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第2話

春野のドジっぷりを見せつけられたら日の次の日の朝。僕が教室に入るとクラスメートの騒がしい声が聞こえてきた。


 僕は自分の席につき、ちらりとその騒がしい奴らの方を見る。


 どうやらその中心には春野鈴香がいるようだ。


 随分と人気者なんだな、あいつ。


 確かに今の春野は誰にでも優しく接し、元気で人なっこい性格の優等生だ。しかも(圭吾が言うには)美少女。


 それだけいろいろなものを持っていたら人気者にもなるだろう。


 そんなことを思いつつ、読書をはじめる。


 読書をはじめてしばらくすると、僕の横に人の立つ気配がした。春野鈴香だ。


「……何か用?」


 昨日あんなことをいって別れてしまったため、少し声のトーンを低くする。


「き、昨日のことなんだけど……」


 そういって春野はなにやらもじもじしている。


「かばんとってくれてあ、ありがとう……」


 ……今日はやけに素直じゃないか。


「それをすぐに言え。」


 僕はぶっきらぼうに答える。


 すると僕の答えが不満だったのか、春野は眉をひそめた。


「伊吹くんも私に何か言うことあるんじゃい

 の?」

 

 そこまで謝らせたいか。しょうがない、確かに昨日は冷静ではなかった。


「……昨日は言い過ぎた、悪い。」


「それをすぐに言ってよ」


 そういって春野は自分の席に帰っていった。


(は、腹立つ……)


 なんだあいつ? 確かに僕も昨日は口を滑らせたところもあったがもとはといえばあいつが悪いだろ!


 僕がひとりでイライラしていると、圭吾が話しかけてきた。


「よう碧斗、お前春野さんと何話してたんだ? おまえら知り合いだっけ?」


「知らんあんなやつ」


 僕は投げやりに答えて読書を再開する。僕が不機嫌なのを察したのか、圭吾はどっか行った。


ーーーーーーーーーーーーーー


「席替えするぞー」


 担任の一言で、クラス中から喜びの声が上がった。みんな嬉しそうだな。


 僕? 僕は席替えには興味ないね。

 どこの席だろうが誰の隣だろうが僕は基本的に人としゃべらない。

 まあ、春野の隣は勘弁してほしいね。

 毎日イライラするのは疲れる。


 席替えはくじで行われた。男子から席が発表されていくようだ。

 そんな中僕は、窓側の一番後ろというとてもいいポジションをゲットしていた。


 男子の移動が完了すると、次は女子の席が発表されるようだ。 

 特に女子の席にも興味ないため、新しい席で読書をはじめる。


 女子の席が発表されている途中で、

「春野さんの隣は俺がもらう」

「いや僕が」

「俺、春野さんと隣になれたら結婚するんだ」

という声が聞こえてきた。春野は男子からも随分と人気があるようだ。


 まあ、あいつがどこの席になろうが、僕には関係ないんだけどね。


ーーーーーーーーーーーーーー


 おっと、読書に集中しすぎたようだ。席替えはもう完了している。そして僕は隣の席を見て固まった。


 そこには春野鈴香がいた。


「な、何で君がここにいるの?」


 僕は恐る恐る尋ねる。


「ここ私の席だからにきまってるじゃん」


 ……なんてこった。まさか僕が春野の隣になるなんて……


 僕は大きなため息をついた。


 そのため息が聞こえたのか、いかにも不服って感じで話しかけてきた。


「何?」


「いやほら、君の隣は苦労しそうだなーって思って。かばんとか木の枝にひっかけそうだし。」


 僕は皮肉をまぜて返事をした。


 すると、春野は頬をふくらましていった。


「さっきから君君いってるけど、私には春野鈴香っていう名前があるんだからその呼び方やめて」


「……わかったよ、春野」


 春野は満足げにうなずいた。


 僕は毎日こんなふうに言い争いをするのだろうか……


ーーーーーーーーーーーーーー


 同じ日の昼休み、春野が話しかけてきた。


「ねぇ、伊吹くんってあんまり人としゃべらないよね。ぼっちなの?」


 なんて失礼な女だ。


「友達くらい、いる」


「へぇ~? ちなみに誰?」


 こいつ、絶対信じてないな。


 僕は席替えで運悪く最前列の席になってしまったかわいそうな幼なじみを指差した。


「えっ?! 鏑木君?」


 春野は目を丸くした。


「意外か?」


「だって、伊吹くんと鏑木君だとなんていうか、タイプが全然ちがうじゃん!」


「幼なじみなんだよ」


「そうなんだぁ~」


 噂をすれば、圭吾が近づいてきた。 


「よう碧斗、なんか俺の名前が聞こえてきた

 んだが?」 


 地獄耳め。


「春野とお前について話してたんだよ」


「春野さんと?」


 圭吾はそういって春野を見る。


「うん! 伊吹くんと鏑木君って幼なじみなん

 だなーって!」


「ああ、そのことか。確かに俺と碧斗は幼な

 じみだな。」


「なんかいいね~そういう関係って」


 春野のやつ……僕と話すときとだいぶ態度がちがうな……


「おう! 俺は碧斗と幼なじみであることを誇りに思ってるんだぜ! 俺たちがまだ小さい頃の話なんだけど「もうすぐ午後の授業だから帰れ」


 圭吾が余計なことを話さないうちに僕はさっさと自分の席に帰らせた。


 特に小さい頃の話をこいつにされるのはなんかやだ。


「伊吹くんが幼稚園のときなんかさぞひねくれてたんだろうな~」


 春野がニヤニヤしながら言ってきた。


 あとで圭吾には口止めしておこう。






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