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9.そして彼は味噌汁をかぶり、感謝を述べる



 1日に3回あるご飯の時間。

 その時間は私にとって至福のひと時であり、永遠に続けばいいとさえ思っている時間でもある。


  だが今、このときの私だけは、違う。

 この時間が早く終わることを願っていた。

 なぜか?

 簡単な理由だ。


 「うっ。うぅっ。視線が痛い…」

 「まあ、そりゃあ…目立つからな」

 「うぅ~、ソラのバカぁ」

 「えぇー?」


 こういうわけ。

 何の拷問なのか私とアルトは現在、顔にタオルを巻いたままご飯を食べている。神父様曰く、腫れが引くまではタオルをとってはいけないのだそうだ。

 おかげで素直で無邪気なキッズたちの視線に私の心はゴリゴリ削られている。

 だってみんな、あきらかに笑いをこらえているんだものっ。


 そりゃそうだ。いつも美少年、美少女の二人が頬を腫らして不細工なウサギになっているのだ。笑って当然だ。むしろこらえるな。笑え!もういっそうのこと、笑えぇ!

 私はおいおい心の中で泣く。


 神父様も気を使って今日は部屋でご飯を食べていいよと言ってくれればいいものを、「それは頑張った証じゃ、胸を張れ!」とか言いやがって食堂に行かされた。新手のいじめかジジイ!喧嘩なら買うぞ!


 アルトもいつものように微笑みながらご飯を食べているものの、その表情は暗い。

 …ちょっとだけ、さっき笑ったことを謝ってあげるよ。自分も同じ目にあって、はじめてあのときのアルトの気持ちがわかりました、ごめんなさい。


 さてそんなお通夜とお笑い会場が背中合わせみたいな空気な中で、唯一私たちを気にかけてくれるのはソラだ。


 「リ、リディア?兄様も。そんな顔しないでよ。元気出して?」


 さきほど八つ当たりをしたのに、ソラは怒りもせず、逆に心配そうに私たちの顔を覗き込んでくる。

 普段はやんちゃのくせに相手が傷心のときは心配してくれるとか、TPOをわきまえすぎだ。


 「天使かよっ」

 「は?」

 「なに?今更気づいたの?」

 「兄様までなに言ってんの!?」


 おい。私はともかくアルトがそれ言うのやばいだろ

 慌ててアルトを見れば彼は、あ、やば。という顔をしていた。あ、やば。じゃないから!こらっ、テーブルの下で私の足を蹴るな!痛い!今フォローしてやるから大人しくしてろ!!


 「あ!そうだぁ、ソラ!きのうの猫の話をしてもいい?天使なソラなら聞いてくれるよね!」

 「て、天使なソラ!?猫の話を聞くくらい、いいけど…」


 よし!私はテーブルの下でガッツポーズ。うまく話を変えることができた。

 だけど複雑だ。だってソラ、今度はリディアが変になった!?って顔してるんだもの。アルトは変人だけど、私は普通の人間だ。

 そしてアルトが小ばかにするような目でこっちを見てきてムカツク。もっといい話のそらし方があったんじゃないの?笑。ってな。

 くそ、助けてもらった分際でよくそんな態度を取れるな。あとで覚えてろよ。


 「リディア、猫の話まだ?」

 「あっ、うん…」

 

 苛立っている暇はない。せっかくソラの気をそらしたのだ。猫の話をしなくては…うん、猫ねぇ。


 「そ、そう。あの猫とはね部屋で出会ったの。夜寝てたら急に猫に起こされて~」

 「え。おれ、全然気づかなかった」

 「あ、うーん」


 早速、積んだ。

 やば、と思ったら、テーブルの下でアルトに足を蹴られた。

 このやろー。誰のせいで私がこんな嘘話をするはめになったと思ってんだよ。文句ばっかり言いやがって!


 「おれがソラを起こさないようにしようって、リディアに頼んだんだよ。ソラ、ぐっすり眠っていたからさ」

 「そうだっだんだぁ~。おれも猫に会いたかったけど、それならしょうがないな」


 ムカツクがナイフフォローだった。ソラはしょんぼりしなかがらも納得した。私はアルトを少しだけ見直した。

 が、


 「うーん。でもソラはあの猫に会わなくてよかったと思うよ?あまりかわいい猫じゃなかったから。言うこと全然聞いてくれないし。ね?リディア」


 アルトはそう言いながら、フッと私に意味深な視線をなげかけてくる。

 ハイ、見直したって言ったの、前言撤回~。架空の猫の話をしているはずなのに、なぜか自分にケンカを売られているような気がしましたからね。

 睨めばアルトはにこりと私に笑いかける。だがその眼は、あきらかに私を蔑んでいた。ああ、はい。喧嘩売ってたんですね。

 そっちがその気なら、その喧嘩喜んで買ってやる。


 「えーと、兄様?リディア?なんか2人の間に火花が見えた気がしたんだけど…」


 ソラの言葉が戦いの開始を知らせるゴングとなった。


 「火花?ああ、気のせいだよ。ただアルトの顔を見ていたらぁ、きのうの猫のことを思い出しちゃってぇ。それで火花が飛んだように見えたのかな?」

 「リディアそれ、かなり無理があると思うぞ!?」

 「でもほんと、ソラはあの猫に会わなくてよかったと思うよ」

 「力業で話変えたな!?」


 おほほーとソラのツッコミをうまく躱しながら、私は話を続ける。


 「だってあの猫、助けてって感じで泣いてるから助けてあげようとしたのに。私の頬をつね…殴ってきたのよ。最低でしょ?暴力的でしょ?そんなやつ最悪だと思わない?」

 「え。まあ、たしかに」


 ソラが言ったとたん、ビキッと私の隣に座る男の顔にひびが入る音が聞こえた。

 フハハハハ。

 どうだ。弟の嘘偽りのない言葉は、ショックだろう。

 ひびが修復したら絶対に殺されるけど、知ったことか。未来の自分がきっといい感じに逃げ切るだろう。


 「自分の要望を押し付けるんじゃなくて、私の言葉を理解しろって感じだよね。ぶっさいくで生意気な猫だったから、ソラはほーんと会わなくてよかったと思うよ」

 「リ、リディア?それ猫の話だよな?」


 ソラがチラチラとアルトを見ながら私に問いかけてくるのだが、どうしてそんな質問をしてくるのか、リディア理解できなぁーい。


 すると私がソラと仲良さげに話しているのに嫉妬したのか、回復したアルトも会話に混ざり始めた。チッ。


 「そうだね。おれがせっかくクッキーをあげたのに、あの猫はその恩を猫パンチで返してくるような、ちょっと困ったさんなところがあったからね。いつもならこんなこと言わないんだけど、あんなにも醜怪で不躾な猫がいるなんて、僕、驚いたよ~」


 ビキッ。

 私の額に青筋が立ったのを見てソラが慌て始める。


 「に、兄様?それ猫の話だよね?」

 「誰が醜怪ですって~!」

 「リディア、なんで怒ってるんだ!?猫の話だろ!?」

 「え?リディアが醜怪?どうしてそう思ったの?」

 「お前が言ったんだろうが~っ」

 「ちょちょっ、リディア?兄様?落ち着いて!猫にやられたのに、なんで二人がケンカしてるんだよ!?」


 いつも穏やか和やかほんわかな私たちのテーブルが騒がしい。

 孤児院の子どもたちは慌てはじめ、神父様を呼びに行こうとした、そのときだった。


 「ソッラくぅーん!」

 「うわぁっ」


 私とアルトが火花を散らす目の前で、ソラが栗色の髪の少女――ルルちゃんに、奇襲された。

 ハッと私とアルトは我に返ってケンカをやめるが、時すでに遅し。


 目の前ではべたべたと、ルルちゃんがソラに抱き付くという光景がひろがっていた。


 「ソラくん?ご飯食べ終わった?食べ終わったら、ルルと遊ぼー」

 「食べ終わってないのは見たらわかるだろ!離れろ!」

 「ほんとうだ、食べ終わってない。じゃあルルが食べさせてあげる!はい。あーん!」

 「やめろ~っ!」


 私たちの目の前でルルちゃんによるソラへの猛烈なラブアタックがはじまっている。

 改めて、意識して見たことで、うん。

 アルトがなぜきのう緊急事態とまで言ったのか理解できた。

 たしかに。ソラが女に狙われてるね。……ここまで熱烈だったとは。


 きのうの私、こんな光景を前にしてよく気にならなかったな。見ているだけで暑くなるよ。


 だがおかしい。

 目の前は見ているだけで暑苦しくなる光景だというのに、私の左半身は異様なほど寒いのだ。そう、それはまるで真冬のような……あ。


 そこで私は自身の隣に座る男のことを思い出した。


 おそるおそる横を見てみれば、私の隣に座る男は、静かにほほえんでいるではないか。

 ほほえんでいた。が、その目はひどく冷たかった。


 オウ、ノー。


 寒さは食堂全体にまで広がっているようで、私たちの様子を遠くから伺っていた子供たちもガチガチ歯を鳴らしている。一部の子は食堂を出て行った。懸命な判断だ。神父様を呼んできてください。

 その一方でルルちゃんはというと、自身が発する恋の熱のおかげか寒さは全く感じないらしく、今もソラに「あーん」「やめろ!」を繰り返している。


 やめろ。たのむからやめてくれ。ルルちゃんがあーんをするたびに食堂内の気温が下がっていくんだぞ!

 もうそれならいっそのこと、ルルちゃんの熱で気温を元に戻して~。

 なーんてのんきなことを思っていると、アルトがその冷たい目で私を見てきたではないか。なぜだ!?


 ちょっとなによ。と私が目で訴えれば、

 アルトは目で、あれ(ルル)をどうにかしろと言ってくる。

 はあ?


 イラッとくるよね、ふつうに。

 私はきのう、きちんと断ったはずだが?

 お前がやれ。と私。


 「……。」

 「……。」


 2回目のゴングが鳴った。


 それは周囲の人間には見えないテーブルの下で足の蹴り合い。

 私がアルトの足を蹴り踏みつけアルトがやり返す。それを繰り返しているうちにテーブルがガタガタと揺れ始めた。


 「キャー。ソラ君、地震~」

 「ちょ、やめっ!」


 ルルちゃんがソラにぎゅうっと強く抱き付いた瞬間、私は隣の男から、ブチッとなにかがキレる音がした。うわ。嫌な予感がする。

 そして、次の瞬間。私の足は思い切り踏みつけられた。うぎゃー。


 それはもう、渾身の力で踏みましたってくらい、強くね!

 私に八つ当たりすんじゃねーよ!


 いっだぁぁぁ~いっ!

 と、心の中で叫ぶだけにとどめた私は、ほんとうに偉い。

 だから、


 痛みの反動で思い切り足を振り上げ、テーブルを蹴り上げてしまい、私と対面する形で座っていたソラに、テーブルが揺れた反動で大きく跳躍した味噌汁をぶっかけてしまったのは、防ぎようのない不運な事故だったと言えよう。


 ビシャー


 「ソ、ソラ君大丈夫!?」

 「……リディア」

 「ちょ、アルトそんな目で見ないでよぉ!」

 「リディア、ありがとう。助かった」

 「ごめんソラ…あ、ありがとう!?」

 「なんじゃなんじゃ、呼ばれてきたのじゃが…ソラー!?なんで頭から味噌汁かぶっとるんじゃ!」


 味噌汁を頭からかぶったことにより、ルルちゃんから逃れることができたソラには感謝され、ルルちゃんには恐らくにらまれ(怖くて見れなかった。孤児院のまともな?友達に嫌われたくないので)、アルトからは言わずともにらまれ(お前が原因だぞ!?)。

 こうして私の至福のひと時のはずだった朝ごはんタイムは、幕を閉じたのであった。

 私、かわいそうすぎない?




 さて朝の味噌汁事件の後、私は今日一日ずっとソラとルルちゃんやその他女の子たちを観察した。

 そして今日も一日が終わり……実を言うと、きのうとは考えが変わっていた。


 まあ結論から言うと、私、ソラの恋路邪魔します。アルトの意見に賛成です。となった。

 別にソラ達の様子を観察中、ずっとアルトの「なんとかしろ」の視線が痛かったから意見が変わったわけではない。まあたしかにそれも理由の一つではあるけれど。

 ちゃんとした理由が私にはあるのだ。


 私は観察をしていく中で気づいた。

 ソラはルルちゃんを含むその他の女子にちょっかいをだされていた。が、意外にもソラってば、まんざらでもなさそうなのだ。

 このことをアルトに言えば確実に殺されるから言わないけど。()()とは言わないよ。


 たしかにソラはルルちゃんに絡まれて鬱陶しそうな顔をしているし、実際疎ましく思っているだろう。だが心の底からは嫌そうな顔はしていなかったのだ。むしろうれしいみたいな。そんなふうに私は感じた。

 別にルルちゃんのことが好きだから猛アタックされてうれしいってわけではないのだと思う。


 単純な話だ。誰だって人に好かれて嫌な気はしないよね。私も嫌われるより好かれたい。アルトとソラは相思相愛のペア!という先入観があったから気づけなかっただけで、ソラだって人から好かれて嫌な気はしないのだ。


 さて。

 ソラが他人に好意を持たれることを苦としていないとなると、問題が発生する。


 それはおれの人生兄様一番!ヒロイン現れない限り、兄様不動の一位!最優先!ではなくなる可能性が出てくるということ。


 つまりいざ私がソラのヒロイン候補から消えたとしても、ヒロインの他に、ソラとラブラブになる女の子たちが出てくる可能性があるのだ。

 むしろ今後出てくる可能性は限りなく高い。

 そしてソラも自分に好意を寄せる女の子と恋に落ちる可能性は高い。


 ソラが恋をし、その尻を追いかけ始めた瞬間、アルトは悪役化する。

 はい。これが1番の問題なのだ。


 たとえ私がアルトから被害を受けなくても、今後第二、第三のソラのヒロインが現れて、アルトの怒りを買う可能性は非常に高い。

 そしてそうなった場合、彼女たちはゲーム上のヒロインと同じ道をたどるに違いない。


 それはダメだ。

 このままではルルちゃんをはじめとした、今後ソラの前に現れる女の子たちの未来が危険だ。いやほんとマジで。

 だってアルトのやつ、お昼寝タイムのときに孤児院抜け出して、木にルルって掘ろうとしてたんだよ!?夜まで待てなかったんだよ!?

 私が止めなければ、やつは絶対に掘ってた。そして殴ってた。ひぃぃ。


 私はソラの友達だ。目に入れても痛くないとさえ思える友達だ。

 好きな女の子は呪い殺され、その呪いをかけた殺人鬼が実の兄だなんていう、絶望しか待っていないソラの未来なんて見たくない。


 じゃあソラが悲しまず、なおかつソラに恋に落ちる女の子たちが殺されず、なによりアルトが暴走しない、苦しまない、そんな未来を創るためにはどうしたらいいのか。


 それが今の私のソラを狙う女からソラを守ります。という思考の変化につながるのだ。


 そしてその守る方法はもう思いついている。

 簡単なことだ。

 ソラとアルトが、一生兄弟二人、ラブラブで生きていけばいいのだ!


 ソラを絶対にお兄様1番大好き人間に改造してしまうのだ。ソラの目にはアルトしか映らないようにしてしまえばいい!


 そりゃあ二人は王子様だし、結婚して世継ぎを作らなきゃいけないとは思う。

 でも結婚して奥さんができたとしても、アルトとソラ、お互いの目にはお互いしか映っていなければいい訳でしょ?

 奥さんがいても、一番はお兄様orかわいい弟、であればいいんだ!


 この未来を作り出すためには、やはり、ルルちゃんがソラにアタックするのは困る。

 ソラにはアルトだけを見ていただけなければいけない。

 まあ友人枠として私がいるくらいならアルトも目をつぶるからいいでしょう。


 決めた。私はアルトに力を貸す。

 いっしょにソラを狙う女子から、ソラを守ろうじゃないか!


 なによりもソラに女子がひっつくと、誰とは言わないけど重度のブラコンから私への身体的暴力が尋常じゃないからね!うん。

 私、ソラとアルトがラブラブ生活を送れるように応援します!




 そんなわけで、私はその夜、その旨を重度のブラコンに伝えました。

 そしたら怪訝な顔をされた。おいっ!


 「なによ。そんなに私が手を貸すのが信じられないわけ?」

 「え。いや、だって…君ほんとうに力を貸してくれるの?」

 「もちろん」

 「……君、ほんとうにリディア」

 「……。」


 うん、驚いた。

 まさか本人確認されるとは思わなかった。

 殴っていいですか?とは言わず、私は怒りを押し込め、アルトに笑いかける。

 私は精神年齢20歳だからねっ!心が広いですから!


 「うふふ。私に決まってんでしょ~。そんなに意外?あんた、私を何だと思ってんのよ」

 「めんどうくさがりやの暴力女」

 「よし。一発殴らせろ!暴力女らしく、殴ったるわ!」


 私はむきーっと腕をふりあげたが、おろしてあげた。

 まあいい。まあいいさ。だって私はヒロインだから。むやみやたらに人を殴りません。別に殴ろうとしたらアルトがにらんできて怖かったからとかじゃないから!


 「わ、私はねぇ、これ以上アルトという殺人鬼に怯える、私のような被害者はだしたくないのっ。アルトのために力を貸すわけじゃないんだからね!」

 「え?ソラに悪影響を与えた加害者の間違いじゃないの?」


 ちがうよ。アルトという名の加害者から被害を受けた、哀れなヒロインだよ。何言ってんだよこいつ。ていうか注目するところそこなの?


 くそ。アルトにペースを乱されたが。ええい、気を取り直す。これじゃあらちが明かない。


 「はっきり言うよ。私、めんどうごとに巻き込まれたくないの!私が手を貸さなかったら、今日みたいなことが起きるじゃない?だから手を貸すって言ってんのよ!」


 嘘は言っていない。

 ソラを守り未来の2人をラブラブ兄弟にすることは、私の平穏な未来のためでもあるのだ。

 ほんとうはあなたたちのラブラブな未来のために、手を貸すのよと言ってもいいのだが、そしたらアルトのソラ自慢に話が切り替わりそうなのでやめた。


 「あと!ソラの身になにかあるたびに蹴られるのはごめんだしね!」

 「ふーん」

 「いや、ふーんてなによ。そこは普通ごめんなさいでしょ!」


 アルトはわかったと、うなずいた。

 ほんとうにわかったのかよ。つーかわかったじゃなくて謝れっつってんだよと思ったが、ここで突っかかってしまうと話が進みそうにないので我慢する。リディアちゃんは大人なので。


 「それで?どうやってソラを守る?もういっそのこと誰もソラに近づけないように、ソラを部屋に閉じ込めちゃう?」


 すみません。黙った私が間違っていました。

 笑顔で何言ってんだこいつ!?


 「そうと決まればソラには悪いけど睡眠薬を飲んでもらって…」

 「待て待て、ヤンデレストップぅ」

 「ヤンデレ?」


 なぜ7歳のうちから、ヤンデレ的発想をしているのだ。どこで身に着けた!?

 怪訝な顔をしつつもソラ監禁計画を脳内で進めているであろうアルトを私は必死に説得した。


 「お願い。もっと簡単な計画があるから、今考えている計画は頭から抹消して!」

 「えー」

 「えーじゃない!」


 夜はまだ長い。

 私はアルトの耳に顔を近づけ、計画を説明しはじめた。


 あ、ちなみに耳に顔を近づけたのは雰囲気を出すためね。秘密の計画みたいで、かっこいいでしょ。


 まあ結局ヒソヒソしようと顔近づけた途端、なぜかアルトが顔を真っ赤にさせて私を突き飛ばしたから、いつも通りの河原で横並び説明になっちゃったんだけどねー。遊び心のないやつめ。




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