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4.これが本当の八つ裂きの刑ってね

すみません!すごく読みづらいですよね、修正しました!

たぶんまた後で修正すると思いますが、内容の本筋は変わりませんので!



//////////☆


 中世の古都とほんの少しの神聖さが融合した学園の敷地は広く、そして美しかった。

 どこまでも続く石畳の歩行路に、清涼な空気を作り出す緑豊かな木々たち。

 ちらりと横を見れば芸術作品としか言い様がない噴水もある。


 そんな場所で…リディアちゃん引きちぎって平等に分けよう☆倫理観どこ?(嘘)から解放された私は、穏やかにみんなとの再会を楽しんでいた。



 「まさかリカが男だったとはなぁ」

 「ああ。君、あのときのお騒がせ方向音痴か」

 「盲点でしたわ。ハッ…だからおねえさまをストーカーしていたのですね!」

 「は?リディアおねえちゃん、ストーカーってなぁに?どういうこと?」

 「王子様かわいそうっ」

 「ちょっと僕もストーカーとか初耳なんだけど」

 「……。」

 「黙ってないでなにか言いなよ」

 「黙れ。死ね」

 「は?君が死ね」

 「お2人とも死んでください」

 「その意気よ、ギル!」

 「次はジーク様の番ですよ」

 「ガチで死ぬから、勘弁してくれ」



 はい、すみません。嘘をつきました。

 穏やかな再会ではなかったね。

 どちらかといえば殺伐としているね、ハハハ。


 私はひとしきり空笑いして…項垂れた。


 どうしてこうなったー!?


 てなわけで、三方向から引っ張られる恐怖体験から解放された現在。

 私達…というかアルトたちは火花を散らしながら再会を喜んでいた。日本語がおかしいね。でも気にしない。


 ちなみに予鈴は10分ほど前に鳴っている。

 にもかかわらず、私達は未だに屋外にいた。

 えぇ、皆さんお察しの通りです。みんなと再会してから一歩も動いていないんです。


 当然のごとくこの場には私達9人しかいない。

 他の生徒たちは真面目なので、みんな時間厳守で各々の教室に向かったのだ。

 わーぎゃー言い合いする私達のすぐ横を大勢の子が通り過ぎていった。

 言うまでもなく驚愕の眼差しを向けられた。


 そういうわけで私達も自分の教室に向かわなければならないのだが、ご覧の通り誰一人動こうとしないのだ。

 ほんと参っちゃうよね。

 やれやれ。肩を下げる。


 私は別に遅刻してもいい。

 孤児院では問題児としてその名を轟かせ、魔法使い見習い時代は事件に首を突っ込まれたり突っ込んだりと大いに暴れ回った。

 本編で入学早々遅刻する不良生徒になったところでなんら問題はない。

 どや顔しちゃうよ。…うん、まあ胸を張れることは一つもないけどね。


 ごほん。話が逸れたが、私はともかくみんなは別だ。

 お忘れかも知れないがこの方達、ほとんどが王族もしくは王家に仕える子たちだ。

 そんな子たちが揃いも揃って入学式を遅刻するわけにはいかない。

 だから一刻も早く私達は教室に向かう必要があるのだが、そのためにはこの場を上手い具合に納める必要があった。


 ということで、私はソラの肩に手を置いた。


 「ソラ、あんたの成長したツッコミを私に見せてちょうだい」


 ソラは隣にいたアリスの肩に手を置いた。


 「お前…アリスだっけ?リカルド王子の従者だろ。ツッコミは譲ってやる」


 アリスはポーカーフェイスで私に親指を立てた。


 「大変恐縮ですが、辞退させていただきます。リディア、よろしくお願いします」


 私達3人はしばらくの間にらみ合った末、ため息をついた。

 今このときもボケチームは火花を散らし続けている。このにらみ合いは時間の無駄でしかない。


 「仕方がないわね。ここは間を取ってジークにお願いしよう」

 「そうだな」

 「そうですね」

 「「「ジーク(様)、頼んだ(頼みました)」」」

 「なんでだーッ!?」


 ノリのいいジークはボケチームから抜け出して、全速力でこっちに走ってきた。

 おうおう、さすがだね。


 「真っ青な顔が似合ってるぜ!」

 「ふっざけんなよ、リディア!?」

 「まあ今のお前なら、どうにかできるんじゃないか」

 「ジーク様、健闘をお祈りします」

 「お前らも親指立てるなー!?」


 毛を逆立てて怒るジークを見て、私とアリスは涙ぐむ。

 だってジークのツッコミが少し見ないうちに急成長していたんだもの。お母さんとお父さんはうれしいです。(ソラは同情の眼差しでジークを見ていた。ソラは天使だからさ)


 「ボケとツッコミ両方成長したんだね。さすが一歩足りないジークだよ」

 「え、ありがとう。って褒めてねーだろ!」


 ノリツッコミも使いこなすジークならば安心して任せられる。

 健闘を祈ると敬礼をして私はその背中を蹴り飛ばした。ぎゃーという叫び声が聞こえたのは言わずもがな。

 結論から言うとジークは蹴り飛ばされた勢いのままなぜかエミリアに壁ドンし、アッパーを食らわされた。少し会わないうちにエミリアが暴力ヒロインと化していた。


 「まあ結局ジークはボケ属性だからね。こうなることはわかっていたさ、南無阿弥陀仏」

 「…リディアおねえちゃん、お友達がたくさんなんだね。おれ、さみしい」


 そんなお悔やみ申して上げている私の元に、こそっとやってきたのはギルだ。

 話の流れをだいぶ無視して割り込んできたね。

 ギルは悲しそうに眉を下げて、きゅっと私に抱き着く。まだまだおねえちゃんに甘えたいお年頃らしい。


 話の流れなんてあっという間に忘れて、私は天使な弟を愛でるよね~。

 かわいいに勝るものなどいないのだ。

 だけどね、ギル君。私は君に言いたいことがあるの。


 わざわざ腰をかがめて私の胸に顔をうずめるのはどうしてだい?


 えぇ、はい。そうなんです。ギルは現在、私の胸にすっぽりとお顔を挟まれていたんですね。

 私のぱふぱふな巨乳はさぞ魅力的でしょうけれど、君は今かなりの変態行動をとっているぞ。…待て、前もこんなことがあったな。ダンデライオン号で正体がばれたときに、胸に顔をうずめられたな!?


 「も~ギル?姉弟だから許されるけど、他の人にやったら張り手されるからね。気をつけなさいよ」


 前はスルーしたけど、今回はちゃんと注意するからね。これはギルの為なのだ。

 いろんな女性の胸に顔をうずめて、そのたびに張り手されるギルなんて私は見たくない。

 姉らしくギルを諭しながら頭を撫でれば、彼は潤んだ瞳で上目遣いに私を見る。

 うん、かわいいね。えろいね。フェロモンだね~。


 「…ねぇ、リディアお姉ちゃん。姉弟じゃなくても許される関係があるって、知ってる?」

 「え?知らないかも」


 母と子も許されるけど、ギルが言っているのはそういう話ではない気がする。

 首を傾げれば、蠱惑的な色気を放ちギルの瞳が弧を描いた。くぅ~、色気がすごい!


 「じゃあ、おれが教えて…」

 「ねぇ、ちょっと目を離した隙になにしてるの。なんで見つめ合ってるの?そんなに僕を嫉妬させて楽しい?もう入学式なんて出なくて良いから部屋に帰ろうかぁ」

 「寒ぅ」

 「チッ」


 そこにやってきたのはアルトだ。

 早口笑顔でギルの首根っこを掴み私から引きはがす。当然のごとく目は笑っていない。

 色気に溺れそうになっていたから、助かったよ。


 「ナイス、アルト!」

 「じゃあ一緒に部屋に戻ろう」

 「それはなしで」

 「なに言ってるの。リディアに拒否権はないからね。この10年、僕を心配させた罪をしっかり償って貰うからね~」

 「くっ。私の弱みにつけ込みやがって、この卑怯者!」


 ちなみにギルがすごく極悪な顔で舌打ちしたように見えたが、うん。おそらく私の気のせいだろう。天使なギルがノットカタギな顔をするわけないからね。


 アルトがまだなにか言っているがさりげなく無視してうんうん頷いていれば、エミリアが私を背にかばうように立っていた。猫のように毛を逆立てている。

 ころころ変わる光景に目が回りそうだ。


 「お2人ともいい加減にしてください。おねえさまはジーク様の未来の奥方です!気安く触らないでくださいませ!」

 「うーん、エミリア違うよ~?」


 ハハハと引き攣り笑いを浮かべれば、ソラが頭を抱えてなにか言っていた。

 なになに?手に負えない。同感です。


 今、この場はかなりの無法地帯と化している。

 収拾がつきません。

 しかしこうしている間にも時間は刻一刻と過ぎ、入学式開始の時間が迫っているのだ。

 私はやれやれ重い腰を上げた。なにせ私は精神年齢16歳+20歳の年長者である。そろそろ本気でみんなを助けてあげよう。


 ずばり、こういうときは話を変えるに限る。


 大抵の人間は予想外の出来事が起きるとそのことに気を取られ、今まで自分が何を考えていたのか忘れる。私の場合はそう。そのせいでいつも師匠に怒られる。

 というわけで私はみんなの注目を集める話題を提供し、意識が私に集中したとき、うまい具合に思考を誘導して教室に向かわせるのだ。


 うん、完璧。私、天才すぎる。

 自分が優秀すぎて高笑いをしてしまうよ。

 誰ですか~、私の計画は大抵失敗するって言ったやつ。毎回結果的に成功するんだから今回も成功するんだよ!


 善は急げだ。私は早速思い出した話題を投下する。


 「そういえばアルト、私の服返しなさいよね」

 「…は?服?」


 はい、これが話題です。

 気づいたときには制服を着ていた私。探せども見当たらない私服。密室で起きた事件。

 みんな大好き、ミステリー。


 「そう!犯人はアルトしかいないのだ!」


 腰に手を当てびしっとアルトの鼻先を指させば、アルトはぽかんと口を開ける。

 リディアちゃん、どや顔だ。


 今もなおギルの首根っこを掴んだままバチバチ火花を散らしていたアルトは、今や私から奪った服のことしか考えていない。さっそく一人めゲットだぜ。


 でもね、身に覚えなし、初耳みたいな顔をするアルトには普通に困ってしまう。

 犯人はあんたしかいないってのに、まったくとぼけるのがお上手なことで。やれやれ。首を横に振る。


 「私の服を脱がせて、制服に着替えさせたのはアルトでしょ?」

 「……………はあ!?」


 今なら怒らないから服の居場所を吐きなさい。

 優しい瞳で語りかければ、かなりの間を置いたのち、アルトの顔が一気に赤に染まった。…あれ?


 そこからはもう早かった。

 なにかの残像が目の前を横切り、びゅんびゅん風が吹いたと思ったときには私の目の前に3つの背中があった。うん、びっくり。


 リアル瞬きの間に、エミリア、リカ、ミルクが私を守るように立っていた。

 ちなみにギルはアルトの手を振り払って「変態怖い!」と私に抱きついている。胸に顔をうずめていますね、まあいいけどさ。


 「アルト、お前とうとう…」

 「アルト君なら、いつかやると思っていましたわ」

 「死ね」

 「リディアおねえちゃん、あの人変態だよ。おれのそばから離れないでね」

 「王子様は私が守るわ!」

 「お前ら!兄様はそんなことしな…うっ、しな……っく…」

 「(わくわく)」


 そしておもしろいくらいに誰もアルトを擁護しない。ソラでさえもだ。

 なんかアルトがかわいそうになってきたかも。


 思っていた展開と違いすぎて、リディアちゃん困惑。

 アルトは真っ赤な顔でぷるぷる震えていた。唇を噛み締めて、瞳はうるうるの涙目だ。

 …あ、なんかすごい罪悪感。


 「~っ僕は、そんなことしてない!ちゃんと我慢したっ!」

 「ご、ごめん。犯人はアルトじゃなかったんだね。…ん?我慢した?」


 恥ずかしさのあまりジークの腕をひねるアルトを見ながら首を傾げる。

 なんか今、不穏な言葉が聞こえた気がしたのだが。


 「まあいっか。じゃあ私の服はどこへ…おげぇあ」


 気がつけば私はエミリアに揺さぶられていた。なぜ!?

 揺れる視界の中で頑張ってエミリアを見れば、彼女は涙目で青ざめていた。私の方が真っ青の涙目だけどねぇ。


 「よくありません!おねえさま、男は野蛮な獣ですわ!騙されないでください!」

 「リディア、あれに近づくな」

 「あの人と2人きりになったら絶対にダメだからね!」

 「王子様が食べられちゃう~っ」


 とか言って、エミリアもリカもギルもミルクも私に詰め寄る。が、ちょっと待っていただきたい。

 もちろん私を揺さぶるの止めてと言いたい。だけどそれよりも、伝えたいことがあるのだ。


 「だ、誰か一人くらいジークを助けてあげて」

 

 そうなのです。哀れジークは、未だにアルトに腕をひねられていたのだ。

 「ギブギブ!」とか言ってるのに、アルトは「リディアは僕のことなんだと思ってるのさ。まあそういうとぼけたところも好きだけど!」とぷんぷん頬を膨らませて全く気づいていない。自分がジークの腕をひねっていることすら忘れていそうだ。


 だけどみんなは割と冷静で、


 「ハッ!ジーク様、この機会を逃してはなりません!頑丈さをおねえさまにアピールしてください!」

 「ジークなら問題ない」

 「「よく知らないけど、大丈夫じゃない?」」


 4者4様大丈夫だと判断したので、私は深く頷いた。


 「たしかに。ジークは理不尽に慣れてるし、大丈夫だよね」

 「大丈夫なわけねーだろッ!?」

 「ったく、世話がやけるなぁ。兄様~!」


 結局ソラがため息交じりにジークを救出しに行った。

 持つべき者はツッコミ天使な親友である。


 ついでにエミリアも「ソラ君、ジーク様のアピールを邪魔しないでください!」とか言って走り出してこの場からいなくなり、(ソラがジークに「お前なんでこんな女が好きなんだ?」とドン引きして、ジークがうるせーって泣いてる)

 ギルとミルクも今のうちにアルト王子を倒そうとか話しながら駆け出した。たぶん返り討ちにあうと思うけど、失敗も経験のうちだからね、私は優しく見守るよ。


 こうして私はエミリアの揺さぶり攻撃から解放された。

 なんでこんなことになったのやら。シェイクされたせいで一部記憶がすっぽ抜けた私は笑うしかない。


 「プフッ」

 「はあー?」


 そんなときに隣で聞こえたのはむかつく笑い声。

 こんな失礼極まりない笑い方をするのは、この世に一人だけだ。


 「ちょっとリカ、なに笑ってんのよ」


 顔を上げて隣を睨めば、案の定である。

 リカが肩を揺らして笑っていた。

 はーい、リディアちゃん青筋一つ出現しましたー。

 リカの頬を抓ってやろうと手を伸ばす。だけどそれがきかっけとなり、私は先程のことを思いだした。


 「そういえば!自称神は大丈夫だった?空中散歩海水浸しの刑とかされなかった?」

 「問題ない。どうでもいい話だった」

 「……。」


 私は割と心配しているのに、リカはいつもと変わらない無表情だ。

 口元がピクつきますね、ええ。

 まあ見た限りリカは元気そうですしぃ。本人が問題ないと判断するなら、私は特に気にしませんけどぉ。


 むくれる私がおもしろかったのか、ぽんぽんと叩くようにリカが私の頭を撫でる。 


 「やめーい。私の天才細胞が飛ぶだろ」

 「プフッ」

 「むきーっ!」


 ぶんぶん手を振り回せば、リカは緩やかに口角を上げ私の頭から手を離した。


 「…楽しそうだな」


 なに言ってんだ、こいつ。


 「頭叩かれて楽しいわけないでしょ。私はマゾか」

 「そうじゃない」

 

 口角は上げたまま、リカは静かな瞳で人集りを顎でしゃくる。


 なんか孤児院のときも同じような会話をした気がする。

 どちらかといえばあんたの方が楽しそうだけどねと思いながら、私はリカから視線を外し正面を見た。

 そこには想像通りの騒がしい光景が広がっていた。

 

 ジークの腕をひねるアルトは真っ赤な顔で「もぅ全部リディアが悪いんだから」とか聞き捨てならないことを言っていて、そんなアルトをソラが必死に止めている。

 エミリアとギルとミルク(ギルとミルクは頭にたんこぶができてる)は一時休戦だとか言って、アルトを指さしながら相談をしていた。「アルト君が一番危険ですわ」「同感です」「王子様を守らないと!」ってね。

 アリスはほくほくと顔を上気させながら、一歩離れた場所で全体を眺めていた。


 そんな光景を見たら、吹き出しちゃうよね。


 「あははっ、みんな本当に変わらないんだから」


 私の口角は自然と上へ上がっていた。

 おかしくって目に涙が浮かんでくる。

 楽しいな。幸せだな。…こんな日が、ずっと続けば良いのに。

 そう願ってしまう。


 「…うん。私、今とっても楽しいよ!」

 「っ!」

 

 だから心の底からの笑顔をリカに見せた。



 だって私は今日のような、なにげない幸せな時を、ずっと待ち望んでいたのだから。



 そして…首を傾げる。

 あれ?私、今なにを考えていた?


 現在私の脳内を占めるのは疑問符ばかり。

 すごく幸せで、だけどちょっぴり悲しい。そんな気持ちは残っているのに…なにを思っていたのか、すっぽり記憶が抜け落ちたように忘れてしまったのだ。


 え。怖い怖い。青ざめちゃうよ。

 こういうのは、あれだ。深く考えたらだめなやつだ。そうしたほうがいいって私の第六感が告げている。


 発熱する守り石を撫で、気持ちの切り替えもかねて、リカを見る。

 そして、息を飲んだ。

 

 「ひょ…」


 長いまつげに縁取られた牡丹色の瞳には水の膜が張られていた。

 泣きそうなのかと一瞬不安に思うが、瞬き一つしないそれは私の不安を打ち消すように、ゆっくりと穏やかに細められた。


 「お前はそうして馬鹿みたいに笑っていろ」

 「ぐぅっふぁ」


 吐血した。


 私の目の前には神の最高傑作とも言える超絶美形の微笑みがあった。

 子供の頃よりも遙かに成長した美が私の目を潰す。

 私は天才美少女ヒロインなのに、どう足掻いてもリカの美貌には勝てないのだ。く、悔しい~。心臓が痛いー!眩しい~!


 そんな神の最高傑作は男らしい大きな手をこちらに伸ばし、私の頬を優しく撫でる。

 追撃は卑怯だと思います。


 この手と同じ手が数十分前に私の頬をつねったというのに、…不覚にもドキドキしてしまった。

 心の中で駄々っ子のように暴れ回る。少しは色気をセーブしろ、馬鹿野郎!


 「な、なんだか私よりも、リカのほうが幸せそうな顔してるね!」


 だから私は挑発するようにリカに笑いかけてやる。

 ど、動揺していることを悟られたくなくて話を変えたわけじゃないからね!違うからね!

 ふんっとそっぽを向く私を見たからか、リカは眼を瞬き、吹き出すように笑った。


 「言ってなかったか?お前の幸せが、おれの幸せだ」

 「~っ!」


 リカの瞳に揶揄う色は一切なく、心の底から幸せそうな笑顔が私を見下ろしていた。

 きゅっと心臓を掴まれた。


 超絶美形の天使の微笑とか、反則だ。

 胸がドキドキと痛くて、リカのことを直視できなくて、顔を伏せてしまう。

 だけどこのドキドキは嫌じゃなくて…。

 熱が集まる頬を両手で押さえる。う~、なんか私変だぁ。


 …でも、どうしてだろう。


 リカの言葉を、心の底からうれしいと思った。

 私に向けられる優しい笑みに胸が騒ぎ、

 私の知らない私が、照れて笑った。


 だけど同じくらいに。

 ざらざらとした不安な感情が、胸の奥底に広がっていた。


 体は熱いのに、内側は泣きたくなるくらいに寒い。

 マザーやブラッド海賊団で鳥と対峙した、あのときと同じ。

 守り石がいつものように発熱しているから、なんとか不安を押し込めることができるけど…


 「リディア?」


 私の異変に気づいたのか、リカが眉を寄せて私に手を伸ばす。

 その瞳は不安に揺れていた。そんな彼を心配させたくなくて、私は無理矢理口角を上げる。


 「リカ、私は大丈…」

 「ちょっと見すぎ」

 「ぬわー!?アルト!?」


 だけどリカに笑顔を向ける前に、アルトがぎゅうっと私を抱きしめた。

 私の視界からリカを隠すように、男らしいがっしりとした腕が私の顔を覆う。


 そのことに、安堵する。


 気温はみるみると下がり寒くて仕方がないはずなのに、心は不思議とあたたかい。

 泣きたくなるような寒さが、ほどけていく。体の力が抜ける。


 無意識のうちに私はアルトの腕に縋るように抱きついていた。


 「ごめん、アルト。もう少し、このままでいて」

 「っ!」

 「…は?夢?」


 背中越しに感じるアルトの体がびくっと揺れて、おまけに意味のわからないことを呟く。

 けどまあ、特に気にしないでアルトの腕に顔を押し当てるよ。

 ひんやりした手が気持ちいい。心が落ち着いてきて、ほっと息を吐く。


 「うん、夢だね。幻覚症状がまた悪化したな…」

 「さっきから何言ってんのよ、現実に決まってるでしょ」


 アルトがなぜか自嘲の笑みを浮かべるから、仕方がないので私は顔を上げてやった。

 もうすっかり回復したしね。

 ありがとうの意味も込めてにかっとアルトに笑いかければ、彼の顔は一気に赤に染まった。

 

 「は、はあぁぁあ!?急にかわいいことしないでよ!?君、ほんと昔からそういうところあるよね!?不意打ちとか卑怯だと思わないの!?」

 「声うるさっ」

 「こいつに近づくな。離れろ」

 「ぐえっ」


 そしたら唐突にリカに右手を引っ張られていた。

 え、なになに?急に忙しいんだけど。


 リカは先程の穏やかな笑みとは打って変わって不機嫌そうに眉間に皺を寄せている。

 つーか痛い。強い力で掴みすぎ。骨折れます。あ、ポキって言ったじゃん!


 「わーん。どうしてくれんのよ馬鹿~」


 と泣きじゃくる私は無視して、アルトとリカはバチバチに火花を散らす。

 おい、無視するなよ。私は天才美少女ヒロインだぞ?


 「は?君こそ、離しなよ」

 「お前が離せ」

 「だから無視するなって…あだだ、この馬鹿力共!両方離せぇ!」


 アルトは私を離さないとばかりに強く抱きしめるし、リカも私の腕を引っ張り続ける。体が裂けるッ!


 こんなこと前にもあったし思い返すまでもなく私、高頻度で体を引っ張られてるよね!?

 今日の私思い出を振り返ってばかりだな、うふふ。なーんて穏やかに笑ってる暇はない!

 レフェリー助けてぇー!


 「リディアおねえちゃんに触らないでください!」

 「王子さまは渡さないわ!」

 「ぎゃー!ガチでレフェリー助けてー!」


 そしたらギルとミルクまで参戦してきて、私の左手と左足を引っ張る。

 待って待って、本気で体裂ける。見せパン履いてるからパンツが見えちゃう危険はないけど、こう見えて私羞恥心があるからね。

 なんかエミリアが、「ジーク様も行ってください!残ってるのは右足だけですよ!」とか言ってるけど。うん、やめて。切実に!ていうか誰か助けて!?


 ジークはしょんぼり落ち込んで使い物にならない。こんなときに落ち込むな、馬鹿!

 もはや私を救えるのはツッコミコンビだけだ。


 「ソラ、アリス、ヘルプー!」


 が、ソラには口パクで「諦めろ」と言われて、アリスにはほくほく笑顔でグッジョブされた。後で覚えてろ案件ですね、この野郎。

 つーかソラ君、諦めたら私体裂けちゃいますけど?八つ裂きの刑にされちゃうけど?むごいことになりますけどー!?


 「うわーん、想像したら怖くなって来た。嫌だー!死にたくないー!誰かヘルプー!」

 

 私は泣き叫んだ。

 そのときだった。


 「貴様ら、リディア様になにをしている!即刻離れろ!」

 「わぁ。リディア、すごいことになってるね~」


 突如背後から聞こえた第三者の声に、みんな一斉に振り返る。…私の上半身、左右の手、左足を掴んだままで。離そうよ!?


 だけどみんな我が強いから、そう簡単に言うこと聞いてくれないのはわかっている。

 私は諦めてへんてこ体勢のまま声の主を見た。そして瞠目した。


 「シ、シグレとサラ!?」

 「は?誰それ」


 耳元で不機嫌を隠さず聞いてくるアルトはいったん無視して。

 そうなんです。前方には学園の制服に身を包んだ白髪の男の子たちがいたのだ。


 2人とも身長がかなり伸び、体格も子供の頃と比べると男の子らしくがっしりしている。

 見違えるほど変わった。だけどその顔にはしっかりと面影が残っている。


 モスグリーンの瞳にやさしい笑顔を浮かべる美しい男の子は間違いなくサラだし、ストレートの長髪にゆず色の瞳の中性的な美貌を持つ男の子は絶対にシグレだ!


 「…ん?中性的な美貌を持つ男の子ぉ!?もしかしてシグレって男の子だったの!?」

 「は、はい。ずっと言い出せなくて、すみません」


 シグレは真っ赤な顔でもじもじと自分の制服を握りしめる。

 成長してもシグレのかわいさは健在だ。かわいいは正義。

 私が深々と頷いていると、シグレが潤んだ瞳で上目遣いに私を見ていた。


 「男の私は、お嫌いですか?」

 「そんなわけないじゃん!男でも女でも私はシグレのこと大好きだよ!」


 むしろずっと女の子だと勘違いしていてごめんね…と言いかけた私の言葉は、アルトに抱きしめられ(レフェリーストップ並の馬鹿力)、ギルに腕を握りしめられ(骨折れる)、ミルクに引っ張られ(改造怪力。裂ける)、くぐもったうめき声と共に途切れた。

 ちなみにリカは何もしなかった。あんたの沸点がわからん!?


 「「「あの子たち、誰!?」」」

 「ぐぇ~ん」


 しかし現実は私を待ってくれない。

 心の中でツッコミする余裕すらない。

 3方向から感じる視線――怒気×2とツインテール回転×1に対して、私は継続してうめき声しか出せない。体が悲鳴を上げているもんでして、えぇ。しゃべれるわけないじゃん!?


 「無礼者どもめ!今すぐリディア様を解放しろ!このお方は、貴様ら下賎の人間が気安く触れていい方ではない!」

 「君、さっきからリディアに馴れ馴れしいよ。この子、僕のだから」

 「うぎぇ、この馬鹿アルトがぁー!」


 現在、シグレが悲鳴を上げる私を助けようとアルトたちに詰め寄ってくれたので、私の体はさらなる痛みに襲われていた。

 ギルとミルクはもう力を弱めてくれたけど、アルトだけが永遠に私を抱き絞め続けるのよ。

 なんだ、お前は。私を絞め落とす気か!?


 「とか言いつつわかってる、ちゃんとわかってるから!アルトは私のことが大好きなだけだもんね!」


 ギブギブとアルトの腕を叩きつつ、私は弱々しい笑みをアルトに向ける。

 アルトは瞠目し、だけどすぐにそっぽを向いた。頬を膨らませて拗ねた顔である。かわいいねー、苦しいねー、ちょっと力を弱めようかー。


 「…今まで何度同じ手を食らったと思ってるのさ。その手には乗らないからね!」

 「ぐぇ。よ、よくわかんないけど、私は昔から…アルトのことが大好きだよ」

 「え…」

 

 期待するような眼差しが私を見下ろす。

 その頬は桃色に染まっていて、確信を得た私はアルトの期待に応えるべく、力強く頷いた。


 「アルトはさみしがり屋だから、他の子に私を取られちゃうって思ったんだよね。でも大丈夫!私は永遠にアルトの友達だ…ぐぇーっ」


 アルトは目の笑っていない笑顔を浮かべていた。

 なぜ?


 「リディアは変わらないね~。ほんと腹立つなぁ」

 「ぐぇぇぇ。さらに苦じい…」


 もはや言葉を発することすらできぬ。

 私は震える手をソラに伸ばした。ヘルプ…。


 ソラは呆れた顔で私を見ていた。いや、ソラだけではないな。全員が私に呆れた顔、もしくはアルトに同情の眼差しを向けていた。普通私に同情しない?


 「リディア様の優しさを蔑ろにするなど、断じて許せん!」

 「もー。シグレ、抑えて」

 「黙れ、サラ!お前がリディア様に任せようと言うから黙っていたんだ。だが今、リディア様は苦しんでいる!」

 「はいはい、俺が悪かった。あ、そういえばさっき下賎の人間とか言ってたけど、この人たちほとんどが王族だからね。言葉には気をつけなよ~」

 「そんなの最初から気づいている!」


 シグレとサラの喧嘩は懐かしい。懐かしいけどさ。


 「今は私を助けて!?」

 「リディア様!す、すみませんっ」

 「ごめんね~」

 「ソラも助けてぇ!あんたしかアルトを止められないんだから!」

 「はぁ、自業自得だろ」


 最終的にソラ、シグレ、サラによって私はこの野郎4人組の攻撃から解放された。

 ようやく一息つける。ガチで体が裂けるかと思った。私の手足ちょっと伸びた気がする。


 「あー!お前ら和平協定にいた神官じゃねーか!」

 「……。」


 そしたらジークが大口開けてシグレとサラを指さしていた。

 ジークが騒いだ時点で、すでに一息つける気がしない。

 私が顔を引き攣らせる隣でシグレが冷ややかな眼差しをジークに向ける。

 

 「一番間抜けそうなやつが気づいたか」

 「こいつリディア以外の人間に対する態度がすこぶる悪くないか!?」

 「あはは、ごめんね。それがシグレなんだ~」

 「…この男、まともと見せかけてなんでも笑って誤魔化すタイプだな」


 ジークとソラが神官2人を見て、ごくりと生唾を飲み込んだ。

 さすがツッコミに片足突っ込んでいるやつとツッコミ専門家は言うことが違う。


 まあシグレは人見知りで、サラはにこにこしてるだけなんだけどね。

 私は2人のことを理解しているからわかるのよ。あとで誤解を解こう。

 うんうんと頷いていればアリスが私の肩を叩いていた。


 みんながいる前でアリスがわざわざ私に話しかけるとは、きっとただ事ではない。

 アリスはこそっと耳打ちをした。


 「真面目生意気(シグレ様)年上童顔優男(サラ様)。想像以上ね」

 

 クソほどどうでもいい内容だった。

 そんなアリスに気を取られたのがいけなかったのか。


 「なぜ貴様らが金色を…私は認めない!」


 気がつけば、シグレが忌々しげにソラとエミリアを睨みつけていた。

 私が目を離した隙にいったいなにが起ったってんだい。休む暇が全くないよ!?


 混乱していたらサラが私の耳元に顔を近づけた。本日、耳打ち2人めです。


 えーなになに。ソラとエミリアが金色を持っていることに気づいたシグレが憤慨した。なるほど。

 わざわざ耳打ちするほどの内容でもなかったし、見たまんまの内容だった。

 それら全てをひっくるめて、真っ先に思った感想をとりあえず言うね。


 ソラもエミリアも最初からこの場にいたのに。今気づいたんかーい。

 なんならソラなんて率先してツッコミしていたのに。今気づいたんかーい。


 まあシグレはああ見えて他人に興味ないところがあるから、わかるっちゃわかるけど。

 それはともかく、急にどうした?


 突然敵意を剥き出しにされたのだ。

 ソラとエミリアは困惑したように眉を顰めていた。

 

 「なんだこいつ?」

 「そんなことを言われても困りますわ」


 だけれども、

 ソラとエミリアが喧嘩を売られた場合、当の本人よりも怒る人たちがここにはおりまして…


 「君、僕のソラに喧嘩を売るとか良い度胸してるね。リディアにも馴れ馴れしいし、そんなに早死にしたいの?」

 「おい、お前!エミリアを傷つけることはおれが許さないぞ!」


 案の定、アルトとジークがシグレにガン飛ばしていた。

 だから慌てて私はシグレを背に庇うよね。


 「ご、ごめん。シグレは人見知りなんだ。大目に見てあげて」

 「いや、これ人見知りで片付けていいのか?」


 ソラが引き攣った顔でシグレを見る。

 やれやれと首を横に振った。

 全くソラはなにもわかっていないんだから。

 私は天才美少女ヒロインである以前にシグレの友達だ。だからわかっちゃったのよ。


 「シグレはソラとエミリアと仲良くなりたかったの」

 「リディア、それは無理がない?」

 

 苦笑するサラは華麗にスルーします。


 そう、シグレは2人と仲良くなりたかった。しかし彼の人見知りが災いし、喧嘩を売ってしまったのだ。

 私はうんうん頷く。

 まあちょっと無理矢理感が強いと自分でも思うが、はい。私の推理はおそらく合っている!


 「シグレは繊細なの。ほら見てよ。真っ赤な顔で震えてるじゃない」

 「リディア様が私を庇って…うれしい。だがご迷惑をおかけしてしまった。っくそ、全て貴様らのせいだ!」

 「こいつのどこが繊細な人見知りなんだよ!?」

 「ナイス、ツッコミー!」

 「親指立ててグッジョブじゃねーよ。頭かち割るぞ!」


 なぜかソラにキレられてしまった。

 よくわからなくて首を傾げてしまう。

 そんな私にアルトが手招き。目が笑っていない笑顔である。もうすでに肌寒い。


 ソラをからかった罰が当たったか。僕のソラで遊びやがってって怒られるパターンか!?

 私は戦々恐々と震える。が、なにも問題はなかった。


 「ねぇ、リディア。なんでこんなやつ庇うの?なんでそっちにいるの?なんで僕のところに来ないの?君の一番は僕でしょ?ねえ?」

 「あ。よかった。いつもの友達大好きだった」


 ほっと胸をなで下ろす。

 そしたらソラに頭を叩かれた。なぜ?


 「兄様抑えて。リディアは黙れ」

 「リディア、来て」

 「はっくしょぅえー。いや、寒いからアルトのそばにはいかないよ。隣にソラいるんだから、それで満足しなさいよ」

 「こっの馬鹿リディアー!」


 ほら見てよ、鳥肌がすごい。私はぶつぶつしている腕をソラに見せるが、悲しきかな。無視された。

 しょんぼりしたからシグレとサラに笑いかけよう。にっこり。

 シグレは桃色ほっぺではにかんで、サラはやさしく笑い返してくれた。癒やし…。


 「この馬鹿発言に腹立つ行動。ほんっと懐かしいなぁ~」

 「おい、リディア!お前のせいでまた気温が下がっただろうが!」

 「ジーク様、違います。そこはおれが暖めてやるぜ、リディア♡と言うべきところでしょう!」

 「言わねーよ!?」

 「リディア、来い」

 「リカ様が呼んでいますよ、リディア(わくわく)」

 「リディアおねえちゃん…ここ、寒いよ。おれのことあっためて?もちろん、ベッドの中で…」

 「王子様~!私のこともあっためて~!ぎゅーって抱きしめ…」

 「ミルク!おれの言葉を遮るな!」

 「ギルこそ、私の言葉を遮らないでよぉ!」

 「もー、シグレが余計なこと言うから、騒がしくなっちゃったじゃん」

 「こいつらが喧しいだけだ。私は悪くない」


 そして怒濤のみんな一斉に喋るの攻撃。

 リディアに百のダメージである。

 私の耳に届くのはいろんな人の声が重なった爆音。みんながなにを言っているのかまるでわからない。


 てなわけで、困ったときはこのお方。

 私は頭を掻きむしっている彼にウインクをした。


 「ソラ、任せたよ☆」

 「だぁー!自己主張激しいやつらが集まるな!せめて散れ!?ツッコミが追いつかないんだよ!」

 「ナイスゥ!」

 「ナイスゥじゃねーよっ。ツッコミを放棄するな!お前もさっきまではこっち(ツッコミ)側だっただろ!?」


 私を指さし髪を逆立てるソラに、そんなそんなと首を横に振る。


 「天下のツッコミ天使なソラ様に敵う人間なんてここにはいませんよぉ。決して疲れたからツッコミを押しつけようだなんて思っていません。ゲヘヘ…あだーっ」


 そしたらスパーンと頭を叩かれた。

 いい音なったぜ。お笑い芸人始められちゃうよ。

 私が懐かしさに微笑んでいる中、ソラは疲れ切った顔で項垂れていた。


 「腹立ちすぎて本気で殴っちまった」

 「とか言いつつ、加減して殴っているソラのことが大好きだぞ☆」

 「やめろーッ!今この状況でそれは、ガチでやめろーッ!」

 「「「え?リディアおねえちゃん/王子様/リディア様、彼のことが好きなの/ですか!?」」」

 「ほら見ろ、おれとリディアの関係知らないやつらが血相変えてこっちに向かってくるぞ!」


 ほんとうだ。ギルとミルクとシグレが真っ青な顔でこっちに走ってくる。

 おーいと手を振ったら、ソラに勢いよく下げられた。すごく睨まれた。顔には青筋が一個二個、三個もある。

 もしかしてソラと手を繋いだ状態で手を振ったことを怒ってる?


 「みんなへのサービスのつもりだったんだけど。ごめんね?」

 「そんなサービス誰も望んでねーわ!」

 「アリスは喜んでるよ。ほら超高速で拍手してる」

 「あいつの頭どうなってんだ!?」


 仕方がないな。

 私はもう一度ソラと手を繋いで(手を掴んで)元気よく手を振った。当然のごとく頭を叩かれた。


 「だからやめろってんだよ!?」

 「あだーっ。今度はちゃんと痛い!」


 頭をさする私を横目に、ソラがチィッと舌打ちをする。

 はいはい、ごめんね。もうしないよ。ソラがどうして嫌がるのか、私はその理由をちゃーんとわかってるからさ。


 「アルトの前で手を繋いで、万が一にも誤解されたら嫌だもんね」


 穏やかな瞳で笑いかければ、頭を思いっきり叩かれた。


 「ソラ、こんなこと言いたくないけどレパートリー少なすぎない?頭を叩いてばかりじゃない。この10年何をしてたの!」

 「黙れー!」

 「…ハハ。リディアは相変わらずソラのことが大好きだよね~。もしかして僕よりも好き?」

 「だぁああ、唐突に兄様の限界がきたっ。こじらせすぎてるの忘れてた!子供の頃より悪化してるんだったー!兄様、違うから。リディアのこれは、いつものおふざけだから!くっそ、リディアの考察が間違ってるのに当たってるのが腹立つ」

 「なんだとぉー!私は本気でソラのこと大好きだからね!アルトも私がソラと仲良しだからって拗ねないの!あだーっ」


 アルトとソラはお互いが一番だということは、きちんと理解している。

 だけど私だって2人の友達なのだ。私もアルトとソラと昔みたいに遊びたいんだからね!

 そう続けようとしたのだが、ソラに頭を殴られて何を言おうとしていたか忘れた。困っちまうぜ。


 「なに首傾げてんだよ!お前は昔からほんっとうに~っ、兄様とおれを仲違いさせてそんなに楽しいか!?もう黙れ!」

 「うーん、思い出せぬ。仕方がない、踊るか」

 「だからって踊るなー!じっとしていられないのか!?」


 ロボットダンスをする私の横で、ソラが両手を広げてうがーっと叫んでいる。元気いっぱいだね~。

 そんなソラをエミリアがジト目で見ていた。


 「ソラ君、おれはこいつのこと誰よりもわかってるんだぜアピールやめてください」

 「そんなアピールした覚えないんだが!?」

 「おねえさまのことを誰よりも理解しているのはジーク様です!」

 「ごっほぉ、げほごほ」

 「まさかそう来るとは思わなくてジークがむせちまったじゃねーか!つーかこうなることはわかってただろ、しっかりしろジーク!エミリアのボケはお前が担当だろうが!」

 「いや、知らねーよ!?」


 ジークの胸ぐらを掴むソラに私が言えることは、ただ一つだけ。


 「よっ!今日のツッコミもキレッキレですね~、ソラさん!」

 「リディア、黙れー!」


 そこまで叫ばれたら仕方がないからね、黙ってあげましょう。

 お口にチャックをした私を横目に小さく口を開いたのはリカだ。


 「…リディアを誰よりも理解しているのはおれだが?服の下に隠れている黒子の位置も知っている」

 「唐突な供給、ありがとうございます(さすがです、リカ様)」


 相変わらずの無表情でとんでもないこと言い出したな、こいつ。


 私は心の中で見知らぬリディアさんにテレパシーを送る。

 リディアさん、逃げてください。この無表情ストーカー、あなたの服の下の黒子の位置を知っています。


 「ん?リディアって、もしかして私!?」

 「口数少なくて助かるなと思ってたら、とんでもねー爆弾投下してきたな、こいつ。そしてアリス、お前はツッコミ側だろ!?ボケに回るなー!」

 「ソラが私のボケを華麗に無視した!」

 「はあ?僕だって……~っリディア、今すぐ服脱いで!」

 「に、兄様ー!抑えてー!さすがにそれはダメだからー!」


 ソラは必死にアルトを羽交い締めにする。そんなソラに私は優しく微笑みかけた。安心なさい、大丈夫だから。

 アルトはこう見えて度胸がない。私の制服に手を伸ばしてるけど、顔は真っ赤だし手は震えている。気持ちは本気だろうけど、結局脱がせることは出来ないのだ。


 「そもそもアルトが一番興味あるのはソラの裸だから。あんたは自分の心配をした方が良いよ」

 「お前、本当にいい加減にしろよ!?」


 ソラがわーぎゃー言っているが、今はそれよりもリカだ。

 え、マジで私の黒子の位置を知ってる?

 リカをじっと見つめれば、彼は無表情に自分の右胸の下をとんとんと指で突いた。

 まさにそこと同じ位置に私は黒子がありまして……は?


 「リディアおねえちゃ~ん、服脱いで~」

 「ジーク、その色魔を止めろ!おれの両手は兄様で塞がってる!」

 「っだぁあ!仕方ねぇなぁ!」

 「…離してください、ジーク王子」

 「正気に戻れ、ギル。怪獣暴力女の裸を見たところで目が潰れるだけだぞ!」

 「ふざけるなよ、ジーク!天才美少女ヒロインの裸にどれだけの価値があると思ってんのよ!つーかリカはガチでどうして私の黒子の位置を知ってるのー!?」


 ぎゃー!?と叫ぶ私にソラが親指を立てる。


 「リディア、その調子だ。ツッコミ側に戻ってこい!」

 「今はそんな余裕ないっての!?」


 だがしかし、私はハッと気づいた。

 ここはあえてツッコミに集中することで、☆珍事件☆「リカが黒子の位置を知っている」を忘れることができるのではと。うん、忘れよう。

 私は切り替えの早い女、リディア。だからツッコミに専念します。


 「ジーク様、ギル王子は私が抑えます!今のうちにおねえさまの服を脱がせてください!」

 「勘弁しろー!」

 「それは私の台詞だァー!エミリア、ジーク、ナイスボケ!」

 「なんだそりゃー!?」

 「追いボケありがとう、ジーク!」

 「リディア、それはツッコミじゃねー!やっぱお前、黙れ!」

 「……リディアとソラは、昔から息がぴったりだよね~」

 「兄様ぁああああ!?」


 私がジークとエミリアにツッコミしている間に、アルトは力なく笑いながら気温を氷点下にしていた。そんなアルトの周りをソラがおろおろと駆け回っている。

 となると、私がやるべき事は決まっている。


 「おいおい、痴話喧嘩はよそでやってくれよ☆」


 両手でアルトとソラを指さして、ひゅーひゅー。


 「殺すぞ、リディアー!」

 「殺すぞいただきましたー!サムバディ、セイ!」

 「いただきましたー」

 「ありがとう、アリス!」

 「お前ら、黙れー!ジーク、ツッコミ手伝え!?」

 「いや無茶言うな。こいつ止めるので精一杯なんだよ」

 

 暴れるなと悪態をつくジークは、未だにギルを羽交い締めにしていた。

 そういえばギルも私の服を脱がすとか言ってた気がする。そもそもなぜ服を脱がせる話になったんだ…黒子?


 「はい、忘れた。何考えてたか、記憶抹消しましたー。私はツッコミに専念しまーす」

 「チッ。情けない顔してるくせに、馬鹿力め…ミルク!」

 「わかってるわ、ギル!王子様の代わりにジーク王子の服を破けばいいのね!」

 「おれの拘束が解ければいいだけなんだけど。まあそれでもいっか」

 「よくねーよ!?」

 

 ちょうどタイミングよく、ミルクがジークの制服を破こうとしていた。

 となると私がやるべきことは、ただ一つ。


 「元俺様馬鹿の裸を見て喜ぶ人間なんて、ここにはいないぞ☆」


 そしたらソラに無言で頭を殴られた。痛い…。


 「おれはこう見えて結構鍛えてるからな!?」

 「ジーク様、早く脱いでください!筋肉をおねえさまに見せてアピールしてください!」

 「え、いや…エミリアになら、見せてやっても…いいけど」

 「なにを言っているか聞き取れません。滑舌よく話してください」

 「リディアおねえちゃんにならぁ、おれの裸…見せてもいいよ?」

 「ぷふー、私は子供の頃に王子様と一緒にお風呂に入ったことがあるんだから!」

 「わ、私だって、おねえさまと一緒にお風呂に入ったことがありますわ!」

 「はあ?それなら僕だって、リディアのトイレについて行こうとしたことがあるからね!」

 「揃いも揃って、ボケるなー!それと兄様、それは自慢にならないからー!」

 「どんぐりの背比べだな」

 「永遠に見ていたいです(その通りですね、リカ様)」


 いやー、全員集まると、やっぱり圧倒されるよね。

 ツッコミに疲れた私は少し離れた位置からわーぎゃー言い合いをするみんなを眺めていた。


 久しぶりの大量ツッコミに汗まみれだ。制服しぼったら水が出てきそう。

 ソラなんて私以上に汗だくになってなにかを叫んでいる。

 

 「アオ兄ちゃん、助けてくれー!」


 私は深々と頷いた。

 こういうのをフラグと言います。


 アオ兄ちゃんは「いつ君」の通りであれば、この学園に教師として在籍している。そんなアオ兄ちゃんにソラは助けを求めた。

 そして私の背後で聞こえる足音。


 「そう!私の後ろには~、アオ兄ちゃんがいる!いだだだっ!?」

 「貴様らの耳は飾りか。予鈴はすでに鳴っている。速やかに各教室へと移動しろ」


 振り返るとそこには思った通り、紺髪紺眼のやさしい笑顔なのにどこかSを感じるお兄さん…ではなく、眉間に皺を寄せる白髪色黒バイオレンスがいた。

 ちなみに現在進行形で私は腕をひねられている。


 「いろんな意味で、なぜに!?」

 「俺たちが呼んできたんだ」


 ガブちゃんの後ろからひょっこり顔を出したのはサラとシグレだ。


 「なるほど。どうりで2人が見当たらなかったわけだ!つーか痛いんですけどー!」

 「先生、リディア様を解放してください」

 「アー、スマナイ。懐かしさのあまり、腕をひねってしまった」

 「ガブちゃん相変わらず演技下手だな!?」


 つい流れでツッコミしてしまったが、え。本当にガブちゃん?

 解放された腕をさすりつつそこにいた人物を見て、胸がぐぅっと熱くなる。

 だって私のすぐ隣で舌打ちをしている色黒バイオレンスは、間違いなく私の第二の師匠であるガブちゃんだったのだから!


 「ガブちゃんだー!また会えてうれし…ぐえー」


 万歳と両手を広げてガブちゃんに抱きつこうとした私。

 だが、

 そんな私の首根っこを掴む馬鹿野郎がおりまして、えぇ。


 「アルトー!首が絞まるし、寒いわー!」

 「僕の目の前で、自分から他の男に抱きつこうとするとか…」

 「どんだけ僕を嫉妬させたいの?でしょ。もうあんたがなにを言うかお見通しなんだからな!」

 「じゃあ馬鹿な真似するなよ!?」

 「あだーっ。ちょっとソラ!何回私のこと殴るのよ、いい加減怒るぞ!」


 私は火事場の馬鹿力でアルトの手を振りほどき、ガブちゃんにジャンピング抱きつきを披露した。


 「チッ」

 「わーい!本物だー!」


 ガブちゃんは舌打ちしつつもしっかりと私を抱き留めてくれた。

 迷惑そうな顔をしてるけど私のこと抱きしめたままってことは、ガブちゃんも私との再会を喜んでいるわけでしてぇ。


 「えへへ!」

 「はぁ。相も変わらず元気そうで何よりだ」


 最終的には私に笑いかけてくれた。

 

 「ひゅーっ!色黒バイオレンス格好いい~!いだーっ」


 そしたら両手を離された。

 私はまっすぐ転落した。

 思いっきりお尻を打ち付けたよ、この野郎。


 「20分後に入学式が始まる。各自、教室へ迅速に向かえ」


 お尻をさする私を呆れた顔で見下ろしたのち、ガブちゃんは鋭い視線をみんなに向けた。


 みんな不服そうな顔をしていたけれど、あと20分で入学式が始まるのはさすがにやばいと思ったらしい。

 アルト、ジーク(エミリアに無理矢理腕を引っ張られて)、リカ、ギルが私に手を差し出した。


 ……うん。なぜに?


 え。流れがおかしくない?

 入学式がもうすぐ始まるやばいと思って、どうしてその後私に手を出し出す?


 嫌な予感がしたので自力で立ち上がれば、私の右手をアルトとリカが、左手をギルが掴んだ。

 思い出したのは、散々苦しめられた八つ裂きの刑。


 「いやだー!もう引き裂かれたくないー!」


 真っ青になって首を振るよね。

 そしたら全員から怪訝な顔をされた。え、どういうこと?


 「まあリディアがへんてこなのはいつものことか」

 「おい怒るぞ」

 「さ、早く教室に行こう」


 アルトが言いながら東の方角へ歩き始める。

 よくわからないが教室に案内してくれるようだ。それならいいか。

 まあアルトに手を掴まれている私も否応なしに東に向かって歩くので、いいかもくそもないがな。

 ハハハと私は死んだ魚の目で笑う。が、


 「お前の教室はそっちじゃない」

 「ぐえっ」


 同じく私の手を掴んでいるリカが西に向かって一歩踏み出した。

 つまり私も西に体が引っ張られるというわけで。

 嫌な予感がしてきたぞと思ったときにはもう、私の体はぐいんっと新たな方角へ引っ張られていた。


 「リディアおねえちゃんはこっちだよ~」

 「んげゃあ」


 ギルが私を北側に引っ張り、


 「おねえさまは私と同じ教室ですわ!」

 「えーん」


 エミリアが私の右手を掴み、南へと引っ張る。


 「ミルク!」

 「はいは~い。王子様は冬組だからね~」

 「ぐえっ」

 「ジーク様!」

 「ったく、仕方がねーな。ほらリディア、夏組に来い」

 「ぎゃー」

 「…アリス」

 「はい、リカ様。リディア、諦めて秋組に来てください」

 「いだだ」

 「ソラ、力を貸して」

 「~はぁ、兄様にお願いされておれが断れるわけないじゃん。リディア、お前は春組だ」

 「ソラまで!?いだぁーい」


 私は現在両手を総勢8名の人間から、東西南北の方向に引っ張られている。

 これがほんとの八つ裂きの刑ってね☆


 「じゃないわー!」


 ふざけてられないから。

 今度こそ本当に腕ちぎれるから。

 リディアちゃん、ブチ切れてるからね!


 「つーか春組とか夏組ってなんだ!?年齢的に私は、ソラ、ジーク、エミリア、アリスと同じ組じゃないのかーッ!」

 「天空学園には合計5つの組がある。出身国によって組は決まる。同い年であっても、出身国が異なれば同じ組にはならん」


 悲鳴を上げる私の問いに答えてくれたのはガブちゃんだ。


 ちなみに冷静な顔と声だが、この人現在進行形でシグレを羽交い締めにしている。

 なぜかというとシグレがバタバタと大暴れしているから。

 

 「無礼者どもめ。リディア様を離せ。貴様ら全員殺してやる」

 「ここは天空神殿じゃないんだから、不敬罪で殺されたらどうするの?我慢しな?」


 ガブちゃんはシグレで手一杯だ。

 だから私は彼に助けを求めよう。


 「サラ、助けて!」

 「まあまあ」

 「まあまあ!?」


 そしたらもう少し頑張れ的な笑顔で濁されたんだけど…。

 どういうこと!?


 「ていうか天空学園ってダサいな」


 ガブちゃんの解説にさらっと出てきた「天空学園」。

 この学園の名称なのだろうけど…こんなときだが実はすごく気になっていた。

 だって、まんますぎる。ツボにはまったみたいで思わず笑っちゃうよ。


 「あはは。誰が命名したの?」


 ゲラゲラに笑った。

 瞬間、みんなが一斉に私から飛び退いた。

 ……はい?


 例えるなら静電気が起きたときと同じように…なにかにはじかれたように飛び退いていた。

 てこでも離さなかった私の手を、アルトですら離したのだ。ただ事ではない。

 

 「え。突然なに、怖…ぶへぇぇぇぇ」


 そうして怯えたときにはもう、私は大量の海水を頭からかぶっていた。

 ……いっとくけどこれ、お笑い番組でコメディアンたちが体を張るくらい大量で激しい水だからね。滝行の方がまだ優しいってくらいの勢いだからね!?

 

 「犯人誰だ、コラァ!ごぼぼっ…しょっぱ」


 直近の海水と言えば自称神だが…

 

 「もしかして自称神の仕業!?ぶへぇぇぇぇ」


 おまけとばかりにもう一度海水をかぶりました。

 くそ、あの美青年、どんだけ自称神を嫌がってるのよ。

 

 「あとで絶対に殴る…」


 怒りに拳を振るわせる私を疲れ切った顔で見つめるのはソラだ。


 「お前、今度はなにやらかしたんだよ」

 「今回に限ってはなにもやらかしてない!相手の心が狭いだけ…うっそでーす。狭いとか思ってませんよ、アハハハ。だから海水はもう勘弁!」

 

 ソラの哀れみの視線は無視して馬鹿みたいに笑っていれば、仕方がないとばかりに私の頭には一滴だけ海水が落ちてきた。

 腹立つな~。そこは0滴だろ。


 だがしかし、許しましょう。私は心が広いので。

 なにより海水を浴びてよかったこともあるからね。

 よかったことがなにかって?それはもちろん、みんなが私の手を離してくれたことだ。


 てなわけで、みんなが私から距離を取っているうちにガブちゃんの元へ全力疾走。

 急いでサラの背に隠れた。


 「ふはは!これでもう私は八つ裂かれない!」

 「うーん、すっごく視線が痛い。リディア、俺を盾にするのやめて~?」

 「ごめん、我慢して!」


 わいわいと盛り上がる私達。

 そんな私達を不機嫌そうな顔で見つめる人たちは結構いまして、えぇ。


 「リディアの部屋はもう用意されてるから君は春組だよ」


 不機嫌筆頭のアルトが目の笑っていない笑顔で私においでと手を差し出しました。

 私はにっこり笑顔でサラの背中に隠れる。


 「組と寮は出身国で決まるんだ。だからアルト王子は、春組の寮にリディアの部屋を用意したから、こっちにおいで~って言ってるんだね」

 「わかりやすい解説ありがとうサラ」

 「じゃあ俺の背中から出てきてくれる?」

 「それとこれとは話が別」

 「残念」


 そう言って肩を下げつつもサラはやさしく私に笑いかけるから、私もつられてはにかむ。一気に気温が氷点下になった。

 寒いですね、はい。


 麗らかな春を真冬にしているどこぞのブラコンヤンデレ王子は、にこにこ笑顔で私に手招きをしていた。


 「リディアは僕の隣の部屋だよ。わかったなら早くこっちに来て」

 「同室にしようとする兄様をおれは全力で止めた。だからお前は大人しく春組に来い」


 疲労で痩せこけて見えるソラも私に向かって手招きをする。

 私はちょっと首を傾げるよね。


 「男女混合の寮なんだ?」


 私達の年齢ってお年頃だから、普通男子寮と女子寮で分けるものだと思うけど。

 乙女ゲームの世界…ごほん「いつ君」と似て非なる世界だから、恋愛推奨ハプニング大歓迎の男女混合寮なのだろうか。


 「……まあ、おれたちこう見えて王子だから」

 「……。」


 ソラの遠い目を見て察した。

 アルト、権力使ったな。


 「そういうわけだから、リディアは春組だよ」


 アルトはにっこりと微笑む。

 そんなアルトに同じくにっこりと微笑みかけたのはエミリアだ。


 「その理論がまかり通るのであれば、おねえさまは夏組ですわ。私もおねえさまのお部屋をご用意してありますもの。もちろんジーク様のお隣の部屋です」

 「おい、おれ初耳だぞ!?」


 えっへんと胸を張るエミリアと、はあ!?と口を馬鹿でかくあけるジーク。

 そんなジークを横目で見るのは無表情のリカだ。

 この流れ…嫌な予感しかしない。


 「こいつは秋組だ」

 「お部屋もリカ様の隣に用意しています」

 「やっぱりそう来たか!」


 こうなってくると、もちろんギルとミルクが黙っているわけもなく。

 (つーかアリス、顔がわくわくしてるぞ。ポーカーフェイスが崩れてるぞー)


 「リディアおねえちゃんはおれと同じ部屋だよ。昔みたいに一緒に寝よ?」

 「王子様は冬組なんだから!」


 ギルがきゅんきゅん上目遣いで、ミルクがキラキラ笑顔で私に手招きしていた。

 …ギルの場合は同室なんだな。まあ姉弟だから同室でもいいんだろうけど。いや、いいのか?

 おほほと笑いながら私はサラの後ろに隠れる。


 「ちなみに彼らがリディアを無理矢理連れ去ろうとしないのは、先生とシグレと俺が結界を張ってるからだよ」

 「どうりでみんな手招きするわけだ。陳謝」

 「でも3重に張ってる結界のうち、シグレと俺の結界はアルト王子とリカ王子に破られちゃったんだ。強いね、あの2人」

 「ガブちゃん、絶対に結界破られないで!私、今度こそ八つ裂きにされるぅ!」


 私は当然のごとくガブちゃんに泣きついた。

 うざそうな顔をされました。泣くぞォ!


 そんな私に対し色黒バイオレンスが「両手が塞がっていなければすぐにでも黙らせたものを…」とか不穏なこと言っている中、シグレが頬を桃色に染めて頷いた。


 「ご安心ください。リディア様は私が守ります」


 リディア様、泣いちゃった。


 「えーん。シグレ、大好き~!」

 「リ、リディア様っ」


 やっぱりシグレは天使だ。

 羽交い締めにしているガブちゃんごとシグレに抱きつけば、かわいい天使はぼんっと音を出して真っ赤になり、もじもじと視線をさまよわせた。かわいい。

 言うまでもなく気温はさらに低下した。


 「チッ。この結界、どんだけ頑丈なの?リディア、早く僕のところに来て」

 「おねえさま、こちらにいらっしゃってください」

 「そいつらは信用ならない。来い」

 「リディアおねえちゃん、おれ寂しい…」

 「王子様~!」

 「ぐっふ」


 みんな必死に私を呼ぶから(一名無表情)、罪悪感が半端ない。

 いい加減、どこかの組を選ばなければならないとは思うが…。


 「リ、リスクがあるからどの組も選びたくないのよね…」


 どうしたらいいんだ~。

 うわーんと半泣きで頭を掻きむしる。

 そんな私を見下ろすのは、冷めた目、うれしそうな目、楽しそうな目。

 顔が引き攣るよね。


 …あの、ガブちゃんはともかく残りの2人はどうしてそんな目で私を見るの?

 私、今困ってるよね?なぜに陽の感情?


 「もしかして、Sに目覚めた!?ガブちゃん、あなたがついていながらどうして2人がSになってるの!アオ兄ちゃん化した2人なんて見たくないよ!私の天使たちを返せ!」

 「わかった。後で腕をひねってやる」

 「すいませんっしたー!」


 となるとなぜ2人は笑顔?

 首を傾げる私にシグレが笑いかける。


 「リディア様は私達と同じ天組です」

 「出身国から考えても、光の巫女としての責務を考慮しても、リディアは天組以外あり得ないよ」

 「なんだってぇー!?」

 「「「「「「「「は?」」」」」」」」


 シグレとサラと同じ組でうれしい。

 けどそれ以上に…


 「だったら、早く言えー!!」


 ぶち切れるよね。

 ご覧ください。私の血管破裂しちゃいました。額から血が噴水のように出てるよ!


 「す、すみません。口止めをされていて…」

 「今やっと告げて良しのお達しが来たんだよね~」

 「貴様、なにをした?光の巫女が神に嫌がらせを受けるなど前代未聞だぞ」

 「はー?神ぃ?ってことは太陽神様の仕業か!」


 こぉるるるらぁ、太陽神様ァ!

 最近めっきり音沙汰なしだと思ったら、とんでもない嫌がらせしてくれるじゃないのー!

 もしや海水も己の仕業かァー!


 応答せよと私は脳内で語りかける。が、太陽神様無視である。物音すらしない。

 居留守使いやがって、あのクソ神ぃ。


 リディアちゃん、青筋ピキピキだ。

 今日はずっと青筋ピキらせまくってるから絶対明日顔面筋肉痛になってるよ。全て太陽神様のせいだ!

 私のイマジナリー太陽神様は『ちがうぞぉ。わしじゃないもーん』て全力で首を横に振っているが、知ったことかー!私の知り合いの神様はあんた以外にいないんだよー!


 「えーと、そういうわけでうちの太陽神様がお騒がせしました。みんな教室にGOー☆」


 はあ?と納得いかない顔をしている面々に、私は謝罪と美少女ウインクを提供する。が、自己主張と我儘が激しい彼ら…というかブラコンヤンデレ王子が納得してくれるはずもなく。


 「へー、そうなんだ。でもリディアは春組だよ」

 「ひぇ」


 アルト君。気がつけば目の前におりました。

 でもって扉を叩くパントマイムをしながら、至近距離で私に笑いかけていた。

 私は涙目引き攣り笑顔。


 ブラコンヤンデレ怖いぃ。

 ホラー映画かと思ったぁー。


 胸を張って言おう。ちびりかけた。

 おそらくガブちゃんの結界が恐怖アルトを防いでくれてるから、アルトは一人パントマイムを披露しているのだろうが、怖いから。普通に怖いから!?


 「ガブちゃん、絶対に結界破られないでね!?」

 「黙れ。気が散る」


 私の目を見ず舌打ちするガブちゃん。

 そんな彼の首筋には一筋の汗が流れ落ちていた。

 …はい?

 私がサァーと青ざめたのは言わずもがな。


 「待って待って、待って!?割れる?割れちゃうの?冗談は腕ひねりだけにしてよ、ガブちゃん!?」

 「意味のわからないことを言うな。黙れ」

 「腕ひねっていいから結界死守してぇ~」

 「うるさい。黙れ。抱きつくな。暑苦しい。邪魔だ」


 うわーんと半泣きで私はガブちゃんに抱きつき続ける。

 そんな私を目の笑っていない笑顔で見下ろすのは結界を叩き続けるアルトである。ここってホラーゲームの世界でしたっけー!?


 「あはは、すごく楽しそうだね。懐いてるね。見せつけてくるね~?なに?リディアはこういうのがタイプなわけ?ねえ?」

 「ギャー!殺人鬼が話しかけてきたー!」

 「いつものへんてこ発言は今いいから。で?こういうのがタイプなの?」

 「あんたはソラが大好きなんだから、私のタイプとかどうでもいいだろー!」

 「あはは、早く答えてよ。ねぇ?」

 「寒ぅ。ったく仕方がないわね!ガブちゃん、シグレ、サラのうち誰かを婿に選ぶなら、ガブちゃんを選びます!」

 「貴様っ、この状況で!」


 パキッ


 余談だが私は飴が大好きだ。

 丸っこい飴も繊細な飴細工も好きだけど、平たくて透明で大きな…縁日とかでよく見る動物の形をした飴が一番好きだ。

 前世の子供時代、私はその大好きな飴を振り回しながら歩いていた。結論から言うと、棚にぶつけてひびが入った。パキッとね。


 私の目の前にある結界も今、パキッとひびが入っていた。

 

 私が絶叫し、シグレとサラが顔色を変えて、ガブちゃんが舌打ちをして、アルトがブラコンヤンデレ極悪スマイル(目は当然笑っていない)で私に手を伸ばしたのは言わずもがな。


 「う、うわーん!師匠、助けろぉー!?」


 半べそリディアはオカマ口調の大好き師匠に八つ当たりしました。

 するとあら不思議。


 「へ?」


 アルトの姿が消えた。

 しゅんっと一瞬で。まるで空間転移したみたいに。


 「もしかして、師匠!」


 自然と口角は上がり慌てて辺りを見まわす。が、そこに黄緑色の髪でおほほと高笑いする美青年はおらず。…ちょっとだけ、しょんぼりする。

 べ、別にさみしくなんてないんだからね!


 代わりと言ってはなんだけど、この場には私とガブちゃんとシグレとサラ以外の人間の姿が忽然と消えていたんだから。

 ふふんと胸を張って、青ざめる。

 …え、怖い怖い。なにそれ。そこは増えようよ。減らないでよ。胸張れないよ。なんで胸張った私!?


 「どういうこと?神隠し?みんな花子ちゃんの世界につれてかれちゃった!?」

 「なにを阿呆なことを言っている。これは神による空間転移だ」

 「神だってぇ?」


 ガブちゃんの懐かしき冷ややかなお声に私は吃驚仰天。のけぞります。


 太陽神様、今日はどうした!?

 悪いことも良いこともしてくれるじゃん。いつもはうひょひょって笑ってふざけてばかりなのに。


 「間に合ってよかったです」

 「冬の国の子たちから始まって最後が春の国だったね」

 「しかも順番に空間転移してくれていたご様子!?」


 どうりでアルト以外が静かだったわけだ。

 私はアルトにばかり注目していたから全然気づかなかった。いえ、まあ。彼を無視する方が難しいですけど。


 ほんとうに太陽神様、どういう風の吹き回しだ。気が利きすぎる。

 

 「仕方がないから私に嫌がらせしたことは許してあげるよ」


 心の広い自分を褒めます。

 するとシグレとサラが私に手を差し出した。2人も褒めてくれるの?


 「それでは私達も天組校舎に向かいましょう」

 「始業式が始まるまで少し時間があるから、歩きながらこの学園のこと説明するよ」


 違った。だけど残念だとは全く思わないよ!

 やさしい笑顔を浮かべる2人の手を私はぎゅっと握る。

 

 「うん、よろしくね2人とも!」


 なんだか懐かしくて3人でえへへと笑う。

 そんなときにふと思った。


 「あれ?そういえば、なんでガブちゃんもシグレもサラも学園にいるの?天空神殿は留守にしていいの?」


 特にガブちゃんは天空神殿に結界を張るという大役を任されていた。

 天空神殿という名のブラック企業でたまにストライキを起こすくらい3人は働かされていたはずだ。もしかして今ここにいることもストライキの一種?

 首を傾げる私に対し、シグレは笑顔で、ガブちゃんとサラは肩を下げて見せた。


 「学園生活も職務の一環なのです。ご安心ください」

 「追求することを禁じる」

 「俺はリディアと一緒に学園生活を過ごせてうれしいよ」

 「ふーん?」


 よくわからないけれど、また3人に会えて私はうれしかったから、それでよしとしよう。

 

 「それじゃあ行こーう!」

 「リ、リディア様っ」

 「あはは」


 私はシグレとサラの手を引っ張って走り出した。

 目指すは天組である!

 そんな上機嫌な私にガブちゃんが冷ややかな眼差しで一言。


 「反対方向だ」


 私は天才美少女ヒロインらしく、頭をコッツンして舌を出した。


 するとシグレとサラがなにかにはじかれたように私から飛び退いた。

 既視感を感じるね。嫌な予感がするね。そしたら案の定、頭から海水をかけられていた。

 

 びしょ濡れリディアちゃんはにっこり。

 やっぱクソ神、許さん。




 【おまけ1】部屋の鍵の話です。



 みんながわーぎゃー騒ぐ中、リディアとアルトは偶然2人きりになった。


 「ちょうどよかった。君に話したいことがあったんだよね」


 アルトにしては珍しく真面目な顔で自分を見下ろすものだから、リディアは瞬時に悟った。


 これはソラのかわいい自慢をされる展開だな。キラーン。


 10年分のたまりにたまったソラ自慢。

 若干…いや、かなりの恐怖を抱く。が、仕方がない。甘んじて受け入れよう。


 リディアはアルトに超好かれている自覚があった。

 そんな彼にリディアは寂しい思いをさせてきた。もちろんアルト以外のみんなにも心配をかけたし、寂しい思いをさせたと思っている。だけどアルトは特に、だ。

 なにせ彼はリディアに会えなくて禁断症状を発症して幻覚を見るくらい、友達のことが大好きなのだ。


 ならば自分は罪滅ぼしもかねて、友達として彼の抱えるソラ愛を受け止めるしかないではないか!


 「どんどこい!ただし今まで何してたとかは聞かないで!」


 腹をくくったリディアに怖いものはない。

 胸を張ってアルトに笑いかける。

 アルトもにっこりと笑い返してくれた。


 「まあそれは追々聞くとして。僕、部屋の鍵閉めてたよね。どうして外に出れたの?」


 話したいことというよりも、質問だった。

 しかもごく当たり前のことを聞かれた。

 身構えていただけに、かなり拍子抜けした。


 「いや普通に内側から鍵を開けて出たよ?」


 追々聞く発言は聞かなかったことにして、リディアはしっかりとアルトの質問に答える。

 だがしかし、その回答が不満だったのかアルトの眉間には皺が寄っていた。


 「内鍵じゃなくて、外鍵の話なんだけど…」


 実はアルトが用意したリディアの部屋の扉には2種類の鍵が設置されていた。

 部屋の内側にある鍵と、部屋の外からしか開け閉めができない外鍵。

 監禁用の特注の鍵である。

 余談だが窓にも同じ鍵が設置されている。


 他の人に気づかれないように外鍵には隠蔽の魔法もかけていた。

 (堂々と外鍵を設置していたらそれをソラに見られて「に、兄様。それはちょっと…」と言われたので)


 リディアを誰にも奪われない絶対の自信がアルトにはあった。

 だからこそ、るんるんらんらんスキップで部屋に戻ったとき、リディアの姿が忽然と消えていて大いに取り乱した。


 「特注した鍵なのに。タイミング悪く壊れた?」


 アルトはうーんと首を傾げる。

 こんなことになるのなら扉を氷漬けしておけばよかったな…なんて思ったりして。


 ちなみにこの場にリディアはいない。

 「内鍵…」の「う」の時点で尿意に襲われトイレに向かって走って行ったのだ。

 そのためアルトのヤンデレ発言は何一つ聞いていない。驚異の危機回避能力である。


 しかしここに一人、危機を回避できなかった哀れな人間がいた。


 「…おれは何も聞いてない。聞いてない。ぜってー聞いてない~」


 石畳の地面の上で、土下座の最上級を披露している元俺様馬鹿のことである。


 ギルとミルクのかわいい口喧嘩を年長者らしく止めようとしたジークは、ミルクに思い切り背中を叩かれ、くるくるとコマのように回転し、「内鍵…」の「う」の段階ですでにアルトの足下に寝そべっていた。

 ジークは頭がいいのでアルトの独り言から状況を瞬時に理解し、ヤンデレ恐怖をしっかりと浴びてしまったというわけだ。運が悪いにも程がある。

 (ミルクに悪気はない。いい人そう!とジークに懐いたので、親しみを込めて叩いてしまったのだ。…怪力をコントロールするのを忘れて)


 ジークは自身の記憶を抹消することを諦め、心の中でリディアに十字を切った。

 まあリディアなら自力でどうにかできるだろう。

 今はそれよりも……


 「あれー?ジークこんなところでなにしてるの?」

 「ハ、ハハハ…」


 笑顔でこちらを見下ろす恐怖アルトをどうにかしなければ。

 その目は当然のごとく笑っていない。

 このままでは死ぬ。誰が?もちろんおれが。


 「もしかして僕の独り言、聞いてた?」

 「ま、まあ…」

 「リディアを逃がしちゃった僕を笑いに来たのかな~?」

 「はあ!?お前、被害妄想が激しすぎるだろ!?どうした!?」

 「ジークの分際で僕に意見しないでくれる?」

 「いや、理不尽すぎるだろ!?」


 リディア不在の10年は、アルトの精神をかなり不安定にさせた。

 が、それはジークのあずかり知らぬことだ。

 とばっちりを受けるジークは被害者以外の何者でもない。


 ジークの目と鼻の先にある野花には霜がつき始めていた。

 タイムリミットは迫っている。

 ジークは最終手段にでることにした。

 かじかむ手を祈るように握りしめ、腹から声を出す。


 「ソラー!お前の兄貴どうにかしろーッ!リディアー!アルトをどうにかしろーッ!」


 助けを求めることは簡単なようで難しい。

 だがことアルトに関しては、ジークは迷いなくそれを実践できる男であった。幼少期に植え付けられたトラウマほど強いものはない。


 エミリアにあとで説教されそうだなぁ。

 とほほとジークはアルトに腕をひねられながら、ソラとリディアを呼び続けたのであった。



 おわり

 

 余談ですが、外鍵はリディアが監禁されたままだと都合が悪い人たちによって壊されました。

 リディアを着替えさせた犯人は、その人たちの上司です。神様パワーです。


*******************************

 プロローグが長くなってしまってすみません。

 作者もかなりびびっています。

 元々主要キャラのほとんどが自己主張大なタイプで、さらに10年間行方不明だったリディアと再会できて大喜びというバフがかかっている状態。

 リディアもあーだこーだ言いつつ、みんなと再会できてうれしいので楽しんじゃう。

 なので全員テンション高くて、よくしゃべる。暴走する。暴れ回る。最終的にアルトが結界をぶち破りました(笑)みんなかわいいですね。

 そうしたら文字数が半端ないことになっていました。あとで編集するかもしれません。


 とりあえず残り2話で次章にいける予定ですので、もうしばらくお付き合いいただけるとうれしいです。


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