1話 惜しい人を亡くした……
はじめまして。マグロのたたきです。
まだまだ至らぬ点が多いと思われますが、暖かな目で見ていただければ幸いです。
「じゃあ……俺死ぬから……」
「アレスト! 早まるな! 他に手段はある筈だ!」
今日を持って俺は死ぬことが決まった。とは言っても独断で決めたことなのだが。
仲間は俺を止めようとするが……それでも俺は進まなければいけない。仲間への被害は最小限に、それでいて敵勢力を殲滅する高威力。
――即ちそれが実現できるのは最大にして最強の自爆魔法だけしかない。
「やめろおおおおおお!」
「じゃあの」
俺の身体の中に湧き上がる無数の力。
俺に残された生命力を人為的に暴走させ破裂させることで作られた力である。
これが出来るのは自爆魔法の才能を持つものだけだと言われており、そのいらないとまで思った才能を今活かせるとあらば最大限活かすのが魔王討伐を命じられた勇者の役目。
転生するなら……今度こそ可愛い女の子がいいなぁ。
――ドゴオオオォオオオッ!
「アレストォオオオオ!」
まっさらになった戦場に、リーダーの声が木霊した――
―――
かくして数年に渡り栄えた魔王勢力は衰退し、世界に平和と安息がもたらされた。
そして勇者一向は賞賛を浴びたものの、誰一人として喜びの念を表すものは居なかった。
名誉贈呈の日でさえ彼らの顔が晴れることは無かった。
「……惜しい人を……亡くした。だが、俺達は彼の死を無駄にしてはいけない。彼もきっと何処かで俺達を見守ってくれている。だから前を向き新たな使命を全うすると心に決めたんだ」
剣士リベルド。勇者パーティのリーダーを務める茶髪の男性で、その腕前は過去最高であると賞賛されるレベル。
それだけではなく、人徳者でもあり多くの人から慕われており、現在は人を導く力があることから良い領主として生活している。
「魔王を討伐出来たことは本当に素晴らしい事です。……ですが彼がいなければ成し得なかった。私達よりも彼の活躍を後世に語り継ぐべきでしょう」
魔術師リーナ。絹のようにしなやかな銀色の髪を持つエルフの女性で魔王討伐時の年齢は不明。外見内面共に美しく、内包する魔力も不思議と見た目同様若々しい。
魔術の腕は国の五本指に入る程卓越しており、様々なサポートから攻撃まで幅広く使える唯一無二の魔導師だという。
現在はその腕を活かして国家魔導師長を務めているという。
「チクショウ! アイツの死に場所は彼処なんかじゃねぇんだよ! 死ぬならもっと場所を考えやがれってんだバカヤロー!」
義賊長、偽名ではあるがレイヴン。正義の為に悪を討ってきた義賊集団・トリの長を務める黒髪の若い男性。故にやや自己中心的な言動や行動が目立つが、その全ては守るべき人の為という信念に繋がる。
現在もトリの長として活動している模様。
そして、後に勇者の四人組の内の一人、魔剣の才を持って転生した魔導剣士アレスト。
魔王を倒す為に身を呈して自爆魔法を使用して勝利へと導いた一番の貢献者だと勇者らの口から語られる。
後にこれは亡き勇者にも名誉勇者の証が贈呈された異例中の異例となる。
以上が勇者の現在の記録である――
そう締めくくられていた。
とは言えこの記事が作られたのは20年程前だと推測されるが。
「へ〜死んでても名誉勇者になれるんだ」
武器屋の壁に飾られている記事を読んでいるとガタイの良いオジサンがやってくる。この店の店主だ。
「お客さん。そんな古い記事読んでどうするんです?」
「武器屋のおっちゃんこそこんな古い記事いつまでも持っているじゃあ無いですか」
「ははは。自爆師アレスト様に嘗てこの店は救われてますからね。何時までも大切にしておくつもりですぜ」
「そーかい。じゃあこれでいいか?」
カウンターに金貨が30枚丁度置かれる。
魔剣は流石に置いてなかったがその代わり俺が使っていた武器のレプリカが置いてあった為、少々高かったが買うことにした。
性能はどうやら過去の物よりも数段良いらしいので楽しみだ。
「はい丁度。毎度あり!」
俺は魔王討伐後、女神と面会し再転生を受けることになった。今度は魔王を倒した功績者としてあれからかなり変わった異世界を生きてみないか。との事で。
可愛い女の子に転生させてくれるのならと頼んだ結果、魂の関係上男の娘としてなら。という条件の下俺は新たな人生を歩みだしたのだ――
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