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砂漠の民 1

「マスター

降下に向け、オールグリーンです

進入は海側から砂漠を通るルートで行きます

計画通り、敗走している側の原住民の頭の上を通るルートです」


不毛の地に見える砂漠にも原住民はいた

そして、そんな不毛の地でも争いはある

二つの部族が戦っているらしい

敗走している集団の進行方向が、降下地点の方向を向いていることもあり、この一団を利用するプランを追加した


「マスター、彼らは後が無い状況です

我々を頼り従う可能性は8割を超えますが、それでも敵対する可能性はあります」


宇宙そらから見る限り彼らの敗走は決定的のようだ

彼らを遥かに凌駕する存在に敵対するなど考えも及ばないことだろう

それでも、こちらの想定と違う行動をとる可能性はある


「それはしょうがない

砂漠の民なら神とでも勘違いしてくれるだろう」


雪が答える前にブザーが鳴り響く

降下、開始だ

ガッと着陸艇がゆれ、マイナスGで体が浮き上がりそうになる

シートベルトにテンションが掛かり、体が強くシートに固定される

モニターに映っている俺の船がだんだん小さくなる

そして見えなくなってしまう

次に、俺と船と再会できるのは地上だ

そんなことを考えているうちに、ずいぶん高度が下がっている

これが、俺が宇宙にいる最後の時間かもしれない

いや、もう宇宙じゃないか

モニターがブラックアウトする

大気圏に突入だ



「マスター、聞こえますか」

雪からの呼びかけだ

大気圏への降下は無事完了し、マッハ7で目的地に向け巡航中だ


「雪、オールグリーンだ。判っているんだろう」


「はいマスター、着陸まで後20分です」


予定通りだな

窓の下を雲が流れてゆく

単調な時間はすぐに終わり着陸に向けファイナルアプローチにはいる。

さあ、着陸だ



着陸のショックが収まり、シートベルトが体から離れ、シートに収納される


「マスター、無事着陸です

ただちに装備の展開を開始します」


宇宙から離れても、雪がサポートし続けてくれる

でも、この雪は、本船のAIか着陸艇のAIか

一瞬迷うが静止軌道上に複数のプローブを展開し、母船とはリアルタイムリンクが成立していることを思い出す

今、話しているのも本船の雪だ

雪に全幅の信頼をおけることを確認しほっとする


「雪、この地を古事に習い『ガワール』と命名する」


古き地球の有名な油田地帯に倣った命名だ

是非とも、大油田地帯になってほしい



船体を共鳴させ、後部の大型ハッチが開いてゆく。

E型装備の作業ロボット群をまず展開する。

作業ロボットが持つプラズマ削岩機は鉱物資源の採掘用機材だ。

だが、地上で使用すれば半径50メータ程度までの範囲の有機物を全て消し炭に変えてしまう。

この惑星の生物に対してはオーバースペックな兵器になる。


作業ロボットが確保した空間に研究用プラントを展開する。

研究用プラントが固定され、着陸艇とケーブルで繋がれる。

着陸艇から研究用プラントにエネルギー供給が開始される。

着陸艇のエネルギーでプラントの起動が始まる。


これで研究用プラントに着陸艇のエネルギーを注入することでプラントは3ヶ月間稼働することができる。

その間に宇宙で確認した通りの資源が存在するか確認を行い、資源を採掘し、採掘した資源の品質が期待通りか確認する。


半日が経過した。

研究用プラントへのエネルギーの注入が完了したようで、燃料供給ケーブルが着陸艇に収納される。

自立活動が可能になった、研究用プラントが3つに分離する。

そのうちの一つが移動を開始する。

掘削用モジュールだ

2時間ほどで移動を完了する。

先端にドリルがついた採掘用パイプが現れ、あっという間にドリルが地下に消えていった。

原油の確保。

エネルギー元としても、製品用原料としてもまずは原油の確保が必要だ。

採掘用モジュールには是非、あたりを引いてほしい。


第三惑星に着陸してから3日たった。

この3日間、作業は順調に進んでいる。

敵勢生物も現れておらず、作業を次の工程に移行する。

警備用に展開した作業ロボットの1分隊を本来の鉱物資源の採掘に投入する。

合わせて、研究用プラントから採掘用モジュールを分離し、作業用ロボットと共に鉱石の採掘に当たらせる。

作業用ロボットが先行し採掘用モジュールが移動を妨げる障害物を排除してゆく。

一週間も待てば、採掘現場にたどり着くはずだ。


この単調な砂漠から離れ、王国への潜入調査を始めるために必要なタスクの半分は予定通り進んでいる。

問題は、想定通りこちらに向かってくる原住民だ。

やはり彼らは、敗走の民のようだ。


監視用ドローンで見る限り、勝者の原住民の追走はない。

集団の規模としても勝者の半分程度はあり、勝者も殲滅戦を挑むほどの戦力差はない。

であれば、1週間もすればこちらにたどり着くだろう。

彼らは、何を思いこちらに向かっているのだろう。


「雪、この三日間で、こちらに向かってくる原住民について判ったことを教えてくれ」


「はい マスター

上空のドローンから降下させた、調査体は寝入っている原住民の三体に寄生できました

彼らの、脳波のスキャンと会話情報の収集から、言語解析を進めています

脳の言語処理モジュールの内、読解・文法部分は第132星系の住民のパターンと

65%マッチしました。

そのパターンをベースに解析は完了しています

単語・音声情報は取得が完了していませんが、彼らが到着するまでには70%の一致率となる言語変換ルーチンが作成可能です」


「また、彼らは、降下する着陸艇を神と船と呼んでいるようです

神から与えられたこの地を奪われつつあることで、神罰を恐れてもいますが

それ以上に、救済者として神がこの地に再び降臨したと信じたいようです」


雪の答えを聞く限り、彼らとも邂逅はプランAでいけそうだ。


「雪、彼らが来るまでにプランAの詳細を詰めておいてくれ

それと、我々を神と信じるよう奇跡を一つ明日にでも披露したい

なにが良いと思う」


神の奇跡は必要だ。

今は、敗戦の手詰まりもあり、神にすがるためこちらに向かっているが冷静になれば違う考えに至るかもしれない。

それでは困る。

盲信させたまま、是非ここまで来てもらいたい。


「はい マスター

彼らは、水が乏しいようです

ピンポイントで彼らの回りに大型の氷雨を降らせれば、神の御心が判るのではないでしょうか」


「雪、それは良いアイデアだ

砂漠に氷が降るか。驚く顔が目に浮かぶな」


翌日、晴れ渡った空に雷鳴が響き、氷雨が彼れの周りに降った。

恐れひれ伏した後、大喜びで氷を回収したらしい。

そして、揃って神の奇跡だと叫び、祈ったようだ。

これで、間違いなくここまでたどり着くだろう。

 

それから、一週間

予定通り遊牧民が近づいてきた

雪に指示した警戒エリアに先ほど到達したらしい。

ラクダで移動しているようなので、後3時間ほどで接触する見込みだ。


「雪、状況は」


「はい、マスター

予定通り言語の解析率は70%ですので、簡単なコミュニケーションには充分です

言語変換ルーチンとして構築も完了しています

また、貼りつかせたドローンから収集した情報を分析すると、族長が重い病にかかっているようです

重い病気は、状況から破傷風のようです

そして、着陸艇を空を飛ぶ神の神殿と言っています

不治の病を癒す、神の奇跡も期待しているようです。」


「よくやった

では、俺の電子脳に言語変換ルーチンをダウンロードしてくれ

3時間後には原住民とファーストコンタクトだ」


もうすぐファーストコンタクトだ

原住民に神の奇跡を見せつけ俺の下僕にしてやろう

幸い、彼らが到着する頃には日も落ちている。

照明の効果で々しい世界を作り上げてやろう

作業用ロボットは神の神兵とするか


「雪、奴らに、神の奇跡を見せるぞ

今から計画を説明するので、準備をたのむ」


ちょうど、3時間後

雪の予測の通り、遊牧民の一団が現れた。

薄明かりの中、ぼんやりとしたシルエットが浮かぶ


「雪 今だ」


ショウの始まりだ。

足元と背後から俺に光が当たる。

俺の左右に並ぶ作業用ロボットにもスポットライトが当たる。

ピカピカに磨き上げたのでスポットライトの中、光り輝いている。

俺に足元か2本の炎があがり、遊牧民の一団の前まで続いている

炎で縁取られた道の出来上がりだ

遊牧民の足が止まる。

遊牧民からは、俺の後ろに位置する着陸艇のエンジンを噴射させる。

腹に響く轟音

噴出される紅蓮の炎

遊牧民のシルエットが変わる。

全員、跪き、額を地面にこすりつけている。

噴射が停止され全ての音が消えた中、俺が厳かに言葉をつぐむ。


「面を上げよ

我が不詳の子らよ 我に何を望むか」

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