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21.アルト君。お望み通り、恋バナの提供です。

 


 

 それは新しく同室となったエミリアと寝る前におしゃべりをしようと、どんな話題を振ろうかなと考えていたときのことだった。


 「突然なのですがっ。質問をしてもよろしいでしょうか!?」

 「うおっ」


 おどおどしているものの凄まじい勢いでエミリアが私につめよてきた。

 リディアちゃん、ちょっとびっくり。


 「ど、どうしたの?質問くらいいいけど?」

 「あの…私の分際で、聞くべきではないと思っていたのですが、……おねえさまが私と恋バナをしたいとおっしゃってくださったので……」


 恋バナ?

 言われて思い出した。

 そういえばアルトにエミリアと恋バナをしたいからと同室になりたいって言ったんだった。訂正するの忘れてた。


 「アルトにああ言ったのは、納得してもらうためで別に恋バナは…」

 「おねえさまは、ジーク様のことどう思っていますか?」

 「えぇー」


 一足遅かった。

 そしてまさかのジークのことを聞かれた。

 まあいつもジークと一緒にいるエミリアなのだから、この選択は妥当なものなのだろう。


 「えーと、友達だと思ってるけど?」

 「具体的には?ジーク様にどのような感情を抱いておりますか?」


 予想以上に彼女はぐいぐいと私に聞いてくる。やっぱり女子なんだなぁと実感だ。


 「具体的にね…、まあ我儘で腹立つことがほとんどだけど、いいやつだとは思ってるよ。いい意味でも悪い意味でも素直だから、嫌いではない」


 すると彼女は激しくうなずく。とてもうれしそう。でもめっちゃ首振るから、ぽろっと首とれないか心配。


 「さすがです!さすがです、おねえさまっ!やっぱり私、おねえさま以外には考えられませんっ」

 「うん、なにが考えられないのかなー?」


 私はジークのことを嫌いではないと言っただけなんですけど~?

 エミリアよ、まさか君「嫌いではない」を「好き」と勘違いしているわけではないだろうな?絶対にありえないと思うが、彼女が何を考えているのか全く見当がつかないからか、嫌な予感がする。


 ていうかこれ立場が逆だよね。

 エミリアがジークのことを好きなのは確実なのだから、ここは私がエミリアに「ジークのこと好きなのぉ?きゃー」ってする場面……


 「え。えぇぇぇぇぇ!?」

 「い、いかがなさいましたか!?」

 「エミリア、ガチであのバカジークのこと好きなの!?」

 「ひえぇぇぇえぇ!?」


 そうだ。当たり前のことのように今まで華麗にスルーしてきたが、エミリアはジークのことが好きなのだ。なぜだ、どうしてだ?あれのどこに惚れたんだ!?

 彼女は今顔を真っ赤にさせている。


 「つまりジークのことが好きで間違いない!言っちゃ悪いけど、ジーク恋愛対象としてありえなくない?どこが好きなの?」

 「わ、私まだなにも言ってないのに、どどどどうして好きだと気づいて!?」

 「いや、見てればわかるよ」

 「そっ、そんなにわかりやすいですか、私!?」


 まあ私は「いつ君」でのエミリアがジークのことを好きだと知ってたから、気づいたもなにもないのだが。うん、黙っておこう。


 「で?あれのどこがいいの?」


 おらおら吐いちゃえよ。ぷにぷにとエミリアの頬をつつけば、彼女ははずかしそうに顔を伏せる。


 「…や、やさしいところです」

 「ふんふん、やさしい?あとは?」

 「う、嘘をつかないところ……」

 「もっとあるでしょ?他には他には?」

 「まっすぐなとこ……もぅぅお願いです。勘弁してくださいぃぃ」


 とうとう彼女は布団の中に潜り込んでしまった。かわいい。

 それにしても意外とまともな理由でジークを好きになっている。エミリアの目にはジークはやさしくて嘘をつかないまっすぐな人として映っているのだ。

 私には我儘の俺様の馬鹿ガキにしか見えないけどね。


 「じゃあじゃあ今度は、どうしてジークのことを好きになったのか、いきさつ教えてよー」

 「だ、だめです!私は白状しました!今度はおねえさまの番です!」

 「へ?」


 眠れる獅子を目覚めさせてしまったようだ。

 目にもとまらぬ早さで布団から飛び出したかと思うと、私の目と鼻の先にエミリアがいた。わーお。彼女、忍者か何かですか?前髪で見えないはずの瞳が、爛々と輝いているように見えた。


 「ソラ君のこと、どう思っているのですか!?」

 「ソ、ソラぁ?ふつうに友達?親友?私の天使?」

 「天使…恋愛感情はないということですね。それではアオ兄ちゃん様のことは!?」

 「アオ兄ちゃん?前、逃げちゃってごめんなさい、でももうそろそろアルトに殺されるよ、アルトのアオ兄ちゃんへの殺気が半端ないので背中に気を付けて、かな?」

 「もはや文章なんですね…それでは、アルト君はっ!?」

 「甘えん坊のかまってちゃん、かな?」

 「……そうですか」


 3人以外に聞きたい人がいなかったのか、エミリアはそれきり質問をしてこない。

 一応身近な男子としてはまだ神父様とかいるよー?


 「おねえさまに好きな人がいないというのは好都合なのですが…アルト君に、少々同情してしまう……いいえ、これもジーク様の未来のためですので…」


 よく聞こえないがエミリアは独り言を言いながらうなずいていた。少しソラに似てるね。エミリアの新たな一面を見ることができ、私は嬉しいかぎりだ。



///////☆


 

 翌朝の食堂にて、私はソラとアルトにウインクをした。


 「おはよう。私の天使と、かまってちゃん」

 「お前頭大丈夫か?」

 「リディア、ねぼけてるの?」

 「おはよう。リディア、アルト、ソラ」

 「おはよう、背中に気をつけてねアオ兄ちゃん~」

 「えーっと、なにそれ?」




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