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第5話

 第一話のときに二日目以降一日一話投稿しますといいましたが、書き溜めに余裕があるため、今日はこの話含めてあと二話投稿します。


 体育倉庫事件から数日がたった。

 僕も春野も、事件の翌日からはいつも通りに過ごせた。

 

 ……まあ、あんなのいつまでもひきずってたらしょうがないからな。


 僕は今日もいつも通り適当に授業をうけ、春野と言い争い、平和な日常(?)を過ごしていた。


 圭吾から聞いた話だが、どうやら僕と春野さんがつき合っているなんて噂がながれているらしい。


 迷惑きわまりない。僕と春野がつきあってる? 冗談もほどほどにしろ。


 おかげで他の男子たちから嫉妬の目で見られることも少なくない。非常に鬱陶しい。


ーーーーーーーーーーーーーー


 今日の放課後、僕は先生に呼び出されていた。何かをやらかした記憶はないが、呼び出しというだけで緊張してしまう。


 僕は職員室に入り、僕を呼び出した先生のところへいく。その先生は僕を見て言った。


「お前、林間学校の実行委員をやんないか?」


「やりません」


 僕は即答した。


 いやだって、実行委員とかいっても先生の言われたことをやるだけじゃん。


 僕の返事を聞いて先生は眉をひそめた。


「理由を聞いてもいいか?」


 ここで正直に答えてもいいが、内申にひびくかもしれない。適当に答えておこう。


「家の事情で忙しいからです」


 家の事情と言ってしまえば、教師は深く入り込めまい。


「そうはいってもな伊吹、お前委員何もやってないだろ、なにかひとつくらいやっといた方がいいぞ」


 そんなことを言われてもめんどくさいのはめんどくさいんだよなぁ。


「よし、じゃあ実行委員になったら俺の授業で寝てても見逃そうって言ったら?」


「やりましょう」


 僕は即答した。


ーーーーーーーーーーーーーー


 実行委員についていろいろ説明を受けていたから遅くなってしまった。もうみんな帰ってるだろう。


 そう思って教室に入ると、まだ一人だけ帰っていない生徒がいた。


 春野鈴香である。


 なにやら悩んでいるようだ。難しい顔をしている。


 僕は自分の席へカバンをとりにいくついでに春野に話しかける。


「なにしてんの?」


 春野が顔を上げて言った。


「今日、先生に呼び出されて、去年技術の授業でつくった本棚を渡されたの。私、持ち帰る日学校休んでたから」


 あれか。あれなかなかの大きさだから持ち帰るの大変だったな。


「それで、帰ろうと思ったんだけど本棚が大きすぎて持ちきれなくて困ってたの」


「そうなんだ、じゃあな」


 僕はさっさと帰ろうとする。だが、それを春野が許すはずなく。


「ちょっと待って! 持ち帰るの、手伝ってくれない?」


 そんなことだろうと思った。


「やだよ、めんどくさい」


「えぇーー」


「僕だって頑張って持ち帰ったんだ」


「そっかー、じゃあしょうがない」


 お? 今日は随分とすぐ諦めるんだな。


「鏑木くんから聞いた伊吹くんの小さい頃の恥ずかしいエピソードをみんなに広めちゃおっかなー」


 春野が諦めるなんてことを考えた僕がバカだった。

 圭吾はあとで埋めよう。


「性格悪いぞ」


「ブーメランって知ってる?」


 相変わらず腹の立つやつだ。


 僕は大きくため息をつく。


「しょうがないなぁ」


「やった!」


 春野が小さくガッツポーズを決めていた。

 嬉しそうにしやがって……


ーーーーーーーーーーーーーー


 ……重い……なんでこんな大きさの本棚を授業でつくるんだ……


 僕が春野の本棚を持ち、春野には僕のカバンをもってもらった。


「がんばれー」


 ……くそ、こいつ……応援する元気があるならこっちを手伝えよ。


「あ、そろそろ私の家つくよー!」


 ふう、やっとか……


 どうやら春野の家は僕より学校に近いところにあるようだ。


 僕は春野に案内されて、春野の家の玄関に本棚を運び込む。


「ありがとー! すごい助かった!」


「脅しといて何いってんだ」


 すると春野はクスッと笑い言った。


「どうする? 私の家あがってく?」


「上がるわけないだろ」


 そんな冗談をいいつつ僕は帰ろうとする。


「それじゃ、僕は帰るから」


「うん! また明日!」


 そして僕が歩き出そうとすると、背後から元気な声が聞こえてきた。


「あら! 鈴香ったらボーイフレンド連れてきたの? 連れてくるんだったら言ってよ~何も用意してないじゃん!」


「お、お母さん!」


 どうやらその声の主は春野のお母さんのようだ。


「さ、さ、何も用意してないけど入って!」


「い、いや、その……」


 僕は春野のお母さんに強引に家に上げさせられた。


「お名前はなんていうの?」


「伊吹碧斗です」


「碧斗くん! 鈴香と仲良くしてくれてありがと~」


 すごい元気な人だな……一緒にいるだけで疲れてきた……


「鈴香!碧斗くんを部屋まで案内してあげて」


「う、うん」


 春野は焦った顔でうなずいた。


「伊吹くん、こっち」


 僕は春野に案内ついていった。


「伊吹くん、ちょっとだけここで待ってて!」


 そういって春野は彼女の部屋と思しきところに入っていった。


……まあ、春野にも見られたくないものの一つや二つあるだろう。


 二、三分たつと部屋から春野がでてきた。


「いいよ! 入って!」


 そういわれ、僕は春野の部屋へ入る。


「ごめんね、うちのお母さんちょっと強引なんだ」


 ちょっとどころじゃないけど。


「別にいいよ、僕もその強引さに流されちゃったし」


 そういって僕は部屋を見渡す。春野の部屋は、人形がたくさんおいてあり、かわいい感じで、いかにも女子部屋って感じだった。


「あの、あんま部屋みないで……」


 春野が恥ずかしそうに言った。


「あ、悪い」


 別に変だとは思わないけどな。


 しばらくすると、春野のお母さんが入ってきた。


「どうぞ、遠慮なく食べてね」


 そういってお菓子を出してきた。


「あのね、鈴香がボーイフレンド連れてくるなんて初じめてなの」


「そうなんですか」


「鈴香ってときどき抜けてるとこあるじゃない? だから鈴香がなにかやらかさないように、見張ってあげて!」


 もうすでに何回かやらかしてるけどね。


「ちょっと! お母さんはもうでてって!」


 顔を真っ赤にしながら春野はお母さんを追い出した。


「春野」


「な、なに?」


 さっきからちょっと気になっていることを聞いてみた。


「春野って男友達いないわけじゃないだろ? 家とかで遊ばないの?」


「ただ家に呼ぶほど仲のいい男子がいないってだけだよ」


「そうか」


 じゃあ春野と一番仲のいい男子は僕ってことか。ふーん。


 それから適当にしゃべって時間をつぶし、今度こそ帰ることにした。


「今日はありがと~またきてね!」


 いつまでも元気なお母さんだな……


「はい、機会があれば、ぜひ」


 もう空は赤色に染まっていた。


「それじゃ、じゃあね春野」


「うん! ばいばい!」


 そういって僕は帰った。


 男子で一番春野と仲がいいのは僕らしい。

 その事実をちょっと嬉しく思っている自分がいるのはどうしてだろう。



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