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2話 変わったものと変わらないもの

「やっぱり様変わりしてんねぇ。なんだありゃ、空飛んでやがる! うわこっちはスライムをペットにしてるぞ。随分と変わったなぁ」


 その変わり様に感服しつつ街を歩く。

 いやあ可愛くてちっちゃい、それでいて立派な武器を持っている子になって視線がこれでもかと集まる集まる。


 ま! あっちの方は転生特典とかそんな感じでビックだろうがな!


「よーしどれどれ〜」


 近くにあった公衆便所に立ち寄り、今初めて自分のイチモツを確認する。


「……うっそん」


 あるのかないのか分からないレベルのミニマムサイズだった。最早ここまで来ると用が足せるのかどうかの問題だ。

 そういえば小さい子は正義とか女神に豪語してたっけ……ここまで小さくしろとは言ってねぇよ……。


「おいおい? 女の子が男の用を足す場所に来るなんざどんな思考をしてるんだァ?」


 ……如何にも悪そうな男二人組が用を足しに来た。と思えば即座に突っかかってくる。

 治安の悪さは相変わらずか。世界を救っても人の醜い心までは救えないってね。あっはっは。


「何ニヤついてんだゴラァ!」

「うぶっ!?」


 えぇええ!? いきなり殴ってきたよこの人!? 流石に昔でもそんな荒んだ人は居なかったぞ。


「ちょっと待って! 俺は男ですって!」

「あぁん? ケツがあんだろケツがよぉ!」「可愛けりゃなんでもいいわボケェ!」


 ダメだ、コイツらは言葉こそ通じているけど性欲のまま生きるモンスターだ。

 こんな身体になってしまったからかステータスは貧弱だし、体格も貧相だし、そんなんじゃ自信も出てきやしない。


 そして床に這い蹲る俺を二度蹴り飛ばした。


「うぎゃっ痛いっ!」


 このまま何も抵抗しなかったら俺、どうなるのかな……。


「そろそろイイかなァ?」


 髪を掴んで急な角度で上げてくる。


 苦しい。痛い。


「うひょー痛みに耐えるその顔、可愛い!」


 身体中が熱い。魔力に近い何かが身体中に張り巡らされているようで……空気に触れるだけで痛い。


 ……いや違う。これは魔力じゃない。あの時の力のように感じる、まさか――自爆魔法……?


 コントロールの効かないあんな危険な魔法をここで暴発させてしまったらこの二人以外にも被害が及ぶ。

 何かの弾みで発動しそうだ。触られただけでも危ないやもしれん。


「さわ……るな!」


 被害を最小限にしろ。抑え込むんだ。コントロールしろ! 要は魔法、威力の加減位はできるはずだ!


「ほっぺたは〜おぉぷにっぷに〜」


 ――ドガァアアアン!


 かくして俺は爆死した――が。


「……?」


 何故だか変わらず息をしている。

 どういうことだ。自爆魔法っていうのは生命力を代償に発動する魔法のはず。押さえ込んだ分の生命力で復活したのか? そんな話は聞いたことが無い。

 しかもここは模造品を買った武器屋だろうか? どうしてここに行き着いたのかさっぱりわからない。答えが欲しい。


 ……そう言えば怪我も無いし傷も癒えている? 背中には買った模造品がある訳だし。明らかに不審な点ばかりだ。


「……うお、さっきのお客さん!? 物音も立てずに侵入するなんてすげぇな!?」


 さっきのお客さん……? どういうことだ。何が起きた。

 とにかくさっきの公衆便所に行けば何か分かるかもしれない!


「おぉいお客さん!?」


 店を出る。するとやはりと言うべきか、公衆便所のある方から黒い煙がもくもくと立ち上っていたのである。


「いってぇええええ! くそ餓鬼がああああ!」

「なんだよあの力はよォ!」


 公衆便所の屋根は大破しており、瓦礫に二人が挟まっていた。被害はそれだけで周りにはそこまで害が及んでいなかった。


 頬を触ってきた男の片腕は丸々無くなっており、血が垂れ流しとなっている。


 騎士と思わしき人達が瓦礫を退けて救助を試みていた。


「コイツらこの前事件を起こした奴らじゃねぇか?」

「知ってる! まだこの街に居たんだ……退去命令が出てたよね?」


 どうやら彼らは過去に何かあったらしい。だからといって事件を起こした街の中でさらに事件を起こすとは中々凄い神経の持ち主だな。


「お前だよお前ェ! チビ野郎!」


 俺を指さして怒鳴りあげる。

 一気に視線が集まった。

 救助が完了されると容赦なく連行される。退去命令を無視した結果だろう。


「覚えておけェ! 必ず、必ずテメェをぶっ殺す!」


 逆恨みもいいところだ。

 爆発したのは悪かったが、あれだって自分の意思で起こしたわけじゃないし、忠告だって出したんだ。


「はぁっ……はぁっ……お客さん、もしかしてだがよ……」


 追ってきたのだろうか、店主の声がする。正体がバレてしまうとこの先何が起こるか分かったものじゃなくなる。

 もう魔導剣士及び自爆師アレストじゃあないんだ俺は。もう違うんだ。

 他の勇者パーティに居た仲間らのように面倒臭い大役を担わされたくはない。


「そ、そんな訳。ただのとばっちりですよ。顔が似ているとか、そういう感じで……にしても凄いですね〜公衆トイレがこう、シューと異例の形で崩れるなんて……あははは!」


 ギャグで緊迫した空気を和ませようと試みるが、その試みは儚く散った。


「な、なんだ今のは?」

「ちょ、ちょっと寒くなったかも.トイレトイレ……壊わされてたんだった」


 なんで可愛い子が急に寒いダジャレを言うんだ。

 そもそも生きてきた中で俺のダジャレが笑われたことなんてなかったことを今になって思い出す。


 時すでにお寿司。

 因みに寿司のネタは炙りサーモンが好きだ。

 そう言えばだが異世界にはそういう和食が無いんだもんなぁ。日本の文化(?)が理解出来なくて当然だよなぁ……。


 困惑し過ぎて自分でもよく分からないことを考えていた。


「ま、まあ……僕は此処で!」


 この場から逃げるように、行く宛もないまま走る。

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