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110.勝者ではなく敗者でした。訂正するので助けてソラぁ!

誤字報告ありがとうございます!


 神器が拡声器でなんでやねーんと叫んだ私こと天才美少女ヒロイン、リディアちゃん。

 この真実にいまだに衝撃を受けているけど、まあなにはともあれ私は神器を手に入れた。ソラとエリックは拘束が解けたのか私の元へ走ってくる。

 

 「ねえ2人とも見てよこれ~。神器が拡声器とか…」

 「リディア、それお前の体の中に沈んでいくぞっ!?」

 「いやいやソラ君、なにふざけたこと言って…うわぁっ神器が私の体の中に入ってきてる!?気持ち悪っ!」

 

 ソラに言われて気が付いたよ。

 なんと拡声器、私の体内にずぷずぷと沈んでいくのだ。ていうか私の体が拡声器を取り込んでいる!?

 神器は体内出し入れ可能ですってか?いやいや知らない。そんなの聞いていません!


 「ちょっと太陽神様ァ!?」

 『やったねリディア!武器ゲットじゃ☆』

 「武器ゲットじゃ☆じゃないから!?」


 ほんと今日ほど太陽神様をぶん殴りたくなった時はないよ!?

 拡声器はそのまま私の体に沈み、その姿を消した。ええ、つまり私の体の中に消えたわけ。やめてー!?


 「やだやだ!太陽神様これ取って!?」

 「おいリディア大丈夫か!?」

 「体に異変はないのだ!?」


 ソラとエリックは半泣きで暴れる私の体に異常がないか隅々までチェックする。普段なら、きゃ~エッチ~!とか言って悪ふざけているところだけど、今そんなことしている余裕なんてない!

 私は真面目な顔で2人の肩に手を置いたよ。


 「今から服脱いで裸になるから拡声器の一部とか出てたら、躊躇せず引っこ抜いちゃって」

 「わかったのだ!」

 「おれと兄様をそんなに仲たがいさせたいのか!?」

 「ぐえっ」


 何が起きたかって?2人の了承を得て(得てません)服を脱ごうとした私をソラが羽交い絞めにしたんですよぉ。一刻を争う状況だというのに、おのれソラ、あんたのツッコミ魂を舐めていたよ!…いや、さっきのってツッコミなのか?

 まあいいさ、細かいことは気にしません。私は14歳のおねえさんですからね。怒りませんよ。聖母の心をもって同い年だけど精神年齢的に年下のソラを落ち着かせます。


 「ソラ、落ち着いて。ソラのツッコミ魂が騒ぐのはわかる。でも今はそんなこと言っている暇じゃないの。冷静になって!」

 「お前が冷静になれ!?」

 「いっだぁーい!?」


 ソラが私の後頭部めがけて頭突きをした。それ男友達にやるやつだよね!?私これでも女だぞ!?


 「聖母の心なんてくそくらえ!ソラの馬鹿!分からず屋~!私を止めるなァァ!」

 「いや、止めるの当たり前だからな!?なに裸になろうとしてるんだよ、お前に恥ってもんはないのか!?こら、暴れるなァ!」

 「だって私の体の中に得体の知れないものがあるのよ!?やだやだ、私こう見えて潔癖症なんだから~!!エリック助けてー!」


 私の助けを求める声に正義感の強いエリックが動いた。エリックは珍しく険しい顔をしてソラの肩を掴む。


 「ソラ王子、リディアが嫌がっているのだ」

 「おい、なんでおれが悪者みたいになってるんだ」

 「リディアの脱衣を止めないでほしいのだ!」

 「お前それ文章におこしてみろ!?字面やばいからな!?」

 「ぷふーっ。絵面ならともかく字面って。ぷぷぷ~」

 「黙れ、痴女!」


 ソラがブチギレたところで拘束が緩んだ。

 その隙を私は見逃さない!素早く私はソラの手から逃れ、エリックの背に隠れた。


 「オ~ホッホ!残念だったわねぇ、ソラぁ。エリック!ソラを捕まえて!また妨害されたら困るからね!」

 「わかったのだ~!」

 「離せエリック王子!…くそっ。この8年間でリディアの馬鹿がマシになったことを期待していたのに、マシになるどころか増幅していたッ」

 「あんたはそこで大人しく私が脱衣する様を見ているがいいわ!」

 「やめろォォォオオ!」

 

 ソラのツッコミ属性もボケと天然ボケの手にかかればこの通り。形無しよ!

 私はオ~ホッホとさらに高笑いをして、着ていたワンピースに手をかけた!


 『はい、カ~ット』

 「……。」

 「……。」

 「……。」


 …私はワンピースにかけていた手を降ろしました。

 …エリックも捕えていたソラを解放しました。

 …ソラは「やめろー!」と私へ伸ばしていた手を静かに下げました。

 私たち3人は赤面していた。


 「「「なんだ(なんなのだ)、今のは!?」」」


 ええ、みなさんは赤面して頭をかきむしる私たち3人を見て、なにやってんだこいつらと思うかもしれない。思うかもしれないけど、これは仕方がないんだよ!仕方がないというか意味が分からないんだよ!?


 「わ、私、異物が体に入ったくらいで服脱ごうとしないからね!?」

 「お、おれもさすがにリディアの脱衣は止めるのだ!」

 「おれだってもう少し冷静にツッコミいれるわ!」


 肩で息をしながら私たち3人はお互いに主張する。

 そう。私たち、なにかに操られていたかのごとく阿保な即興劇を披露していたのだ。


 「太陽神様がカットって言ってくれなかったら、今頃私は痴女として独房の中だよ!?……ん?」


 太陽神様が、カットって、言ってくれなかったらぁ?

 怒りで私の額の血管が一つ破裂した。


 「ちょっと太陽神様!なんか知ってるんでしょ、答えろや!?私だけじゃなく、ソラとエリックにも説明しなさいよ!」

 『きゃー。リディアこわーい』

 「うわ、頭の中に声が…」

 「びっくりなのだ!」


 私の命令通り太陽神様はソラとエリックにも自分の声が届くようにしたようだ。2人は混乱した様子で額に手を置いている。

 ナイス、太陽神様!やればできるじゃない!とか言いませんよ。言うわけないだろォ!

 

 「せ・つ・め・い!!」

 『えへへ~。説明もなにも、これはリディアが取り込んだ神器の特性の一つじゃよぉ』

 「特性ぃ?つーか取り込みたくて取り込んだわけじゃないんですけど。出せるものなら出したいんですけど!?」

 『大丈夫大丈夫~。しかるべき時が来れば嫌でも出せるようになるからぁ』

 「私はしかるべき時じゃなくて、今、出したいの!」

 「リディア、落ち着け。話を脱線させるな」


 暴れる私を抑えるのはソラだ。ありがとう、マイエンジェル。


 「一家に一台ソラの時代はもうすぐそこだ」

 「リディアの頭がまたおかしくなったのだ…」

 「安心してください、エリック王子。こいつは昔から頭がおかしいです。それで…えーっと。か、神様?その神器の特性ってやつはいったい…」

 『シリアスをギャグに変える特性じゃよ~☆』

 「「はあ?」」


 太陽神様がいうには、私の体内に入った神器以外にもこの世界には多くの神器があり、神器たちにはそれぞれ異なる特性なるものが付与されているそうだ。私の神器はシリアスをギャグに変える特性だけど、絶対勝利の特性を持つ神器もこの世界のどこかにはあるとか。

 …絶対そっちの方がいいじゃん。なんだよ、シリアスをギャグに変える特性って。つーか最初にその話をしなさいよ。


 『いやぁ、これからリディアけっこう大変な目に合うからさぁ。太陽神様親切心でこの神器の元まで導いてあげたんじゃけどぉ、逆にこの神器のせいで大変な目にあいそうだったから、もうめっちゃ笑っちゃったぁ…じゃなくて、この神器の特性を封印してあげたよん』

 「……。」

 

 そして今この神器に付与されていた特性は、太陽神様の手によって封印された。だからもうシリアスがギャグに代わることはない、と。


 私たちうなずくよね。

 なるほどなるほど。それじゃあ私が大ボケかまして突然服を脱ごうとしたのはすべて私の体内にある神器の特性のせいで。でも太陽神様はその特性を封印してくれた。そのおかげで私たちはあの恐ろしいギャグ漫画のような世界から抜け出せたと。


 「ようするにすべての元凶は太陽神様ってことね。よし、一発殴らせて」

 『きゃー!リディア、目がガチじゃぞぉ~』


 つーか親切心ってなんだよ!親切心でどうしてシリアスをギャグに変えてあげようと思ったんだよ!ていうか、今後私を待ち受けているシリアスな展開ってなんだよ!?

 リディアちゃん、いろんな感情で心が大暴れなんですけど!?


 荒ぶる私をなぐさめるように肩に手を置いたのはソラだ。


 「お前も苦労してるんだな」

 「ソラ…」

 「大丈夫。春の国に帰れば兄様が嫌って程労わってくる」

 「そういえばこいつ、私を春の国に連れ帰ろうとしてたんだったァ!」


 いっそいで私の肩を掴んでいるソラの手を叩き落とすよね!?でもってエリックを盾にして隠れるよね!?

 

 「ああ、神器探しが終わればリディアはソラ王子と共に春の国に帰るのであったな。リディア、またいずれ会おうなのだ。そのときまで達者でなのだ」

 「エリックくぅん?記憶捏造されてますよー?私はソラと一緒に行けない理由を話すのであって、一緒に春の国に帰るわけじゃないからねー!?そしてお別れの挨拶にはまだ早いよ~?」

 「あ。エリック王子、その馬鹿捕まえてください。こいつおれとの約束を破って逃げるつもりです」

 「わかったのだ!」

 「わかるなァ!?」

 

 味方だと思っていたやつが敵になったときって絶望感が半端ないよね。

 私は顔に青筋浮かべながらこちらへ歩いてくるソラとにこにこ笑顔で手を伸ばしてくるエリックから急いで逃げる。


 くそ。さすがに2対1は厳しいよ。瞬間移動で家に帰りたいところだけど、精霊王誕生祭が終わって精霊界を覆う結界が解かれるまで、私は瞬間移動をすることができないのだ。今、何時?もう誕生祭は終わった?

 焦る私に語り掛けてきたのは能天気な声だ。


 『あ、わしってばおっちょこちょ~い。言い忘れておったわ~。リディア~、今なら瞬間移動できるよーん』

 「はあ?」


 殺意倍増だよね。

 ちなみに私が突然ブチギレたのを見て、エリックもソラもびっくりしている。ということは、もう太陽神様の声は2人には聞こえていないということ?


 「いや今はそんなのどうでもいいのよ!なに?もう精霊王誕生祭終わったわけ?」

 『ああ、それなんだけどぉ。リディアが瞬間移動できなかったのはわしが神の力で妨害していたのであって結界のせいではないんだよね~。神の力に属する光魔法と通常の魔法の力ではそもそもの理が違うから、結界張られててもリディアなら瞬間移動できたんじゃよね~』

 「……へー」

 『リディア、意味わかってないじゃろ』

 「……。」


 ちょっと頬に青筋立つよねぇ。

 ぶっちゃけ太陽神様がなにを言っているのかはさっぱりわからないけど、とりあえず一般人や普通の魔法使いには精霊王の結界を破ることはできないけど、私の光魔法であればこの結界を通り抜けられるということはわかったもん。

 にもかかわらず、今回私が瞬間移動できなかったのは太陽神様が私の魔法を妨害していたから。


 『わしが本気を出せば、リディアなんて弱々なんじゃからな♪』


 頭の中で響くドヤ顔な笑い声。私は笑顔で親指を下へ向ける。


 「太陽神様帰ったら覚えてなさいよ」

 『きゃ~。こわぁい』

 

 太陽神様に殺害予告を出す一方で、私は遠くにルーの形をした光の魔力の気配を感じていた。目印さえ見つけることができればこちらのものだ。今なら瞬間移動できる。


 「お前、帰るって…?」


 おっとやっちまった。私の帰ったら覚えてろよの台詞をソラは聞いていたようだ。

 彼は眉間にしわを寄せて私をにらんでいた。


 「あ、あはは。帰るって、ソラってばなに言ってるの~?私が家に帰れるわけないじゃーん」

 「……。」

 「落ち着くのだ、ソラ王子。精霊界には結界が張ってある。我が城の転移魔法陣でなければ帰ることはできないのだ」

 「エリック王子…そう、ですね」


 悲しきかな。マイエンジェルなソラは、私の言葉を華麗に無視したくせにエリックの言葉にはうなずいた。ハハハ。頬を伝う水はなにかって?食塩水だよ。しょっぺー。

 まあいいさ。私はエリックのナイスアシスタントを無駄にはしない。

 落ち込む気持ちを切り替え、ソラが落ち着いているうちに家に帰ろうと私は瞬間移動を…


 ゴロガッシャーンッ


 ……瞬間移動しようとした私の足元に雷が落ちました。 

 はい? 


 かわいい靴のつま先は少し焦げてしまったようで黒い煙が出ています。夢ではないね。現実だね。

 ギギギとさび付いた首を動かしソラとエリックを見れば、


 「でも兄様のために、おれは確実にリディアを春の国に連れ帰らなければならない。だからリディアには春の国に到着するまで気絶してもらう。お前に拒否権はないからな」

 

 絶対逃がさね~と顔に青筋浮かびまくりのソラは、青白い電気を纏った手をバキボキ鳴らしておりました。

 それ知ってる~。ボキボキ音鳴らすの流行ったよね。でもそれやると指の骨が太くなるんじゃなかったっけ?と現実逃避はここまでにして。 


 「すみませんッ!解釈違いです!ソラは魔法とか使っちゃダメです!ツッコミ一本で生きてください!」

 「いや、もっとなにか言うことあるだろ!?つーか待てぇ!」

 

 私はソラに背を向け全速力で走り出した。

 はっきり言おう。私とソラの雷魔法はかなり相性が悪い。

 瞬間移動するには意識を集中しなければならない。お守り人形の位置を探らないといけないからね。でもね、1秒あれば十分なの!だけどソラの雷魔法は私にその一瞬を与えてくれない。

 ドゴンドゴンと息つく暇もなく、ソラは雷を落としてくるのだ。とてもじゃないが集中なんてできやしない。つーか今ちょっと雷かすったんですけど!?これ直撃したら絶対に気絶どころの騒ぎじゃないからね!?丸焦げだよ!ツッコミ属性に雷魔法使わせたらダメだよ~!なんで魔法の才能に目覚めちゃったのよ、ソラぁ~!


 『もうっ、行けぇ光の蝶軍団!』

 「うわっ!」

 

 私はソラに向かって大量の光の蝶を放出した。かるく千匹はいると思う。

 闇の精霊にしか効かない光の蝶だけど基本この子たち金色の光を纏ってるからね、目くらましにはもってこいなんだよ!まあそれ以前に大量の蝶が自分に向かってきたら怖くてひるむよね。案の定、落雷は止んだ。その隙にルーの形をした光の魔力も感知できた。今度こそ瞬間移動できる!


 「リディア!おれがお前を家に帰すなんて…」

 「私はね、あんたたちが死なない未来のためにも、今ここでソラに捕まるわけにはいかないの!じゃあね!」

 「はあ?」


 薄れゆく視界の中、光の蝶にもまれながらも私に手を伸ばすソラと、にこにこ笑顔で私に手を振るエリックが見えた。

 勝者の余裕というやつだね。さきほどまで落雷から逃げていた私はどこへやら、勝者リディアは優雅に春の国の王子と精霊界の王子に手を振った。


 「2人とも元気でね~」

 「待てリディア!アバウトすぎだ!つーか、待てぇええ!」

 「また会おうなのだ~」


 そうして転移した先で私を待ち構えていたのは……



 「このお馬鹿ァァアアア!」



 はい!顔に怒りマークが、1個、2個、3個…とにかくいーっぱいある師匠です☆


 「ソラァ!ごめんなさーい!!私春の国に行く!いっしょに行くから助けてぇ!師匠の雷に比べたら、ソラの雷なんて気持ちのいいもんだよ!」

 「うふふ。リディア、今なって言ったのかしらァ?」

 「ひぃー。いつにもましてめっちゃ怒ってる~」


 わしっと師匠に片手で頭を掴まれたリディアちゃん。震えることしかできないよね!


 「し、師匠!待って。お土産あるから!神器をね、ゲットして…あれ、出せない!ちょっと太陽神様!くそ、無視……あーっと、お土産はドレスアップした、わ・た・し?ギャーッ!」

 「これはリディアが悪いですね」

 「ヒメ…すみません、俺ではクラウスを止めることはできませんでした!」

 

 私は激おこの師匠に物理的に雷を落とされました。ソラの雷から逃げても結局雷を浴びる羽目になりました。アースもアイも助けてくれません。この薄情者どもめっ!


 丸焦げリディアちゃん。地に這いつくばったところで気が付きました。

 …あれ?そういえば、エルだけここにいなくね?




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