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メイジ オブ Mage  作者: 水無月ミナト
家族編 小さな魔法師
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異世界の歴史

 ネリに追いつき、何とか宥めて許してもらう。

 なんで俺が謝ってんだろ……。いや、我慢するけど。このまま帰って怒られるの、きっと俺だし。


 そのまま、俺とネリは並んで村の散策を再開した。

 トロア村を歩き回っていると、


「お、ニューラさんとこの双子じゃねえか。どうだ? 牛乳飲むか?」

「あら、双子ちゃんじゃない。これ、今日取れた野菜あげるわ」

「騎士の子なら馬ぐらい乗れねえとな! 練習していくか?」

「新しい本仕入れたよ。見ていくかい?」


 とまあ、ニューラがとても頑張って統治してくれているおかげで、俺たちが外を歩いているだけでこれだけの反応だ。

 俺とネリは、外に繰り出して数十分で両手がいっぱいになってしまった。


「兄ちゃん、野菜あげる」

「持つくらい我慢しなよ……」


 呆れながら、ネリから野菜を受け取る。確かに、新鮮だから臭いがきついが。

代わりに、ネリに牛乳を持たせる。


「……ごくっ」

「飲まないでよ? 兄さんたちのなんだから」

「わ、わかってるし!」


 絶対わかってないな……。目が牛乳に向けられたままだ。

 両手にやっと持てるほどの貰い物。

 とりあえず、俺たちは一旦家に帰ることにした。


 ネリと並んで、ゆっくりと歩いていく。

 のどかなものだな。前世でも、ここまで自然が残っている場所なんてないだろう。

 その分、不便なところがあるか。


 田んぼをならすのには牛のような魔物が使われているし、移動方法も馬車がほとんどだ。まあ、引いている魔物が馬っぽいだけで、馬とは若干違う。

 ほかには、芋虫みたいな魔物が馬車を引いている。見た目気持ち悪いが、安価であるため、馬の代用としてよく見かける。


 あとは……トカゲか? 尻尾の生えた、爬虫類の魔物を見かけるが、この辺じゃあまりみない。行商している商人がよく使っている。

 値段は高いが、他の魔物とのエンカウント率が減るらしい。確か、トカゲのような魔物はドラゴンの眷属の扱いだったか。

 ドラゴンも馬車を引くようになるらしいが、それよりも馬車を持たせて飛んだ方が速いとか。


 まあ、そんな感じで、時々人や馬車とすれ違いながら家路を急ぐ。

 と、その時、少し強めの風が吹いた。


「あ」


 咄嗟に帽子を押さえようとしたが、既に遅く、帽子が風に乗って飛んで行ってしまう。


「あたし取ってくる!」

「あ、こら!」


 ネリが好機とばかりに、俺に貰い物すべて持たせて帽子を追いかけて行ってしまった。

 まったく。風魔法使えば、別に取りに行く必要ないのに。

 はぁ……仕方ない、少し休むか。


 幸い、周りに人はおらず、この白い髪に目くじら立ててくる奴はいない。

 俺は、本屋に貰った本を開く。

 俺が読書家なのを知ってか知らずか、本屋の店主がよく古本を俺にくれるのだ。今日も、新しい本を仕入れて置き場に困っていた本を数冊もらった。

 そのうちの一冊を開き、読書に耽る。


 題名は特になく、過去に起こった出来事について書かれている。

 歴史書のようなものか。

 一番古いものは100万年前……。頭がおかしくなりそうなほど昔だな。しかも、この世界についてはさらに前からあるっぽいし。

 で、読んでみると。


――100万年前――

 この地を創り出したといわれる、7つの神。

 炎の世界より生まれた、赤神。

 水の世界より生まれた、青神。

 風の世界より生まれた、緑神。

 土の世界より生まれた、黄神。

 雷の世界より生まれた、紫神。

 光の世界より生まれた、白神。

 闇の世界より生まれた、黒神。


 彼ら7つの神は純色神と呼ばれていた。

 純色神はそれぞれの大地を所有し、不可侵条約を結んで、その地の民と平和に暮らしていた。

 やがて、彼らは互いに認め合うようになり、交わることもあった。


 彼ら、神同士の間の子は、決して親のような力を持つことはなかった。時には病で倒れてしまうほどの、弱い存在もいた。

 それでも彼らは、争うことはなく、とても平穏に過ごしていた。


――10万年前――

 この時、転機が訪れた。

 新たな神が生まれたのだ。いや、生まれていたのだが、どういうわけかずっと存在を隠していた。

 その神が、今更になり動き出したのだ。


 その神とは、無の世界より生まれた、無神。


 無神は、まず大地を手に入れようとした。

 しかし、この世界には既に残された大地などなく、すべてどこかの神が領有していたのだった。

 純色神たちは、無神に大地を渡そうとせず、その大地の民たちも神が代わることに納得しなかった。


 いつまで経っても大地をもらえなかった無神は、とうとう我慢の限界に達し、純色神に戦いを挑んだ。

 その戦いは無謀でしかないと思われた。純色神も、そして民たちも一切負けを考えていなかった。

 純色神が手を組み、力を合わせ、無神に対抗したのだ。


 だが、結果はあまりにもひどいものだった。

 何千年にも及ぶ戦い。無神は、民を持たなかったものの、何千何万もの魔物を率いて攻め込んだのだ。

 その結果として、やっとの思いで純色神は無神を封印に成功するが、大地は荒廃し、民も全人口の半分以上が死んでしまった。

 さらに、無神は封印直前に、純色神に呪いをかけていた。

 それは遅効性の呪いで、それに気づくのにさらに1000年以上かかった。

 純色神は、その呪いによって蝕まれ、半分以上の力を失ってしまったのだ。


 そして、純色神の子孫が反乱を起こした。


――5万年前――

 このころになると、数多くの国が興っては栄え、衰退し、滅び、そして興ってを繰り返していた。

 純色神はすでに世界を統治する力もなく、やがてどこかへと姿を消してしまった。


 絶対神たちがいなくなったことで、その子らの争いはさらに苛烈さを増していった。

 安定しない世界、荒廃した大地。このころに安息など、どこにもなかった。


 そして、今度は民も立ち上がった。


――1万年前――

 世界の民が蜂起し、手を組み、そして神の子孫の駆逐を始めた。

 民は、どこでつながったのか、無神の力を持っていたのだ。

 その力とは、神を書物に封印し、そしてその力を民でも扱うことができるようにするもの。


 この力によって、民たちは神の子孫を尽く封印し、そして自らの力とした。

 この、神の子孫を封印した書物が魔術書と呼ばれるものの原典となった。


 そして、民は種族ごとに国を興し、今度こそ平和な、争いなく暮らそうと条約を結んだのだった。


 7つの種族ごとに統治者を決め、彼ら種族の長とした。


 人族の長は、デトロア王国の前身となるダリタリア王国を。

 海人族の長は、アクトリウム皇国の前身となるオリフミア皇国を。

 亜人族の長は、ユートレア共和国の前身となるヨトラト共和国を。

 獣人族の長は、ゼノス帝国の前身となるザリニア帝国を。

 龍人族の長は、ドラゴニア帝国の前身となるドラグリム帝国を。

 天人族の長は、ヴァトラ神国の前身となるベグトマ神国を。

 魔人族の長は、カラレア神国の前身となるクトロマ神国を。


 それぞれが、もともと従っていた純色神の大地を統治するように取り決めた。


――9500年前――

 だが、その平和も千年続かなかった。


 天人族が、天上へと昇る、と宣言したのだ。

 宣言通り、天人族は国ごと、天へと昇ってしまった。

 しかし、大地は残されたままとなっていた。

 この空いた大地の権利がもとで、第一次世界大戦が起こった。


 その間、天人族は全く関わってこず、放棄したものと見做し、少しでも領地を広げようと争いが絶えない時代となった。

 6つの種族は、きれいに3対3に分かれ、争いを繰り広げた。


 人族・亜人族・獣人族の連合軍VS海人族・龍人族・魔人族の同盟軍。

 数百年の戦争は、連合軍の勝利として終わった。

 そして天人族の領土は連合軍の3つの種族で分けられることとなった。

 しかし、その領土の取り合いで、またも争いがはじまってしまった。


 天人族のいた大地は、癖が強い大地なのだ。

 大地の大半が肥沃で豊かな大陸だが、その大地を囲むように、標高10000mを超えるヴァルテリア山脈が連なっているのだ。

 この山脈を越えなければ肥沃な土地はない。しかし、一度越えてしまえば自然の要塞と、夢のような大地がある。


 この大地を巡り、連合軍同士が争いを始めた。

 この戦争はそこまで長くは続かなかったが、3つの国に深い溝が生まれてしまった。


 天人族の大陸はどうなったのかというと、3つの国が争っている間に、同盟国が手を組み、協力してヴァルテリア山脈を越え、占領してしまった。

 こうして、連合軍の3つの国、そして同盟軍の国の間にも溝が生まれた。


――7000年前――

 未だに争い続けていた種族のうち、手を組もうとする動きが出てきた。


 まず、魔人族が魔物と契約を交わし、主従関係を結んだ。

 魔人族が魔物の大地と食糧を約束することで、魔物は魔人族に従った。

 元々、この二つの種族はそれなりの友好関係があったのだが、それが強固なものとなった。


 次に、亜人族と獣人族が手を組み、人族の孤立化を図った。

 亜人族と獣人族は、敵を一つに、同じにすることで利害関係を一致させたのだった。


 残された海人族は、龍人族と同盟を結んだ。

 この二つの種族は、生態がよく似ているのだ。

 龍人族は、普段は人の姿を取っているが、龍の姿へと変えることもできる。同様に、海人族は海洋生物の姿を取って海で生活し、陸では人の姿となって生活していた。


 取り残された人族。それでも、諦めはしなかった。


――5000年前――

 この時代、世界に二度目の転機が訪れる。

 大地を切り離すほどの大地震。それが、2回起きた。


 一つだった大地は、2回の大地震により3つへと分離した。

 人族、亜人族、獣人族、3つの種族の国が存在する大地と、海人族と龍人族の国がある大地、魔人族の国がある大地。

 それぞれの大地は海を隔てることとなった。

 天人族の国があった大地は、魔人族と魔物の大地に含まれていた。


 そして、人族・亜人族・獣人族の住む大地をユーゼディア大陸、海人族・龍人族の住む大地をシードラ大陸、魔人族が住む大地を暗黒大陸と呼ばれた。

 魔人族たちは外交をほぼ断絶しており、内情が全くわからなかったために暗黒大陸と名付けられた。

 また、魔物は3つの大陸の中でも暗黒大陸に多く分布していた。


 この大地震の影響により、世界人口の半分以上が死んだとされ、またそれぞれの国も維持が難しくなり、統治者が次々と変わっていった。

 この時より、世界の国々は現在の国へと変わり、成立していった。


――2000年前――

 この時に、天人族が天上からまた下ってきたとされているが、詳細は不明。

 天人族は自分たちの国があった大地、暗黒大陸に降り立った。

 天人族は豊富な資源と引き換えに、第一次世界大戦時の同盟国から彼らの国があった土地を譲り受けたのだ。


 そして、天人族は魔人族と同盟を交わした。

 天人族との同盟を得たことで、魔人族は魔物との契約を破棄、一方的な新規契約として、強制的に従わせた。


 この時より、魔物は種族の敵とみなされ、どの大陸でも駆逐が行われ始めた。

 また、魔人族と魔物の違いは、知能と理性の有無によって定められる。時には、魔人族の者も魔物として判別されることもある。


――1000年前――

 第二次世界大戦勃発。

 どの国が、どの国に仕掛けたのかは、今でも一切不明となっている。

 ただ、この大戦は全世界の種族が参加し、最も荒れた戦争でもある。

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