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今度は植物で生成実験


さて、微妙に時間が余ったので実験でもしようと思う。

今回の対象は虫じゃなくて植物です。

こっちの世界だと植物も普通に魔物化しますからね~。


というわけでまずは昨日切り倒したオークナッツの切り株に魔石を乗せて実験します。

切ったばっかりだからまだ根っこの方は生きているはず。

うまく魔物化できれば今後の材料に困らなくていいんですがね~。



――――――――――――――――――――――――

<ウォーキングナッツ>

ウォークナッツの上位種。トレント系のモンスターだがこちらはクルミの木が原型。

――――――――――――――――――――――――



いきなり大物が釣れました。


え? ただのトレントじゃないかって?


馬鹿言っちゃいけませんよ。

こいつ相当厄介な魔物なんです。


ちなみに「ウォーキング=散歩」ではなく「ウォー・キング=戦王」と読みます。

俗に『戦王種』と呼ばれる魔物ですね。

一体いるだけで戦局が覆るといわれるほど強力な力を持っています。

辺境の方に行くとこいつ以外にも山のようにいるらしいです。



まぁ弱点はトレント系共通なので結界の隙間からグラインダーソードでさっくり倒しましたが、なにか?



――――――――――――――――――――――――

ウォーキングナッツ

Ⅱ等級


戦王種となったクルミの木の魔物。強靭な再生力を持ち、攻撃するそばから修復してしまうが、トレント系モンスターの弱点として火に弱い。

本体や果実には豊富な脂分が含まれているためよく燃える。

木魔法や巨体を生かした踏み付けなどの攻撃を仕掛けてくる。


スキル

【踏み付け:3】【木属性:3】【咆哮:3】【擬態:3】【振動感知:3】【魔力感知:3】

――――――――――――――――――――――――



戦王種という割には等級が低いのはトレント系だからだろうか。

戦力的にはBランク相当かな。

ついでに近くにあった枯れ木で試したら普通に魔物化してびっくり。

まぁ無機物がゴーレムになるくらいだから普通、なのかな?



――――――――――――――――――――――――

<ウィザードエント>

立ち枯れた木の魔物。種別的にはアンデッドに属される。

――――――――――――――――――――――――



こいつはトレント系の魔物に似ているが、一応アンデッドのため弱点の瘤がない。

代わりに木の幹に直接ウロや裂け目ができていて、それが顔になっている。

ウロの中には青白い火が灯っていて何ともホラーです。

魔石は幹の中心にあるようだ。

もっとも元が枯れ木なだけあって火に弱いので、火魔法でさくっと燃やします。

残った灰からは黒く変色した魔石が出てきたので登録しておく。



――――――――――――――――――――――――

ウィザードエント

Ⅲ等級


立ち枯れた木が魔物化したもの。トレント系の見た目だがアンデッドに属される。

枯れているため木魔法が弱体化したが、代わりに闇魔法を使う。

元が枯れ木なので火に弱い。


スキル

【木属性:1】【闇属性:2】【擬態:3】【振動感知:2】【魔力感知:3】

――――――――――――――――――――――――



他にも木の根元にあったキノコに魔石のかけらを埋め込んで実験してみる。



――――――――――――――――――――――――

<グリッターマッシュ>

きらきらと輝くキノコの魔物。主に虫をその光でおびき寄せてとらえる。

――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――

<スティッキーマッシュ>

べたべたした表面を持つキノコの魔物。おいしそうな匂いを出しておびき寄せた獲物が触れると粘液に捕えられる。

――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――

<アングリーファンガス>

吸ったものを狂暴化させる胞子を飛ばすキノコの魔物。

――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――

<キテレツベニテング>

吸ったものに強力な幻覚を見せる胞子を飛ばすキノコの魔物。

――――――――――――――――――――――――



グリッターマッシュは月夜茸みたいに薄く発光するキノコで試してみた。

透き通るような青白い本体からうすみどり色の光がきらきらと出ていてとてもきれいです。


スティッキーマッシュはナメコみたいなのからだ。

表面がべとべとしているくせにやたらおいしそうな匂いがする。

罠だとわかっていてもよだれが止まりません。


他の二つはいかにも毒キノコっぽいのからできた。

アングリーファンガスは赤紫色に白い斑点の毒々しい傘をしている。

キテレツベニテングの方は名前にたがわず奇抜な見た目をしていた。

紅い傘は表面がトゲトゲしていて、ヘビがのたくったような緑色の模様がある。

見た目もそうだが効果も危険なので厳重に結界で梱包してあります。


こいつらは普段キノコに擬態しているが、近づくと正体を現して襲いかかってくる。

普段は手のひらサイズなのに、獲物を感知すると1m位まで巨大化するのだ。

その見た目はまるで傘をかぶったハニワです。

足はないけど菌糸みたいのを伸ばして、その上をすべるように近づいてくる。


魔石はどれも傘の付け根のあたりにあった。

柔らかそうだったので手で攻撃したら普通に縦に裂けたよ。

縦に真っ二つになったキノコはどれも動かなくなったので倒せたようです。


そういえば縦に裂けるキノコって食べられるって言いますよね。

こいつら食えるのか?


グリッターマッシュやスティッキーマッシュはともかく他の二つは抵抗があるぞ。

ゴブリンたちに毒味でもさせてみるか。



――――――――――――――――――――――――

グリッターマッシュ

Ⅲ等級


きらきら光るキノコの魔物。光で獲物をおびき寄せてとらえる。

グリッターマッシュが通った後は光の道ができる。


スキル

【体当り:2】【増殖:4】【拡散:3】【発光:4】【擬態:3】【振動感知:2】【魔力感知:2】

――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――

スティッキーマッシュ

Ⅲ等級


おいしそうな匂いを発して獲物をおびき寄せるキノコ。表面はべたべたしていて、一度くっつくとなかなか取れない。

動けなくなったところを捕食する。


スキル

【体当り:2】【粘液生成:3】【誘引:4】【増殖:4】【拡散:3】【擬態:3】【振動感知:2】【魔力感知:2】

――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――

アングリーファンガス

Ⅲ等級


吸い込むと狂暴化する胞子を出すキノコ。争い合って傷付いた獲物を捕食する。


スキル

【体当り:2】【毒生成(狂化):3】【増殖:4】【拡散:3】【擬態:3】【振動感知:2】【魔力感知:2】

――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――

キテレツベニテング

Ⅲ等級


吸い込むと強力な幻覚を見せる胞子を出すキノコ。深い森の中などに生息し、胞子を吸ったものを惑わせる。


スキル

【体当り:2】【毒生成(幻惑):3】【増殖:4】【拡散:3】【擬態:3】【振動感知:2】【魔力感知:2】

――――――――――――――――――――――――



とりあえずグリッターマッシュとスティッキーマッシュには毒がないことを確認できました。

他の二つも死ぬような毒はない模様。

確かキノコの毒成分は旨みでもあるって聞いたことがあるな。

元居た世界のN県では猛毒のベニテングタケを調味料として使ってるっていうし。

それに毒は胞子にあるみたいだから、胞子ごと部分召喚しなければ食べれるはず。


うん、何か大丈夫な気がしてきた。

今日の晩御飯は焼きキノコにしよう。


そうと決まれば実験の続きだ。

百合の花っぽいのを見つけたので魔石の粉をかけて様子を見る。


そしたら魔物化せずにこんなのができた。



――――――――――――――――――――――――

<マジカルリリー>

魔力をため込む性質を持ったユリ。花は青白く発光する。

――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――

<サイレントリリウム>

眠りの効果を持つユリ。特に密に最も効果が表れる。

――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――

<サイレンリリー>

花の付け根に空気袋を備えたユリ。種が熟すと大きな音とともに種子を飛ばす。

――――――――――――――――――――――――


どうやら『魔化』したようです。

魔化とは魔物化せずに、魔力によって生態が大きく変質することを指す。

さらに変質に魔力がかかわっているため、何かしらの魔法的性質を持つことが多くなるのだ。


有名どころでいえば傷薬の材料で知られるクラシオン草でしょうね。

あれはもともと雑草だったものが魔化したものだ。

この辺は秘境ほど魔素が濃くないため実感しにくいが、魔素が濃いところで取れるものほど効果が高くなることが知られている。


先の三つで最も顕著なのはマジカルリリーだ。

花弁は特に魔力が多く含まれているため、高級魔力回復薬の材料になる。

ただし秘境に近いところからしか生えていないのでここら辺ではほとんど知られていない。

こちらで一般的なものといえばムーンフラワーで、マジカルリリーの下位互換に当たるようです。


サイレントリリウムは主に睡眠薬として使われる。

水や酒に溶かして寝る前に飲むとぐっすりと眠れるそうです。

特に密は貴族が好んで服用するので高級品として扱われています。


どれもここら辺では相当珍しいものなので、木魔法で種にして保存しておきましょう。


それにしてもどうして魔物化せずに魔化したんだか。

魔物化しやすい植物と魔化しやすい植物でもあるのかもしれない。

そこら辺はおいおい調査するしかなさそうですね。


もうそろそろ暗くなりそうなので次で最後にしましょう。

本日最後の実験台は茨みたいにトゲトゲした植物です。



――――――――――――――――――――――――

<ウィッパースパイン>

トゲのびっしり生えた蔓を触手のように動かす魔物。本体は地面から生えている蕾。

――――――――――――――――――――――――



どうも今度は魔物化したようです。

本体はサッカーボールくらいの蕾で、そこから大量の蔓がうねうねと生えている。

甘い香りがするのは本体の蕾が原因のようだ。


さっくりと火魔法で燃やすと、魔石を残して燃え尽きた。



――――――――――――――――――――――――

ウィッパースパイン

Ⅲ等級


トゲの生えた蔓の魔物。本体は根元にある蕾。

甘い匂いで獲物をおびき寄せ、トゲのびっしり生えた蔓でからめとって吸血する。

植物系魔物の弱点として火に弱い。


スキル

【捕縛:2】【吸血:3】【誘引:3】【擬態:3】【振動感知:2】【魔力感知:2】

――――――――――――――――――――――――



登録が終わったところで夕飯の支度だ。

4種のキノコの傘とオークの肉を召喚、それぞれ一口大に切ります。

キノコと肉を交互に串に刺してネギま風に仕立てる。

味付けはシンプルに塩のみ。

それをオークナッツを薪にして焼いていきます。


しばらくすると周囲に食欲をそそる匂いが充満し始める。

そろそろいいかな?


一本取って焼き加減を見るとちょうどよさそうだ。

近くにいたゴブリンを呼んで食べさせてみる。

まずはグリッターマッシュ。


美味そうに串焼きを食べるゴブリンを見ながらしばらく観察する。


うん、問題なし。

次、スティッキーマッシュ。


問題なし。


アングリーマッシュ。


問題なし。


キテレツベニテング。


問題なし。



相変わらずうまそうに食べているゴブリンを見るが本当に大丈夫か?

そもそもこいつらに毒って効くんだろうか。

試したことがないからわからない。


分からないことだらけだけど今のところ問題なさそうなので良しとしましょう。

万が一毒に中っても【超回復】があれば死ぬことはないだろう。

その間に聖魔法で解毒してしまえばいい。


いざ、実食!


まずはグリッターマッシュから。

食感はエノキダケみたいな感じ、微妙にシャキシャキしてる。


味は・・・・・・ないね、これ。


あえて言うならうすしお味。

まんまエノキだわ。

ちょっとがっかり。


お次はスティッキーマッシュ。

こいつは焼く前からすでにいい匂いがしてたんだよね。

きっとおいしいはず。


期待に胸をふくらませながらまず一口。


・・・・・・。


うん、フツー。


いや、まずくはないんだよ?

むしろおいしい方だと思う。


でも期待していたほどじゃない。

盛り付けは豪華なのに期待して食べたら大衆食堂と変わらなかったみたいな。

なんか微妙に肩透かしを食らった感じがする。


ぐぬぬ、とうなりながら次の串を手に取る。

アングリーファンガスの串だ。


焼いたことで赤紫色だった表面は、今やドドメ色のマーブル模様に変色している。

本来なら白色をしているヒダの部分まで黒く変色していた。

覚悟を決めて一口。


ゆっくりと、見極めるように咀嚼する。




呑み込むと自然とため息が出た。


旨い。


それ以外の言葉が見つからない。

むしろ言葉で表すこと自体がチープに感じられる。

キノコの持つ旨みという旨みをすべて凝縮したような、言葉で言い表すことができないほどの無限の可能性。

その完成形がここにあった。


念のためステータスを開いてみるが、状態は良好のままだ。

毒や精神異常を受けている様子はない。



気が付くと他にもあったはずのアングリーマッシュの串が一本も見当たらなかった。

どうやら夢中で食べていたようです。

そのことを残念に思いながら、必ずまた作ろうと決心する。


最後に残ったのはキテレツベニテングの串だ。

こちらは別段いいにおいを発していたり変色している様子はない。

焼いたことで多少コゲ目がついているがその程度だ。

アングリーマッシュが問題なかったので特に警戒することもなく口に入れる。



その瞬間、得体のしれない感覚が脳を貫き



俺の意識は



そのまま闇へと



消えていった。










縦に裂けるキノコが食べられるっていうのはあくまで迷信です。

縦に裂けたからと言って知らないキノコを口にすることは決してしないでください。

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