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93.今回ばかりはなにもやらかしてません!

誤字報告ありがとうございます!



 太陽神様のアホんだらぁあああ!



 リディアは激怒した。

 必ず、かの太陽神とか呼ばれてるクソ神を殴ると決意した。

 リディアにはこの世界における賓客の基準が一切わからぬ。

 リディアは職務放棄した光の巫女(この世界のヒロイン)である。運命を変えるべく、主要キャラと関わらぬよう、隠れて生きてきた。けれども、なぜだか遭遇する。ほんと怖いくらいに遭遇する。強制力でも働いてるの?ってくらい遭遇する。


 さきほどリディアの元へメイドさんたちがやってきた。夜会の会場へ案内してくれるそうだ。神器探しは主催者である精霊王へ挨拶をしてからと決めていたため、リディアは会場へ向かった。

 


 「は?リディア?なんでお前が…」



 ソラと遭遇した。

 身長も髪も伸びているが、金髪、アクアマリンの瞳の彼はまさしく春の国の第二王子、ソラ。


 「人違いです」

 「いやいやいや!その色絶対にお前、リディアだ…ちょ、待て!?」

 「人違いですからー!!!」


 リディアは走りだした。

 おそらく春の国の代表として招かれたであろうソラに背を向け全速力で走り出した。


 以前春の国では再会しなかったため、ソラとは遭遇しない感じなんだなと安心していたら、これだ!というかなぜ一発で私だとばれた?今までばれなかったというのに…等の悪態をつきながら、リディアは走りまくった。

 

 煌びやかな廊下を右に曲がり、左に曲がりを繰り返し、突然逃走した賓客に混乱するメイドもろともソラを撒くことに成功した。

 リディアはほっと胸をなでおろした。が、それがいけなかった。前方不注意だ。リディアは壁にぶつかった。否、人にぶつかった。

 

 「あ。すみませ……へ?」

 

 リディアがとぼけ顔をさらしたのは、自身がぶつかった人物がとてつもない美丈夫であったからではない。夕日色の長髪が綺麗であったからではない。涙黒子があったからではない。真っ白な軍服を着ていたからではない。いかにも王的な威厳を感じ取ったからではない。顔がエルに似ていたからではない。


 彼の人の護衛騎士らしき方々に、取り囲むようにして剣を突きつけられていたからであった。


 「貴様、我々の目を掻い潜り精霊王様に接触するとは、いったい何者だ!」

 「王自身に張っている結界になぜはじかれなかった!」

 「名を名乗り、平服せよ!」

 

 「……。」

 

 急展開~☆

 リディアは目を瞑り、太陽神様に語り掛けた。

 

 太陽神様ー、助けてー。この状況どうにかしてー。

 

 『……。』


 無視である。リディアは単純で自分勝手であった。助けてくれない太陽神様に激怒した。

 このクソ神ー!!!(ちなみに太陽神様に激怒しないことの方が珍しい)

 というわけで、話は冒頭に戻りリディアは激怒していたのであった。


 「よい。お前たち、下がれ」

 「ハッ」

 「娘、いつまで目を閉じているつもりだ。目を開け、俺の質問に答えろ」

 「は、はいぃ?」


 走れメ〇スごっこ(現実逃避)はここまでが限界だった。

 頭上で聞こえる冷たい声に、私は恐る恐る目を開けた。騎士たちに四方八方から剣を突きつけられることはなくなったが、鋭い眼光は変わらないのでほんとマジで逃げたい。

 ちなみに私を見て「やはり」と瞠目しているこの人は、精霊王に違いないだろう。


 「答えろ、娘。なぜお前からセイラの気配が…」

 「……。」


 リディアちゃんは思いました。

 セイラって誰やねん!

 

 王様はしごく真面目な顔で私を見てきますが、ええ困りましたね。セイラさんが誰だか皆目見当つきませんよ。ていうか精霊王さん顔、こわっ。先ほど真面目な顔とか言ったが前言撤回する。これは取り立て屋の顔だ。さっさと答えろって顔に書いてある。

 私、答えられなければ殺されるのではないだろうか。騎士さんたちがざわついているのもむだに怖いし。


 太陽神様ー。応答せよー。……無視である。


 太陽神様は助けてくれる気配が一切ないため、リディアちゃんは適当に挨拶して質問をいい具合に流し、穏便にこの場を乗り切ることに決めました。


 「本日はお招きいただきありがとうございます。私、今世の光の巫女のリディア・ミルキーウェイと申し…」

 「…それは!」

 「……。」


 イラッとしてませんよ、ええ。だって相手、王様だし。イラついても殴れないんじゃ、苛立つだけ無駄だよね、ハハハ。ただ私の周りの人間自己中心的すぎない?って思ったことは否定しないよ。え?私も相当な自己中だって?ハハハ(殺)

 ちなみに私の挨拶を遮った精霊王の視線の先にあるのは私の胸だ。変態かな。


 王様は眉間にしわを寄せたまま私の胸元に手を伸ばした。

 …精霊界の王様は、オープンすぎる変態であったようだ。いくら私の美乳に目がくらんだとはいえ、欲望に忠実すぎないか?この国大丈夫?


 しかし私の心配は杞憂だった。胸を鷲づかみにされるのかと焦っていたら、その手が向かっていたのは守り石。

 なーんだ、一安心と思ったのもつかの間だ。守り石が精霊王の手に触れた瞬間、バチンッと電気が走り王様の手が弾き飛ばされたのだ。穏便という言葉がどんどん私から遠ざかっていく。やめてくれよぅ。


 「精霊王様、大丈夫ですか!?」

 「…チッ。娘、その石を俺に渡せ」

 「……。」

 

 なんだこの展開は。私確実になにか厄介なことに巻き込まれているぞ。今回ばかりは、精霊王にぶつかるぐらいしかやらかしていないのに、なぜ!?

 私が顔を引きつらせる一方で、精霊王は再び私の守り石へと手を伸ばす。が、その手は私に届くことはなかった。


 「え?」


 私と精霊王の間に金色の髪の少年が割り込んできたのだ。

 唐突オブ唐突。

 金髪と言えばソラだし見た限りでは同い年と思われるが、その少年はソラではなかった。お前は誰だ案件である。


 「あれれ~?これはこれは精霊王様~。年端もいかない少女に手を出すおつもりで?まさか王様がロリコンだっただなんて。市井に広まる寵妃と王のロマンスストーリーも消えてなくなりますね~」

 「貴様…」


 なんだこの展開(本日2回目)。


 突然私と精霊王の間に割り込んできた金髪少年は、にこにこと精霊王に笑いかけるもその目は笑っておらず。対する精霊王は、怒りの込もった冷たい目で少年を見下ろしていた。

 リディアちゃんは彼らの間に紫電が走っているのを確かに見ました。ちなみに騎士さんたちは絶対警戒状態で私たちを取り囲んでいて、守り石は超冷たい。アルトの氷点下攻撃並に冷たい。どうした!?


 「ちょ、置いていかな…精霊王!?リディア!?は?なんだこの状況!?」


 カオスだ。金髪の少年を追ってきたらしいソラまでやってきましたよ。

 さっき逃げたのにまたソラだよ。泣いていい?


 騎士さんたちを掻き分けて私たちの元へやってきたソラ君。「お前、今度はなにやらかしたんだよ」と言いながら、逃がさないよう私の腕を掴んでいます。困ったね~。あとね、ソラ君。私、今回ばかりはなにもやらかしていないからな。冤罪だよ。


 もういろんな意味で助けてください、太陽神様。そう心の中で呼びかけるも、太陽神様からの応答はなく。リディアちゃんは太陽神様の悪行(捏造)を広めることを決意したのであった。


 「…リディア?父上、これは一体何の騒ぎですか?彼女はおれの友人です」

 「エ、エリック!」


 このカオスな状況を打ち破ってくれたのは、精霊王と同じく護衛騎士を連れこちらへとやってきたエリックであった。まさに天からの助け!

 急展開過ぎるし正体バレちゃってるけど、いいです。神様、仏様、エリック様だ。私をここから救い出してくれるのなら、もう誰でも大歓迎だよ!


 精霊王も息子の存在に気づいたようで、金髪の少年との睨み合いを止め、エリックの方を見た。

 エリックは精霊王と同じ夕日色の髪、灰色の瞳の下の涙黒子だ。孤児院で出会ったときはあまり実感がわかなかったが、精霊王とは異なる黒い軍服を見に纏った彼は、こうして見るとたしかに精霊王と血の繋がったこの国の王子なのだなと感じる。


 「…この娘は、お前の客人か」

 「はい。なかなか戻ってこないなと思っていたら、道に迷っていたようですね。彼女をこの場から連れ出すことをお許し願えますか?」

 「いいだろう」


 なのにその会話はまるで親子とは思えないほど淡々としている。

 

 「リディア、行くぞなのだ」

 「あ、うんっ」

 

 にこやかに微笑むエリックに差し出された手に急いで自分の手をのせる。余計なことは考えないでおこう。今大切なのは、この場からの即撤退だ!この救世主の手を離してなるものか。


 「あ…さきほどはありがとうございました」

 「ク、ハハ…っとああ、失礼。また、お会いしましょうね」

 「…は、はい?」


 エリックに連れられこの場を去る時、今も精霊王とにらみ合っている金髪の少年とすれ違った。

 さきほど助けてくれたお礼を咄嗟に言えば、彼は愉快そうに目を細めた。






 ……なぜだろう。その笑顔に私は恐怖を感じた。

 

 



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