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おまけ2 バトンタッチ



 「リディア、みんなが待っているぞい」

 「はーい。神父様」


 神父様に手を引っ張られ私は真っ白な廊下を歩いていた。

 病院のような、はたまたどこかの神殿のような、はっきりしない不思議な空間。

 ちなみにここ、どこだがさっぱりわからない。わかるわけないだろ。

 はじめは孤児院のどこかかと思ったが、うん。こんな真っ白な空間、孤児院であるわけがない。


 「この部屋にみんながいるからのぉ」

 「はーい」


 神父様は一つの扉の前で止まると、私をその場に残し去っていった。

 たぶんこれは夢の中だろう。夢でなければ、私はもっとあわてふためいていることだろうからね。

 ならば私は夢にあらがわず、なされるがままに行動するべきだ。 


 私は神父様に言われた通り、みんなと言われる人が誰を示しているのかも考えず、その扉を開け……


 ドゴォン


 開ける前に、部屋の中ですごい爆発音がした。



 「はぁあぁああああ!?」



 どんな展開だよ!

 急いで扉を開けてみれば、黄緑色の煙が部屋から噴き出す。

 ほんとにどんな展開だ!!!

 ていうかけむい、けむいっ。


 「うぇっほぉ。なにこれ!?」

 

 煙のせいで視界が悪い。

 手で煙を仰ぎながら、部屋の中に入った私は唖然とする。


 「は!?アルト、ソラ、ジーク、リカ、ギル…と誰かわからない黄緑色の髪の美青年!?」


 そう。

 そこには今並べ挙げた人物が倒れていたのだ。

 外傷はとくになく、みんな眠ったようにぐったりとその場に倒れている。

 何この状況。さっぱり意味が分からないんですけど!?

 

 とりあえず一番近くにいたソラを抱き起す。


 「ソラ!ソラ、しっかりっ!」

 

 頬を叩けば、彼の顔が不快そうにゆがむ。

 生きていることにほっとしたところで、ソラは目を開けた。


 「ソラっ。大丈夫!?いったいなにが…あたたたた。なひすふの!?」

 

 はい。まったくもって意味がわかりません。

 ソラは目を覚ますや否や、私の頬をつねりはじめたのだ。しかも無表情っ。

 いつものツッコミはどうしたの!?


 困惑している私をじっと見ていたソラは、静かに口を開いた。


 「…ソラじゃない」

 「は?」


 上から下までソラだろ。なにいってんだ。

 思ったところで彼は口を開く。


 「おれはリカだ」

 「……は?」


 ソラから放たれた予期せぬ言葉に思考が一度停止する。


 待て。

 たしかに無表情といい、口調といい、口数の少なさといい、まさしくリカだ。

 だけど、ソラだよね?

 顔も目も髪も声も体も全部、私が今抱きかかえているのはソラだ。


 しばらく頭を抱え、うんとうなずく。

 顔はもちろん慈愛に満ちつつ、子供に言い聞かせるような表情でね。


 「……ソラ、あんたがツッコミ役に不満を持っていたのは知ってたわ。でも急なボケはやめようね?びっくりするから」

 「いや、ツッコミ役に不満があったとしてもボケたりしねーよっ!」

 「あたっ!?」


 後頭部への痛みと声に驚き後ろを見れば、なんということだろう。私の背後には目をつり上げたギルが立っていた。

 ソラ並みのキレキレのツッコミで私の頭を叩いたのはまさかのギル!?その真実に戦慄する。

 ちょっと泣きそうなくらいショックだ。


 「ギ、ギルが私を叩いた…?あの、おねえちゃんっ子のギルが……反抗期…」

 「いや、おれはソラだから!?」

 「そうだよ!リディアおねえちゃん。おれはこっち!」


 きゅっと腕になにかが巻きついたのを感じた。

 困惑しながら腕に巻き付いたそれを見た私は、今度は気絶しそうになる。


 「…は?リカが、キラキラ上目遣いで私の腕に巻き付いて…え?」


 いつも無表情、無表情でないときはほぼ「プフっ」とバカにしたような笑みを浮かべているはずのリカが、きゅんきゅんキラキラの笑顔で私を見つめていたのだ。

 不覚にも胸がきゅんと高鳴り、女子として負けたような気になる。


 「リカがヒロインに対して下克上を…完敗です」

 「いやリディアおねえちゃんなに言ってるの?おれはギルだよ!」

 「おい。おれの顔と声と体でやめろ。全体的にやめろ」

 「うわー。リカ、こんな長文しゃべれんだな」


 感心した様子で現れたのは、アルトだ。

 いつものブラコン危険オーラはとこへやら。かわりにどこか飛び蹴りをしたくなるような雰囲気を彼はまとっていた。

 それでもってアルトはリカに対してこんな友好的ではなかった。むしろ、険悪だった。つまり、こいつの中身もきっとアルトではない!


 「私はわかるぞ。お前は、だれだっ」

 「いや、私はわかるってわかってねーだろ。ジークだよ」

 「はぁぁ」

 「ため息ですませるのやめろっ!?なんかおれにも言うことあるだろ!」


 さてガヤガヤと周囲がうるさい。

 聞きなれた口調を別人の声で聴いているのだ。頭が混乱してきた。


 とりあえずわずか数分のうちに起きた出来事を整理する。

 うん、はい。答えはすぐに出た。



 もしかしなくても、これって絶対に中身が入れ替わっている展開だよね?



 「はいはい、みんなリディアから離れて」


 

 なんだこの二次元的展開と混乱する私を、そう言って抱き上げ、わいわい騒がしい中から私を救い出したのは…


 「誰!?」


 黄緑色の美青年だった。

 ほんとうに誰だ!?もう急展開すぎてこれ以上わけわかんないことがおこると頭がパンクするぞ。

 怪訝に見れば青年は少しムッとした顔をする。


 「リディア、わかんないの?僕なんだけど」 

 「は?一人称僕てことは、アルト!?」


 たしかに消去法でいけばアルトだ。


 「てか、その体誰の!?」


 中身がアルトだからなんてことなくしゃべれてるけど、完全誰こいつ状態だからね。

 体が変わってもそれほど混乱していないということは、アルトはきっとこのからだの主を知っているのだろう。

 そう思ったのだが、


 「知らない」

 「し、知らない!?」


 まさかの知らないだと!?

 私は他4人を見る。


 「みんなも知らないの!?」

 「知らない」

 「はあっ!?」


 つまり、今も目覚めないジークの体の中に黄緑色の人の魂というやつが入っているわけで…うん。なんてこったい。


 「ていうかどうしてこんなことに?」


 状況をさらに整理しよう。頭を抱えながらも、私は皆に問うた。

 すると彼らは各々、口を開く。


 「なんかこの部屋に行くように神父様に言われて」

 「そしたらこの黄緑頭の男がいて」

 「おまけ第二談よ~っって言って、手に持っていた箱を開けて」

 「その箱から黄緑色の煙が出てきて、気づいたらこうなってた」

 「……クソオカマ、目を覚まし次第殺す」


 最後だけめっちゃ物騒な言葉が聞こえたんですけど。

 物騒な言葉を放った人物――ソラは、無表情ながらもその頬に青筋を立てていた。


 「いやいやソラ、顔怖いって。いつもみたく天使スマイルでツッコミをして?」

 「リディア、それおれじゃない。つーか、おれがいつ天使スマイルでツッコミをした!?」

 「あ。リカか。ナイスツッコミよ、ギル…じゃない、ソラ。あぁあああ、まぎらわしっ」


 もう頭がぐっちゃぐちゃなんだけどっ。

 私の頭からはもくもくと煙があがっていることまちがいなしだ。


 「大丈夫?リディアおねえちゃん」

 「お前、すっごいな。頭から煙が出てるぞ?」


 そんな私を心配そうにリカ…いいえ、リカ(ギル)が上目遣いで見つめ(私より背が高いのでわざわざ背中を丸め小さくなっての上目遣い!なぜそこまでする!?)、アルト(ジーク)がバカ笑いしている。

 普段は絶対にしないであろう顔を2人がするものだから、余計に頭がパンクである。


 とりあえず、ジーク。お前もう恋愛相談にのってあげないからな。おぼえとけよ。


 「ていうかみんな危機感とかないの?」

 

 もとの体にもどれなかったらどうしよう、とか。

 のんきな5人に問いかければ全員首を横に振る。マジかよ。


 「だってこれどうせ夢オチだろ?中身入れ替わるとか現実でありえないし」

 「ほっとけばなおるだろ」

 「普段はリディアおねえちゃんを見上げることが多いから。見下ろせるこの体、好き」

 「元の体に戻る方法はあの黄緑バカが知っている。だから今は別にこの体のままで問題ない」


 実に彼ららしい回答である。

 私だけが混乱してバカみたいじゃないか。


 そういえば黄緑さん(アルト)はなにも言っていないな。

 そう思いアルト…の魂が入っている黄緑頭の青年を見ようとしたところで、背後から大きな腕にぎゅっとつつみこまれた。


 「い、いったいなに!?」

 「ふふ。リディア、まぬけな声だね」


 声こそはちがうが、このセリフは確実にアルトである。


 「ちょっと急になにすんのよ!」

 「いつもより体が大きいから、リディアがさらに小さい。ずっと僕の腕の中に閉じ込めていたい」

 「はあ!?」


 意味の分からない言葉に少し頬が熱くなる。

 なぜかソラ(リカ)リカ(ギル)からの視線が痛いので、私は「離せ~」と暴れるが、こいつ大人パワーで私はなす気ゼロだ。


 ギル(ソラ)は頭を抱えている。

 ちなみにそこ!アルトぉ(ジークぅ)!「今度エミリアにしてみよ」とか言ってメモするな!これをエミリアにしたら絶対に背負いなげエンドだぞ!?


 「って、いいかげん離せ!アルトはいつまで私をぎゅっとしているの!」

 「いつまでも」

 「い、いつまでも!?」


 こいつ元の体に戻る気ないのか!?

 アルトの言葉に驚愕していると、彼は不満げに頬を膨らませる。うわー、アルトの顔じゃないかつ大人の顔だから違和感しか感じない。


 「もちろん元の体には戻るよ。たとえ中身は僕だとしても、誰かもわからない体が永遠にリディアに触れるなんて嫌だ」

 「うん。なら今から触れるのやめようか?」

 「やだ」


 駄々っ子か。 

 もうアルトが満足するまで抱きしめられてよ。

 

 あきらめた私であったが、

 

 「アホ。あきらめるな」

 「ぐえっ」

 「は?やめてよ」

 「ぐえぇっ」


 ソラ(リカ)に腕を引っ張られて救出され……たらよかったのだが、友達大好きのアルトが私を離すわけもなく。

 黄緑さん(アルト)に胴体をつかまれ(というか抱きしめられ)、ソラ(リカ)からは腕を引っ張られ、現在の私胴から上と下で横から真っ二つにされそうな感じになっている。


 たしか前もこんな目にあったよ!?

 この2人どんだけ私を裂きたいの!?


 胃が口から出そうになる私の頭上で2人は紫電を散らす。

 そのまま紫電で感電しろォ!


 というか、他3人助けてよ!?

 救いを求め私は3人を見て、ほっとした。


 「…女って、ひっぱられたらうれしいのか?」とかふざけたことをのたまっているアルト(ジーク)はあとで殴るとして、ギル(ソラ)は「ちょっとあんたどうにかしてくれ!」と今も寝ているジーク()をゆすり起こし、リカ(ギル)は扉に向かって「おまわりさーん。この変態をつかまえてくださーい」と叫んでいる。

 なんていい子(ジークを除く)たちっ。


 痛みにぐえぐえあえぎながら、そんなことを思ったときだ。


 勢いよく部屋の扉が開かれた。

 なんだと思い、扉の方を見てみれば、部屋の中に警官の恰好をした青年と少年の2人が入ってくるではないか。

 え。なにこの急展開。


 彼らは黄緑さん(アルト)ソラ(リカ)にひっぱられている私を見つけると、頬に青筋を立てたり、頭を抱えたりと、各々反応を示す。

 そうしてつかつか歩きながらこちらへ向かってきた。


 「クラウス!貴様、とうとうヒメに手を出したなっ」

 「いくらクラウスさんでも許されませんよ。今の俺達、警官らしいので逮捕しまーす」

 「は?え、僕クラウスって人じゃないんだけど」

 「はいはい、その言い訳は聞き開きました」

 「というかいつものオカマ口調はどうした。違和感がすごいぞ」

 「はあ!?」

  

 ヤクザにしか見えない紺色オールバックの眼鏡イケメンと、ベージュ頭の無気力系美少年は、黄緑さん(アルト)の腕を片方ずつつかんでずるずると扉の外へとひきずっていく。

 アルトは混乱しているのかめずらしくなされるがままである。


 ていうか待って。

 さっきメガネがヒメって言ったけど、まさか私のこと!?


 「それでは、ヒメ。またなにかありましたらお呼びください!」


 眼鏡はとびきりの笑顔で私にほほえむ。

 うん。確実に彼の中では私=ヒメだな。でもどうして私がヒメって知っている!?ていうかあの人たちだれ!?知らないんですけど!?

 混乱していると、彼らは黄緑さん(アルト)をつれて部屋を出て行ってしまっていた。

 

 「あちゃー、聞きそびれちゃった……じゃないよ!?アルトつれてかれちゃったよ!?」

 「リディア、いますぐ兄様を取り戻しに行くぞ!」


 私とギル(ソラ)は急いでアルトの救出にむか…おうとしたのだが、そんな私の腕を右がリカ(ギル)、左をソラ(リカ)がつかむ。

 つまり、助けにいけない!


 「取り戻しに行かなくてもいいだろ」

 「そうだよー。リディアおねえちゃん、おれといっしょに遊ぼ?」

 「ぐふっ。破壊力が…」

 「り、リディアーーーっ。しっかりしろ!」

 

 無表情であっても天使には変わらないソラ(の見た目のリカ)に、キラキラきゅんきゅん上目遣いの美少女(男)リカフェイスのギルに見つめられ、私は吐血する。


 「日頃の行いが悪いからしっぺ返しがきたんだな。ほっとこうぜ」


 にやにや笑いながらそう言うアルト(ジーク)は、絶対にあとでアルト(アルト)に痛い目にあわされるにちがいない。

 なんとかもちなおした私は吐いた血を拭い、声高々に叫ぶ。


 「もう!ソラ、リカ、アルト!ギルを見習いなさい!アルトをつれもどしにいくわ……ん?あれ、頭が混乱してきた」

 「リディア、おちつけ、今おれたちは中身入れ替わってんだよっ」

 「あーーー。まぎらわしっ!ほんとなんなのよこの入れ替わり展開!!!」


 叫んだときだった。


 「あら?お気に召さなかったかしら?」


 それまで寝ていたジーク()が起きた。

 え、いきなり!?

 

 さらなる急展開に混乱していると、ジーク()がジークにはにあわない蠱惑的な笑みを浮かべる。

 ぐ、ぐっふ。不覚にもジークの見た目にどきどきしてしまった。


 「ふう。あのバカどもは行ったようね。寝たふりしといてよかったわ」


 彼の言うあのバカどもとは確実にさっきの2人のことだろう。

 そうだ。忘れていたが、アルトがさらわれたのだ!

 

 「ちょ、よかったじゃないから!あなたのせいでアルトが連れていかれちゃったんだけど!」


 つめよれば、ジーク()はきょとんと首をかしげる。

 ちなみにアルト(ジーク)がさっきから、「おれの体でオカマ口調やめろー」と叫んでいるが、無視だ無視。


 ジーク()は怪訝に私を見る。

 「リディア?あんたなんでこんなところに?」って感じで。

 私だってなんでこんなところにいるかわからないわ!


 「遊んでないで修行をしなさいって言ったで……」


 いいかけたところで、彼ははっと目を見張った。

 そして納得したようにうなずく。


 「あー、あなた1章のリディアね。そうだわ、思い出したわ。これはおまけ2弾だったわね」

 

 はあ?である。

 意味ありげにうなずくジーク()を怪訝に見る。なにいってんだこの人、と。

 そのときだ。


 「っざけんなよ、クソクラウス!」

 「おっと」

 「おれの体―!」

 

 思い切り扉が開かれ、そこから黒髪イケメンがジークに向かって跳び蹴りをしてきたのだ。

 ジーク()はその蹴りをしっかりと手で受け止める。中身がジークであれば絶対に無理だっただろう!顔面直撃だったにちがいない!胸を張って言えるぞ!


 突如部屋に現れた、黒銀色に輝く髪の赤い瞳の下に涙ぼくろの美少年(解説なっが!)は、ジーク()の胸倉をつかんで揺さぶっている。


 「お前さっさと体をとりかえしてこいっ。なにが、あのバカどもは行ったようね…だ!てめぇの体がねーと第2章はじまらねーだろ」

 「ったく、師匠に暴力振るうなんて。あんたあとでお仕置きだから」

 「あぁん?」

 「はい、師匠に対する態度がなってない。お仕置き追加ねぇ~」

 「いやちょっと、話進めないでよ。結局あんたたちなんなの?」

 

 話しているところに横やりをいれるようで申し訳ないが、わたしは彼らに問う。


 すると黒髪少年が怪訝に顔をゆがめる。

 そして彼はなに言ってんだこいつ?と、私をあごでしゃくりながらジーク()に目で訴えていた。なんか腹立つな。

 ジーク()はバカにした風に黒髪少年を笑う。

 

 「あんたほんとバカねぇ。今はまだ1章よ?リディアがあたしたちのこと知ってるわけないでしょ」

 「ああ、たしかにそうだな」


 まてまて、黒髪は納得したようにうなずいているが、まて。


 「え。待って、私2章?になったらこのオカマさんと黒髪暴力少年と知り合いになるわけ!?」


 いまの私はかなり顔が引きっていることだろう。

 もしかしてさっきの眼鏡と無気力君も2章で知り合いになったりするの!? 

 否定してくれ。心のなかで懇願すれば、楽しそうにジーク()がほほえむ。


 「あらぁ。知り合いだなんて他人行儀はやめて。あたしたち、それはそれはふかーい関係になるのよ?」

 「ふ、ふかい!?」

 「こいつに恐怖を植え付けるな」

 「あたっ」

 

 無表情にジーク()を殴ったのはソラだ。いや、ちがいますね。ソラのなかにいるリカだ。

 そんなソラ(リカ)の手には台本のようなものがあって…

 

 「まあこいつらの正体は2章に入ればわかるだろ」


 アルト(ジーク)を見れば、彼も台本をもっている。

 なんか静かだな、誰もアホ行動おこしていないな、と思ってたけどその台本を読んでいたから静かだったって訳ね。


 「そうだね。リディアおねえちゃんと離れるのはさみしいけど、魔法使い見習い編には、一応おれたちにも出番があるらしいし。ね、リディアおねえちゃん?さっさと2章に行こ?」


 そう言って私の腕にきゅっとだきつくリカ(ギル)の手にも台本がある。

 台本の題名は、『2章 魔法使い見習い編』。

 

 「ほら、お前の分」


 黒髪美少年が私に台本を差し出し、ジーク()が口パクで「主人公らしく挨拶してっ」と言う。

 みんなも私の方を見てうなずき、挨拶をするよう促す。

 私はやれやれと肩を落とした。


 まだ意味がわからなくて頭のなかがぐるぐるだが、ここはヒロインスキルである順応の早さで、挨拶というものをしてやろうではないか。


 「1章読んでくださってありがとうございます。2章でもはちゃめちゃすることでしょうが、やさしい目で見守ってください!それではみなさん、2章で会いましょう~」

 

 そうして私たちはだれかにむかって手を振ったのであった。








 「いや、お前ら兄様のこと忘れてるだろーっ!」


 そんなギル(ソラ)のツッコミが聞こえたのは、私たちが手をふってからコンマ1秒後のことであった。

 




祖父母のいえに帰省したら、まさかのネット環境がないということで(笑)、2章は1月4日以降からスタートになります。

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