008
入市税を 小銅貨3枚 → 銅貨3枚 に変更しました。
それに伴い文章を一部変更しました。 2014/8/24
「やっ! はっ!」
何をしているのかと言われたら戦闘中である。
まっすぐ町へと向かってもいいのだがせっかくなので『剣術』の熟練度を上げることにしたのだ。
武術は素人であるため構えも何もなく、その剣先は常にふらふらしている。
このままでは最低限の自衛も何もないので、今のうちに弱い魔獣で手ならしをするつもりだ。
というわけで先ほどから角兎を相手に剣を振っているのだが、これがなかなか当たらない。
兎の回避がうまいというのもあるが、一番の原因は剣だ。
重さに慣れていないため振るたびに体が持って行かれ、思ったような剣筋ならないのだ。
そしてそんな俺をどこ吹く風とひょいひょいよけ続ける兎。
いい加減じれてきたので召喚している兎にも相手をさせることにした。
互いに激しく動くが見間違えることはない。
使い魔との間にはパスのようなものが通っており、それによってどちらが自分の使い魔なのかがはっきりとわかる。
指示もこのパスを通しておこなう。
そして敵の兎が目の前に着地するのを見計らって思い切り剣を振りおろした。
剣は兎の首を断ち切り、そのまま地面に刺さった。
同時に何かが流れ込んでくる感覚。
その感覚に身を任せて剣を構えると、先ほどよりもずいぶんと安定した構えになった。
そのまま兎との連戦を続けていく。
町の手前に着くころにはずいぶんと構えもマシになり、使い魔の助けもあって苦戦することはなくなっていた。
使い魔のほうも学習したのか、うまく俺のほうに相手を誘導してくれる。
倒した兎ははぎ取らずにそのままアイテムボックスに収納した。
後からナイフでも買ってはぎ取るつもりだ。
そして何事もなく町へ着く。
(テンプレだと商人が襲われてたりお忍びで外出中のお姫様が襲われてるのを助けたりするんだがなぁ)
なんてこと思いながら門へと歩いて行くと、門の前には武器を持った兵士が周囲を警戒していた。
そのまま兵士に向かって声をかける。
「すみません、町に入りたいのですが」
「おう、身分証はもってるか?」
そう聞いてくる。
当然他の世界から来た俺は持っているわけがない。
「すみません、持ってないです」
「めずらしいな、どこかの村から来たのか?」
そう聞かれたので適当に合わせることにした。
「ええ、冒険者登録をするために来ました」
「そうか、ギルドは町の中心にある。大きな建物だからすぐわかるはずだ。
それと町に入るには銅貨3枚だ。これは規則でな」
そう言って手をさしだしてくる。
俺はポケットに手を入れるふりをしてアイテムボックスから銀貨を1枚取り出し、兵士へと渡す。
兵士は腰に付けたバッグから大銅貨9枚、銅貨7枚を取り出すと、俺へと返してきた。
「ようこそ、セリューへ。頑張って立派な冒険者になってくれよ。
さぁ、通っていいぞ」
「ありがとうございます」
お礼を言って通り抜けようとしたところで兵士に止められた。
「ちょっと待て! なんだそのホーンラビットは。どうしてこんなところにいる」
そう言って武器である槍を構える。
そういえばすっかり忘れていた。
「あっ、待ってください! この兎は俺の使い魔です」
あわてて俺が止めに入る。
「何? 使い魔だと? どういうことだ?」
混乱する兵士に俺は魔獣を従えるスキルを持っていること、従えている魔獣に危険はないことを説明する。
「なるほど、わかった。
だが魔獣を町へと入れることはできん。騒ぎが起きるからな」
「大丈夫です、消しておくこともできますから」
そう言って角兎を送還して見せる。
「ほう、変わった魔法を使うな。初めてみたぞ」
兵士はしきりに感心していた。
『世界知識』によれば魔獣とはすべてが人類の敵であり、人になつくことはないらしい。
どうやらこちらの世界では魔獣を従えるという発想がそもそもないようである。
門をくぐった俺はギルドへと向かうことにした。
ギルドとは国を超えた互助組合であり、国家に属することはない。
登録している者は冒険者と呼ばれ、ギルドから斡旋される仕事を請け負っている。
ギルドには魔獣の討伐や護衛の依頼などが日々舞い込んでおり、腕に覚えのある者たちがこれをこなしている。
また魔獣の素材なども買い取っており、町の各店への仲介を行っている。
そんなことを『世界知識』から引き出しながら町の中へと入っていく。
町の中はいかにもファンタジーと言った雰囲気であふれていた。
ほとんどの建物が石造りで木造建築はほとんどないようだ。
通りには人があふれており、とても活気に満ちている。
中には耳の長い者や獣の特徴をもった者たちがちらほらといて、店の前で商品を吟味したり屋台の前で串焼きをほおばったりしている。
エルフや獣人と言うやつだろうか。
通りを行く人々を観察していたらあっという間にギルドとおもしき建物の前についてしまった。
町の中のどの建物もせいぜい2階までなのに対し、その建物は3階建てで大きさ自体も周りの家の3、4倍はある。
入口の上には盾の前で交差した剣と槍が描かれた看板が掛かっていて、武器や鎧を装備した者たちが出入りしている。
『世界知識』で照らし合わせても目の前の建物が冒険者ギルドで間違いなかった。
期待に胸をふくらませながら扉をくぐると、そこには想像した通りの光景があった。
入って正面には受付があり、左には酒場がある。
酒場では多くの冒険者が料理を食べたり酒を飲んだりしている。
俺は空いている受付で登録することにした。
ちなみに受付嬢たちは例にたがわず美人揃いである。
「すみません、冒険者登録をしたいのですが」
「こちらは買い取り受付となっているので、そちらの階段を上った所にあるクエスト受付から登録を行ってください」
そう言って右手側をさした。
そちらには階段があり、2階へと続いている。
階段を上っていくと正面に1階と同様の受付があり、左手側にはいくつもの紙が貼られたボードがあった。
何人かの冒険者がそれを見比べたり、ボードからはがして受付へと持っていったりしている。
それを横目に見ながら空いている受付に声をかける。
「すみません、冒険者登録をしたいのですが」
「はい、ではこちらの紙に必要事項を記入してください」
そう言って一枚の紙を差し出してきた。
そこには名前のほかに職業や所持スキル等を記入する欄がある。
ちなみにスキルは教会へ行くことで確認できるらしい。
俺は『ステータス』を持っているから必要ないが。
その中で一つ気になる項目があった。
「この職業っていうのは冒険者とは違うのですか?」
そう言って受付に問いかける。
「冒険者とは冒険者ギルド会員のことをまとめてさすもので、ここで書いていただく職業は大まかな自分の戦闘スタイルのことです。
たとえば剣が得意なら剣士、魔法が得意なら魔法使いといった具合ですね。
これらは依頼を受けていただく際の参考とさせていただきますので一番近いと思う物を書いてください」
なるほど、つまり俺だと召喚術師となるわけか。
というわけで記入した結果がこれだ。
――――――――――――――――――――――――
名前 カナタ
年齢 16
職業 召喚術師
スキル 『剣術』『召喚術』『結界術』『属性適性(火・水)』
――――――――――――――――――――――――
ちなみに名前だけなのはこの世界では名字を持つ者は貴族や王族だけなので余計な騒ぎを起こさないようにするためだ。
スキルについては問題ないと思う物だけを書いてみた。
属性に関しては野営に必要そうな物を記入する。全属性持ちと知られたらなぜかよくないことが起こりそうな気がしたからだ。
特におかしいところもないので受付に提出する。
受付のお姉さんは記入漏れがないことを確認するために目を通すが、一点を見て眉をしかめた。
「すみません、この召喚術師という職業はどういったものでしょうか?」
そういえばこちらの世界では『召喚術』は知られていなかったんだった。
そういうわけで門番に説明したのと同じような説明をしていく。
その甲斐あって何とか納得してもらった。
「それではこちらに手をかざして魔力を流してください」
そう言って材質不明の白い板をさしだしてくる。
板には隙間があり、先ほど記入した用紙が挟まれている。
板に手をかざし魔力を流すとそれは淡く発光し、やがて消えた。
受付嬢はそれを手元に戻すと何やら操作をしている。
しばらく待っていると呼ばれたのでそちらに視線を移すと、その手には1枚のカードがあった。
「ではこちらがギルドカードとなります。
魔力を流しますと先ほど記入していただいた情報が浮かび上がりますのでご確認ください」
そう言って鈍色をした手のひらほどのカードをさしだしてきた。
さっそく魔力を流すと表面に文字が浮かび上がってくる。
一番下には大きく『F』と書かれていた。
「そのカードは特殊なアーティファクト使用しており、本人以外の魔力には反応しないようになっていますので身分証としてもご利用いただけます。
またクエストの情報や討伐した魔獣の種類と数が記録されます。
それらはギルドの端末でしか見ることができないので予めご了承ください。
なくされますと再発行に銀貨2枚をいただくことになりますので気を付けてください」
カードはなくさないようにアイテムボックスにしまった。
「続いてギルドについて説明させていただきます。
まずギルドは会員の争いについて一切の干渉を行いません。
会員同士の争い事はすべて自己責任でお願いします。
ギルドに対する不利益な行動を行った場合は相応の罰則でもって対処させていただきます。
次にギルドでは依頼料の2割を仲介料として徴収します。この中には各町での入場料やギルドによる身分保障も含まれます。
同時に会員登録だけして依頼をこなさないことを防ぐため、一定期間ごとに決められた依頼達成率を維持しなければ、強制的に会員登録を抹消させていただきますのでご注意ください。
ここまでで何か質問はありますか?」
「いえ、ありません。続けてください」
「わかりました。では次に依頼について説明させていただきます。
まず依頼はすべてランクごとに分けられています。
ランクはAからFまで難易度ごとで分けられており、自身のランクの1つ上のランクまで請け負うことができます。
これは実力のない者がむやみに依頼を受けて無理をしたり、何らかの問題を起こすことを防ぐためにあります。
たとえどれほど腕に自信があろうと登録時は全員Fランクからになります。
これは規則ですのでどれほど文句があろうと変えることはできません。
ランクを上げるためにはランクごとに決められた依頼数を達成する必要があります。
依頼には常設依頼と通常依頼、緊急依頼の3つがあり、これとは別に指名依頼があります。
常設依頼は常に依頼を受け付けているため達成までの期限は存在しません。
通常依頼、緊急依頼、指名依頼には期限が存在し、期限を超えた場合は失敗となります。
依頼を失敗した場合は罰則として原則依頼料の2倍を罰金として徴収いたします。
またあまりにも失敗が多い場合はランクが降下することもあります。
さらにひどい場合や罰金が払えずに借金をし、期限内に返済できない場合は借金奴隷として売られますので気を付けてください」
なるほど、こちらには奴隷も存在するのか。
脳内で検索してみるとこの世界には奴隷制度があり、一般的な奴隷として犯罪などを起こして捕まった犯罪奴隷と、借金を返しきれずに借金の形として売られる借金奴隷、そして生活ができずに身売りをする一般奴隷があるらしい。
また表ざたにはされていないが奴隷狩りによって奴隷へとおとされた違法奴隷もいるようだ。
どうやらこの世界の敵は魔獣だけではないようだ。気をつけなければ。
「以上で説明を終わります。何か質問はありませんか?」
受付嬢の声により意識を引き戻された。
「ん~、ランクにはAより上はありますか?」
「はい、確かに存在しますがもはや伝説級ですね。
Sランクの魔獣は国家が兵力をあげて討伐する必要があるほどですので依頼自体がほぼありません。
SSランクに至っては国が滅びるほどですのでまず遭遇した場合は生きてはいないでしょう。
個人での最高ランクは最大でB、パーティーでAといったところです」
「なるほど、ありがとうございます」
どうやらマンガのようにSランクを持った人間はいないらしい。
個人でもBということはこちらの人間はそれほど強くないようだ。
おそらくは文明崩壊以来多くの技術や知識が失われ、それ以降も魔獣によって文明は後退し続けているのが原因だろう。
受付嬢にお礼を言ってカウンターから離れる。
こうして俺の冒険者登録は無事に終わった。
参考までに書いた設定です。
脅威度
SS 国が滅びるレベル。 上級竜種
S 軍が出動するレベル。非常に危険。中級竜種
A たくさん集まってようやく倒せるレベル。下級竜種
B 数人がかりでようやく倒せるレベル。 オーガ、ウルフの群れ
C 1対1でようやく倒せるレベル。 オーク
D 大人が少し苦戦するレベル。 ゴブリン、ウルフ
E 大人が普通に倒せるくらい弱い。 ラビット
F 子供でも倒せる。 スライム