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106.なんでやねーん




 「いや分かれ道とか聞いてないんだけどォ~」


 だけどォ~、どォ~、ォ~と私の絶叫がこだまする地下の洞窟。


 リスさんの先導の元、階段を降りた私たち3人を待っていたのは緑の苔に覆われた洞窟だった。びっくりするよね。そんでもってリスさんは驚く私たちを見て『クスクス』笑いながら、すったかたーと走って行っちゃうからもう全力で追いかけるよね。

 だがしかし、うねうねした道を右へ左へ左へ右へと進んだところで、とうとう私たちはリスさんを見失ってしまった。


 まあここまではいいのよ。見失っちゃったけど道の先は一本だったから私たちは談笑しながら歩いた。そしたら現れました、分かれ道!

 リディアちゃん叫びました。分かれ道とか聞いてないよ~って。


 そんなわけで冒頭に戻ります。


 「ちょっと太陽神様!いい加減応答しなさいよ!どっちへ進めばいいのよ!」


 どうせ答えないとわかっているけど怒るよ。怒らないとやってられないからね。そして案の定の無視だ!あとで覚えてろよ、クソ神ィ!

 ブチギレるリディアちゃん。そんな私の問いに答えたのは太陽神様ではなく意外な人物だった。


 「金色の光が見える。あの道から…」

 「え?」


 ソラだ。

 ソラが驚きに目を見開きながら左の道を指さしているのだ。

 私には金色の光は見えないけど、でかしたわソラ!


 「金色と言えば神様だもの!たぶん神器は左の道よ!」

 「さすがなのだソラ王子!」

 「なッ、馬鹿!金色が見えるだけで、その道が正解かどうかはわからないんだぞ!」

 「正解じゃなくてもいいよ~」

 「右に同じなのだ~」

 「いいわけないだろ!?ちょ、おい!」


 ぶつくさソラが言ってるけど無視して私とエリックでソラの手を引っ張っていくよね~。でもって左の道へ進む。その後も分かれ道は現れたが、優秀なソラが金色の光が見える道を教えてくれて、


 「あ、あった!あれが神器!?」


 私たちは神器の元へたどり着いた。

 そこはひらけた場所で、天井からは淡い金色に発光する鍾乳石が垂れ下がり、地には足首まで浸かる程度の海水が緩やかに波打っていた。エメラルドグリーンの海水が、鍾乳石の金色の光に反射してとても綺麗だ。

 そしてこの洞窟の中心にある隆起した鉱石に突き刺さっていたのが、神器だ。それは金色の光に包まれていて、ここからではそれがどんな形なのかわからないけど、神々しさに体が震える。


 「…ぅわあ。手汗がやばいわ」

 「わくわくがとまらないのだ!」

 「こんなに眩しい金色、始めて見た」

 

 各々言いながら、エリックとソラが私の背を押す。

 うん、なんで?


 「リディア早く神器を取ってくるのだ」

 「おれたちはここで見守っててやる」

 「えー!?行くの私だけ!?」


 ソラが当たり前だろ的な目で見てくるけど、ちょっと待って。ここは3人一緒に行こう!って流れでしょ!?


 「一緒に行こうよー。ずっと3人で行動してたから今さら1人は心細いよ」

 「あはは。無理なのだ」

 「エリックって断ることできたの!?」

 「お前ってほんと失礼なやつだよな。つーかマジで物理的に無理なんだよ。お前、ちょっと2、3歩進んでみろ」


 ソラが神器に向かって指をさす。

 なんでだよと思うけど、2、3歩ならいいかと私は進むよね。そしたらソラとエリック、私が歩いたのを見て「おぉ~」とスタンディングオベーション並の拍手。

 ねえ、私歩いただけだよ。初めて歩いた赤ちゃんじゃないのに、その反応ある?

 

 「すごいのだ!さすがリディアなのだ!」

 「もしかして私馬鹿にされてる?」


 つーか私に3歩も進ませといて、なんでソラとエリックは1歩も動かないのよ!怒ればソラに呆れた顔で見られた。


 「いや無理だから。おれたちここから一歩も動けねーんだよ」

 「はい?」


 今どきそんな嘘、3歳児でも騙されませんよ?

 青筋浮かべたリディアちゃん、ソラとエリックの手を引っ張りました。が、動かない!この2人、足の裏に強力接着剤つけられましたってくら動かないのだ!

 嫌な汗が頬を伝うよね。


 「……え。マジで?」

 「マジ」

 「後退することもできないのだ」


 いやいや、エリック君。それ笑顔で言うことじゃありませんから。

 つーかなんで私だけ動けるの?私が光の巫女だから!?


 「まあお前が神器取ってくれば、おれたちは動けるようになるだろ」

 「頑張るのだ、リディア~」

 「りょ、了解です」


 がんばれ~と見送られましたので、私はバジャバジャ水の中歩きながら洞窟の中心まで行くよね。え、なんかノリでここまで来ちゃったけど、いいの?勇者的な人が来るべきところじゃないの、ここ!?


 そうこうしているうちにもう私の目の前には、隆起した鉱石とその中心で輝く金色の光があった。展開が早いぃ。


 「太陽神様~!?ほんとにこれ、取っちゃっていいの!?」

 『いいよ~』


 太陽神様に聞けば、なんとも軽いお返事☆

 やっと私の応答に答えたなコンチキショーとか思うところだけど、もう謎の緊張感でいっぱいいっぱいだから、


 「お、おりゃあああ!」


 私は金色の光に手を突っ込み、手に触れた何かを鉱石から引き抜いた。


 「「「こ、これは!」」」


 私もソラもエリックも、神器を見て目を丸くした。

 引き抜かれたことで金色の光を失った神器、それはまさしく…


 「か、拡声器!?」


 拡声器でした~。

 よく運動会とか避難訓練の時にグラウンドで先生が使ってるあれですよ、あれ。なぜ?


 今唐突に思い出したけど、本編でヒロインは神器を使って闇の使者と渡り合っていたんだよね。でもそのとき彼女が手にしていたのは拡声器ではなく、エクスカリバー的な剣だった。え、なんで?なんで剣が拡声器になった!?

 リディアちゃん脳内疑問符まみれだけど、これだけは言っておこう!


 「なんでやねーん!!?」


 私の場違いな叫びが神秘的な洞窟で響き渡った。





次はセイラさん視点です。

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