62.報告書
天使の説明と報告書になります。
★★★
天使とは……の説明の前に。
はじめに、
この世界は神によって創られている。
神が創る物語。それがこの世界である。
世界に生きる者はすべて神の創る物語の登場人物。
登場人物の生涯いわば運命は、神によって生まれたときからすでに決められている。
人々は知らず知らずのうちに神によってつくられた運命――物語に従って生き、そして一生を終えるのである。
しかしその運命が、まれに狂うときがある。
運命が変わるとき、変化してしまった運命を修正する者として、神の遣いが天から降ろされる。これが天使である。
本来死ぬはずでない人間が死にかけたとき、逆に本来死ぬはずの人間が生きることになった場合、天使が遣わされ、本来のあるべき物語…その人の運命を正す。
死ぬはずではない人間は生きる運命に戻され、死ぬはずの人間は運命通りに死ぬ。
また近い未来の運命に変革の兆しを察知した場合も、天使は遣わされる。
その場合は変革に至る可能性のある原因人物並びに中心人物を観察対象として、運命の変革の可能性がないか観察をする。
観察の結果、今後運命が変革される可能性が高いと判断された場合、天使はただちにそれを神に報告し、判断を仰ぐ。
そうして場合によって天使もしくは神が直々に運命を修正するべく下界へと降りるのだ。
神を敬う教会、神に愛されし光の一族の末裔(別名、主人公と呼ばれる者)と連携をとり、物語並びに運命の変革を防ぐことも天使の職務である。
★★★
報告書
天使ナンバー13895 ルル・エルトワンヌ
観察対象者 リディア・ミルキーウェイ
約1年を通しての観察の結果をここに記す。
1つに、観察対象者は6歳以前の記憶を失っていることがわかった。
自身がこの世界の主人公であるということは自覚しているようだが、自らに課せられた使命は忘れている模様。
原因として、今より11か月15日前に天空神殿で観測された、禁呪並びに時の魔法が関連していると考えられる。
2つに、観察対象者はこの世界が2回目であることに気がついていないことがわかった。
しかし自身の運命・結末については、一部偏りと誤りがあるものの理解をしていることがうかがえた。
3つに、この世界が2回目であることに気づいている――1回目の記憶を持つ者が、少なくとも2名いることがわかった。
こちらについては、6年11か月15日前に観測された、禁呪並びに時の魔法が関連していると考えられる。
1名は精霊。
気配遮断能力により逃走。聴取叶わず。気配遮断能力を巧みに使い、孤児院に潜入していた模様。仲間がいる可能性が高い。
もう1名は古の魔法使い。
こちらは秋ごろに魔力を感知し接触を試みるも、魔法使いの発動させた隠蔽の魔法により聴取はおろかその姿を見ることすらかなわず。その後魔法使いと接触するべく調査を続けたところ、魔法使いは隠蔽の魔法、目くらましの魔法、結界の三つの魔法を常時並行発動していることが判明した。接触・追跡は不可能であると断言する。
感知できたのは2名のみである。が、1回目の記憶を持つ者は他にも複数名いると推察する。
最後に、本来あるべき運命に変容はあるものの、運命通りに観察対象者が古の魔法使いに攫われたことから、最終的な結末に影響はないと考えられる。
よってこちら側から関与はせず観察を続行することを推奨する。
なんだかわかりずらくてすみません。
今の段階ではこれを読んでも、どういうことだ?となるかもしれませんが、後々、ああこういうことね…となるように作っていく予定ですので。




