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84.師匠は激おこらしい(2)



 さらっと前回のあらすじ!

 1、アースが私を迎えに来た!

 2、師匠は激おこらしい!

 3、アースの発言のせいで、ヒメ=リディア説をギルたちが思い出してしまった!


 つまり!帰っても、この場にとどまっても、リディアちゃん絶体絶命!



 私はごくりと生唾を飲み込む。

 だがしかし、私はあきらめないぞ。これまで何度私が絶体絶命の危機を躱し生き延びてきたと思っている!


 命の危機に際しさっそく閃いた私はまずアースを見た。


 「アースってばおっちょこちょい~!私、ヒメだから!もぅ、名前何回間違えるつもりぃ?リディアって誰さ~?」


 ごまかす作戦だ!

 こつ~ん☆とアースの頭をつつくが、アース君無反応です。


 「あんたの名前でしょ馬鹿弟子とクラウスさんなら言うでしょうね」

 「ほ、ほほほ~。クラウスさんって誰?」

 「あなたの師匠の名ですよ、リディア」

 「……。」


 ごまかす作戦はアースの前に敗れた。


 アースは人の意を組むのが得意だ。だから私の考えを悟り、「間違えました。ヒメでしたね」と言ってくれると思ったのに。……まさか、私が師匠とアースに内緒で冬の国に来たこと怒ってて意地悪してる!?


 「アース、師匠の話はいったん置いておこう」

 「そうですね。この話は帰ってからですね。さあ帰りましょう」

 「いや、あのぅ…」

 「お前ら何かあったのか?」

 

 すぐにでも私を連れ帰ろうとするアースの姿勢に私が半泣きになっていたときだった。唐突にエルがアースに話しかけた。

 エ、エルぅ。


 今日ほど私が兄弟子に感謝したことはないだろう。普段は魔王の彼だが今は天使に見える。

 さすが妹想いの兄弟子。話を逸らす作戦ですね。あれ?おかしいな。エルがちげーよアホって顔で私を見てくるぞ?


 「お前らのことだからリディアの置き手紙を見つけ次第すぐに迎えに来ると思ってたんだよ。つーか迎えに来るだろ絶対。メガネ、お前もそう思ったからこの馬鹿の無謀旅に付き合ったんだろ」

 「ちょ、エルくぅん?」

 「…否定はしない」

 「ちょっとメガネぇ!?」

 「すみませんヒメ。俺もクラウスがすぐにヒメを迎えに来ると思っていたので」

 「なるほど。俺とクラウスさんがなかなか迎えに来ないから、俺達の身になにかあったのではないかと心配してくれたのですね。ありがとうございます、エル」

 「べ、別に心配なんかしてねーよ!」

 

 感謝を述べるアースにエルがツンデレを披露するが、私はいつものようにほんわかな気持ちにはなれない。だってエルもアイも私の正義感からの行動の無謀だと思っていたんだよ!?それでもってすぐに師匠が私を連れ戻しに来るだろうと考えて、ここまでついてきていたのだ!


 明かされる衝撃の新事実は精神的ダメージがでかい。

 おいトラム、笑うな。怒るぞ。命の恩人の哀れな姿を見て笑うとかだいぶ性根が腐っているなぁ、ええ!?

 そしてギルはなぜ頭を抱えているのでしょうか。なになに?「この馬鹿度合い、リディアにしか見えない。でもこれはリディアじゃないのにっ」……うん。ギル、君は正しい。私はリディアじゃないよ、ヒメだよ~。


 「で?結局なんで師匠はアースをすぐに私の元へ向かわせなかったのよ」

 「開き直りましたね、リ…ヒメ」

 

 アースは無気力顔で肩を下げる。

 私のことをヒメと言い直してくれた当たり、彼の私への怒りは少しおさまったようだ。ありがとうございます。


 「まあ端的に言えば、神の力に邪魔されたんですよ」

 「神の力ぁ?ちょっと太陽神様どういうことよ!」

 

 応答せよ。応答しなければ太陽神様のありもしない悪行の数々をこの場にいる全員に話す。そう心の中で脅したのが功を制したようだ。


 『リ、リディア!?太陽神様、さすがにそれは泣いちゃうぞ!?』


 太陽神様の声が脳内で聞こえた。


 「で?どうなのよ。なんかしたわけ?」


 こっちはヒメのコスプレしてただでさえ頭おかしいやつ的な目で見られているのに、さらに空に向かって話しかけるという精神科即連行の代償を払っているんだからな。ちゃんと答えろよ。

 

 『いやいやわしなにもしておらんからね!ほんとうじゃぞ!』

 

 太陽神様の声はマジだったのでおそらく嘘はついていない。


 「とりあえずうちの太陽神様はなにもしてないって~」

 「……え、ヒメさん。今神様と話してたのか?」

 「うん」

 「ハハッ。ほんとうにヒメさんあんた何者だよ~」


 ツボにはまったのかトラムはひーひー言いながら笑っている。

 幸せそうでなによりです。そしてギル君、そんな憐れむような瞳で私を見ないで。神様と話したのは私の妄言ではありませんよ。真実ですよ。


 「…リディアと契約している神様の妨害ではなかったのですね。では誰が……」


 アースは考えるように無気力顔をこてんと傾けた。が、


 「まあとりあえず帰りますか。クラウスさんお願いします」

 「ちょっとアースくぅん!?」

 

 私の腹に手を回しエルとアイを手招きして、アースは天に向かって「空間移動オッケーです」と言う。オッケーじゃない。全然オッケーじゃないですよーッ!


 「今度こそヘルプ!」


 私は助けを求めてトラムたちへと手を伸ばす。

 ほんとうに今帰るわけにはいかないのだ。だって私が今ここからいなくなったらブラッド海賊団を倒せなくなってしまう。ブラッド海賊団を野放しにすれば苦しむ人がたくさんいるんだ。

 そんな私と同じ気持ちの人はこの場にはちゃんといた。


 「すみません。状況が理解できないのですが、とりあえず彼女を今連れ帰られては困ります。やめてください」

 「ギ、ギルぅ」


 私の手を取ってくれたのはギルだった。

 ああ、ギル。やっぱりあなたは私のエンジェルだわ。リディアおねえちゃん泣きそう!


 「それに彼女には詳しく聞きたいことがありますし」

 「……。」


 リディアおねえちゃん違う意味で泣きそうだけど、でも、う、うれしいよ!?

 

 「そーそー。ヒメさん、重要な役割を担ってるから。いなくなられちゃ困るんだよ」

 「トラムぅうう」

 

 続いてトラムも私の手を掴んでくれる。なんていいやつだ!私で爆笑しまくっていたことは許してやるよ!


 空間移動は少し不便で、移動対象に触れている人物も一緒に移動させてしまう魔法だ。つまり今空間移動すればギルとトラムも師匠の家へGO!となる。

 それを思ってかアースは無気力顔を少し困り顔にするが…


 「やはり神の力による妨害でしょうか。クラウスさんと連絡が取れませんね」


 どうやら違う案件で困り顔だった様子。

 神の力とやらの妨害らしい。通常であれば困ることなのだろうが、今の私にとってはありがたい!


 「お願いアース!ここにいさせて!私今帰るわけにはいかないの!」


 私のお願いにアースが弱いことを知っているので、上目遣いでお願いしまくる。

 ついでに帰る気満々だったエルとアイをにらみつけた。


 「ていうかあんたたち2人は私に手を貸してくれるんじゃないの!?なんで帰ろうとしてんのよ!」

 「ヒ、ヒメ。誤解しないでください!俺はどこまでのあなたについて行きます!」

 「勘違いするな。おれの行動はお前次第だ。お前が帰らないってんなら一緒に残る。帰るなら一緒に帰る」


 なるほど。つまりは私がアースを説得できるか否かにかかっているということか。

 私の腹を抱くアースの手をはがし、私は彼と面と向かう。説得してやろうじゃないの!


 「私は帰らない!」

 「帰ります」

 「私がいなくなったら悪いやつらを捕まえることができないの!」

 「だめです」

 「じゃあ譲歩して!神の力で妨害されている間だけでいい!空間移動が可能になるまでの間だけでいいからブラッド海賊団潰す手伝いさせて!」

 「……。」


 アースはとうとうなにもしゃべらなくなった。返事がない。まるで屍のようだ。

 うわぁああん。説得とか難しすぎるよ!


 「いいよって言ってくれなきゃアースのこと嫌いになるからね!?」


 私はとうとう子供のようにギャン泣きした。

 だけどこれは意外にもアースに効いたようだ。

 無気力顔がわずかにうっとひきつったのだ。およ?


 「本気で嫌いになるからね!」

 「…。」

 「無理やり連れ帰ったら毎日アースをにらんでやるんだから!師匠とは口をきいてやんない!」


 トラムが私たちのやりとりを見て肩を震わせているけれど、気にしない!

 ギルが「どうしてこんなにリディアに似てるんだぁ!?」と頭を抱えているけれど、気にしない!

 エルとアイが帰宅後に師匠が私にどんな罰を与えるか予想しあっているけれど、気にしない!


 今私が集中するのはアースのことのみ!

 ギッとアースをにらむ私。

 そんな私を見て、とうとうアースは無気力顔でため息をついた。


 「わかりました。俺もいっしょにクラウスさんに叱られてあげます」


 つまりそれは、無理やり連れ帰らないということだ!

 私の顔はパァッと明るくなる。


 「アース!大好き!」

 「ただしクラウスさんのことですから、神の力による妨害が無くなればすぐにでもリディアを連れて帰ると思うので、そうなったらあきらめてくださいね」


 感極まり抱き付く私をしっかりとキャッチしたアースの話はきちんと聞こえている。

 私はうなずきまくった。

 ちなみに数秒後、エルがいつまで抱き付いているつもりだ!と私を殴りました。エルが天使に見えたのは本当に一瞬でしたね、やはりあいつは魔王だ。




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