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5.4階の天組4年生は全部で4人…1人足りない? いやぁーーーー!



 太陽の日差しが強い中、私達は天組校舎を目指して歩いていた。

 急に暑くなってきたんだよね、春なのに。おかげで海水に濡れていた制服は乾いた。

 太陽神様のおかげかな?だけど素直に感謝は出来ない。だって太陽神様の嫌がらせで私は濡れた…と思ったところで、私の手から煙が上がった。熱ぅ。太陽神様、後で覚えとけよ〜。


 「もうすぐ着く?」

 「もう少しだ」

 「うへー」

 

 ガブちゃんの「もう少し」は「まだまだたくさん」である。

 道のりは長く険しい。

 暑い暑いと考えているとさらに暑くなるので違うことを考えましょう。


 シグレとサラの解説によると学園の中央に天組校舎はあるそうだ。

 春組校舎は最東に、夏組校舎は最南に、秋組校舎は最西に、冬組校舎は最北に位置しているとのこと。

 その組からさらに年齢別に6つのクラスに分けられ、最年少の1年生が数え年13歳、6年生が数え年18歳となる。

 私は数え年も実年齢も16歳なので、天組の4年生になるわけだ。


 単純計算で計5組30クラスがこの学園には存在している。かなり多い。

 だが在籍している生徒数はそれほど多くないらしい。

 国によっては1クラス3人のところもあるし、なんなら私達天組は6年生と4年生しかいないのだとか。


 なんでもこの学園、まだ試作段階にあるそうで。

 まずは少人数から始めてデータを集め、1年後2年後と徐々に生徒を増やしていく計画なのだ。

 そのためこの学園には、高貴な身分や魔法、武芸、学問等に秀でた――言うなれば、選ばれし子供のみが実験的に招待されていた。


 和平を結んだとはいえ戦争は終結したばかりだ。

 他国に恨みを持つ人、恐怖を抱く人など心が追いつかない人が数多くいる。それは大人も子供も変わらない。

 だから少人数スタートの体制には納得する。けどさ、それならもう少し時間をおいてからスタートした方がよかったんじゃないの?とは思う。


 だってついこの間まで戦争してたんだよ?

 気持ちの整理をつける時間や心の傷を癒やす時間が全然足りてないと思う。


 私は加護の森に守られてずっと平和に生きてきたから戦争の規模がよくわからない。

 でも多かれ少なかれ、戦争は必ず悲劇を生み出す。涙を流す人が絶対にいる。

 そのことはわかるから、学園設立は時期尚早だって断言できる。

 

 そんな簡単に気持ち切り替えられないからね。

 それなのに無駄に校舎を別けちゃって。こんなの否が応でも国を意識しちゃうじゃん。

 王様達はみんな馬鹿なのかな?


 たぶん王様達の目的は国家間の溝をなくして将来的な友好関係を築くことだ。

 そのために子供達に目をつけて学園を設立したんだろうけどさぁ。


 まあ思うところはあるけど、私は自分のことで手がいっぱいなので、私の学園生活を脅かさない限りはこの件には触れません。


 もやもやした気分を切り替えるためにも、こういうときはおしゃべりだ。


 「そういえばサラは23歳だよね。それなのに私達と同じ生徒なの?」

 「すごく唐突な質問だね~」


 隣にいたサラに話しかければ、彼は楽しそうにくすくす笑う。

 唐突と言えばその通りだが、


 「私的にはサラと再会したときからずっと気になってたから唐突じゃないわね。タイミング逃して聞きそびれてただけだし!ふふんっ」

 「なんだその顔は。鼻の穴を広げるな。くだらんことで胸を張るな」

 「ガブちゃん知らないのぉ?これどや顔って言うんですけ……いえ、なんでもないです」


 ガブちゃんが腕ひねるぞの顔をしていたので、私は速やかに目をそらしました。

 このあとも失言する自信があるので黙ります。ええ、はい。失言しないリディアはリディアじゃないので。…言ってて悲しくなってきたな。


 「えぇ~い、サラ!さっさと答えなさい!」

 「え~」


 え~じゃない。サラが全然答えないから私が自給自足のダメージを食らったんだからね。


 こう見えてサラは23歳だ。アイと同い年。

 多大な魔力の影響で外見が17歳で止まっているが、頭脳は大人。某小学生探偵と同じなのだ。


 「わかった!頭が良すぎる天才学生として一世を風靡しようって魂胆ね!」

 「違う。貴様と同じ思考回路でサラが動くと思うな」

 「それどういう意味よ!喧嘩なら買うぞー!」

 「先生、リディア様に謝ってください。リディア様のご意見は私の考えにはないものでした。とても勉強になりました」

 「…6年経ったが正気には戻らなかったか。はぁ」

 「あはは、本当にリディアはおもしろいなぁ」


 シグレがガブちゃんを睨み、ガブちゃんが項垂れ、サラは楽しそうに目に涙まで浮かべて笑う。

 みんな楽しそうだね、特にサラ。でも私は楽しくないぞ☆


 「見世物じゃないんですけど。さっさと答えろ。なんで学生服着てんのよ!」


 おらおらとサラの頬やら額やらを指で突けば、彼は人差し指を唇に当ててにっこり笑った。


 「バレてないからセーフだよ」

 「質問の答えになってなーい!…まあいいですけどぉ~」


 確実にはぐらかされたと思うけど、大人しく引き下がってあげます。私は気が利く女なのでね! サラにはサラの事情があるのだろう。


 「……あれ? てことは、つまり、ガブちゃんも生徒で私の同級生!?」

 「なにがつまりだ。阿呆か貴様は。その頭にはなにがつまっている。花か? 霞か? 6年の時を経てなぜここまで成長せずにいられる。俺は貴様らの担任だ」

 

 ガブちゃんこそ相変わらず1を10で返す。

 さすが色黒バイオレンス。

 リディアちゃん青筋ピキってます。


 「ん?いや、待って。スルーしそうになったけど、ガブちゃん私の担任なの!?」

 

 勢いよくガブちゃんを見れば彼は心底面倒くさげな顔で頷いた。


 ゴロゴロピッシャーン


 雷が落ちたよ。

 脳内を駆け巡るのは6年前、ガブちゃんに鍛えられた懐かしき日々。


 「またガブちゃんの色黒バイオレンス絶叫スパルタ指導を受けられるなんて…」


 私は涙ぐみ、


 「嫌すぎるーッ!?」


 脱兎の如く逃げ出した。


 「貴様っ」

 「リディア様っ」

 「あはは。懐かしいね~」


 もちろんサラとシグレの手はしっかり掴んで道連れ…ごほん、一緒に逃げます。

 

 「ガブちゃんのスパルタ指導とかもう勘弁!切実にー!!」


 えぇ、えぇ。わかっていますよ。逃げたところで色黒バイオレンスはどこまでも追いかけてくる。地の果てから海の底まで火の中だって追いかけてくるのだ。ああ恐ろしい。

 敵の現在位置を探るべく振り返り、泡を吹いた。

 めっっっっっちゃ近くにいた。手を伸ばせば届く距離にいた。6年前はもう少し時間を稼げたのに!?


 「わかった!スーツだ…げっほけほ。唾液が気管に入った、痛い」

 「リディア様大丈夫ですか!?」

 「大丈夫?走ってる最中に喋るから」

 「だ、大丈…けほっ」


 そう。ガブちゃんは今神官服じゃなくて黒スーツを着用していた。スーツの方が風の抵抗を受けないから前より走る速度が上がったんだね。やめて。

 前世の逃走番組を思い出す。サングラスがない分、鋭い眼光が丸見えで怖いよ。


 「だがしかーし!私は諦めない!」


 未来はどうなるかわからない!足掻きに足掻いて足掻きまくり、運命すら変える女、それがリディアなのだ!

 

 限界を超えろ、私!

 うおー!と走りまくって、前方に見えた西洋風の白亜の(校舎)に激突並の勢いで突入する。

 もちろん扉の施錠は忘れずに!


 「…のはずだったんだけどぉ」

 「初日から走らされるとは。貴様はよほど俺に叱られたいようだな」


 私が閉じようとした扉をガッと褐色肌のバイオレンスな手が止めたのは言わずもがな。

 あわばばと震える私を見下ろすのは、絶対零度の黒い瞳。


 「この美少女フェイスに免じて…」

 「免じない」

 「……。」


 やれやれ。仕方が無いね。今回は私の負けさ。


 私は抵抗を止め大人しく腕をひねられた。


 「いだだだだだ! 腕がもげるわ、この色黒バイオレンスめー!」

 「チッ」

 「ギャ~っ」

 


//////////☆


 現在、ガブちゃんの腕ひねり攻撃から解放された私はへろへろな体で教室に向かっていた。

 私の周りの人間はどうしてこう加減しないやつが多いのか。先導するガブちゃんを睨んでやる!ぎゃっ、振り返った。


 「不快な視線を感じたが…」

 「ガブちゃんの勘違いじゃな~い?」

 「フンッ」


 ふぅと息を吐く。

 だがこれは難が去ったぜの意味ではなく、永遠に続く階段への不満を含んだ息継ぎのふぅである。

 私の足を見てよ、ガタガタ震えっぱなし。1階の踊り場の時点で膝が笑っています。

 

 この校舎は入ってすぐ白い大理石が美しいエントランスホールが広がっていた。

 テーブルや椅子が所々に設置されており利便性や親しみを感じるが、総合的には硬質で清廉な印象を受ける。温かみを感じられなくて、私にはちょっと落ち着つけない空間。


 そのエントランスの中央に上階に続く豪華な階段があった。それこそが今私達が永遠と上っている階段!


 余談だが1階エントランスの左右には2つの通路があり、その先に実験室や屋内運動場、保健室等があるとのこと。1階の実験室は屋外の薬草畑に繋がっているそうだ。薬草畑行きたいな~。


 話を戻して、私たち4年生の教室はなんと4階。

 4年生だから4階ってか。最上階の6階には6年生の教室があるそうですから、そういう仕組みなんでしょうね。ふっざけるなー!


 「天組は4年生と6年生しかいないんだから、2階が4年生3階が6年生でいいじゃない!」

 「リディア、それ言うの10回目だよ~」

 「何回でも言ってやらぁ!」


 そもそも普通は年長者が下階じゃないの?

 元気に溢れる子供が持て余した体力を発散するために、下級生は上階に教室があるんじゃないの!?

 しかもこの階段かなり段数が多いから、さらに辛いんだよ!


 「疲れ切ってる体には拷問だからねー!」

 「わめくな。自業自得だろう。口を動かす暇があるなら足を動かせ」

 「うわーん。エレベーターないのぉ?」

 「ない」


 くそー!

 2階と3階の間の踊り場で地団駄を踏んでやる。そんなことやってるから疲れるんだぞという目でガブちゃんとサラが見てくるが知ったことかー!


 「リディア様、よろしければ私がお運びしましょうか?」

 「シ、シグレ~」


 そんなとき、頬を桃色に染めながら提案してくれたのは私の天使。

 やさしい。シグレは6年前からずっとやさしい。大好き。

 私は一も二もなくうなずいた。が、


 「甘やかすな。これから毎日上ることになる。この阿呆の為を思うなら手を貸すな」

 「ガブちゃんんんん!」


 この色黒バイオレンスが黙っているわけがない!

 わかっていましたよ、ええ。ガブちゃんなら絶対に反対するってね!


 「私が毎日、リディア様をお迎えするので問題ありません」

 「それは無理だって自分でもわかってるだろ?俺たちは学業の他にも仕事があるんだから」

 「くっ…」

 「え!そうなの!?」


 シグレは申し訳なさそうにうなずいた。


 「ですが可能な限り私は…」

 「そんなっ私一人で頑張るから!シグレは無理しないで!」


 さすがの私も学業と仕事の二足草鞋を履く人に「疲れたから運んで~。でへへ~」と頼むほど図々しくはない。(ガブちゃんは当たり前だという顔で私を睨んでいるが、当たり前のことをするのは難しいので私は偉いんです)

 バイトじゃなくて仕事って言ったからね。絶対にハードなやつだよ。やっぱり天空神殿はブラック企業だ。


 「私頑張って体力つけるから!むしろ私がシグレを運んであげる!」

 「リディア様っ。ありがとうございます」


 シグレは感極まったように涙ぐんだ。

 やっぱりシグレはかわいい。母性本能をくすぐられる。

 ため息交じりに付き合ってられんと階段を上り始めたガブちゃんとは大違いだ。


 「よし、決めた。今から運んであげる!さあ背中に乗って!」

 「え!?…あの、お気持ちはうれしいのですが、私は男なので…それはちょっと…」


 私はやる気いっぱいに背中をトントン叩くが、シグレは真っ赤な顔でもじもじと俯いてしまった。

 指を絡ませて伏し目がちな照れ顔がとてつもなくかわいい。守りたい、この照れ顔。


 「じゃあ抱っこする」

 「そちらのほうがもっとダメです!」

 「それならお姫様抱っこ?」

 「~っ」

 「リディア、それくらいで勘弁してあげて?このままじゃシグレが逆上せて気絶しちゃうから」

 「黙れ、サラ!私は逆上せてなどっ」


 そう言ってサラを睨みつけるシグレの顔は先程よりも真っ赤で、おまけに湯気まで出ていた。

 えぇ~!照れてるだけだと思ってたけど、もしかしてこれって風邪!?

 慌ててシグレの額に手を当てれば、びっくりするくらい熱かった。


 「大丈夫、シグ…」

 「っ!」

 「あ、トドメ刺しちゃった」


 シグレは幸せそうな顔で気絶した。

 唐突すぎるよー!?


 「シ、シグレー!しっかりしてー!」


 ぎゅっと抱きしめて揺さぶれば、シグレは一瞬だけ目を開けてまた気絶した。

 サラが苦笑しながら「追撃だね~」とか言ってるけど、それどういう意味!?私の美少女フェイスに人を気絶させる力はありませんよ!?


 「チッ。世話の焼ける…」


 最終的に私達を無視して一人で階段を上っていたガブちゃんが下ってきて、シグレの首根っこを掴んで階段を上がり始めた。


 師匠なりの弟子を思う優しさなのだと思う。

 だけどさガブちゃん、そこはおんぶしてあげようよ。

 階段上がるたびに段差にシグレの背中がぶつかってかなり痛そうだよ。そういうところがあるから、シグレに尊敬されないんじゃないかな。

 

 「ガブちゃん、シグレ…」

 「元凶は黙ってついてこい」

 「でもシグレ…」

 「元凶は黙ってついてこい」

 「……。」


 これは腕ひねられるパターンだな。

 心の中でシグレに謝って私はガブちゃんの後を追った。私は我が身かわいさにシグレを助けないひどい女です。

 

 「ていうかどうしてシグレはこの状況で目覚めないの?」

 「う~ん、幸せな夢から目覚めたくないんだと思うよ?」

 「幸せな夢?」

 「リディアはリディアのペースで成長したらいいからね~」

 「意味がわからん」


 やさしい笑みを浮かべてサラが私の頭を撫でる。

 うん、完全に子供扱いされている。

 まあサラは私より7歳も年上だから、子供扱いを許しましょう。


 「もっと撫でて!」

 「いいよ~」


 催促する私を見てくすくす笑いながらサラが私の頭を優しく撫でる。

 みなさん、これがいい大人の見本です。アオ兄ちゃんのようなSっ気も色気もない、アイのような馬鹿わんこっぽさもない、落ち着いた優しさ。染み渡るわぁ。


 「私頭撫でられるの大好き!でも撫でてくれるのがサラだからさらに好き!」

 「リディア、それ親父ギャグ?」

 「その通り!でも気持ちは本当だよ!」

 「ありがとう」

 

 えへえへ笑いながら階段を上っていたら、いつのまにか4階に到着していた。

 驚き桃の木山椒の木。全然しんどくなかったよ!

 

 「今度からサラに頭撫でて貰いながら階段上ろうかな」

 「俺の手が疲れちゃうからそれは無しかな?」

 「わかった。諦める」

 

 割と本気だったけどサラも天空神殿にこき使われる哀れな神官の一人だから、諦めた。彼の手を煩わせるわけにはいかない。社畜は辛いね。

 むしろ私がサラを運んであげないと!


 「気持ちはありがたいけど遠慮するね」

 「私まだなにも言ってないんですけど!?」

 「顔に書いてあるから」

 「なんだってー!」


 毎度おなじみのお言葉に吃驚仰天していれば、ガブちゃんからさっさと来いとのお叱りを受けた。急いで向かいます。腕ひねられたらたまらんからね。


 4年生の教室は4階左通路の突き当たりにあった。

 教室札には「天組4年」と書かれている。…今は4年生が1クラスしかないからいいけど来年2クラスになったら「天組4年1組」とかになるのかな。組が前後にあってややこしそう。


 余談だがこの教室に向かう最中には実験室や調理室、音楽室があった。

 右通路は反対方向だから少ししか見れなかったけど、魔法実践室と書かれた教室札が見えた。あとダンスホールね。…私が踊れるのロボットダンスと盆踊りくらいなんだけど、大丈夫?社交ダンスとか絶対無理だよ。頼むから必修科目とか言わないでね。


 「てなわけで教室オープン!お~、中は定番の教室だ。高校の時とまるで同じ。どうなってんだこの世界」

 「頭でも湧いたか。なんだその感想は。コウコウとはなんだ」

 「先生、それがリディアですから」

 「はぁ。そうだな」


 私は切り替えの早い女、リディア。

 ダンスへの恐怖はティッシュにくるんで空に投げ捨て、絶対に私を馬鹿にしている第二の師匠と兄弟子への苛立ちは土に埋めた。頬で青筋がピキるけど落ち着けと撫でましょう、おほほ。

 

 「なんか懐かしいな~」


 前世の学校とほとんど変わらない教室内を眺めつつ、駆け足で一番窓際の席に座る。

 なんとこの教室には机が4つしかなくて、しかも教卓からわずかに距離を開けて全て横並びだったのだ。となるとやっぱり窓際を確保するよね。


 「ふはは!こういうのは早い者勝ちなのよ。サラ、シグレ。悪いわね!」

 「俺はどこでもいいよ。ただシグレはリディアの隣が良いだろうから…ここにしようかな」

 「……。」


 やさしい笑みを浮かべながらサラが座ったのは廊下側から2番目の席。

 …ずるいとも言われずにこう大人な対応をされると……ちょっと自分が恥ずかしくなります。

 いや、サラは23歳の大人で私は16歳のお子ちゃまだから、恥ずかしがることはないんだけど。まあ16歳はお子ちゃまと呼べる年齢ではないけど、さ。


 「すみません。大人げなかったです。ガブちゃんが決めた座席に座ります。うぅ」

 「お前がしおらしい態度をとると気味が悪いな」

 「雪でも降るかもしれませんね…」


 私に警戒の眼差しを向けるガブちゃんと、笑っているけど少し不安そうに眉が下がっているサラ。

 喧嘩売ってます?


 「もー知らない!私はいつも通り思うがままに生きる!この席は絶対に渡さないもんねーっだ!」

 「勝手にしろ」


 ガブちゃんは面倒くさげにため息をついて今もなお気絶したままのシグレを私の隣の席に置いた。


 ドサッ


 ガブちゃんは割と雑だから、現在のシグレの体勢は背中を机にのせる形で仰向けだ。

 ようするに頭がだらんと落ちて逆さま状態。

 慌てて頭を支えるよね。このままじゃ頭に血が上るし、目覚めた後は別の意味で頭に血が上るよ。


 「も~、ガブちゃん!最後までしっかりやってよー!」

 「チッ。一人足りない。探してくる。ここを動くな」

 「ちょ、待て。色黒バイオレンスー!教室出て行くなー!」

 「4つ机があるから俺たち4年生は4人いるってことだね。ほら、シグレ起きて」


 にこにこ笑いながらサラがシグレの頬をバシバシ叩く。

 目覚めさせる方法、雑だし力業だな。もしかして日頃の恨みとか入ってます?


 「ていうか4が連発でなんか不吉だな」


 これから死亡フラグまみれの生活が始まるかもしれないってのに勘弁して。主要キャラ組のフラグは問題なさそうだけど、何が起るかわからないのが人生なんだよ。

 ああ、でもここは「いつ君」とは似て非なる世界だから大丈夫か。


 「いや、どっちにしろ嫌だわ!?」

 「うーんと、4階にある4年生の教室の4人クラス…()……あぁ。死ってこと?」

 「解説するな!?」


 ねぇ、サラ君。なんで笑ってるの。謎が解けてスッキリしたから?そういえばサラは勉強オタクだったね~。

 それじゃあ私の頬を見ようか。見えた?そうそう、そうなの。青筋ピキっちゃってるのっ!


 「くっそ~!もぅ好きなだけ笑えー!でもその代わり、私が死にそうな目に遭ったら絶対に助けてよ!ね!?」

 「うん、安心して。俺たちはリディアのフォローをするためにここにいるからさ」


 にこにこ笑顔で意味のわからないことを言うサラに首を傾げてしまう。

 私の頭の中を疑問符まみれにして怒りを忘れさせる作戦?

 もしそうなら悔しいことに作戦は大成功だよ!


 「よくわかんないけど、その言葉信じるからね?」

 「うん。俺もシグレも先生も、リディアの味方だから」


 言いながらサラが私の頭を優しく撫でる。

 私は頭を撫でられると全てを許してしまう女なので、サラを許しました。


 「……ん。私は…リ、リディア様のお顔が目の前に!?…ぁぅ」

 「シグレの目が覚めたと思ったら気絶した!」


 頭を撫でられるのが心地よくて左右に揺れていた私の振動でシグレは目覚めた…のだが、幸せそうにまた気絶してしまった。


 「抱きつかれても平気なのに、なんでこういうのは気絶するんだろう?」

 「首傾げてないでシグレを起こして~!」

 「ほっといたらだめ?」

 「ダメー!」


 こうして私の波瀾万丈な学生生活がスタートした。

 …って締めたいんだけど、このクラスの最後のメンバーがまだ来てないんだった。がっくり。


 ん。待って。もしかしてさっそく4の呪いが現われちゃってる!?

 最後のメンバー死んじゃってるとか言わないよね!?

 怖い怖い怖い!いやだぁー!勘弁してー!ラスト1名早く来てー!?




 今更なのでお気づきの方もいるかと思いますが、アオ兄ちゃんとアルトのSSを活動報告にあげています。

 念のための報告です!



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