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メイジ オブ Mage  作者: 水無月ミナト
学園編 学園の魔導師
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第三十五話 「不穏な気配」

 1週間経ち、城下町にも学校祭の準備が漂い始めたころ。

 放課後の最終下校時刻前まで居残って練習を終え、学園長宅に帰り着く。

 イズモと厨房で夕食を作りに移動している際に、学園長に後ろから声をかけられた。


「ネロ、ホドエール商会の者から手紙を預かっているぞ」

「ホドエール商会?」

「ああ。なんでも、ゼノス帝国からの手紙らしい」


 学園長から手紙を受け取り、差出人を見る。

 差出人のところにはネリ・クロウドと書かれていた。


「ネリ……? あいつが手紙とか、ちょっと頭疑うぞ」

「妹様に失礼ですよ……」


 イズモに注意されるが、俺からしてみれば明日は嵐でもきそうな予感がする。

 とりあえず、後でゆっくりと読ませてもらうか。

 ネリからの手紙ということで自然と頬が緩むが、学園長に見られていることに気付く。


「……家族には甘いな」

「良いじゃないですか。数少ない家族ですよ」


 俺は学園長に背を向けて速足で歩き出す。


「数少ないって、一人じゃないですか」


 慌てて、少し遅れてイズモが並走してくる。

 だが、俺はイズモの質問に首をかしげた。


「ネリと、お前」


 ゼノス帝国のある南東を指差し、次にイズモに指を向ける。

 一瞬きょとんとしたイズモは、急に耳まで真っ赤に染めて俯く。


「あ……いえ、あの……」

「冗談だって言われたくなけりゃ堂々としてろ」


 毎回これじゃ、こっちの精神が持たん。

 照れ隠しにイズモの額を軽く小突き、厨房に向かう。




 食堂での食事を終え、自室に戻ってからネリからの手紙を読む。

 帝国から王国への郵便は受け付けていないはず。逆も同じだ。だから、リリックが受け取った手紙を商会を通して送ってくれたのだろう。

 封を切って手紙に目を通していく。


『兄ちゃんへ。

 おっさんにたまには手紙でも書けと言われたので、アルマ姉と書いています。

 兄ちゃんのように上手にはかけないけど、一応書いてみます。


 今、あたしは極神流から極めるために、極神流の王級剣士と毎日打ち合っています。

 毎日本当に殺す気の攻撃が飛んできますが、この通り生きています。ピンピンしてます。おっさんに少しは大人しくしろとよくいわれます。

 これが終われば、次は攻神流だそうです。護神流はどうせ性に合わないだろうと言われ、後回しにされました。

 確かに性に合いませんが、幼少の頃はいつも護神流を続けていたので型や足運びは染みついています。これも兄さんと父さんのおかげですね。


 兄ちゃんはいかがお過ごしですか?

 魔法学園の生徒になっていると聞きました。あたしも、ゼノスにいなければ騎士学校に行ってみたかったです。

 学校には少し憧れますが、アルマ姉からは兵士の訓練場のようなものだと言われました。本当にそうなら少し行く気が失せてしまいます。

 だけど、兄さんが通って、兄ちゃんもいるならきっと通えると思います。


 それと、元奴隷の子とは仲良くできていますか?

 あたしは傍にいられないので、兄ちゃんを守ってくれるように頼みました。

 頼み通り守ってくれていますか? それとも、兄ちゃんのことだから逆に守ってあげていますか?


 兄ちゃんのくれた剣豪の英雄譚、楽しく読ませてもらっています。……いえ、本当は楽しくありません。

 しかし、少しでも強くなりたいので、我慢して読んでいます。

 別の大陸の剣はとても魅力的で、面白い話ですが、自分で読むと文字ばかりの紙を破きそうで怖いです。


 あたしの近況はこんなところです。できれば、お返事が欲しいです。

 ネリ・クロウドより』


 ネリの手紙を読み切る前に、思わず苦笑が漏れてしまっていた。

 使えもしない丁寧語を、ガルガドの娘であるアルマという人物に指導してもらったのだろう。

 しかも、俺の送った書物は読み聞かせをしてもらっているという。


 これはアルマという人物に会ったらお礼やら謝罪をしなければいけないだろう。

 顔を片手で覆い、こぼれそうな笑い声を必死にかみ殺す。


「随分と嬉しそうですね」

「まあな。不出来な妹が背伸びしすぎてるって感じだ」

「だから言葉がひどいですよ……」

「お前も読むか?」


 イズモに手紙を差し出すが、困り顔で遠慮される。

 と、同時に封筒からもう一枚紙が落ちた。


「二枚入りかよ」


 それを拾い上げながら、どんなことが書いてあるのか想像する。

 あの妹のことだ。二枚も手紙を書けるとは思えないが、内容を楽しみにしながら読む。


「……ッ!」


 だが、読み終える前に駆け出していた。


「マスター?」


 背中にイズモの声が聞こえるが、無視して走る。

 学園長宅の家を駆け、グレンの部屋を目指す。


 グレンの部屋をノックもなしに開け放つが、そこに目当ての人物はいない。

 ……ならば王女の部屋か。

 足を王女の部屋に向け、もう一度駆け出す。


 そして、王女の部屋もノックなしに開ける。


「グレンッ!」


 部屋の中には3人、王女二人の前にグレンが何やら講義をしていた。

 グレンは俺の方へ視線を向けると、ため息を吐きながら注意をしてくる。


「ノックぐらいしろ。王女の部屋だぞ」

「いいから読め!」


 俺は封筒に入っていたもう一枚の手紙をグレンに突き付ける。

 グレンは鬱陶しそうに、だが手紙を受け取って目を走らせる。

 途端、グレンの表情も険しいものになっていく。


「どうしたんです?」


 状況について来れない王女二人が訝しむように俺とグレンを交互に見る。


「……これは信用できるのか?」

「将軍の印鑑だろ。特殊加工で偽造はできないはずだ」

「……まずいな」


 事態の深刻さに気付いたグレンは顎に手を当てて考え込む。


「一体何の手紙?」


 少し苛立たしげな声音で、ノエルが訊いてくる。

 俺はグレンから手紙を返してもらい、王女二人に渡す。

 ノエルが怪訝そうにしながらも受け取るが、フレイヤはこちらに向いたままだ。


 俺は手紙の内容を、簡潔に伝える。


「ゼノスがユートレアと足並み揃えて攻めてくる」

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