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104.リスを追いかけて




 「やっと着いたー!!」


 歩くこと30分。

 焼け焦げた廃墟を背に私は雄叫びを上げた。

 ちなみにこの黒焦げ・鉄骨むき出し・ボロボロの廃墟が知の遺跡だ。驚いたよね。リディアちゃん、もっとかっこいい感じの場所だと思っていたよ。


 「まあ夢は打ち砕かれるものよね。じゃ、おじゃましまーす」

 「神器を探すのだ~」

 「ちょ、待て待て!」


 廃墟もとい知の遺跡に入り、さあ地下へとつながる扉を探そう!というところで私とエリックはソラに止められた。まあソラならそう来るとは思っていたよ。


 「本気で探すつもりなのか!?」

 「もちろんよ。秘密のお宝よ?あんたに男のロマンはないの?ねぇ、エリック」

 「男のロマンなのだ~」


 気が合う私とエリックはイェーイとハイタッチをする。ちなみにソラにもハイタッチを求めたが無視された。べ、別に、泣いてなんかないんだからね!

 とまあ冗談はさておき。私は冒険に飢えているのよワトソラ君。私はソラに目で訴える。

 自分でも不思議というか何か強制力のようなものを感じるが、とにかく神器を探したいのだ。探せと本能が言っているのだ。


 「それに神器を持って帰ったら少しは師匠とエルの説教地獄が緩和されるかもしれないでしょ!」

 「お前それが本音だろ!?つーか師匠とエルって誰だ!?」


 おっと口が滑ってしまったよ、ハッハッハー。

 とりあえず、「師匠とエルってやつ、男じゃないだろうな!?まさかそいつらと一緒に暮らしてるのか!?答えろ!」と中々鋭いことを聞いてくるソラは無視しましょう。


 いやー現実を見るって勇気がいることだよね。最初は単純な冒険気分だったんだよ。でも時間が経過するにつれて帰宅したときのね、誰かさんと誰かさんの怒り狂った顔が頭に浮かんでくるよね。私今、ソラと一緒に春の国に帰ろうかなってちょっと心が揺れています。

 でも本編開始させないためにも、ソラと一緒に春の国に行くわけにはいかないし。かといって帰って怒られるのも嫌だし。


 「だから嫌なことは先送りにして、今は目の前の楽しいことに集中するのです!さあ地下へ続く扉を探すわよ、エリック!ワトソラ君!」

 「おぉー!」

 「ワトソラ君って誰だよ!?あ、待て!」


 私はエリックと一緒に知の遺跡に突入した。

 そうしたらさっそく見つけましたよ、瓦礫に埋まった黒焦げの扉!

 よっしゃーいっちょやたるか~とリディアちゃん、取っ手を引っ張ったら地下へと続く石造りの階段が現れた。


 私たち3人とも互いに顔を見合わせるよね。

 

 「ものすごく順調すぎて逆に怖い」


 チカチカ光る守り石を握りながら言えば、ソラもエリックもうなずく。


 「罠だとしか思えない」

 「この扉、知の一族の当主もしくは一族からの許しを持つ者…つまり今となっては父上しか開けられないはずなのだ。それなのに開くなんて、不思議なのだ~」

 「え、そうなの!?」


 じゃあなんで私は開けることができた?リディアちゃん顔が引き攣ります。

 ソラが疑わし気な目で私を見てくるけど、いやいやなにを疑っているの?私、なにもしてないよ?ふつうに開けただけだよ?


 「ちなみに父上以外の者は結界のようなものに阻まれてしまって、この敷地に足を踏み入れることすらできないのだ」


 ほんとうに不思議なのだ~と笑うエリックはほっといて、私とソラはなるほどとうなずく。私たち、やばくね?って。

 たぶんこの知の遺跡って、日本で言うところの世界遺産的なところでしょ?警備員も防犯システム系魔法もなにもないのは不思議に思っていたけど、精霊王しか入ることができない場所なら納得できる。

 そしてそんな場所に入ってしまった私たち、厳罰ものじゃない?


 「…ていうか、ほんとになんで私たちはここに入れたわけ?」

 

 そうして私たち3人はもう一度、地下へと続く薄暗い階段を見た。怪しい気配しかしないよ。

 太陽神様~。これ入って大丈夫なわけ~?語り掛けるが、ハイ、無視だね!ぶん殴る!


 「リディア、もう大人しく春の国に帰ろう」

 「へい、ソラ。なぜ私の帰る先が春の国なんだい?」


 めずらしくソラがボケをかまし、私がツッコミ入れたときだった。

 それはどこからともなく現れて、地下へと続く階段を下って行った。


 『クスクス~』

 「あー!いつぞやのリス!」


 そう。それは栗毛の暴力リスだった。今日は凶器のどんぐりを持っていないのかなにも投げてこなかった。が、階段を下るとき。彼女はじーっと私を見てきたから。きっと……


 「よし。わかった。私は地下へ行く!」

 「はあ?」

 「あのリス、ついてきなって言ってる!」

 「お前は馬鹿か!?」


 ソラに罵られましたけどいつものことなので気にしませんよ。

 くすくす笑うあのリスは、いつも私をいい方向へと導いてくれる!ならば後を追うしかないだろう!


 「たぶん大丈夫だよ!あのリスの後を追って損はない!」

 「リディアが行くのならおれも行くのだ~」

 「ちょ、2人とも!あ~、もうッ~」

 

 階段を下り始めた私とエリック。そんな私たちに悪態をつきながら、結局ソラも私たちを追ってきた。

 「つーか、あのリス。赤紫に近いピンク色…まさかな」なーんて言いながら。





次はセイラさん視点です。


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