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サヨナラの前に  作者: ワッフル丼
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今だから感じる者<プロローグ>

小鳥のさえずり。

木々は風にやさしく揺れ、まさに平和そのものを現したような景色である。

明るい朝日に私は照らされ、目を覚ます。

そんな世界には、()()私はもういない。


友と笑いあい、勉学に励み、学校を煩わしいと、面倒くさいと感じていた私。

色を作り出すのはとても簡単だ。でも、その色を全く穢れのない、純白へと戻すことなど幾ら白を混ぜても、不可能なのである。

どれだけ無垢で純白でも、心は簡単に荒んでしまうのだ。それでも私は、白でいようとする。たとえ真っ黒なキャンバスだとしても、白の布をかぶせ、自分をいつわり生きていくしかないのだと、決めたのだから。

そんな息苦しく生きている私の、つまらない、荒んだ人生。


始まりは一つの小さな島国の内乱である。その国は戦争をしないと誓いながらも、所詮は人間、争わなくてはいけない運命だったのだ。その小さな焚火から散った火花は、隣の大国へと飛び火してしまった。その大国もその内乱へと参加し、本当の戦争となった。しかしその島国には別の大国が後ろ盾としてついており、大きな海を跨ぐ大戦争へと発展してしまった。すると島国の隣国、仮に国Aとしよう。その国Aはとあるウィルスを開発した。

そのウィルスは感染すると、三日三晩咳と高熱、下痢に悩まされる。それだけならまだいいが、もちろんそれだけでは終わらない。一週間を過ぎると席は一層ひどくなり、肺胞がどんどん機能しなくなる。島国も必死に抵抗するも、そのウィルスは箆棒べらぼうにちいさく、多い。感染者の吐き出した空気を吸い込むだけで感染するという、まさに最強のウィルスだった。

そのウィルスがまかれ二年、島国と後ろ盾の国は、ワクチンの開発を早々にあきらめ、別の薬品を開発した。

それは、投与した人間から致死量ぎりぎりのアドレナリンを発生させ、その人間の抗体を滅茶苦茶に強化するというものだったのだ。しかしその薬品、とても穴だらけだった。アドレナリンを放出させるも、少し興奮すると不整脈を起こし、最悪呼吸困難に陥り死亡してしまう。さらに強化した抗体、確実に体に中のウィルスや最近を破壊するも、体の別の組織を破壊してしまい、脳細胞まで破壊、結果、脳死に至る人もいた。そしてもう一つ、それが一番来島忠郎。これに事件は、老若男女問わずどんな人間も殺した。特に体の弱い子供は、ものすごいスピードでバタバタと倒れていった。

これらが露呈したころにはもう手遅れ、国が薬品を回収する前にはその国の人口は、以前の五分の一にも満たなかった。

戦争の方は止む無く四十代以下の人間は男女問わずに徴兵された。


あれから二十年の時が過ぎた。戦争はすでに収束し、今や子供はほとんどが50を超えた高齢出産の親から生まれた齢20以下の子供たちばかり。その人口は国の中に百人と満たず、その四分の一は何かしらの障害を抱えている。

ちなみに私はその生涯を抱えた方。生まれつき脚を動かすことは出来ず、常に車いすに乗っている。

「お嬢様、朝食のご用意が出来ました。一階の食堂へお越しください。」

70近い老父が、ドアをノックし、優しい声を私にかける。

うしおさん、お越しくださいって、私車いすに自力じゃ移れませんよ?」

私はこの国随一の金持ちな家の娘だ。人口が減ったと言えど、昔ほどではないが経済は安定し、国民皆がそれなりの暮らしを送れるようにはなった。

「ああ、失礼いたしました。失礼します。」

「はい、どうぞ。」

「お嬢様、またそのような薄着で寝てしまっては風邪をひいてしまいますよ。」

「でも、なんだか私は不幸にならなければいけない気がするのよ。」

「そんな、お嬢様はもう十分苦しみました。ほら、食堂へ行きましょう。」

潮さんは優しい声をかけ、私の車椅子を押す。

「有難うございます、でも、私で動けますよ。ふふ。」

口に手を当て、小さく笑う。


昔好きだった美しくまぶしい太陽は、今では恨めしいいがいの何者ではない。

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