霧子、写真を披露する
霧子は、経理部の部屋にいた。
実は、副部長以下、霧子の部署の者たちの領収書の提出の遅れが、劇的に改善されてしまったため、なかなか、就業時間内に水際女史のもとへ公然と訪ねることができなくなってしまっていた。
薬が効きすぎたのである。
そういうわけで、今は昼休みの時間だ。
霧子は、水際女史にお猫様の写真を見せにきたのだった。
「あら、あなた、写真お上手なのね。どれもよく撮れているわ。」
水際女史は、霧子のスマホに収められたお猫様の写真を、目を輝かせて見ていた。
霧子は、頑張ったのだ。何とか、お猫様の可愛らしい姿を残そうと。
しかし、お猫様にとって、そんなことは知ったことではない。
お猫様は、お猫様のしたいように動く。
なので、SNSに映える写真を投稿していた霧子といえど、その撮影は、一筋縄ではいかなかった。
決して、水際女史の目に触れさせてはならないような、謎の生物写真が大量に生み出されたのである。
お猫様を驚かせないようにフラッシュを解除して撮影したため、異様に全体が暗くなってしまったもの。
目だけが異様に光っているもの。
脚が増えているもの。
変形し、お猫様がどちらを向いているのか、まったく分からないもの。
伸びすぎているもの。
空中に浮かんでいるもの。もしくは、異空間内を飛行しているもの。
お猫様が、2億光年先に向かってワープする瞬間。
お猫様が、化け猫に扮しておられるもの。
お猫様が、キャットタワーと同化した瞬間。
などなど。
猫のような何か、それどころか、もはや原型が何か不明なオカルト写真が、大漁となった。
霧子は、撮影と消去を繰り返した。
予備のバッテリーを購入する羽目になった。
そして、厳選に厳選を重ねた写真のデータのみを、スマホに残したのであった。
水際女史は、自分のスマホも出してきた。
「やっぱり、なかなか、良い写真が撮れていないのよね。実物は、これの100倍は可愛いの。」
霧子も、自分の撮影した写真では、お猫様の可愛らしさの100分の1も伝えられていないと感じていた。
どうにかして、水際女史にだけは、お猫様を見て欲しい。
霧子は、危ない橋を渡ろうとしているのだった。
昼休みの時間が終わり、霧子は自分の部署に戻った。
問題なく、お猫様を水際女史と引き逢わせるためには、どうしたらよいのか?
霧子は、しかし、今日も定時退社を死守すべく、仕事に集中することにした。
霧子は、退社後に、猫ショップに立ち寄り、お猫様の相手として、秋刀魚1号とペンギン1号を招聘(購入)し、帰宅したのだった。




