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65.ロキの答え

大変長らくお待たせいたしました!(ノД`)・゜・。


 さらっといきます!前回のあらすじ!


 天才美少女ヒロインリディアちゃんは2人の子供に追い詰められていた!


 「俺たちのマザーを奪うやつは許さないよ。ロキ、早いけどやっちゃお」

 セスが笑顔で縄を持っていて。

 「……っ」

 ロキが唇を噛みながら魔力を練っています。

 

 あれまあどういたしましょう。追い詰められた哀れな小動物系ヒロインはぷるぷると震えております。

 天才美少女ヒロイン、絶対絶命☆




//////☆



 それは昼前のことだった。

 お腹すいたなーなんて思いながらリディアちゃんは草むしりをしていました。言っとくけどお腹が減ったから草むしっていたわけじゃないからね。草を食べようだなんて思ってませんからね!ジークに仕事を押し付けられたのだ。殺!

 ごくまれに優しい兄弟子はその優しさを発揮させて私の草むしりを手伝おうとしてくれたが、ジークが「男の意見も聞きたい」とか言いながらエルを連れていってしまったので結局私一人で草をむしっている!ジークのことだ絶対に恋愛相談でエルを連れ去った!相談するのはいいけどなぜに今この時にエルを私から奪った!?ジークこの野郎!


 まあそんな感じでむしゃくしゃしながら草をむしっていたら、驚きですね~ロキがいつも以上に真っ青な顔で私の元へと走ってくるではありませんか。


 彼女の顔色はともかくロキの方から私を訪ねてくるなんて初めてだからうれしくて笑顔になるよね。

 

 「やっほーロ…」

 「早くここから出て行って!あなた死ぬわよ」

 「キー……えぇー」


 突然の死の宣告に笑顔がフリーズするよね。

 え?え、え?死?

 めっちゃ混乱するけど今まで私、伊達に修羅場をくぐってきてないのよ。

 私はキメ顔で震えるロキの手を取った。


 「大丈夫、安心して」

 「はあ?あなた何を言っているの?私の話聞いてた?死ぬって言ってんのよ、あなたが!馬鹿も休み休み言ってちょうだい!?」

 「…はい、ごめんなさい」


 つい謝っちゃったけどちょっと待って!ようやく混乱が収まってきた。点と点を線でつなぐように私の脳内でなにかがつながっていく。

 ロキ真っ青。真っ青と言えばマザー。ロキが私に死の宣告。死といえば顔えぐられ事件。

 つまり!マザーが私を殺そうとしている可能性大!わーお。


 「あなた顔を引きつらせながらなにをブツブツと…まあ、死ぬと言われてショックを受けない人間はいないわよね。だけどほんとうに時間がないの。今なら裏門から逃げられる。早く!」


 一人で納得し私の腕をひっぱる世話焼き委員長を見て私は腹をくくる。


 「ロキ。私は逃げない」

 「は?」


 私がわざとらしいキメ顔ではなく真剣な顔だったからなのか、ロキはさきほどのように私を叱りつけることはなかった。怪訝な顔でじっと私を見る。


 「私はこの孤児院をぶっつぶしに来たの」

 「は!?」

 「乗り掛かった船だし。ついでにロキの悩みも解決してあげる。だから話を聞かせて。ロキはマザーのなにに怯えて…」


 言いかけたときだった。


 「なんか怪しいなと思ってたけどやっぱりか~」

 

 ……あっれれ~?おかしいな。ロキの震えが伝染しちゃったみたい。私の手も震えてきたぞぉ。…冗談はさておき、背後から聞こえた声に振り返って私の顔はひきつる。


 「あー…こんにちは~セス」


 そこにいたのは手に縄を持ったセスだった。

 彼は笑顔で私に尋ねる。


 「孤児院を潰すってどういうこと?」

 「あーえっとぉ…」


 口ごもる私を見るセスは相変わらず笑顔だ。笑顔だけど縄を持って私へと一歩一歩近づいてくる。当然私もセスがこっちに近づいてきた分だけ下がるよね~と後ずさろうとしたところで背中に何かがぶつかった。ロキだ。

 

 「…ま、聞いても教えてくれるわけないよね。いいよ追求しないであげる。別に孤児院を潰されたってかまわないし」

 「え?」


 意外な言葉に視線をセスに戻せば彼は「だけど…」と目を細めながらロキを見た。

 いつのまにかロキと私の手は離れていた。彼女は震えながら祈るように手を握り締めていた。

 

 「俺たちのマザーを奪うやつは許さないよ。ロキ、早いけどやっちゃお」

 「……っ」



 ///////☆

 

 というわけで、今この状況なのだ!


 うん、どうしましょうか。

 絶体絶命ってわけではないけど、自分がどんな行動をとるべきか悩む。


 一応腰につけてあるポシェットの中には武器というか薬とかが入ってる。眠り薬も入ってるからこれを使って2人を眠らせて逃げることは可能だ。

 だけどせっかく「俺達もマザーも敵ですよ~」的な発言をしてくれたわけだから情報を聞き出したいという気持ちもあるわけで。

 そしてロキがなんの魔法を発動させるつもりなのかわからないから下手に動けないというのもありまして。


 「いやとりあえず今は逃げる!」

 「えーっと逃がさないけど?」

 「い゛!?」

 

 当たらなくてもいい。私はセスに眠り薬を投げつけた。だって眠り薬を投げたら少しくらい私から気が逸れるでしょ?そのすきに逃げればいいと思ったんだよ!?

 だけど私の計画はばっちり失敗。腕を捕まれそのまま地面に押し付けられてしまった。

 ていうか痛い!セスの野郎とんでもない力で私の腕を掴んでいる。折れる!ミシミシ言ってるよ!ミルクを彷彿とさせるような馬鹿怪力だよ!?ていうかほんとに痛い!


 「っセス!」

 

 涙目の私を見て咎めるようなロキの声が聞こえた。


 「お前がちんたらしてるからだろ。かわいそうならさっさとお前の魔法で助けてあげなよ」

 「…っ」


 耳元で聞こえたセスの声はとても冷ややかだった。

 弱弱しい足音が近づいてくる。その音は私の目の前で止まった。今も地面に押し付けられている私は頑張って顔をあげて泣きそうな顔をしているロキを見た。


 「……助けてあげられなくて、ごめんなさい」


 濃い紫色の光を纏った手が私の両頬を包み込む。

 頭の中が真っ白でどうしたらいいかわからない。え。私もしかしてここで終わるの?ガチで?疑問符まみれの頭の中。胸元の守り石が熱い。


 そして魔法が発動する。私はとっさに目をつむった。

 バチッ

 ……普通に目を開きました。



 え。私なんともないんだけど?



 眼を開けたら目の前にあるのは暗い表情のロキ。

 セスに捕まれていた手は解放されている。……うん。


 ぼけっとしている私の様子を見て勘違いしたらしい。


 「ちゃんと幻覚にかかったみたいだね」


 セスが満足げに笑いながら私の腕を引っ張って立たせた。うん?

 おかしいな。たしかに私はロキの魔法…幻覚?にかかったはずだ。だってバチッて音が聞こえたし。


 そこで気が付く。

 さっきのバチッて音…あれは結界が破られる音じゃね?思い起こされるのはガブちゃんの張った結界が敗れたときの音。思い出してみればバチッて音が聞こえたとき、うっすらと師匠の匂いがした気がした。もしかして師匠、私に結界はっておいてくれてた?それでロキの魔法が阻まれた?


 し、師匠ぅぅぅ。大好き!


 「…涙を浮かべながら笑ってる?ふふ。気持ち悪い顔。ロキ、ヒメにどんな幻覚見せたの?」

 「いつもと同じよ。今までの人生の中で幸せだったころの記憶を幻覚として見せてる」

 「あっそ。ま、どうでもいいや」


 たぶんこれ私がしゃべりさえしなければ2人とも勘違いし続けてくれるパターンだ。よし。黙っておこう。気持ち悪い顔発言をしたセスをぶん殴りたいけどとりあえず今は流れに身を任せてみよう。


 「彼女を縛って」


 セスがロキに縄を押し付けた。…やっぱ流れに身を任せるのやめようかな。アハハ。

 私が心の中でも現実でも半笑いしている中で、ロキは懇願するようにセスを見ていた。


 「セス、私は…」

 「なに?罪悪感?いまさら?君、他の女の子たちにも同じことしてきたよね。マザーに女の子を差し出すために幻覚を見せてきたよね。今更じゃない?君はもうこっち側の人間なんだよ」

 「…っ」


 セスが笑って一蹴した。

 私が半笑いしている間にシリアスモードに突入していたよ。


 「ああ君と俺は違うんだっけ?君はせめてもの救いとして死の恐怖を感じないように女の子たちに幻覚を見せてあげるんだっけ?どうでもいいけど早く彼女を縛って。彼女を差し出さなければ他の子供が死ぬだけだよ」

 「でも…」

 「もう一度言うよ。縛って。…別に俺はどうでもいいんだよ。ヒメを助けようが助けまいが。助けた場合彼女の代わりに孤児院の子供の誰かが死ぬことになるってだけだし。覚えてるだろ。君が今みたく躊躇したばかりに君に懐いていたラビが犠牲になったことを」

 「……っわかった」


 ロキはセスから縄を受け取り私へと向き合った。


 ふむ。冷たく言い放つセスと震えるロキの声でだいたいのことはわかった。

 作戦変更だ。

 私の手に縄をかけたロキの手をセスにばれないように握る。

 

 「……っ!?」


 瞠目するロキに笑いかける。


 安心して。あなたのことは私が助けてあげるから。


 声に出さずとも伝わる。絶対に伝わる。伝わらなければ困る!

 そんな必死さあふれる私の気持ちが通じたらしい。ロキは涙で揺れる瞳を隠すように私から顔をそむけ、私の両手を縄で結んだ。簡単にほどけるように結んだ。


 それがロキの答えだった。







 はーい、反撃開始ですよ。オホホ~。


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