第9話
春野と買い物に行った日の翌日、僕は朝5時くらいに目が覚めた。
体が重い。昨日帰ってきてからほとんど寝ていたせいだ。
僕は昨日、夜8時ころに目を覚まし、晩御飯を食べ、お風呂に入ってからまたすぐに寝た。
僕は洗面所に行き、顔を洗う。そして、朝ご飯を適当にすませ、読書や宿題をして時間をつぶす。
時計が10時をまわったころ、僕は春野のスマホを持って家をでた。
春野はもう治ったんだろうか……
そんなことを思いながら歩いた。
春野の家につくと深呼吸を一回して、インターホンを押した。
『は~い』
春野のお母さんのの声がかえってきた。
「伊吹碧斗です」
『あ、碧斗くん! ちょっと待っててね』
そう言われたので、僕は空でも見上げながら待つことにした。
僕が待ちはじめて、五分くらいたった。
……いや、遅すぎない?
ちょっとって1分くらいを予想してたんだけど。
僕がもう一回インターホンをおそうか悩んでいると、ドアがガチャリと開いた。
「お、お待たせしました」
そこにはドアから顔をひょこりとのぞかせた春野がいた。
「春野……熱はもう大丈夫なのか?」
「うん! おかげさまで」
「そっか」
「とりあえず入って! お礼もいいたいし」
「いやいいよ別にお礼なんて」
「いいからいいから!」
そういって春野は強引に僕を家に上がらせた。
そして、僕は春野に引きずられて春野の部屋に入った。
「ここでちょっと待ってて! お茶とってくる!」
そういって春野は部屋を飛び出していった。
……元気なやつだ。昨日あれだけ弱っていたのが嘘みたいだ。
二分くらいすると、春野はお茶を持ってきて帰ってきた。
「どーぞ!」
「どーも」
そういってお茶をうけとる。
「春野、君病み上がりなんだからもう少しおとなしくしなよ」
よくもまぁ病み上がりでそんだけ動けるもんだ。
「大丈夫だよ! 寝たら治った!」
笑顔で春野がそう答えてきた。まあ無理はしてなさそうだな。
「それと春野、これ」
僕はそういって春野のスマホをとりだす。
「あ! 私のスマホ! ありがと~ 今日探そうと思ってたんだよね~」
「とりあえず壊れてはないと思う」
「それならよかった! それよりこのスマホどこにあったの?」
「昨日帰りによった公園だよ。覚えてる?」
「うん、まあなんとなく?」
あんまはっきり覚えていないようだ。
「昨日そこで春野がスマホ使ってたの思いだして、探しにいった。」
「そうなんだ、ありがとう!」
……いろんなところをがむしゃらに駆け回ったのは黙っておこう。
「君、熱があって意識が朦朧としていたとはいえスマホ置いて忘れるはないでしょ」
僕は昨日さんざん走らされた腹いせに、春野に文句を言った。
「わ、私だって忘れたくて忘れたんじゃないよ! そりゃあ私ってちょっと忘れっぽいところもあるけど……」
「春野のちょっとは全然ちょっとじゃないんだよ。君はもうそろそろ自分がとんでもなくドジだっていうのを自覚した方がいい」
「と、とんでもなくって……! それを言うなら伊吹くんだって!」
「何?」
「伊吹くんだってたまにとんでもない口撃してるの自覚した方がいいよ!」
「とんでもない口撃?」
はて? 心当たりがないぞ。
「あれ、無自覚で言ってるでしょ! ほんとやめた方がいいよそういうの!」
「はぁ? それを言うなら君だってな……」
それから僕らは僕が帰るまでずっと言い争った。
なんかこんな感じに春野と言い争うのが久しぶりな感じがして、僕は少し安心していた。
……それと、少しだけ楽しかったかもね。
あくまで、少しだけね。
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「それじゃ、お邪魔しましたー」
「ばいばい! 伊吹くん」
「またきてね! 碧斗くん!」
僕は春野のと春野のお母さんに見送られながら春野の家をあとにした。
相変わらず、腹の立つやつだ。
なんだ、とんでもない口撃って。
だいたい、僕と春野が言い争うときはだいたい春野からふっかけてくるだろう!
僕はそんなことを思いながら家に帰った。
今日は春野に言いたいこと言ってきたし、久しぶりに気持ちよく眠れそうだ。
さて、テストも近いことだし、少しくらい勉強して寝るか。