第6話
今日は林間学校の実行委員の集まりがある。非常にめんどくさいが、授業で睡魔と戦わなくていいという利点は大きい。
まあ、実行委員といっても、先生の言われたことをやるだけだからそんな大変ではない。そんな疲れることもないだろう。
……と、思っていたのに……
「なんで君がいるんだよ」
そこには毎度のごとく春野鈴香がいた。
「先生に頼まれたんだよ、『春野は成績はいいんだから委員のひとつくらいやっとけ』って」
春野は少しめんどくさそうに答えた。
「成績はいい、ねぇ……」
「これでも私テストの順位は毎回一桁に入ってるんだから!」
「そうなんだーすごいねー」
「なにその適当な返事!」
だってどうでもいいんだもん。
「そういう伊吹くんは、いつもテストの順位どれくらいなの?」
「さあな」
「はぐらかさないで教えてよ~ あっ! さては伊吹くん私より順位が低くて恥ずかしいのかなぁ~?」
春野はニヤニヤしながら言ってくる。
「そんなんじゃないよ。そんなことより、もう実行委員会始まっちゃうぞ」
「あっ! 待ってよ~」
僕はテストの話題を終わらせるために、実行委員会に行くよう春野に促した。
このスキルは圭吾がしつこく僕の順位を聞いてるから自然と磨かれていったんだよね。
実行委員会では、実行委員の係分けをされた。ちなみに僕は保健係の係長になった。保健係って、楽そうだよね。
実行委員が終わったので、僕は家に帰り、林間学校に必要なものをチェックした。
リュック、軍手、懐中電灯……
あ、懐中電灯壊れてる。近いうちに買いにいかないと。
林間学校のために買いにいかなければならないものをチェックした僕はそのまま眠りについた。
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翌日の放課後、春野が話しかけてきた。
「ねぇ、伊吹くん。懐中電灯って持ってる?」
僕は昨日壊れていたことを思い出して答える。
「持ってたけど、壊れてたから、買いにいくつもり」
「ふ~ん、そうなんだ~」
なんだ急にニヤニヤし始めて。
「あのさ、私も懐中電灯買いにいかないといけないから、一緒に買いにいかない?」
「はぁ?」
何を言っているんだこいつは。
「君は友達と行けばいいだろ」
「そう思ったんだけど、みんな買いにいく必要がないみたいで……」
「じゃあ一人でいけば?」
「やだよ! 一人で買い物とか恥ずかしいじゃん!」
別に恥ずかしくないだろ。
「じゃあ他に懐中電灯買わないといけない人捕まえて一緒にいけばいいだろ」
「だからこうやって仲のいい伊吹くんに懐中電灯ある? って聞いたんじゃん!」
な、仲のいいねぇ……ふーん?
まあ、買い物に付き合うくらいいいか。
「しょうがないなぁ」
僕はやれやれという感じで言った。
「ほんと?! ありがとう! それじゃあ今週の土曜日、駅前の公園に朝9時集合ね!」
春野はそういって跳ねるように帰っていった。
僕も帰ろうかな、と思っていると圭吾がニヤニヤしながら話しかけてきた。
「よっ! 碧斗! 今日も春野さんと何話してたんだよ」
「……別に、一緒に出かける約束をしてただけだ」
「え?一緒に出かけるって……春野さんと?」
「そうだけど何?」
圭吾はちょっと困惑したような顔をしている。
「お前それ、デートじゃね?」
はぁ?!
「ば、ば、ばか! なに言ってんだよ! そんなんじゃねぇって!」
「いやだって、男女が二人で出掛けるんだろ、デートじゃねぇか!」
「だからそんなんじゃないって! 僕はもう帰る!」
まったく……圭吾は何を言ってるんだ?
僕が春野とデート?そんなのありえない。
だってデートってほら、男女のカップルが一緒に出かけるっていう……
……
…………!!
あれ? 客観的に見ればこれってデート?
……いや、断じてデートなんてものではない。
断じて。
……でも、一応男女で出掛けるときの注意点でも調べとくか……
…………一応ね?