないのは残念です ><。
[良い点] これは痛快ですね! やったね! いい終わり方でした! クズはいつまでもクズでいて欲しいものです!
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