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エピローグ




 早いもので冬の国に行ってから2週間が過ぎた。


 「エル?ほら見て変な顔~。あばば~」

 「……。」


 最近の私はなぜか落ち込みっぱなしの兄弟子を元気づけるために変顔をするのが日課となっていた。


 ちなみにエルは私の渾身の変顔を見ても笑わない。無視である。

 目を吊り上げて鼻の穴膨らませて、舌を鼻にくっつくくらいに上にあげてるのに。なぜだ。師匠は私の変顔を見て大爆笑だったぞ。


 エルは冬の国から帰ってきてからずっと元気がないのだ。

 

 仕方がない。

 私は自室のクローゼットから例の魔導書を持って来た。


 「じゃーん!エル~これ見て~」

 「うざ…おい、なんだよこの禍々しい魔力は」


 エルが眉間にしわを寄せながらなにやら不可解なことを言っているがまあいいでしょう!

 赤い皮の分厚い魔導書をぺらぺら~とめくれば、不思議だねぇ。これまた4年前と同じく「使用者の身を亡ぼす7つの装身具」のコーナーを開いてしまった。


 「おい、これ」


 いい感じいい感じ!声の雰囲気からして、エルは落ち込んではいない!作戦は成功だ!

 今回目があったのは、黒い石が輝くネックレスとピアスだった。2つの挿絵の下には『強欲』と『色欲』と記されている。

 

 「こわいでしょ!なぜかこの挿し絵と目が合うの!」

 「……待て。なんでだ?これって城にあったやつと同じ…」

 「ん?」

 

 エルが眉間にしわを寄せ、私の持つ魔導書に手を伸ばした。

 そのときだった。



 「これはどういうことかしら?」



 背後で聞こえたゾッとするほどに冷たい怒気の含んだ声。

 私もエルも思わず固まる。

 おそるおそる振りむけば、そこにいたのはきのう見ました師匠の鬼顔です!やっと2週間の説教地獄から解放されたのにぃ!

 

 「し、ししししし師匠!?えぇっとこれはぁ」

 「だまらっしゃいこのお馬鹿!」

 「ひぃえーん」

 

 青筋浮かべまくる師匠の目は据わってる。据わりまくっている。今にも雷が落ちそうだよ!物理的に!

 彼は頭を抱えながら私から魔導書をふんだくると…


 「あんたのせいで、どれだけあたしがリカに怒られたと…」

 「え?」


 私の怯えは師匠の口から発せられた言葉によって疑問へと変わった。

 

 「リカ?今リカって言ったよね?」

 「……。」

 「ちょっと師匠!?」


 師匠思いっきり私から目をそらしたけど、それ逆効果だよ。めっちゃ怪しいよ。師匠、リカって言ったよね?リカと言えば秋の国の王子のリカルド君ですよね!?

 形勢逆転だ。今度は私が師匠に詰め寄る番だった。


 「なんで師匠がリカと知り合いなわけ?」

 「…リカって誰かしら?」

 「そんなに否定するなんて。師匠、まさかリカとラブな関係…?」

 「んなわけあるかァ!俺はリリア一筋だ!」

 「師匠、リカのこと知ってるんだね」

 「……。」


 師匠またしても私から思いっきり目をそらす。

 だからそれ逆効果だっての!


 「ちょっと師匠!?どういうこと?それにリリアって、そのリリアさんって人もしかしてガブちゃんが片思い中の光の巫女さんのことじゃ…」

 「あ゛?ちょっと待て。あの野郎、まだリリアに…」

 「ちょっと師匠!話脱線させないで私の質問に答えて!あとオカマ口調どこ行ったのよ!」


 ぎゃいぎゃい言い合いをする私と師匠。険しい表情で師匠の持つ魔導書をにらむエル。

 そんな私たちの間に割って入ったのは意外なことにアースだった。


 「クラウスさんもリディアも落ち着いてください」

 「「アース!」」


 どうどうと私たちを落ち着かせるように肩をポンポン叩くアースは静かに言う。


 「…まず訂正しましょうよ、クラウスさん」

 「あ?今はそれよりもガブナーとっちめ…」

 「ちがうから!リカの話をっ」

 「はいはい。そのリカ?っていうの、リディアの聞き間違いですから」

 「「え?」」


 アースの言葉に私と師匠ハモる。

 おい待て。聞き間違いなら師匠、え?なんて言わないよね。やっぱり師匠、リカって言ったんじゃないの?あ!ほら、また目をそらしたし!


 「…ちがいますよ、リディア。クラウスさんはお祭りの練習をしているんです。練習頑張りすぎて、日常生活の中、たとえば会話中にも漏れ出てしまうようになったんですよ。ね、クラウスさん」

 「ッソ、ソウソウ。ソウヨー。リー…カリカリカリッ!どやさ!どやさ!」

 「……。」


 突然始まった、師匠の前世で言うところのオタ芸。

 私も、なにやら考え込んでいて会話に全く入ってこなかったエルも、師匠のオタ芸を見て普通にドン引きする。

 

 …動きがキレキレだし、師匠無駄に顔が良いから、全体的にカッコいいくて、だけど……うわぁー。

 あまりの衝撃に私は自分が何を師匠に聞き出そうとしていたか忘れた。


 「…えっと、頑張ってね師匠。行こうエル」

 「クラウス。しばらくおれに話しかけるな」

 

 私たちが足早にこの場を去った後で、師匠は恨みがましい目でアースを見て言ったそうだ。


 「もう少しましな助け方があったと思うんだけど」

 「ありません」

 「嘘こけや!?あんた絶対に手抜いたわよね!?」

 「すみません」

 「認めるな!?」





次回から、精霊の国の寵妃と神器です!

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