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53.手紙は教育上見せられません。


 事件は次の日に起きた。

 神父様から6通(送り主は誰か言わなくても、わかるでしょ)の手紙を受け取り、ギルと手をつなぎながら部屋に向かって歩いていた時のことだ。


 …なんか最近ギルと手をつなぎながら行動するのが日課になってるんですよね~。

 おねえちゃん大好きな弟ができた気分でとても幸せ。

 だけれども、幸せだ。なーんて言った直後にその幸せが終わるのはお決まりのパターンでして。


 「やめて!!私のギルを取らないで!」


 ミルクが現れた(RPG風)。

 ミルクは顔を真っ赤に染め上げ、ツインテールを角のように逆立てている(RPG風)!

 って、ふざけている場合じゃない。

 

 「えーとねミルク。ギル取らないででっていうか…そもそも取った覚えがないのですが…」

 「嘘よ!」

 

 嘘って…。

 絶賛困り中の私と、怒りに震えるミルクの間に入ったのはギルだ。

 

 「ミルク、やめて。リディアおねえちゃんが困ってる」

 「……っ。ギル!あなた、騙されてるのよ!」


 取らないでの次は、騙されている。

 私は詐欺師かなにかでしょうか。

 当然ながら私にギルを騙した覚えはない。しかし詐欺の言葉を否定しようとしたところで、ふと気が付いた。

 待てよ。リディアとしてはギルを騙してないけど、ヒメとしてはギルを騙してきたぞ。


 「ほら!その女の顔を見て!ギルのことを騙してた自覚があるのよ!」

 「ミルク。知らないかもしれないけど、リディアおねえちゃんはバカなんだよ?身に覚え有りみたいな顔しているけど、ミルクの思っているようなことをおねえちゃんはしてないよ」


 ギルは困り顔でミルクをやさしく諭す。

 うん、でもさ私今さりげなく、かわいいギル君にディスられた気がしたのだが、気のせい?気のせいだよね!?


 「そんなわけないわ!あなた、ギルの他にたっくさんボーイフレンドがいるのに、ギルに色目を使って、彼を騙してるんでしょ!私わかるんだから!」

 「は?ボーイフレンド!?」

 「ほらね、ミルク。このとぼけ顔を見て、おれの言った通りでしょ?」


 ギルの言葉を聞いて、ミルクは私の顔を再度見る。そして悔しそうに、「たしかにこのまぬけ面は…嘘をついてないわ」と納得した。


 この顔を見て納得されるの、腑に落ちないのは私だけ?

 もやもやしていると、ちょいちょいと袖を引っ張られていることに気が付いた。引っ張っていたのはギルだ。彼はうるんだ瞳でじっと私を見ている。


 「どうしたのギ…」

 「それで?リディアおねえちゃん…彼氏がいるって、ほんとう?」

 

 ギルぅぁぁあああ!と叫び出さなかった私を誰かほめて。


 私はギリギリと痛む頭を抱える。どうして彼は導火線を切り落とした爆弾に火をつけて持って来ちゃうのかなー?せっかく話が落ち着いたのに!?というか私の記憶違いでなければギルが率先して、導火線切り落としてくれたよね!?どうして火をつけた!?

 御覧ください。ミルクの怒りギラギラ瞳が復活しています。

 

 「いやいや、彼氏とかいないからね。私まだ6歳だよ」

 

 私は真実を述べるが、


 「嘘よ!」


 でました。ミルクの、嘘よ!

 彼女は先ほどと同じように顔を真っ赤に燃やし、怒りのこもった眼差しで私をにらみつける。


 「その手紙がなによりの証拠じゃない!」

 「手紙って、これのこと?」


 ミルクが指さすのは私の持つアルトたちが送ってきた手紙、計6通だ。

 

 「親愛なるリディアへ、愛をこめて…って封筒に書かれているの、見たわ!ふつうの友達に、愛をこめて~なんて書くわけない!それが違う筆跡で6通も!6股よ!ふしだらだわ!」

 「ハ、ハハハハー」


 表面上では困ったように微笑むが、心の中では一心不乱にサンドバッグを殴り続けている。あの馬鹿どもめ~っ。


 ミルクに指摘された通り、手紙には「愛をこめて」とばっちり書かれていた。なぜ?としか言いようがない。アルトやエミリアからはいつも愛をこめてと書かれているが、なぜ他4人は今回に限ってそんなまぎらわしいことするの!?愛をこめてデーかなにかだったのか!?なんだその日は!?

 おそらくおもしろがって書いたのだろうけれど、その悪ふざけのせいでいたいけな少女が誤解してしまったのだ。愛を込められたリディアちゃん今絶賛困り中なんですけどっ!


 私のかわいいギルも、天使な顔を青くして…

 

 「リディアおねえちゃん。おれ、7人目になる。…ダメ?」

 

 とか言ってるし。

 は?7人目?

 

 「はあぁああ?7人目って、ギルなに言ってんのよ!そもそも私、6人も彼氏いないから!」


 私はギルの肩を掴み必死に訴える。

 この6通の手紙だって送り主6人中2人は女の子だから!

 なんだ?ギルは、彼氏って言葉の意味知らないのかな?なぜに私の彼氏7人目に立候補してきた?


 「ほんとうに彼氏いないの?なら、おれがリディアおねえちゃんの彼氏になってもいい?」

 

 ほんのり頬を桃色に染めて、じっと私を見つめるギル。

 私の予想は当たっていた。ギルは確実に彼氏という言葉の意味を知らない。


 「ギルっ。なんてことを言うのよ!この女に騙されないで!この人絶対に彼氏がいるわ!」


 そして、ミルク。悲痛な顔で「ギルっ」じゃないから。

 悲痛な顔したいの私だから。

 それと彼氏がいるって決めつけないで。安未果時代もリディアも、彼氏なんて一度もできたことないから!そこ笑うなァ!

 

 「とにかく私に彼氏はいません。そしてギル、そう簡単に彼氏に立候補しないの。そういうのは特別な人に言うのよ」

 「リディアはおれの特別だよ?愛してるよ?ダメ?」

 「それは家族愛とか友愛って言うのよ。うるうるおめめで見てきてもダメだから」

 「彼氏がいないなんて、嘘よ!」

 「ミルクも、私に彼氏なんていないから。いい加減認めて」


 「じゃあその手紙の中身を見せなさいよ!」

 

 ミルクが指さすのは私が手に持つ手紙たちである。

 それでこの場がおさまるのならいいか。いいかげん疲れていた私はミルクに手紙を差し出し……た手を、ミルクに渡す寸前で止めて、急いで自分の懐にしまった。


 私から手紙を受けるとる気満々だったミルクと、同じく読む気満々だったであろうギルは怪訝に私を見つめる。視線が痛い。


 「リディアおねえちゃん、手紙…」

 「……ごめん。やっぱり、ダメ」

 「は?」


 視線がさらに痛い。

 私だってさっきまでは手紙を見せるつもりだった。内容を見てくれれば、2人もこの手紙の送り主たちが私のボーイフレンドではないとわかると思ったのだ。

 だがしかし、2人にこの手紙を見せるわけにはいかないと、私は気づいてしまった。



 だって、手紙の内容がひどすぎるんだもの。



 まだ手紙は開けてないけど、内容は大体いつも同じだから察しはつく。



 

 まずアルト。

 アルトが私に対して贈る手紙の内容は、ぶっちゃけ1週間の活動報告書みたいなもの。


 今日自分はどんなことをして、ソラがどんなにかわいくて、今日は何百回私のことを考えていたよ、会いたいです、とか。

 相変わらずのブラコンと友情を大切にしてくれてありがとうって感じの内容だ。

 この手紙を見た2人にブラコンの恐怖を植え付けたくない。

 ちなみにアルトは私が嵐に巻き込まれたり攫われたりした以降、私にも活動報告のような手紙を求めるようになった(かなりめんどうくさい)。



 次にソラ。彼の手紙の内容は私の身の回りの心配と小言。お母さんみたいな手紙だ。

 ソラの手紙は単純に、彼の小言から私が過去に孤児院でやらかしてきたやばいことが2人に露見する可能性があるので、見せたくない。

 尊敬される年上おねえさんでありたいのだ。



 ジークは、エミリアの恋愛相談。これはジークのプライバシーとプライドを守るためにも、見せるわけにはいかない。


 エミリアは、ジークをひたすらに推してくる内容だ。

 彼女は私をジークの未来の奥方にすることをあきらめてないらしい。あらぬ誤解が生まれそうなので、この手紙も当然っていうか一番見せられないじゃん!

 


 アリスは、「いつ君」についての話と、彼女が前世で好きだった漫画、小説、ゲーム、同人誌などの内容を書いてくる(暇なのかな?)。「いつ君」についてはまあおいといて、この漫画等の内容がR指定付きそうなやつばっかりでさ…うん。2人に見せられるわけがないよね!?


 

 リカはね、2~3行ほどの内容。

 寡黙なやつほど手紙では饒舌…なんてことが多いけど、あれはリアルでも手紙でもほぼっほぼしゃべらないから。

 庭に美しい花が咲いていた。お前に似ている。とかざらじゃないから。

 たかだかそれだけのために手紙を書かなくていい。リカの手紙を見せたら、2人とも手紙ってこんな短文でいいのかーって勘違いしそうだから、見せられません。




 総じて、教育上悪影響を及ぼしそうな内容ばかりなので2人には見せられないというわけだ。

 と回想をしていたら、


 「見せられないって…やっぱり、6人も彼氏がいるの?」

 

 ギルが青ざめてぷるぷると震えていた。

 でもぷるぷる震えているわりに彼の琥珀色の瞳はしっかりと私を捕えているから…うん。怖い。肉食動物に狩られる寸前の気分だよ。なぜ?


 「どうして無反応なの。まさか彼氏…いるの?」

 「い、いやいや、いないから!」

 「なら見せて?」

 「そ、それはダメ…!」

 「リディアおねえちゃん、おれのこと嫌いなんだ…だから見せられないんだ」

 「いや、嫌いではないからね!?」


 うわーん。

 ミルクより今はギルの方が怖いんですけどっ。



 いつもの「リディアおねえちゃん~。大好き~」はどこへ消えた。目がガチで怖い。すねた顔しているけど、ギル君の目が終始鋭いことにおねえちゃんは気づいていますからね!?

 

 う~、どうやってこの場を乗り切るか。

 頭を悩ませる私を鋭い声が貫いた。

 

 「ずるいっ!」


 ミルクは桃色の瞳にたっぷりと涙を浮かべ、ぷるぷると震えていた。

 

 「ミル…」

 「私はなにも持ってないのに…あなたは、友達もアオ兄ちゃんも神父様も、ボーイフレンドもいるっ。ギルまでとらないでよ。私からギルを奪わないでよ!あなたはいっぱい持ってるんだから、ギル一人くらい私に頂戴よっ!」


 やばい。と思ったときには遅かった。

 目の前にはミルクの幼い小さな手が迫っていて、ギルがこれから起ることを予期し青ざめて。気が付けば、私の体は宙に浮いていた。


 ミルクの手は、ほんの少し私の肩に触れただけだった。それなのに、ものすごい衝撃だった。

 ミルクよりも身長が大きいとはいえ、改造強化された怪力に私が抗えるはずもなく。

 まさか突き飛ばされるとは思っても見なかった私の体は、なされるがままに後方へと飛んだ。


 そして、なんということでしょうか。

 私の背後は階段!


 つまり私は階段から真っ逆さまに落下中というわけだ。ハハハー。笑えねー。


 ミルクの青ざめる顔と、ギルが必死に私に手を伸ばす姿が見える。

 だけどそんな2人の姿はどんどんと遠のいて…ようするに、固い床との後頭部ゴッツン対面の時が近づいているわけだ。


 そうして猫背で少し丸まった私の背中には、とうとう固い何かが触れた。


 きっと1秒後には全身が床に打ち付けられているのだろう。どこか他人事のように分析してしまうが、現状超やばいからね。

 

 「本編始まる前に、死ぬとか…」

 「死なないよ」

 

 はい、恐怖の1秒後。

 私の耳元で聞こえたのは、大人の色気がただよう落ち着く声だった。


 力強く暖かい腕が私を抱えこんでいる。どうやら私は上手い具合にキャッチされたらしい。ということは、さっき背中に当たった固いなにかはこの腕か。


 でもって、こーんなイケメンなことができる人は、この孤児院には一人しかいない(仮に神父様が階段から落ちた子供をキャッチしたら、腰がぎっくりするからね)。

 

 「アオ兄ちゃん、ナイスキャッチ!」

 

 顔をあげれば、やはりそうだ。

 私はヒロインらしく、笑顔でアオ兄ちゃんの首に腕を回して抱き付いた。


 「……リディア、ごまかそうとしても無駄だよ」

 「ギクッ」


 抱き付いたことでさきほどよりも至近距離で聞こえる色気のある声。

 だがその声はさきほどのように落ち着けるものではなく、静かに怒気を含んだ…ええ、はい。アオ兄ちゃんが怒っているときの声だった。

 

 「俺に抱き付いて有耶無耶にしようとしたんだろうけど、ちゃ~んとどうして君が階段から落ちたのか説明してもらうからね~」


 ぎくぎくっと再度私の肩は震える。

 

 「俺の顔を見たとき、リディアの笑顔が一瞬固まったの、気づいてるよ」

 「うぐっ」


 そうです。

 アオ兄ちゃんの言う通りです。

 わーい、アオ兄ちゃんキャッチしてくれてありがとう~って顔をあげたとき、彼の顔は笑顔ながらも目が笑っていなかったのです。

 

 どこぞの春の国の王子様を思い出した。

 やべー、アオ兄ちゃん怒っているぞ?と。

 

 まあそりゃあ子供がいきなり落ちてきたら、怒るよね。

 いや普通は怒るよりも心配するんだろうけど、なにせ私は孤児院でやらかしまくっている問題児リディアちゃんですから。

 心配 < 怒る になるのは仕方がありませんね、はい。


 だから抱きついて誤魔化したつもりだったんだけどぉ、アオ兄ちゃんには通用しなかった。

 

 「アオ兄ちゃん、リディアおねえちゃんは悪くないよ!」

 

 青ざめる私に助け船を出したのは、おめめうるうるのギルだ。

 階段から急いで降りてきたのだろう、彼の息は荒かった。 

 琥珀色の瞳を涙で潤ませ、アオ兄ちゃんに「リディアおねえちゃんは悪くない。だから、降ろしてあげて!」と言い続ける彼はまさに天使!


 「ミルクも!リディアおねえちゃんは悪くないんだから、ちゃんと言って!」

 「う、うん。今回は…私が悪かったの。もとはといえば、この泥棒猫が悪いんだけど!でも、突き飛ばして、階段から落としちゃったのは私だから」

 「ミ、ミルクっ」


 真ん中に同意しかねる言葉があったが、彼女は自身の非を認め私を庇ってくれた。ミルク、良い子!好き!


 「…リディアを、突き飛ばした?」

 

 っと、私は感動しているが、アオ兄ちゃんは違ったようだ。

 無表情に青ざめている。

 いつもにこにこ笑っているだけあって、彼が無表情なのはかなり怖い。ミルクも怯えてしまっている。

 

 安心してミルク。アオ兄ちゃんはミルクに怒っているわけじゃなくって、今回ばかりは自業自得でやらかしたわけではない私を叱ってしまった自分に罪悪感を抱き、自己嫌悪で青ざめているだけだから。…たぶんね。


 「あの、アオ兄ちゃん?私大丈夫だから?怒ってないからさ。ミルク怯えてるし、もどってきてー」

 

 おーい?と、アオ兄ちゃんの目の前で手を振ったところで、ようやく彼は気が付いたらしい。

 ハッとした後で、いつもの笑顔に戻る。

 

 「ごめん。ちょっと、意識が飛んでた。ミルク?わざとではないんだろうけど、リディアにちゃんと謝ろうね。その様子だと、君はまだ彼女に謝罪していないだろう」

 「…っ。もとはといえば、この泥棒猫が!」

 「ミルク」

 「……突き飛ばしたことだけは、悪かったわ!でも私は、あなたのことなんか大っ嫌いなんだから!6股してるのに、今もお姫様みたいにちやほやされちゃって…ほんとうに、嫌い!」

 「ミルク!」


 ミルクは真っ赤な顔で目を潤ませながら、走り去ってしまった。

 かわいい。とってもかわいいな。

 でも勘違いされたままなのは、困る。

 

 「…アオ兄ちゃん、いつまでリディアおねえちゃんを抱えてるの?」


 そんなことを思っていたら、ギルが大きな瞳でアオ兄ちゃんを見つめていた。

 そうでした。私はまだアオ兄ちゃんに抱えられたままでした。

 …あれ?もしかしてアオ兄ちゃんが私を抱えたままだから、ミルクにお姫様みたいに~って誤解されたのでは!?コノヤロー!


 「アオ兄ちゃんこれ以上ミルクに誤解されたくないから降ろしてくれない?」

 「そうだよ。リディアおねえちゃんにべたべた触わらないで!」

 

 ギルがぷくーっと頬を膨らませる。

 っていうか、べたべたって…。


 アルトといい、ギルといい。アオ兄ちゃんはただ子供と触れ合っているだけなのに。子供の目からすれば、彼はべたべた触る変態に映ってしまうらしい。かわいそ。


 「え~。でもリディアは階段から落ちたわけだからね。念のため俺がこのまま抱えて救護室まで連れて行った方がいいんじゃないかな?」

 「……ロリコン」


 撤回します。この大人の余裕でいじわるを言うから、一部の子供の目に変態として映るのだろう。自業自得だな。

 天使ギルが真顔でアオ兄ちゃんをロリコン呼ばわりするくらいだからね。


 「も~、アオ兄ちゃんそこらへんにしなよ。ギルは私だけがアオ兄ちゃんに抱っこされてうらやましいからこう言ってるんだよ?早く私を下ろして、ギルを抱っこしてあげて」


 私ってばおねえさんだから気づいちゃうのだ。

 ギルはさきほどから執拗に、アオ兄ちゃんが私を抱えていることを指摘していた。つまり、自分も抱っこしてもらいたいから、はやく私を下ろせとアオ兄ちゃんに訴えているのだ。


 私はやれやれと首をふる、けれどなぜだろう。

 アオ兄ちゃんはあきれ顔だ。

 それは私がアオ兄ちゃんに向けるはずの顔だよね。なぜ?


 「…ギル。君、俺に抱っこしてもらいたかったの?」

 「………ウン!実はおれ抱っこしてもらいたかったんだ~。だからアオ兄ちゃん、リディアおねえちゃんを早急かつ迅速におろして、おれを抱っこして~」

 「ほら、やっぱり!アオ兄ちゃん私は一人でも救護室に行けるから、そのままギルを抱っこしてあげて?」

 「……。」




 その後私はアオ兄ちゃんとそんなアオ兄ちゃんに抱きかかえられたギルに救護室まで送ってもらったのであった。


 ちなみに、思った通り怪我なんてしていませんでした!アオ兄ちゃんがちゃんとキャッチしてくれたからね!健康そのものだ!

 でも眠いから、ベッドで寝させてもらった。


 その睡眠が功を制したのか。

 起床後、適度な睡眠により冴えた頭は、すっかり忘れてしまっていた私のやるべきこと…というか絶対にやらなくちゃいけないことを思い出していた。



 「そういえば、ミルクの悪役さよなら計画忘れてたっ!」






 「ギル。年長者からの忠告だよ。リディアはかなり鈍感だ。そのキャラでいくと、後々後悔するよ」

 「…アオ兄ちゃん、ギャップ萌えって知ってる?かわいい弟だと思っていたのに、男らしい姿を見て……って、あるでしょ?」

 「そううまくいくかなぁ。敵は多いよ?」

 「7人目で結構。7人のうちの1番になればいいだけだよ」

 「ふふ。7人もいないよ」

 「でも少なくとも、おれのすぐそばに敵が一人いることは確か…だよね」

 「…誰のことを言っているのかな~」

 「まあいいよ。おれは時期が来るまではリディアのかわいい弟であり続ける。そのほうが都合がいいし。かわいい弟としてお姉ちゃんに甘えて抱きつけたりとか、役得な面もあるしね。あなたはおれとリディアが仲良くなっていくさまを、指をくわえて見ているといいよ」

 「なるほど。弟には弟の武器があるってことだね。…でも、大人には大人の武器があるって知ってる?」

 「……。」

 「ちなみに、君の言う役得の抱き付くってやつ?リディア、当たり前のように結構抱き付かれてるし、抱き付いてるよ?だから役得とか意味ないんじゃないかな?」

 「…は?」


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