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メイジ オブ Mage  作者: 水無月ミナト
学園編 学園の魔導師
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第十三話 「魔法剣士」

「それでは、これより魔法学園トーナメント決勝戦、2年1組キルラ・ジューン対1年7組ネロ・クロウドを始めます!」


 審判の教師の掛け声とともに、俺と、向かい合うキルラが同時に剣を抜き放つ。

 一見すれば、キルラの剣は普通のロングソードに見える。魔力眼でも、特に魔力の流れは見られない。


 だが、キルラの剣の材料は特殊なものだ。識別眼へと変えて見れば、その素材も見分けられるのだが。

 ……耐魔鉱石。確か、魔力に対してかなり耐性があるんだっけ。

 エルフの里で、ドワーフの子に教えてもらった。別に高価なものではないが、買い手のほとんどがゼノス帝国だ。


 たぶん、耐魔鉱石じゃないと、剣が魔法に耐えられないのかもしれない。

 ……ナトラの剣は普通の剣だし、扱いには気をつけないとな。


 それにしても、と周りを眺める。騎士学校の決勝戦とは打って変わってヤジが飛びまくりである。主に俺に対して。

 キルラは騎士学校にも籍を置いているので、別に剣を持っていても普通と考えているのだろう。グレンも同じようなものだ。


 対し、俺は魔法学校にしか籍を置いていない。そのために風当たりが強い。

 ……ま、聞き流すしかないんだけど。


 でも、ちゃんと声援っぽいものも聞こえてくる。きっと7組の生徒だろう。

 そちらを見て、学園長だけでなく、フレイヤもいることに気付く。何をやってんだ、あの姫様は。


 気を取り直し、俺はキルラに目を向ける。

 キルラは会場の声に少しだけ顔をしかめているようだ。ホント、いい人だよな。


「決勝戦、はじめ!」


 宣言された瞬間、俺は前へと踏み込んだ。一歩、二歩でキルラとの距離の半分を詰めた。

 三歩目を踏んだ時、キルラは大上段で構えた剣を振り下ろしてきた。それは、到底俺に届くような射程距離ではない。普通の剣ならば、だ。


「……!」


 俺は前への踏み込みを、強引に横っ飛びに変更する。

 先ほどまで俺がいた場所に、炎が降り下りた。それは、キルラの剣が放つ炎だ。

 振り下ろされた軌跡には、小さな火が微かについている。


 その光景を見た観戦席から、歓声が上がってくる。

 その中にはキルラの勝利を確信している声もある。


 炎の剣は、ただの剣では受け止められないだろう。鉄を溶かし、押し切られる。折れてしまう。

 これでは剣を打ち合うことすらできない。


 俺に魔法剣ができるのか。

 ……いや、できるな。魔力眼ですでに、魔力の流れは読めた。

 けど、できずにいるのは折れてしまうことを危惧しているからだろう。


「……ま、やるしかないんだけど」


 キルラは俺が動けずにいるのを見て、攻めて来ようとはしない。

 優しい人だ。きっと、このまま俺が魔法剣を使わなかったら、剣を捨ててしまいそうだ。


 だから、期待を裏切ることはしない。

 裏切ることだけは、したくない。


 一息つき、目を閉じて集中する。キルラの優しさに甘えさせてもらう。

 魔力を、剣へと流し込む。剣の表面に、薄い膜を張るような感覚で。

 剣全体を魔力が覆ったところで、目を開く。


 剣へと魔力と命令式を送る。まずは火でいこう。

 そして、俺の剣が勢いよく燃え盛った。体育館の天井に届きそうなほど、高く舞い昇った。

 ……あ、くそ。魔力が多かった。


 急いで収束するように、送り込む魔力量を減らす。すると、少しずつ火が収まり、ようやく剣の周りを覆う程度の大きさに戻った。

 よし、何とかできたな。


 と、少し余裕が出たあたりで、会場が静まり返っていることに気付く。

 ……え、なに? 俺、なんかしたか? したな。魔法剣、やったな。


「……まさか、本当にされちゃうとは」


 キルラが、意外そうな声でそう言った。


「え、でも、これって普通にできるでしょ? だって、魔力を剣に纏わせるだけだし」

「普通はそれが難題なんだけど……」


 そうなのか。なら、会場が静まるのも仕方ない。

 ていうか、そもそもできないと思っていたなら、剣を使おうなんて聞いてくるなよ。


 ……ま、ガラハドのおかげだろうな。

 教えてもらったのは魔力操作の基礎。その応用、延長線上に俺の【結界】がある。それと魔法剣も同じだ。

 魔力操作はかなり使える。これは、魔術にしか使えないと思われている魔力の価値観を覆す。


「これで対等。さ、あとは剣術の勝負だ」

「まったくそう思ってない顔だよ」


 キルラに苦笑しながら言われる。


 そう、剣術だけの勝負じゃない。魔法剣を維持するには魔力を使う。魔力量が人並であろうキルラにとって、長期戦は不利。

 それに、魔法剣に与える火や水といった魔術のスイッチも重要だ。魔術同士の相性だってちゃんとある。


 剣を構え直すと、キルラも同じように相対する。

 一呼吸置き、足を踏み込んで体を前へと飛ばす。


 俺とキルラ、どちらの剣も炎を纏っている。まずは、小手調べだ。

 炎の剣同士がぶつかり合い、大きな火花が散る。


 キルラは剣を引くと、袈裟懸けに剣を振るってくる。それを剣の側面で受け、滑らせて受け流す。

 バランスを崩したところに、横薙ぎに思いっきり振り抜く。


「くっ……!」


 キルラはバックステップで躱し、態勢を立て直す。

 隙を逃さず、攻勢に打って出る。剣を振るい、防御の甘い部分を確実に狙い撃つ。


 だが、キルラも相当なものだ。俺の剣術は戦闘民族ダークエルフ直伝のものだが、キルラは被害を最小に抑えている。

 それでも、守勢に回しているおかげでこちらの被害はほとんどない。時々放たれる攻撃は、余すことなく打ち落とし、攻撃を封じ込める。


 決定打は打てない。しかし、長期戦になるのは必至。


「あ――!」


 キルラが吠え、渾身の一撃を放ってきた。体力や魔力を考えない、本物の渾身。

 俺はそれを受け流すことができない。剣がぶつかり、火が散って押し返され、吹っ飛ばされる。


 空中で態勢を立て直しながら着地し、すぐにキルラへと目を向ける。

 キルラは魔法剣を水へと変えていた。剣の周りを、水が渦巻いているのだ。


 火と水は当然相性最悪。ならば、雷あたりで行くか。

 ……とはいえ、そんな簡単にくくれるほど魔術の性質は単純じゃない。


 たとえば、火と水をぶつければ、確かに火は消えるが、水も蒸発する。

 風は火を大きくするが、暴風でも起こせば火はかき消される。

 自然界そのものを反映しているために、それぞれの魔術を優劣だけでは決めきれない。


 水と雷も同じだ。その証拠に、俺の剣は紫電を光らせているが、キルラは水の魔法剣から変える様子はない。


 いつの間にか観戦席から響いてくる声は、ヤジなどではなくなっている。声援に変わっている。

 その中には俺の名前を叫ぶ声もある。俺にはっきりと聞こえるということは、7組のものだけではないのだろう。

 騎士学校側からも、声が飛んできている。


「……」


 周りの反応が百八十度違う。開始なんて、キルラの勝利しか確信してなかったくせに。

 呆れてしまうが、今はそんなことどうでもいい。


 紫電を纏う剣を構え、キルラへと駆ける。キルラもまた、同じように駆け出した。

 剣と剣が打ち合わされる。紫電が弾け、水が飛び跳ねる。


「くそ……! やっぱ通りゃしない!」


 金属は雷を通すし、水も同じだ。が、真水……純粋な水になるほど雷は通らない。

 ……中学の理科でも習ったけど、やっぱり無理か。塩でも隠し持っとけばよかった。


 だが、押し切れる。すでにキルラは息が上がってしまっているし、剣に纏わせている水魔法もそこまでの量はない。

 俺は紫電を纏わせたまま、キルラと戦う。


 剣戟が続く中、俺の耳に嫌な音が届いた。

 ピシ、という音だ。何度か聞いたことがあるし、バトル漫画ではよくある展開だ。


 慌てて、剣に流す魔力量を減らそうとしたとき、キルラの剣が目の前に迫っていた。

 反射的に剣で防御すると、破砕音とともにキルラの剣が俺を袈裟懸けに斬りつけた。


 だが、浅い。罅の入る音を聞いていたため、身を引きながらの防御だったことが幸いした。

 それでも、俺は斬られた勢いで転がっていく。観戦席からは悲鳴のような声が聞こえてきた。


「ああああああああ!!」


 それに負けないくらいの叫びを、俺はあげていた。


「剣がああああああああああ!!」


 試合中というのを忘れ、俺はリング上を転げまわる。

 ……あああああ、せっかく折れないように今まで使ってきたのにぃぃ……罅でいつも直してたのにぃぃぃ……。


「そういや……ローブもかっ!!」


 袈裟懸けに斬られたのだから当然だが、黒いローブもばっさりいかれていた。

 キルラ許すまじ! この恨み、晴らさでおくべきか!


 ごろごろと転げまわる俺に対し、会場全体が困惑していた。

 観客があげた声は、俺が斬られたことに対するものだったのだろう。

 だが、俺はそんなことよりも剣やローブの方が大事だぞ! 当たり前だろうが!


 ひとしきり転げまわり、気が済んだので立ち上がる。

 斬られた箇所は既に回復魔法で傷を塞いでいる。


「タイム!」

「え……あ、うん」


 俺は両腕でTを作りながらそう宣言する。が、この世界にTなんて文字はないはず。

 まあ、気迫で押し切ったって感じだ。


 俺はリングから降りると、グレンのいる方へ向かう。


「おいグレン! 折れてもいい剣を貸してくれ!」

「折れる前提で誰が貸すか!」

「ケチケチすんな! 替えなんていくらでも持ってんだろうが! さあ渡せ! 今すぐ渡せ!」

「ったく……ほら、よ!」


 グレンが、持っていた剣を力強く投げつけてくる。

 しかも抜き身で。


「あっぶね! あっぶね、テメエ! 今日はトマトフルコースだバーカ!」

「貴様、テンション高すぎるだろっ!?」


 グレンが何か言っているが、知らんな。

 俺は足元に突き刺さっていた剣を抜き取り、リング上に戻る。


「キルラさん、許しませんからね!」

「ええ、っと……その、ごめん?」

「許す!」


 瞬間、会場が沸いた。「ええ!?」という言葉が響き渡った。

 ……え、いや、謝られたら許すだろ、普通。まあ、その時の気分次第だけど。


 それを抜きにしてもそこまで怒っているわけでもないし。

 ローブは最近、小さくなってきていたので仕立て直しが必要だったし、剣だって鍛冶屋に頼めば直るだろう。


 俺はローブを脱ぎ捨て、グレンからもらった剣を構える。

 グレンの剣だからな。折れようがどうなろうが知らん。折れる前提の話だったし。


「【サモン:ブラック】」


 俺は口早に召喚魔法を唱える。

 すると、魔法陣が浮かび上がり、そこからグリムが這い出てくる。

 その光景を見た観客が、今度は驚きに似た歓声を上げた。


 グリムは周りを見回し、キルラの魔法剣に目をとめた。

数秒じっくりと見た後、俺の方へ向いて、剣を見る。


「なんだ、気付いていたのか、主よ」

「いや、それっぽいのがあるかなーって」


 ほら、そういうのって結構憧れだったりしたし。


「武器だけならば簡単だ。魔導書の我の魔法陣に突き刺すのだ」

「わかった」


 俺は魔導書を取り出す。すると、俺が開こうとする前に魔導書が勝手に開かれた。

 そこはグリムの魔法陣があるページ。その魔方陣へと、グレンからもらった剣を突き刺す。


 すると、剣はずぶずぶと魔法陣に沈んでいく。突き抜けることもなく、ただ、沈む。

 手ごと剣全体を沈み込ませると、何かが纏わりつく感覚がある。それと同時に、言葉が頭へと流れ込んでくる。


「その言葉は言霊だ。詠唱とは違い、発声しなければ意味がない」


 グリムがそう説明をくれる。

 なら、この言葉を唱えなければいけないのか。

 頭に入り込んでくる言葉に集中し、言葉を組み立てていく。


「闇より這い出る混沌よ、我が身を糧とし、武器と為せ」


 入れた剣が押し上げられる感覚がし、それに倣うように腕を引き抜く。

 掲げた剣身は、光をも飲み込みそうな黒。闇魔法を凝縮し、纏わりつけたような感覚だ。


 グリムの方へ視線を向けると、ちょうど魔力となって霧散しようとしていた。

 霧散した魔力は、すべて俺の剣に吸収されてしまった。

 ただ、そのせいで剣が悲鳴を上げたのが微かに聞こえた。


 ……武器の新調が本格的に必要そうだな。

 魔力があるなら、それで武器は必要ないのだが。ナトラの剣を直してもらうついでに加工してもらおう。


「そろそろいいかな?」

「おおっと、そうでした。いつでもどうぞ」


 今が決勝戦中だというのを忘れていた。危ない危ない。相手がキルラでよかった。バーブレイやフレイならきっと無言で斬りかかってきていたな。

 とはいえ、斬りかかられて気付かないほど鈍い勘は持っていないがな。


 剣を構え直すと、今度はキルラから踏み込んできた。

 大上段からの打ち込みを、横に跳んで回避する。

 距離を取り、呼吸を整える。そして、キルラを見る。


 キルラが踏み込むと同時に、俺も踏み込む。

 キルラが剣を振り上げると同時に、俺も振り上げる。

 キルラが打ち込むと同時に、俺も打ち込む。


「……?」


 キルラが不審そうな目を向けてくるが、すぐにやめた。

 だが、俺は変わらずにキルラと同じように動く。


 呼吸を合わせる。リズムを合わせる。力配分を合わせる。

 踏み込みを合わせる。タイミングを合わせる。

 同調させる。シンクロさせる。リンクさせる。


 キルラが微妙な表情を浮かべながら剣戟を繰り広げる。

 俺は至って真剣な表情だ。こうやって、俺はリリーに勝ってきたから。


 体の動きや力をすべて相手と同じにする。リズムやタイミング、その他すべてを、だ。

 そこから――崩す。


 キルラが打ち込もうとしたところで、俺は一歩後ろに引く。


「……!?」


 たった一度だけでいい。相手のタイミングを崩せば、勝手に自滅してくれる。

 キルラは俺の剣がぶつかると思って、今までよりも余計な力が含まれている。だから、その攻撃を避けてしまえばバランスを崩す。

 ……ほら、隙だらけ。


 俺は黒い剣で、バランスを崩したキルラの剣を叩きつける。ぶつかる寸前に魔力を流し込み、剣身を強化させる。

 乾いた音とともに、キルラの剣が折れた。


「……!?」


 驚きの表情を浮かべるキルラの首元へ、黒い剣身を向ける。


「……参った」


 キルラが両手を上げ、降参を宣言した。

 わ、という歓声が響き渡った。



☆☆☆



 日が暮れ始めたころ、学園長宅のテーブルには、宣言通りのトマトフルコースを並べた。


「貴様、少しは自重しろ!」


 それらを見たグレンが、声を荒げて怒鳴ってくる。

 そういわれても、俺はちゃんとトマトフルコースだって言ったじゃないか。


「落ち着け、グレン。トマトは俺も嫌いだった」

「ならなぜ並べた?」

「……そのうち慣れる」


 遠い目をして、そう諭す。

 エルフの里にいた時のことだ。トマトだけは、前世でもこの世界でも、どうにも食べられなかったのだが、ナフィのあの眼光と圧力には勝てなかった。

 ……超こえぇんだぞ。視線だけで、ラトメアなんか泡吹くんだぞ。


 おかげで、嫌々ながら食べていくうちに慣れた。食べれるようになった。

 つまり、好き嫌いは強制的に食わせて直すこともできる。


「……貴様がどんな体験をしたかは、まあ察してやる」


 グレンが憐れむような視線を向けてくる。


「だからといって、俺まで同じことをする必要はないだろう!?」

「黙って食え! じゃないと明日からお前のだけ作らん! 作っても生トマトだけだ!」


 グレンと俺が言い合っているうちに、ノエルやフレイヤは食事を何食わぬ顔で続けている。

 学園長はこちらを見ながら、楽しそうにしながら食っている。性格悪いぞ、こいつ。


 俺はグレンを諭すのをやめ、座って自分の料理を食う。


「俺の剣を宣言通り折っといてよく強気に出られるな」

「どれも宣言してただろ。だからお前も心の準備ができてただろ」

「できるか!」


 まったく、うるさいったらありゃしない。

 まあ、確かにグレンの言うとおり、もらった剣は魔法を解いた瞬間に砕け散ったのだが。


 ……あれに耐えうる剣なんかできるのか?

 そうは思うが、できなさそうで困る。


 ローブも剣も、すでに仕立て直しと修理に出している。学園長の金で、だが。

 どちらも、何とか発注した店を見つけることができた。これで直ってくれればいいが……。

 というか、金はかかったがそこまで大金じゃない。ノーラやナトラがよく通っていたおかげで、安くしてくれたのだ。


 合わせれば結構な額になるが、学園長も言いくるめられたし。

 だが、代わりに魔力操作の情報を持ってかれた。根こそぎじゃない分、まだよかったが。扱えるようになって、せいぜい魔法剣だろう。結界はさらに高度だ。


 剣を修理に出してしまったため、イズモの剣は、鍛冶屋に行った際に買ってきておいた。

 そこまで高価なものではないのだが、イズモは大事そうに、今も食事中だというのに腰に下げている。


 グレンが、ようやく諦めたように席に着くが、トマトをせっせと除けながら食っている。往生際の悪い……。


「それにしても、1年で、しかも7組生が一学期の優勝者とは、さすがの王族たちも驚いていたな」


 学園長が、小さく笑いながらそんなことを言ってきた。


「そもそも、ネロが7組にいること自体がおかしいんじゃない」


 学園長の言葉に、ノエルがそう反論する。

 まあ、確かに俺が7組にいること自体おかしいわな。魔導師だし。


「でも、いる理由はちゃんと作ってるだろ。筆記で白紙、実技試験で負け、っていう」

「そうだけど……」

「安心しろ。来年はちゃんと1組に上がるからよ」

「それもそれで……」


ノエルはいったい、俺にどうしろというのだろうか。

 フレイヤはノエルを見て笑っているし、グレンの方へ眼を向ければ鼻で笑われるし。

 ……ど突くぞ、グレン。


「それはそうと、ネロよ。騎士学校の方から入学の誘いが来ているが?」

「断ってください。グレンと一緒とか、絶対に死んでも嫌なんで」

「酷くないか!?」


 一々反応してくるなよ、うるさいな。

 それに、俺はこの国に仕える気は一切ないと明言しているだろうに、なぜ騎士になどならないといけないのか。

 そりゃ、剣術は上達するだろうが、騎士としての誇りや名誉とか、その辺の道徳観念は超いらないし。


 俺は俺のやるべきことをやって、死ぬだけだ。

 ……ま、それがどこで、どうやってかは知らんが。


 寿命で死ぬのか、志半ばで死ぬのか、それとも自分から死地に赴くのか。

 どれも知ったことではない。

 俺が果たすべき、やるべきことは、家族との約束。それだけだ。


 ネリとの墓参り。これが、今の最大の目的だ。

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