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召喚術の可能性


とりあえず今日のところは依頼の確認だけにしておく。

ちょうど実験したいことはあったからだ。


西門を出て人気がないあたりでロックボアを召還しひたすら爆進。

最近ロックボアが移動手段として日常化しつつある。

人目を気にしないなら馬系の魔物を出すべきなんだがまだ見つけていない。

それと馬車。

幸いにしてこちらに来てからまだ一度も雨に遭っていないが、いずれ雨降りの時の移動手段として用意しておきたい。

今後の課題として覚えておこう。

そんなことを考えながら1時間ほど揺られているといつもの森に到着です。

実験の前に結界を張って誰にも見られないようにするのも忘れない。



今回の実験のお題は部分ごとの召喚だ。

ホーンラビットの討伐部位が部分ごとの買取りだったのを見て思いついた。

もしかしたら角だけ、皮だけの召喚とかできるんじゃなかろうか?


というわけでさっそくここまでくる間に轢き殺したホーンラビットを1体出して解体、魔石を登録する。

何気に今まで登録するのを忘れていた。



――――――――――――――――――――――――

ホーンラビット

Ⅲ等級


角を持つウサギで平原や浅い森にたくさん生息する。

クラシオン草を好んで食べるためその角にはわずかながら鎮静作用がある。そのため鎮痛剤の材料として使用される。


スキル

【突撃:2】【跳躍:3】【ダッシュ:3】【聴覚強化:4】

――――――――――――――――――――――――



ホーンラビットの角を思い浮かべながら召喚してみると、足元に現れた魔方陣からは角だけが現れた。

目次を確認してみると召喚リストには変化がなかったためコストは0らしい。

どうやら成功したようだ。


というかホーンラビットの説明に鎮痛剤として利用可能って書いてあるけど、ギルドの買取りには工芸品用って書いてあった。

もしかすると一般的には知られていないのかもしれないな。

試しに鑑定してみる。



――――――――――――――――――――――――

<ホーンラビットの角>

ホーンラビットの額から生えた角。わずかながら鎮静作用がある。


*純粋な魔力で構成されているため通常より質が良く効果も高い。

――――――――――――――――――――――――



瞬間、注釈を見てぎょっとした。

もしこれが知られたら余計な騒ぎになりかねない。

よからぬ輩の目についたら何を要求されるかわかったもんじゃない。


そんな焦りは世界知識を参照することで落ち着いた。

どうやらこの世界の人が持つ鑑定は知識量に比例するらしく、知識にないことは表示されないようだ。

自分がいろいろ鑑定できているのはひとえに【世界知識】と【鑑定】スキルが互いにリンクしているおかげらしい。

なので一般的には、



――――――――――――――――――――――――

<ホーンラビットの角>

ホーンラビットの額から生えた角。

――――――――――――――――――――――――



と表示されるらしい。

鑑定する人によっては多少「品質がいいな」と思う程度か。

別にあせる必要はなかったようだ。





その後もいろいろ試してみた。

肉や皮、骨などもちゃんと召喚できるようである。

その他にもロックボアの甲殻やゴブリンの武器なども試してみたがどれもうまくいった。

ただ、魔石だけはうまくいかなかったので何か条件があるのかもしれない。

おかげで足元には素材や肉や武器が転がっている。

どれも自分の魔力を基に構成されているため1級品ばかりだ。

どうやら物質として定着しているらしく、魔力の供給がなくても消えたりしないようだ。

ただし従魔のようにパスが通じていないため送還で消すことはできなかった。

アイテムボックスの容量はほぼ無制限なので、今のところ置き場に困ることがないのが救いか。

これで魔物を討伐することなく討伐証明を稼ぐことができそうだ。

案外Dランクへのランクアップも早いかもしれない。

それにもし武器を失っても非常手段として使えるのもありがたい。

マジ【召喚術】便利過ぎです。



さっさと片付けて本日の実験は終了。

まだまだ日は高い。

なので周辺の探索をすることにする。

目標はまだ見つけていない魔物だ。

通常魔物はそれぞれの勢力圏を持つが、ごくまれにこの勢力圏を越えてくるものがいる。

単に餌を探しているうちに他の魔物の勢力圏に入り込んでしまったものや、下位の魔物を餌にするためにより上位の魔物が紛れ込んだりというものだ。

一般的にそれらは『はぐれ』と呼ばれているが、極端に餌が不足して種族ごと移動を始めるものを『大侵攻スタンピード』と呼んだりする。

ちなみに初日に見つけたロックボアの子供は『はぐれ』だ。

今回もそういった魔物を探そうと思う。

森は北西に向けて広大に広がっており、さらに北には山脈がある。

なのであまり森の奥まで行かない程度で探してみようと思う。

森を抜けて南西へ7日ほど向かうとまた別の町があるが、そちらはまた別の機会だ。



さっそくフォレストウルフとゴブリングールを10体づつ召還して組ませる。

今回の目的は聴覚・嗅覚と魔力による探査だ。

それぞれ別の方向に放ってやると、次々と情報が舞い込んでくる。

ただし大抵は既存の魔物か他の冒険者の物のようだ。


従魔による探索の利点は戦闘をさほど必要としないところだ。

動物であれば従魔を恐れて近寄ってこないし、魔物であればよほどのことがなければ同じ魔物と認識してか襲ってくることはない。

中にはゴブリンのようにやたら好戦的なものもいるが、そういったのはごく一部のようで彼我の戦力差を悟って攻撃してくることはないようだ。

なのでそういったことに気を付けておけば戦闘を回避することはたやすい。



あまり探索が芳しくないのでそろそろ引き上げようとしたとき、新たな反応が2つ帰ってきた。

従魔の目を借りて見るとそれぞれ別の魔物が映る。

一つはフォレストウルフより倍ほども大きな灰色のオオカミ、もう一つは何かの巣に絡め取られたゴブリンのものだ。

ゴブリンの方の反応をグールの視点に変えてみると木の陰に未見の反応があり、これを察知したらしい。

とりあえずゴブリンの方はそのまま見張りを継続させてオオカミの方へ急行――しようとして閃いた。


従魔とはパスでつながっているんだから、従魔を媒介にして魔法とか行けるんじゃないか。


ということで試したらあっさり成功しました。

現在目の前では大量のゴブリンと灰色のオオカミが戦闘中です。

召喚の光に驚いてオオカミが襲いかかってくる。

オオカミがフォレストウルフを引き裂き、光となって散った時にはすでに布陣が完了していた。

大量のゴブリンがオオカミを囲み、容易に逃げられないようにしている。

ゴブリンの目を通して鑑定してみると、どうやらグレイウルフという魔物らしい。


――――――――――――――――――――――――

<グレイウルフ>

大型のオオカミ系魔物。森の深部に生息し、単独で狩りをおこなう。

――――――――――――――――――――――――


前衛のゴブリンが武器を突き出すと、グレイウルフはひらりと躱して他のゴブリンを引き裂く。

着地した瞬間にはすでに他のゴブリンに向けてとびかかっている。

そんな光景が何分も続いて初めはグレイウルフが圧倒していたが、次第に形勢が逆転し始めた。

疲労から次第に動きが鈍くなり、被弾する回数も増えている。

もしグレイウルフに意思があったら思っていただろう。

「おかしい、全然敵の数が減らない」と。


それもそのはず。

ゴブリンが倒れた端から召喚しているので数は減っていない。

むしろ初めよりも倍ほどに増えてさえいる。

それにゴブリンたちもただやられてはいない。

グレイウルフの動きを観察することで行動パターンを学習し、次第に被弾回数が減ってゆく。



次第に弱っていくグレイウルフにゴブリンがとどめを刺すことで決着はついた。

倒れたグレイウルフをゴブリンを通してアイテムボックスに収納する。

そのあとは並み居るゴブリンたちを送還すると、そこはまるで戦闘などなかったように静かになった。






いっぽう、ゴブリンの方にも変化があった。

ゴブリンが逃げ出そうと暴れるほどに何かの巣はゴブリンに絡まり、次第に動きを奪ってゆく。

さらに頭上から何かの液体が吐き掛けられ、極端に動きが鈍ってゆく。


動かなくなったゴブリンの上から現れたのは巨大なクモだった。

胴体は50㎝ほどだが足が長く、差し渡し2m以上ありそうだ。

そんなクモが動きの鈍ったゴブリンに覆いかぶさると、くるくると糸を吐きかけてゆく。

鑑定するとパラライズスパイダーというらしい。


――――――――――――――――――――――――

<パラライズスパイダー>

麻痺性の毒を持つ巨大なクモの魔物。地面付近に巣を張り、木の上などから獲物がかかるのを待つ。

巣にかかった獲物は小型の動物からゴブリンなどの魔物まで捕食対象とする。

――――――――――――――――――――――――


今回は木の上に逃げられると厄介なので結界で囲い、火魔法で燃やしたので魔石と灰だけがその場に残った。

灰の中から魔石を拾ってアイテムボックスに収納する。

召喚した従魔をすべて送還し、本日の戦果を確認した。

グレイウルフが丸ごととパラライズスパイダーの魔石。

グレイウルフの方は傷だらけで素材としての価値はなさそうだ。

なので魔石だけ頂戴しておくことにする。

取り出したグレイウルフの魔石は透明で2㎝ほど、クモの方は紫で1㎝ほどだ。

二つとも従魔の書に登録する。


――――――――――――――――――――――――

パラライズスパイダー

Ⅲ等級


麻痺性の毒を持つクモの魔物。地面付近に巣を張り、木の上で獲物がかかるのを待つ。

巣にかかった獲物は何でも捕食する。


スキル

【噛み付き:3】【毒生成(麻痺):3】【躁糸:4】【振動感知:3】【嗅覚強化:2】【夜目:4】

――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――

グレイウルフ

Ⅱ等級


灰色の体毛を持つ大型のオオカミの魔物。なわばりをもたず常に単独行動をする。

普段は森の深部などに生息する。


スキル

【噛み付き:4】【ひっかき:2】【咆哮:3】【身体強化:2】【聴覚強化:4】【嗅覚強化:4】【夜目:3】

――――――――――――――――――――――――


従魔を通してスキルを使えるとわかったおかげで大して遠くへ行く必要もなく魔石を集められることが分かったのは大きな進歩だ。

これなら自分がいけないような場所の探索もずいぶんとはかどるだろう。








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